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業務プロセス改善における効果的な手法とは?プロセスの可視化に役立つフレームワークや事例も紹介

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Jun 20, 2024 9:21:58 AM

働き方や消費行動、人々の価値観など、さまざまなモノ・コトが常に変わり続ける現代。企業も、環境に合わせて変化することが求められています。

そこで必要となるのが「業務プロセスの改善」です。現状を見直し、最適な業務プロセスへと変えていくことで、環境への適応および利益拡大を図ります。

本記事では、そんな業務プロセス改善の実施に役立つ手法やフレームワークを紹介しています。進め方についても解説していますので、「何から手をつければ良いかわからない」とお悩みの方はぜひお役立てください。

 

業務プロセスとは

業務プロセスとは、企業・組織における「利益獲得に至るまでの業務全体の流れ」です。「過程」「成り行き」などを意味する英語の「process」からきており、業務全般のはじまりから終わりまでの過程を指します。

例えば製造業では、製造、検品、販売といった業務を経て利益を獲得します。小売業の場合は、大まかに仕入れ、商品の運搬、在庫管理、販売という流れで行われます。このような業務の流れ・過程を「業務プロセス」といいます。

そして、業務の取り組み方や仕組みを見直し、改善することを「業務プロセス改善」といいます。『6ステップで職場が変わる!業務改善ハンドブック』という書籍にて以下のように解説されています。

業務プロセス改善とは、「業務のやり方に影響するすべての要素を対象に検討し、その時点で考えられる最もよいやり方を設計すること」です。”

引用:株式会社日本能率協会コンサルティング(2016)『6ステップで職場が変わる!業務改善ハンドブック』

業務を行うタイミングが適切か、流れに無駄がないか、業務分担に問題がないかなど、さまざまな角度から業務プロセスを見直し、改善策を講じます。1回の取り組みで完璧を目指す必要はなく、何度も「調査」「分析」「改善」を繰り返すことが大切です。

 

業務フローとの違い

業務フローとは、業務の手順や流れを図式化したもののこと。業務プロセスは、業務の流れそのものを指すのに対し、業務フローは「図」を指す言葉です。「業務フロー図」ともいいます。

業務フローを「業務の流れ」という意味で使う場合もありますが、作業の細かな手順や工程といったニュアンスです。業務プロセスを細分化したものが業務フロー、と認識しておくと良いでしょう。

業務フローの改善は、業務プロセスの改善につながります。部門ごとの業務、部門内で行われるそれぞれの作業を改善することで、結果的に組織全体の業務が改善されるのです。

このように、業務プロセスと業務フローは厳密には異なります。しかし、ときに同じものとして扱う場合もあるため、会話や文章から意図を汲み取りましょう。

 

業務プロセスを改善するメリット

業務プロセスを改善すると、どのような効果が得られるのでしょうか。主な4つのメリットについて見ていきましょう。

メリット1.生産性向上

業務プロセスを見直し、効率化することで、生産性の向上が見込めます。

例えば、無駄な業務を廃止するという策を講じた場合、従業員の時間と労力に余裕が生まれ、ほかの業務にまわせるようになります。より高い価値を生む業務に集中でき、結果、利益アップにつながります。

また、業務プロセス改善によってミス・トラブルが減ると、製品・サービスの質が向上します。企業価値を高められるうえ、トラブルの対処に費やしていた時間・労力も削減できます。このようなことから、業務プロセス改善には生産性の向上が見込めるといえます。

業務プロセスは、既に確立されているからと放置されてしまいがちです。大きな問題が起きない限り見直さないという企業も多いでしょう。

しかし、気づいていないだけで、業務に無駄が発生している可能性はあります。ロスを減らすため、そしていま以上の利益を獲得するため、業務プロセスの改善が勧められているのです。

 

メリット2.コスト削減

業務プロセスの効率化は、コスト削減にもつながります。

例えば、業務の無駄をなくして従業員の労働時間が短縮されると、人件費を削減できます。そのほか、製品の運搬プロセスを改善すれば配送費の削減に。在庫管理のプロセスを改善すれば、管理費用を削減できるなど、経費の無駄を省けるのです。

コスト削減に成功すると、企業の利益が増えます。利益拡大には新しいことにチャレンジするのも大切ですが、まずは現状のプロセスを見直し、無駄を排除することも重要なのです。

 

メリット3.変革や施策の実現性を高める

経済環境が目まぐるしく変化する近年。多くの企業が、ビジネスモデルや組織体制の変革、新しい価値の創造に取り組んでいます。しかし、業務プロセスを変えずに新しい施策を実行し、失敗するケースが少なくありません。

例えば、リモートワークを導入する際、業務プロセスがアナログ中心だと上手くいかないものです。従来の業務プロセスがオフラインを想定したもので、導入時、情報共有や人材育成に苦戦した経験があるという人も多いでしょう。

よって、企業改革や新プロジェクトを実施する際は、業務プロセスの見直しが必要なのです。システムを再構築することで、施策が成功しやすくなります。

また、業務プロセス改善による効率化は、労働力の確保にもつながります。改革や施策実行に必要な時間と労力を確保できるという点においても、メリットが大きいといえるでしょう。

 

メリット4.ミス・トラブルの発生防止

製品・サービスのミスやトラブルは、業務プロセスに問題があるケースも少なくありません。検品フローに問題があって不良品が発生する、運搬フローが原因で商品販売開始日が遅れる、といった具合にです。

業務プロセスの改善には、そういったリスクを回避できるメリットもあります。小さなミスが大きなトラブルへと発展することも今や珍しくないため、定期的に業務プロセスを見直すことが大切なのです。

 

業務プロセス改善の進め方

業務プロセス改善の進め方に正解はありませんが、以下のような流れで行うのが一般的です。

なかでも重要なのは「目的・目標の設定」と「業務の可視化」です。それぞれの工程について詳しく見ていきましょう。

進め方1.企画を立てる

業務プロセス改善を着実に実行するため、まずは企画を立てることから始めます。具体的には、以下のようなことを行います。

  • 目的の明確化
  • 目標の設定
  • 業務プロセス改善の方向性を定める
  • スケジュールを立てる など

最も重要なのは、明確な目的・目標の設定です。「何のために業務プロセス改善を行うのか」「どのような業務プロセスへと改善したいのか」を明確にしなければ、取り組みが曖昧なものとなり、最大限の効果を得られないからです。

業務プロセス改善によくある失敗として、実施すること自体をゴールとしてしまうことが挙げられます。アクションを起こしただけで満足してしまうケースです。

懸命に取り組んでも、求める効果が得られなければ意味がありません。よって、予め明確なビジョンを描くことが大切なのです。

プロジェクトチームの発足

業務プロセス改善では、専門のプロジェクトチームを発足するのが理想的です。それぞれの部門から代表メンバーを選出し、業務プロセス改善策の検討・調査などを行います。また、施策の目的や内容について社員に共有し、監督する役割も担います。

そのためメンバーには、日頃から問題意識が高く、部門・部署への影響力がある人が適任といえます。また、そのなかでも特に問題解決スキルが高く、発言力のあるメンバーをリーダーに選ぶと良いでしょう。

 

進め方2.現状の業務プロセスの可視化

業務プロセス改善の方向性が定まったところで、次に「可視化」を行います。現在行われている業務の流れと仕組みを紐解くことで、改善点と原因が見えてきます。

業務の棚卸しは、広い視点から段階的に細かくしていく方法が一般的です。業務を大きく分けた「大分類」から書き出し、その後「中分類」「小分類」と細分化していきます。可視化する際は、下記の「業務体系表」のようなフォーマットが便利です。

■業務体系表の例

業務プロセス改善では、業務分担の状況や体制、部門同士の連携なども把握しておくことが大切です。そのため、以下のような項目も可視化しておくと良いでしょう。

  • 部門ごとの役割、業務内容
  • 業務が発生するタイミング
  • 業務の流れ
  • 業務によって発生する成果物
  • 部門に所属するメンバーのスキル など

これらを調査することで、問題点と原因の追求が可能になります。現場でのヒアリングも取り入れながら、業務プロセスの実態を明らかにしましょう。

 

進め方3.改善点の見極めと目標設定

可視化した情報をもとに、何を改善すべきかを決めます。

問題点が複数ある場合は、「時間を大幅に短縮できる」「業務の品質が大幅に上がる」など、改善によって得られる成果が大きいものを優先します。トラブルが多数発生している業務も、優先すべき改善点です。

また、実現可能であることも条件です。現時点で実現できないことに取り組んでも無駄になるため、注意しましょう。

改善点を定めたあとは、目標を立てます。「何をどのような状態にしたいのか」が誰にでも理解できるよう、具体的な目標を設定しましょう。

 

進め方4.改善策の検討

次に、目標を達成するにはどうすれば良いか決めます。

改善策について検討する際は、客観的かつ多角的な視点で考えることが大切です。また、その改善策を実行することで、最終的に「業務プロセス改善の目的」を達成できるかどうかも基準として考えましょう。

改善策のアイデアついて、実際に業務にかかわっている社員に聞くのもおすすめです。プロジェクトメンバーは、各々自分の部門・部署に持ち帰って意見を募りましょう。

 

進め方5.改善策の実行・モニタリング

改善策が決まったら、いよいよ実行にうつります。プロジェクトメンバーが監督役となり、きちんと施策を実行できるよう現場をサポートしましょう。定期的にメンバーで集まって話し合い、進捗を確認しながら対策を練ることも大切です。

また改善策実行後も、定期的にモニタリングを行います。目的・目標を達成できたか、改善策に問題はなかったか、さらなる取り組みが必要かなどの振り返りを行い、次のアクションにつなげましょう。

 

業務プロセス改善に役立つフレームワーク

業務プロセス改善では、多くの情報を扱うことになります。そこで便利なのがフレームワークです。情報を整理したり、問題点・改善点を見極めたりするのに役立つので、ぜひ活用してみましょう。

ここでは、業務プロセス改善に役立つ2つのフレームワークをご紹介します。

BPMN(Business Process Model and Notation)

業務プロセスの図式化に役立つ「BPMN」。現状の業務の可視化はもちろん、改善策のシミュレーションとしても活用できます。

国際基準のフレームワークで、知識さえあれば言語の壁を越えて誰でも理解できるのがメリット。ただし、記述にはルールがあり、扱い方をすべて理解するのは難しいといわれています。

BPMNについて従業員に教育する時間を確保できない場合は、応用する方法もあります。「業務改革、見える化のための業務フローの描き方 プレミアムブックス版」という書籍に記載されている以下の例も参考にしてみましょう。

引用:明庭聡・堀内健司(2019)「業務改革、見える化のための業務フローの描き方 プレミアムブックス版」株式会社マイナビ出版

 

ECRS(イクルス)

「ECRS」は、業務プロセス改善の手法を考えるのに役立つフレーム。4つの単語の頭文字をとった言葉です。

  • Elimate:廃止、排除
  • Combine:結合
  • Rearrange:順番などの入れ替え、再整理
  • Simply:簡略化、単純化

これら4つの視点で業務プロセスを捉え、どのように改善すべきか検討します。フレームワークに沿って考えることで、広い視野を持つことができます。

ECRSの図式にルールはありませんが、以下のような図を作成すると良いでしょう。

 

業務プロセスの改善を効果的に実施する手法

目的・目標の設定、業務の可視化、改善策の検討、振り返りというサイクルを繰り返すことで、業務プロセス改善の成功率は高まります。とはいえ、この通りに実行すれば必ず上手くいくというわけではありません。

では、より効果的に行うにはどうすれば良いのでしょうか。以下の4つの手法について解説していきます。

デジタルサービス・ツールの活用

業務プロセス改善を効率よく行うには、デジタルサービスやツールの活用が有効です。

例えば、業務プロセスの可視化にITツールを用いることで、フロー図の入れ替えや修正が便利になります。デジタルデータはオンラインでの共有が可能なため、リモートでも業務プロセス改善を進めやすくなります。

なかには、業務プロセスを自動で分析し、問題点を抽出してくれるサービスもあります。プロジェクトメンバーのほとんどは、通常業務と並行して改善に取り組むこととなるため、負担を減らせるサービス・ツールを積極的に活用しましょう。

また、業務プロセス改善の手法としてIT技術を導入するのもひとつの手です。人間が行っていた業務を自動化することで、効率アップおよび社員の負担軽減につながります。ただし、適切なサービス・ツールを選ばないと、かえって逆効果になることもあるため注意しましょう。

 

可視化に役立つフォーマットの活用

業務プロセス改善は、業務プロセスに限らずあらゆる情報を可視化するのがポイントです。その際、フォーマットを用意しておくとスムーズに進められます。

課題の可視化には「課題管理表」が便利です。一覧にまとめることで、改善点の優先順位がつけやすくなり、効率よく進められます。

■課題管理表の例

また、業務プロセス改善の施策を実行する前に「実行計画書」を作成しておくのもおすすめです。誰が何をするのか、何が目的なのか、どれほどのレベルで「改善した」と認めるのかなど、情報を整理しておくことで、施策の実現性が高まります。

  • 改善の目的
  • これから取り組む課題点
  • 改善策の内容
  • 具体的な改善実行計画
  • 目標 など

実行計画書には、例として上記のような項目を記載します。また「6ステップで職場が変わる!業務改善ハンドブック」にて紹介されている、以下の例も参考にしてみましょう。

引用:株式会社日本能率協会コンサルティング(2016)「6ステップで職場が変わる!業務改善ハンドブック」日本能率協会マネジメントセンター

 

リーダー・マネージャー向けの研修実施

業務プロセス改善では、社員の行動がカギになります。有用な改善策を考案しても、社員が実行しなければ状況は変わらないからです。

そこで重要となるのが、リーダーやマネージャーの監督・指導・牽引スキルです。彼らのリーダーシップスキル、コミュニケーションスキルなどを高めることで、施策および業務プロセス改善の実現性アップが期待できます。

また研修は、業務プロセス改善について解説したり、話し合ったりする場としても活用できます。トップダウンで指示するのではなく、早い段階で社員を巻き込み、モチベーションを高めることが業務プロセス改善を成功させるポイントです。

 

外部企業のサービスを利用

業務プロセス改善の成功率を高めるには、社員への教育が欠かせません。しかし、高度な専門知識まで身につけさせるのは難しいでしょう。

そのようなときは、外部企業の力を借りるのもひとつの手です。

例えば、コンサルティングを行っている企業に依頼すれば、専門家からアドバイスを受けることができます。第三者ゆえのフラットな意見が聞けるのもメリットです。

また、フロー図の作成を依頼するのも効率的な手法です。ITツールを用いた、完成度の高い可視化も可能になるため、自社に技術者がいない/少ないという企業は検討してみましょう。

 

業務プロセス改善に成功した企業事例

業務プロセスの改善に成功した企業は、実際にどのようなことを行ったのでしょうか。

3社の事例をご紹介しますので、「何から取り組めばよいかわからない」「業務プロセス改善のイメージが湧かない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

株式会社デジタルアイデンティティ

デジタルマーケティング事業を営む株式会社デジタルアイデンティティ。当社は、業務プロセス改善の第一歩として、業務を可視化するデジタルツールを導入しました。

可視化ツールには、自動でデータ収集・管理を行う「常駐型」のものを採用。データ入力などの作業が不要なツールを選ぶことで、社員への負担増加を防止しました。

また、社員の不安解消のため、導入前に目的とメリット、安全性を社員に説明したのだそう。

業務プロセス改善を成功させるには、当社の事例のように、社員に協力してもらえるよう工夫することも大切です。

■参考:「感覚値を数値化できた」急成長ベンチャーのデジタルアイデンティティが業務可視化で得たもの

 

マルヰ産業株式会社

マルヰ産業株式会社は、LPガスをはじめとする、さまざまな商品・サービスを提供する沖縄県の企業。当社は、ワークライフバランスを重視した働き方を実現するため、業務プロセス改善に取り組みました。

具体的な取り組みのひとつとして、当社はタブレット端末を導入。現場でも顧客管理システムを利用できるようにしたことで、従来電話で行っていた情報共有の効率化を実現しました。

また、日報業務や決裁業務などの事務業務も、アナログからデジタルへと変更。書類を郵送する手間・コストがかからなくなったほか、業務の停滞ロスも削減できたそうです。

この事例から、電子ツールの導入は、業務プロセス改善に大きく貢献する有効な手法であることがわかります。

■参考:き方・休み方改善ポータルサイト 取り組み事例

 

株式会社ロイヤルホテル

ホテル業を経営する株式会社ロイヤルホテル。当社は、業務プロセス改善の一環として、独自の「5S活動」を実施しました。

「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つをキーワードとし、活動の手順を示すマニュアルを作成。現状分析では、マップや写真、ビデオなど視覚的にわかりやすい形で可視化しました。

また、社員に浸透させる取り組みとして、チェックシートの活用や、「5S会議」と称する定例会議を実施。その結果、社員に業務効率を考える習慣が身についたとのことです。

業務プロセス改善を成功させるには、組織が一丸となって取り組むことが大切です。そのためには、「株式会社ロイヤルホテル」のようにキャッチコピーをつくったり、定期的に話し合う場を設けたりする工夫が必要です。

■参考:サービス産業生産性向上ポータル 改善実践事例」株式会社日本能率協会コンサルティング

 

まとめ

業務プロセス改善における最適な手法は、企業の目的や状況、業務の種類によって変わります。自社にとっての最適解を導き出すためには、「計画」「可視化」「分析」の徹底が欠かせません。

可視化や分析に役立つデジタルサービス・ツールには費用がかかりますが、手作業で行うよりも正確かつ効率的なのであれば、利用する価値はあるといえます。社員への負担も考え、無駄・無理のない業務プロセス改善を目指しましょう。