小売や飲食、レジャー産業など多店舗運営が必要な事業には、正社員、契約社員、パートタイム、アルバイトなどのさまざまな雇用条件下の従業員が数多く従事しています。
就労条件の異なるさまざまな人材を束ね、事業を円滑に推進し、売上拡大を目指すためには、従業員の人材育成を平準化し組織運営の効率化を図る必要が出てきます。
人材育成を円滑に行い事業拡大を行うために、リーダーやマネージャー職を担当している方が従業員とのコミュニケーションに苦労することは少なくありません。特に、業務内容を建設的に改善してもらうために従業員へどのようにフィードバックをすべきか悩む方も多いでしょう。
今回はフィードバックを効果的に行うやり方やフレームワークを利用した具体的なフィードバックの進め方をご紹介します。どのようにフィードバックを進めればよいのかお悩みを抱えている方はぜひお役立てください。
フィードバックとは、本来英語の「feedback」の帰還する、反応するという意味の言葉に由来します。ここから転じて、ビジネスの場ではフィードバックは目標達成のために立ち返って行動や結果をもとに課題の指摘や評価を行うことを指しています。上司と部下、店長やマネージャーと従業員で1対1で実施することが一般的です。
ビジネスシーンでのフィードバックは、主に「相手の結果に対する客観的な評価・指摘・アドバイス」を指します。
フィードバックは、起こった事実、結果に基づいて行われます。部下の行動に対して評価や指摘をするので、目標に達成できなかった原因をつきとめて改善すべき行動が絞り込まれれば、悪かった行動の再発防止につとめるなど、今後、より良い方向へ進むための対策や改善点を示すことができます。
改善すべき行動として、上司がやってもらいたいことと部下がやりたいことにギャップが生じていることが挙げられますが、このギャップは、フィードバックを繰り返し行うことで埋めることが期待できます。
厚生労働省の報告書によると、部下は上司からのフィードバックが効果的だと思っているという結果が見られました。
上司からのフィードバックが実施されないと働きにくいと感じている者の割合が多くなり、フィードバックのやり方次第で働きやすさの向上に資する可能性がある。
正社員は、「今後の行動に関するアドバイスがあった」フィードバックを効率的であったと考えており、「フィードバックの内容が充実していない」「今後の行動に関するアドバイスがなく、どうすればよいか不明」なフィードバックを効率的でなかったと考えている
引用元:上司からのフィードバックと働きやすさについて|令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-|厚生労働省
この報告書からも、企業の人材育成のためにはフィードバックが効果的であることがわかります。
フィードバックの目的は、部下である従業員の成長促進です。人材育成においてフィードバックは効果的です。フィードバックの目的を細分化すると以下の3つが挙げられます。
設定した目標に対し「どのくらいの達成度だったのか」を客観的にフィードバックしてもらうことは部下の成長にとって必要なことです。
書籍『ヴィランティ牧野祝子著「ポジティブフィードバック」あさ出版』によると、フィードバックなしで仕事をすることは「ナビなしで初めての場所に向かうようなもの」といいます。フィードバックなしではささいな悩みにとらわれて時間をとられますし、悩み・不安が解消されないため仕事に集中できません。
フィードバックを適時に行うことで、部下は現在の立ち位置が理解でき、目標達成のために「なにが足らないのか」を気づかせることができます。フィードバックによってより良い状態で業務に向き合うことができるので、部下の力を最大限に発揮してもらうことが期待できます。
フィードバックの目的のひとつは、人材の育成です。
企業の業績を支えるのは人材です。人材の育成が、企業の成長をもたらします。
厚生労働省 東京労働局の報告書「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」によると、今後労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国が経済成長を図るには労働生産性を高めることが不可欠だとあります。企業も成長を図っていくためには、労働生産性を高めていくことが必要だといえます。
上記の報告書には労働生産性を高めるための具体策として、従業員の能力開発・意欲の向上、働き方や働きやすさの改革などにより、生産性の向上が図れるとあります。
人材の育成によって人材ひとりひとりの生産性が向上することで、その力が集まりチームの成果となり、ひいては企業の成長につながります。
フィードバックを行うことによって、部下の現在の課題が明らかになります。
部下の課題はさまざまです。「時間の管理ができず、納期や約束に間に合わない」という課題があるなら、上司がともにスケジュールの立て方を一緒に考えていくことで、部下のタイムマネジメントを強化することができます。
お客様への商品説明が出来ないという課題なら、商品説明の話し方について改善点を指摘してもらうことができます。
その悩みや課題に対して、解決のための具体的かつ建設的な方法について、上司と部下がともに考えて策をつくりあげていくことは、人材の育成に繋がります。
部下の能力が伸びる可能性がある部分へのアドバイスやスキルアップにつながる助言をフィードバックされることで、部下に気づきが生まれ、成長のきっかけになります。
業務改善をおこない業務効率化を果たすには、工数の見直しや削減や、業務の質向上など、さまざまな場面で検討する必要があります。
上司からのフィードバックを受けることで、部下は効率の悪い業務について工数や困難に感じている点を振り返りやすくなります。フィードバックを通して、業務フローや業務にかかる時間を見直すヒントを見つけることが期待でき、業務改善を進めることができるでしょう。
部下へのフィードバックを行うメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを取り上げます。
フィードバックによって、部下は自分に求められている人材像を認識することができます。
企業が何を目指しているかや企業独自の価値観を知ることができ、そのなかでチームの目指すもの、自分の役割を認識する大切な機会です。
厚生労働省が2020年12月に発表した「職業能力評価基準導入マニュアル」によると、フィードバッグを通じて、本人に気づきを与え、成長へ向けた行動改善や自己啓発を促すきっかけにすることができるとあります。 |
人事評価において「なにが評価されたのか」を部下にフィードバックすることは「会社が期待していること」を伝えることと同じです。このようにフィードバックは、企業の目標や自分の仕事への理解を深めることに繋がります。
フィードバックは目標の達成に向けた経過の振り返りのことです。
松尾 睦氏の著書『「OJT完全マニュアル」 ダイヤモンド社』によると、新人の成長を促す効果的なフィードバックには、「聴ききる」「承認する」「課題を問いかける」「アドバイスする」の4つの原則があるといいます。この原則にあるように部下は成功の可否ではなく、進めてきたプロセスを「承認される」ことで自信をつけることができます。
フィードバックを通して、問題を解決したり、目標を達成するまでの道筋がはっきりし、「できないかも」と思っていた業務についても取り組んでいこうと前向きな気持ちにすることができます。承認によって部下は目の前の業務について、自分でもやれる!という気持ちが湧き上がります。
部下が仕事で失敗したときに落胆し、「自分にはできないのではないか」と弱気になってしまう場合にもフィードバックは効果的だと松尾氏は著書で言及しています。
書籍では、フィードバックで部下の自己効力感を付ける具体的な方法として以下の点を挙げています。
部下の心情に寄り添ったフィードバックを行うことで部下の自己効力感を高めるように働きかけ、部下が自信を取り戻すきっかけにつながると松尾氏は述べています。
厚生労働省の令和元年度の労働白書によると、フィードバックが行われる職場はしない職場に比べて従業員がやる気を出して業務に取り組んでいることが分かります。
適切なタイミングで行われるフィードバックによって、部下の不明点や疑問を取り除くことができ、部下が期待されている社員像を上司と共有し、成長していくためのアドバイスを受けることができます。このため部下はモチベーションを高め、主体的に考え行動に移すことが期待できます。
参照:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について- 第二章「就労を望む誰もが安心して働き続けられる「働きやすさ」の実現に向けて」
フィードバックには大きく2つの種類があります。ポジティブ・フィードバックとネガティブ・フィードバックです。それぞれの効果について説明します。
ポジティブ・フィードバックとは、ヴィランティ牧野祝子氏の著書によると、相手の成長のためのコミュニケーションだとあります。ポジティブ・フィードバックの特徴は相手の行動、存在や結果を「承認」していることを肯定的な言葉で伝えることです。ポジティブ・フィードバックを受けた部下が「大切に思われている」と感じ、傷つくことをせずにお互いに前向きに進むことができるようになります。
ヴィランティ牧野悦子氏の著書によると、ポジティブ・フィードバックの効果は主に5つあるといいます。
1:「やる気が起きる」
誰かが自分を信じてくれていると思うと、その期待に応えたいとやる気が起きてくるというものです。
2:「自信がアップする」
自分のした行動に対して「良かったよ」と伝えてもらうと、自分の強みが明らかになり自信に繋がります。
3:「人間関係が良好になる」
繰り返しポジティブ・フィードバックを行うことで、上司に対して好意度が高まって、上司と部下との距離が縮まる効果がみられます。
4「仕事への理解が深まる」
部下の行動のなにが、どのように良かったのかをポジティブ・フィードバックすることで、会社や上司が業務に対して期待しているやり方や価値観を部下は知ることができます。
5「主体性が高まる」
ポジティブ・フィードバックによって「それでいい」と承認されつづけていると、部下は主体的に業務に取り組むようになります。
このようにポジティブ・フィードバックを行うことで部下がやる気と自信を持って理解を深め、主体的に仕事を進めるようになることが期待されます。
ネガティブは消極的・否定的を指します。ネガティブ・フィードバックと聞くと気持ちが暗くなりますが、ネガティブ・フィードバックは決して悪いコミュニケーションではありません。
繫桝江里氏の書籍『「ダメ出しコミュニケーションの社会心理」誠信書房』によると、ネガティブ・フィードバックは相手の考えや行動に対し得て適切な評価を示すことだといいます。繫桝氏は書籍で、ネガティブで厳しいアドバイスは一見悪いコミュニケーションの取り方のように感じるが、ネガティブ・フィードバックによって良くないことを伝えることが相手へのサポートになりえると述べています。
ネガティブ・フィードバックには以下の4つの効果が見込まれます。
1:「相手の成長を促す」
ネガティブ・フィードバックによって部下の現在の課題点、改善したほうが良い点を指摘することで、ネガティブ・フィードバックを受けた部下は成長の方向性を認識することができます。
2:「目標達成の道筋をみせる」
ネガティブ・フィードバックによって、受け手である部下はさまざまな気づきを得ることができます。自分がつまづいている問題をネガティブ・フィードバックを通して自分のなかで整理することができます。
3:「パフォーマンスの向上」
課題を達成できていない部下へのネガティブ・フィードバックによって、達成できなかった原因を提示することができれば、部下は軌道修正をかけることができ、目標までの最短の道へと導くことができます。
4:「エンゲージメントの向上」
自分を成長させたいと思う社員は「スキルアップしたい」「何が足りないのかを知りたい」と考えている傾向がみられます。ネガティブ・フィードバックで課題点を指摘してもらうことで、成長できる職場であると組織に対する評価が高まる可能性があります。
フィードバックは部下の成長を促すことを目的に行われ、部下のやる気をアップさせたり自信を持つことにつながる効果が期待できます。効果的なフィードバックを行うにはポイントがあります。ここでは7つのポイントを取り上げます。
書籍『野原茂著 「人事考課ハンドブック」経営書院』によると、フィードバックの注意点として心がけるべきことは「基準に照らしてありのまま」伝えることだと言います。つまり事実に基づくフィードバックは説得力があり、部下の理解や納得も得られやすいと言及しています。
しかしフィードバックにおいて部下の人間性や人格を傷つけるような発言は慎まなければいけません。書籍では、フィードバックの場において話されることは部下の性格ではなく、部下の行動だとあります。部下の取った具体的事実としての行動を評価し、フィードバックします。
厚生労働省の労働白書によると、上司からのフィードバックに関する従業員のアンケートにおいて、フィードバックを効果的だあったと感じた理由を聞いたところ、「具体的な行動について褒められた」が挙げられています。
フィードバックで具体的な行動について褒められる、あるいは注意される場合、部下はフィードバックが効果的だったと感じていることが示されています。良かった点、悪かった点について起こった事象や場面を例にとり、具体的に伝えることが肝要だといえます。
参照:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-第Ⅱ部 人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について
事象が起きてから、時間を空けずにフィードバックをすることがフィードバックの効果を高めるポイントになります。
上記のアンケートにおいて、上司からのフィードバックが効果的だったと感じる理由に、行動した直後にフィードバックがあり、実感が沸いたとあります。部下はその行動をとったことの記憶が新しいと、指摘されたことへの実感が沸き、気づきや学びが得られやすいといえます。
フィードバックは他人同士が行うため、上司と部下は仕事に対する認識が異なっています。部下本人の自己評価が高い人もいれば低い人もいて、その自己評価と上司の評価は一致しているとは限りません。
書籍『高原暢恭著「人事評価の教科書」労務行政』によると、上司と部下本人の評価にギャップがある場合、まずは評価される本人の考えを話してもらうことが大切だといいます。
はじめに上司が話してしまうと、部下は一方的に考えを押し付けられたと感じ、不満を残してしまいます。
相手の自己評価の理由を良く判断してから、同意できることは同意し、違う点、考えのギャップについては「このように考えてはどうですか」と質問をしながら進めると、徐々に上司の考えが伝わっていくのだと高原氏は著書で言及しています。
対話のなかでは、「今の点については分かった?」「次にどのように進めていけば良いか、不明点はないか?」など、相手が納得、理解できたか細かく確認していきましょう。相手の気持ちをくみ取りながら、本人の意思を確認していきます。
参照:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について- 第二章「就労を望む誰もが安心して働き続けられる「働きやすさ」の実現に向けて
厚生労働省の令和元年度版の労働白書によると、今後の行動へのアドバイスがあった場合にフィードバックが効果的だったと考えられていることが分かります。
フィードバックを効果的に行うには、過去の行動に対する振り返りと今後の行動へのアドバイスを合わせて伝えることが重要になります。
相手の経験やスキルレベルに合わせて、目標達成のために改善策や個人のスキルアップに役立つアドバイスをします。また「一緒に進めていこう」と声をかけることで、部下との信頼関係の改善が期待できます。将来にむけた目線で話すようにしましょう。
フィードバックはシチュエーションや態度に気をつけて臨むと良いでしょう。
フィードバックを行う場所はできるだけ静かで落ち着いた環境を選ぶなど工夫が必要です。
書籍『高原暢恭著「人事評価の教科書」労務行政』によると、机を挟んで正面に向かい合って座るよりも向かい側の1つ隣の席に座ってもらうと、2人の距離をゆったりと取ることができ、比較的安心して部下に話してもらうことができるといいます。
また、部下の機嫌を取る必要はありませんが、上司が部下に対して威圧的な態度で接するなどないように心がけましょう。
前述の労働白書によると、上司からのフィードバッグの頻度が高ければ高いほど、フィードバッグの効果が高い傾向があることが分かります。
毎日、週に1度、月に1度と定期的なフィードバックの機会を持つことで、部下とのコミュニケーションを取る機会も増えます。意見交換の時間を取ることで、相互の意図することがより理解できるため、信頼関係を築いていくことが期待できるでしょう。
また、部下が上司と話しやすい環境をつくるために、日頃から積極的に声がけをしていくとよいでしょう。上司との信頼が高まることで、組織全体や会社に対する部下のエンゲージメントの向上への希望が持てます。
ここまでフィードバックについて、目的やメリット、種類について解説してきました。しかし実際にフィードバックを行うとなると、部下に対してどのように話しを進めれば部下に伝わるのか、効果的なフィードバックになるのか、やり方が分からずに実行に躊躇してしまうでしょう。
ここではフィードバックの効果を最大化するやり方を6つご紹介します。フィードバックする相手によって、話し方・伝え方や話す順番など最適な型を倣うと良いでしょう。
心理学者のアロンソンとリンダ―による「ゲイン・ロス効果」という実験があります。これは人はどのような褒められ方をすると、その相手に好意的に感じるのかについて調べたものです。
はじめから最後まで褒められ続けた場合よりも、はじめはけなされて、途中から褒められると相手への好意度が高くなることが分かっています。
サンドイッチ型のフィードバックとは、はじめに良い点を褒めて、つぎに悪かった点について伝えます。最後に良い点を話すことで、悪い点・課題点を良い話しで挟む形で進めるフィードバックの型をサンドイッチ型といいます。
はじめに良い点を話し、認めていることが伝わると、悪い点の指摘も受け止めやすくなる効果があります。そして悪い点の指摘を受けた後に褒められることでゲイン・ロス効果が生まれ、フィードバックの内容が受け入れやすくなり、上司についても好感をもつ傾向があるといいます。
英語でストラテジー(strategy)は「戦略」を示しています。ストラテジー型のフィードバックとは、相手に合わせてフィードバックする内容を変えることを指しています。
スキルレベルによって、フィードバックで伝える内容を変えることもあります。経験があり自分で考えて動く部下には「客観的にみた定性的なフィードバックによって課題を提示して、自分で改善策を考えさせる」、一方で年次も浅く経験の少ない部下には「具体的な行動に落としたフィードバックを行い、目標達成した状態をイメージさせる」などが当てはまります。相手の状態に合わせてフィードバックしましょう。
フィードバックは部下にとって大切な機会です。効果を最大化するためには相手のスキルの他に思考を見極めたうえで何を伝えるか戦略を立てることが重要です。
人材開発を専門とする東京大学准教授の中原 淳氏の著書『「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」PHPビジネス新書』によると、効果的なフィードバックの型として、事前にSBI情報を集めることが重要だといいます。
SBI情報とは、Situation-Behavior-Impact(状況-行動-影響)を指しています。状況(Situation)を明確に認識して、観察された特定の行動(Behavior)を共有して、評価される部下の行動が周囲に与えた影響(Impact)を説明する、フィードバックの型です。
次のように順を追って進めます。
①「Situation」:どのような状況で、どんな状況のときに起きたのかを説明します。
②「Behavior」:部下の振舞いや行動がどのようであったか、実際に観察した行動を説明します。ここで重要なポイントは「事実」にフォーカスするということです。上司が観察した行動は周囲の人も観察しています。
③「Impact」:状況と行動がどのような影響をもたらしたのか。何がダメだったのか。行動をとった結果を説明します。
SBI型のフィードバックは「状況」と「行動」を正確に説明した上で、業務関係者がどう思ったか、どう感じたかを伝えるので、部下は上司の言葉を受け入れやすくなります。また自分の行動の影響が伝わるため、部下に内省を促すことができます。
FEED型のフィードバックとは、「Fact(部下の取った行動)」→「Example(その行動を指摘する理由)」→「Effect(その行動による影響)」→「Different(次回への代替案・改善策)」に沿って説明を進めるフィードバックのモデルです。
はじめに事実を取り上げ、次にその事実を取り上げた理由を伝えます。この次に、その事実によってもたらされた影響を述べ、最後に今後取ることのできる行動を提案します。
①Fact:相手の取った行動
(例:昨日の戦略会議でのプレゼンで、資料の作成から配布まで行ってくれましたね。)
②Example:その行動を指摘する理由
(例:しっかりと作り込んでくれた資料の効果を最大化するために、資料の配布のタイミングに対して、まだ不十分だと感じています。)
③Effect:その行動による影響
(例:話を引き込む前に、役員に資料を配布してしまったので、役員は話を聞くよりも資料に注目してしまったようでした。)
④Different:今後の改善策
(例:次からは、最適なタイミングを図って資料を配布するようにしましょう。)
相手の行動から今後の改善策までを一連の流れで伝えられるのがFEED型です。部下が理解、納得しやすいため、行動改善を促しやすい手法といえます。
KPTモデルは、「Keep(今後も継続すべきこと)」→「Problem(現状の課題)」→「Try(改善に取り組むべきこと)」の順で伝えるフレームワークです。
上司と部下が意見交換しながら進めていくフィードバックの型で、エンジニアの開発チームで1週間の振り返りに使われている手法です。
具体的には、まず今後も続けていくべきと思うよかった行動と、今後は止めるべきだと思う悪かった行動を箇条書きに出していき、項目ひとつずつ振り返りを行います。最後に上司と部下が良い点と悪い点を共有したうえで、次に取り組むべきことを話し合います。
KPTモデルのメリットは、上司と部下がコミュニケーションを取り、お互いの意見を書き出しながらフィードバックできる点です。箇条書きに書き出すことで今ある課題を可視化し、これをベースに振り返りをすることで気付きを得やすく、自発的な行動改善を促しやすいのが特徴です。
ペンドルトン型フィードバックとは、心理学者のペンドルトン氏が開発したフィードバックモデルです。フィードバックを受けた部下に時間を与え、自分自身で改善点を考えてもらう手法で、部下は上司に改善点を申告し、これをもとに上司と意見交換しながら解決策を探していきます。
具体的には「話すことの確認」→「良かった点」→「改善点」→「今後のアクションプラン」→「まとめ」という流れです。
上司からの一方通行のフィードバックとは違い、部下自身でアクションを考えさせる時間を設けることで、より深く対象者の内省を促します。
上司からの指摘されたことよりも自分で考えたほうが納得度が高く、モチベーションアップにつながります。時間を使って双方でコミュニケーションを取りながら進めていくのがペンドルトン型の特徴です。
ポイントをおさえた効果的なフィードバックは小売や飲食、レジャー産業のように多数の従業員が従事する職場において従業員の育成に役立ち、業務の効率化を測ることが期待できます。
効果的なフィードバックによって、従業員一人ひとりの成長を促し、従業員の成長やモチベーションの向上によって店舗運営が活気づき、さらなる売上拡大の実現が期待できます。
リーダーやマネージャーにとって従業員へのフィードバックフィードバックは、とても骨の折れる作業ですが、管理者と部下の認識のギャップを埋めるチャンスだととらえて、人材育成が部署やチームの業績向上のための大切な機会を生かしましょう。