企業の発展には人材育成が欠かせません。新型コロナウイルスが流行したことでテレワークが一気に普及し、新しい人材教育を模索しはじめた企業が増えました。
特に注目されたのがeラーニング。インターネット環境と、パソコンやスマホといったデバイスが進化した今、充実した学習を受けさせるのに欠かせないツールとなっています。
ここでは、eラーニングとはどのようなものかを改めて確認した後、自社内で作成する手順やコツについて解説します。
(参照元:「図解 オンライン研修入門」)
企業では人材を効率よく育てるために、さまざまな方法で研修が行われています。eラーニングはその中でも重要な位置を占めています。
Eラー二ングの定義は、一般的には「インターネットを活用した学習」とされ、そのコンテンツや学習方法、用いられるデバイスは日進月歩を繰り返しています。(中略)かつては限られた人のための限られたツールだったEラーニングも、今や教材は多数あり、そのコンテンツやデバイスも多様になっています。
(引用:HRインスティテュート著「図解 オンライン研修入門」ディスカヴァー)
eラーニングが欧米に登場したのは1995年頃。その後ブームとなり、日本に登場したのは2000年頃だと言われています。この当時はスマホもなく、企業によっては共用パソコンはあっても、個人貸与はないところも多い時代でした。それでもeラーニングは効果が高いとされ、企業は試行錯誤をしながら人材育成に役立ててきました。
eラーニングが注目される理由のひとつが、スマホやタブレット、パソコンといったデバイスの進化とネット環境の進化です。
最近ではスマホを常に携帯しているのは当たり前。人によってはスマホに加え、タブレットやパソコンも持ち歩いているため、どこでも学べるようになりました。
また以前は、安定した通信環境を屋外では得難く、自宅でも難しい人が多かったものです。eラーニングはインターネットを活用した学習ですから、通信環境が整っていなければ有効な学習を進めることはできません。
それが今は大きく改善され、屋外でもwi-fiを活用することは一般的になりました。また、wi-fiがなくても、スマートフォンのテザリングを使えば、安定した環境でインターネットを活用することが可能となっています。
新型コロナウイルスの登場により働き方が大きく変わりました。 多くの会社でテレワークが導入され、在宅でも仕事ができる環境が整ったのも影響があったでしょう。在宅で仕事をすると仕事の合間にやることがなく、無駄な時間が生まれます。この時間を活用しようと、eラーニングが見直されました。
例えば、社会人経験のない新入社員に、社会人としてのマナーを教えるような教材は、eラーニングを扱う業者からたくさん出ています。また、社内で独自のものを制作し、活用しようという企業も増えました。
以前は制作が大変だった動画ですが、画像にこだわらなければ、スマホさえあれば完成してしまうほど身近なものになっています。これにより、人材育成はeラーニングとオンライン研修をメインとし、対面で行う研修は最小限にしようという動きもでてきています。
学習者側の感覚の変化も、eラーニングの活用に大きな影響を与えています。
多くの人が手が空いた時間に、YouTubeやTikTokをはじめとする動画を視聴するようになりました。これにより、eラーニングを実施するときの大きな障害とされていた、ITリテラシーの問題がなくなりました。
また、動画を見て知識を増やすという感覚が多くの人に身につき、eラーニングへの抵抗感がなくなったのも大きいでしょう。
「eラーニングの教材」と言うと動画コンテンツをイメージする人が多いかもしれません。しかし、実際にはさまざまなタイプに分かれます。代表的なものを紹介しましょう。
表示するデバイスに関係なく、同じ構造の文章を表示させるPDFは、eラーニングでも多く使われています。
PDFを利用する最大のメリットは、画面に表示されているものと全く同じものを手元資料として配布できること。PDF化するファイルはワードやエクセルなどで作成することが多く、日常的に使用しているファイルをPDF化し、説明を加えればよいと言う教える側の手間さもメリットです。
プレゼンテーションソフトとして知られるパワーポイントで作成した資料を、eラーニングで活用することも多くなっています。
パワーポイントは社会人の多くがパソコンに入っているので、動画などと比較すると作る難易度が低いことが特徴です。写真やイラストなどの図表を表示させやすく、必要に応じて「アニメーション機能」を使うことで、前述のPDFよりも単調な画面にならないため受講者が飽きにくく、かつポイントを伝えやすいという特徴があります。
パワーポイントをベースにeラーニングコンテンツを作成する場合、他のソフトを使わなくても、「画面録画」機能を使えば、ナレーション等を録音しながらコンテンツ化できるのも魅力です。
動画は最もイメージしやすいコンテンツでしょう。動画を使うメリットは以下です。
①学習コンテンツに講師の映像を加えることで、立体感、臨場感を出すことができる。
②文字やイラストでは伝えにくい内容を容易に伝えることができる。
③集合ベースの研修内容を時間と費用をかけずにeラーニング化することができる
(引用:日本イーラーニングコンソシアム編「eラーニング導入ガイド」東京電機大学出版局)
動画は「撮影が大変そう」と感じるかもしれませんが、すでにある動画の業務マニュアルをそのまま、あるいは加工をしてeラーニングのコンテンツにすることができます。
また、何かのセミナーを行ったとき、その様子を撮影し、編集を加えて公開することもできます。手間と時間がかかりそうな動画コンテンツですが、工夫次第で簡単に増やすことが可能です。
eラーニングのコンテンツは、ある程度の数がないと習慣化させることができません。こう考えると大きな負担になりそうですが、コンテンツを用意する方法はいくつもあります。用途に応じて最適なものを選ぶようにしてください。
自社制作の最大の魅力は、業務に沿った内容を非常にスピーディに公開できること。また修正が必要な場合、速やかに訂正して再公開できることです(詳細は後述)。
自社内で制作する場合、コンテンツ設計をする人に加え、撮影や編集のスキルを持った人材が必要となります。最近は動画をプライベートで公開している人も多く、意外と近くに人材が眠っているかもしれません。
クオリティの高さを求めたり、多くの教材を一気に制作するときに有効なのが外部委託です。学習の効果を上げるには、画面上での見せ方やナレーターの説明の仕方なども重要ですが、プロに委託すればそれらの問題は解決します。より正確に伝えたい内容のものは、外部委託を活用すべき部分です。
専門の業者であれば、コンテンツの企画についてもアドバイスがもらえるなど、メリットが多くあります。コストは自社制作に比べると上がりますが、クオリティを考えると納得できる部分も多く、用途に合わせて使い分けるとより効果的な従業員教育ができます。
eラーニングが普及するとともに、教材を販売する業者が増えてきました。これらを購入する方法もあります。
企業独自の内容を教材としたい場合は、内製もしくは外部委託がおすすめですが、ビジネスマナーやロジカルシンキングなどの一般的な内容は、企業が提供しているコンテンツでまかなうことも多くあります。例えば新入社員に社会人としてのマナーや名刺の渡し方、あいさつの仕方、心構えを教えるのは、どの企業も共通の部分でしょう。これらは提供コンテンツで、独自の内容は内製化、といったように、作成するコンテンツを絞るのも、担当者の負担を減らすという意味では重要なことです。
(コンテンツを)購入の場合でも、一括購入だけでなく、コース利用者数に応じて費用を支払う契約方式など、ベンダーによって様々な契約方式があります。(引用:日本イーラーニングコンソシアム編「eラーニング導入ガイド」東京電機大学出版局)
費用に関してはさまざまな設定がありますので、用途に合わせた利用法を検討することをおすすめします。
次に自社内でeラーニングコンテンツを制作するメリットについて深掘りしていきます。
以前から、従業員教育を積極的に行っている大企業は、社内に制作チームをもっているところがありました。しかし最近は、コンテンツ制作が簡単になり、中小企業でも積極的に自社で制作するところが増えています。
その背景には、これまで研修を中心に人材育成を行ってきた企業が、eラーニングとオンライン研修に移行したとき、自社制作がベストだと感じたことなどがあります。
eラーニングのコンテンツ作成には、さまざまなノウハウやスキルが必要となります。これらはコンテンツ制作にしか使えないわけではありません。例えば、プレゼンで効果的な資料を作成したり、全社員に向けた方針を動画で作成するなど、多くのシーンに流用できるものです。また、企画作りや管理に関しても、流用が可能です。
このため企業によっては、eラーニングコンテンツ作成チームを自社内に設け、プラン設計から制作、管理までを一貫して担わせているところがあるほどです。
今はそのノウハウがないと言う場合、外部の手を借りて制作しながらノウハウを蓄積し、徐々に社内で作成できるようにするとよいでしょう。
情報は鮮度が命とも言われます。その傾向は最近、特に顕著になっており、できるだけ多くの正しい情報を従業員に発信することが重要になっています。
eラーニングのコンテンツとして配信されているものに修正箇所が出た場合、外部委託のものであれば、修正依頼を依頼し、修正をしてもらって確認し、再公開となります。しかし自社で制作していればスピーディに対応できるため、修正箇所を当日中、または数時間で修正し、再配信することも可能です。
自社制作の最大の魅力はコストが安いことかもしれません。eラーニングを効果的に行うには、学びを習慣化する必要があり、この環境を作るにはかなりの量のコンテンツを揃える必要があります。
これを すべて外部委託で賄おうとすれば費用は膨大になり、あきらめたり、中途半端な状態で放置される可能性もあります。その点、自社内で制作すれば人件費負担のみで作成ができます。
eラーニング教材を自社で制作する(内製する)場合、思いついたものから手を付けていくのでは非効率で、かかった負担と研修の充実度が比例しない場合が多いです。そうならないために、以下の手順に沿って制作するとよいでしょう。
組織にはさまざまなレベルの人がいます。もちろん全ての人に知っておいてもらいたいもの。例えば、社長の訓示のようなものもありますが、多くのeラーニングは、各レベルによって伝えることや伝え方が違うはずです。
そのため学習効果の高いeラーニングを実施するには、どのレベルの人を対象にするのかを最初に決める必要があります。
また同時に、どのような目的でeラーニングを受講させるのかも考えなければなりません。この2つを考えることで、どのようなコンテンツを作成する必要があるのかが決まります。
コンテンツの種類について、「eラーニング導入ガイド」によれば以下のように分類がされています。
コンテンツの種類 |
特徴 |
コース団体受講型
|
希望者あるいは所定のグループを対象に、自由に学習することを認める方法。 短期間で一斉に学習を完了することにより、業務の遂行をスピードアップできる。 |
テーマ限定一斉学習型 |
対象者全員が一定の期間までに、一斉に学習することを義務付ける方法。 期間を限定することにより、業務の遂行をスピードアップできる。 |
資格認定コース型 |
資格取得のために必要な学習。 通学に比べて時間やコストが削減されるメリットがある。 |
集合教育と連動型 (ブレンディッドラーニング) |
集合教育の一部をeラーニング化することで、時間とコストの短縮を図る方法。 知識部分をeラーニングで学び、集合教育でインタラクティブな研修を体験し理解を深める。 |
人事制度連携型/コンピテンシーマネジメント |
目標管理制度と組み合わせて能力開発を進める方法。 上司が人事評価し、弱みを改善するためにeラーニングを利用する。 |
パフォーマンスサポート型 |
業務上で必要な知識や情報を就業中に調べたり学んだりする方法。 テーマに即してコースを選び、必要な部分だけを短時間で学習するスタイル。 豊富なコンテンツが必要で、eラーニングのコースを学習に使うのではなく道具として使いこなすことが目的となる。 |
(参考:日本イーラーニングコンソシアム編「eラーニング導入ガイド」東京電機大学出版局)
目的によって作成するコンテンツのタイプが違ってきます。まずは、どのタイプを作成するのかを決めることが重要です。
eラーニングを活用する目的が決まったら、具体的なコンテンツの洗い出しをします。
どのタイプの教育を行うかによってコンテンツの数も違ってくるでしょうし、一つ一つの長さも変わってくるはずです。
「集合教育と連動型」なら、集合教育を実施する講師と連動してコンテンツを出さなければ意味がありません。「パフォーマンスサポート型」を選ぶなら、eラーニングコンテンツと実務は距離が近いものとなり、短いコンテンツをたくさん用意する必要があります。
撮影を伴う場合、どのようなシーンを、どの角度から撮るのかを明確にする必要があります。
例えば、機器の取り扱いを撮影する場合、最初に必要なのは機器の全体像ですが、作業シーンでは手元や細部を見せる必要がでてきます。よくある誤解は、「作業者の目線からの映像があればよい」と言うものですが、機器によっては普段は見られない構造まで見せることで、より理解が深まることもあります。また、手元をアップにすることで、力の入れ具合や角度といった、より具体的なことが伝わりやすくなります。
何をどの角度から撮影すべきなのか、簡単なもので構わないので絵コンテに表すと撮影がスムーズに進みます。
さらに言えば、撮影の順番と、実際の動画の順番は違うことがほとんどです。絵コンテを作成してカット割りをすることで、全体像、細部の映像とまとめて取ることができ、撮影もスムーズに進みます。
準備が整えば、いよいよ撮影です。
撮影する内容にもよりますが、セミナーの風景を撮って編集し公開するような場合、 後から不足するカットを取り直すことができません。カメラは複数台用意し、同時に撮影を進める方が賢明です。
固定カメラであれば、撮影者が常時いる必要はありません。前後に無駄なカットがあっても編集でカットできますので、開始直前に撮影をはじめるようにすると撮影時の人員を省けます。
また音声ですが、撮影と同時に録音をしたい場合、スマートフォンやビデオカメラについているマイクでは音声が悪く、聞き取りづらかったり、ノイズが入ったりします。
eラーニングでは音声のクリアさも重要なので、ピンマイク、あるいはコンデンサーマイクを使用してください。
必要な素材がすべて集まったら、編集作業に入ります。
eラーニングは自宅や休憩時間に学習する人もいるため、単調な内容では集中力が欠けてしまいます。そこで飽きさせない工夫をし、画面をしっかりと見させることが大切。また、不要なカットが多いと退屈するので注意します。
また、講義内容などを活用する場合、話している内容をテロップで見せた方が学習効果が高まることがあります。例えば、資格を取得させる目的の場合、難解な言葉や聞き慣れない言葉があり、理解が難しくなります。この場合はテロップが大いに役立つでしょう。
多くの場合、eラーニングコンテンツを活用するのは社内の人です。外部に出すものでないなら、細部にまで気を配らなくても問題ない・・・・・・とはいきません。
近年特に騒がれることが多くなった著作権。著作権とは、「著作物を保護するための権利」で、これを利用する際には許可が必要となります。ですが、具体的に何が著作物になり、侵害しないためにどうすればよいのかを知っている人は少ないものです。
eラーニングで使用されることの多い著作物は、音楽や書籍、論文、イラスト、写真、映像、地図などです。
文化庁によれば、 著作権者に許諾などが必要かどうかは以下の手順にしたがって調べるようにと書かれています。
(参照元:文化庁 著作物の正しい利用方法 )
例えば、外部講師に講義を依頼した場合、それを撮影してeラーニングコンテンツとして配信したいとします。講演やセミナーなどで話した内容は、原則として著作物であるため、「会社がお金を払って講義を依頼したのだから、勝手に社内配布しても問題はない」と考えるのは間違っています。
この場合、許諾するのは講師となるため、事前に「eラーニングコンテンツとして配信するつもりだが問題はないか」と確認をとるべきでしょう。また、講義の中で許諾が必要な資料や論文を使用していないかも確認するようにしてください。
学習者を明確に設定していない場合、結果として誰の役にも立たないというものになる可能性もでてきます。
たとえば新入社員と入社5年目の社員では、ベースとなっている知識が違います。新入社員であれば何を説明するにもわかりやすい言葉を使い、専門用語を使いすぎないことが大切です。専門用語を使う場合、それが何を指し示すことなのかを説明する必要があります。
しかし、入社5年目の人に伝えるのであれば、単語の説明をいちいち挟んだのではコンテンツの時間が長くなるうえ、 肝心の知りたい内容が説明されるまでに時間がかかり、頭に入らなくなります。学習者にとって、すでに保有している知識を再度学ばされるのはストレスであり、モチベーションも下がるのです。
学習の到達点を明らかにするためには、対象ユーザーを明確にすることが欠かせません。この点は見失いがちな点なので、特に注意してください。
何かを伝えるとき、または何かを教えようとするとき、共有する方法を間違っていては正しく伝わりません。適切な方法を選択しないと誤解をされたり、無駄な時間を取らせてしまったりします。
例えば、動画であれば簡単に伝えられることを、文章で伝えようとすると時間がかかりますし、正しく伝わらないこともあります。逆に資料に沿って学習を進める場合は、PDFやパワーポイントで資料を見せると伝わりやすくなります。
また、講義を受けた後、グループディスカッションをする必要がある場合、全てをeラーニングで行うことは不可能です。なぜなら、ディスカッションができないからです。
この場合、最初の講義の部分を、事前にeラーニングで勉強してもらった上で、学習者を集めてディスカッションを行えば、短時間で目標を達成できます。
コンテンツは、作りさえすれば一定の結果が得られるわけではありません。よく活用され、効果が得られるコンテンツにはいくつかの共通点があります。
直感的に伝わるコンテンツは効果が高いです。直感的に伝わるコンテンツを作る最大のポイントは、見せ方です。
例えば、PDFで資料を映し出す場合、どれも同じ文字サイズと色で書かれていれば、どこがポイントか分かりません。中にはメモをとっている間に、どの部分の話をしているのかすら分からなくなることもあります。このような状態では集中力が途切れ、思ったような学習効果は得られません。
では、どうすればよいのかと言えば、資料を使う場合なら、必要なことが必要なタイミングで画面上に現れるようにすれば問題はクリアされます。もちろん、文字の色を変えたり、大きさを変えることも効果的です。これはプレゼンをするときの資料やサイト作りに似ています。
学校の勉強であれば点数や偏差値が上がることで、「学習効果が上がった」と判断できます。しかし、仕事に関するものはゴールが抽象的なことも多く、判断が難しくなります。
それでも、「理解できなかったことが、理解できるようになった」「スムーズに行えなかった作業が、問題なくできるようになった」など、実感できる効果はモチベーションにつながります。
また同時に、学習者の成長は作業効率の向上などに直結し、企業側にとっても必要なことです。
その工夫のひとつが、長くeラーニングを受けてやっと効果が現れるものではなく、短めのコンテンツを見ることで、すぐに理解できるものをたくさん作ることかもしれません。1時間のコンテンツがあるならば、15分ごと4本のコンテンツにし、ひとつ見れば理解が進んだ実感につながるもの相応しいと言えます。
更新性が高いコンテンツは効果を上げやすいです。なぜなら受講者の反応を受けて作り直したり、最新情報を反映したりといったことが容易にできるからです。eラーニング導入ガイドにも以下の記載があります。
eラーニングのコースは、定期的な更新が必要です。陳腐化したコースでは、学習者の学習意欲がわかないだけでなく人生や法令などとの差異が生じてしまい、学習目的を達成できないことにもなりかねません。
(引用:日本イーラーニングコンソシアム編「eラーニング導入ガイド」東京電機大学出版局)
コンテンツを更新するのは手間がかかる作業ではありますが、その手間を惜しんだために学習意欲が低下したのでは意味がありません。こうなると、eラーニングのシステム構築に関わったコストの全てが無駄になってしまいます。
しっかりと手間とコストをかけ、更新作業をし続けてください。
通常の集合教育でも欠かせないと言われる講師の魅力。もごもごと話す講師やだらだらと話が長い講師よりも、ハキハキとわかりやすく簡潔に話す講師や聞いていて面白い講師の方が、受講者の興味を誘います。これはeラーニングでも同じです。特に動画の場合、講師が抑揚のある話し方をしたり、身振り手振りをしたり、表情を作ったりすることが大切です。
講師として慣れた人でも、カメラを意識するあまり目線が泳いでいるケースがありますので、注意したいところです。
また、ナレーションのように話す場合でも、棒読みでは学習者が退屈してしまいます。レコーディングスタジオなどを借りる必要なく、会議室のような静かな場所で、適切なマイクの選択をすれば音入れはできます。肝心なのは話し方。 テレビのニュースなどを見て、声の強弱の付け方などを勉強するのも有効です。
アメリカでは経営革新や企業力強化のための武器としてeラーニングを導入しているケースが多くみられます。このような企業においては、eラーニングは教育手段というよりも経営戦略推進のツールと位置付けられます。業務推進に必要な知識やスキル、情報をeラーニングによって日常的に学習し、業績向上に結びつけようとする経営姿勢です。組織内では日々の学習が奨励され、学んだことを業務に反映することが重視されます。
(参考:日本イーラーニングコンソシアム編「eラーニング導入ガイド」東京電機大学出版局)
どんなにレベルの高いeラーニングコンテンツを使っても、企業内にそれを活用しようという雰囲気がなければ見る人は限定的になるでしょう。
例えば 、「eラーニングをやるのは新人だけ」となると、eラーニングを使って知識を深めたいと思う人が使いにくくなります。なぜなら、「新人と同じレベル」と思われるのを嫌うからです。
eラーニングは何かを学びたいときに使うだけでなく、業績向上のために社長が全社員に訓示を述べるとか、年度の初めに目標を話し全員に浸透させるなど、活用方法はさまざまあります。eラーニングが浸透すれば、業績向上や生産性の向上がしやすい体制を作れます。まずは、それに叶うコンテンツ作りを進めてください。
eラーニングのコンテンツは、作ったらそれで終わりというものではありません。制作が終わって、やっとスタート地点に立ったようなもの。次はどう浸透させ、学習効果を上げるかのステップに進みます。
最近のEラーニングで使われているLMS(学習管理システム)の多くは受講状況進捗が可視化されており、事務局側には皆さんの進捗状況が見られていると思っておいた方がいいでしょう。
(引用:HRインスティテュート著「図解 オンライン研修入門」ディスカヴァー)
eラーニングの効果を上げるには、効果測定を行うことが重要となります。効果測定とは、誰が、いつ、どの学習をし、その効果があったかを知ることです。
また、このシステムを構築することは、学習者自身が自分の受講状況を把握し、次の学習に進みやすくなります。
他にも、eラーニングの進度を人事考課に加えるなど、さまざまな利用方法があります。eラーニングが単独で存在するのではなく、人材育成の柱のひとつになるのが理想であり、そのためには効果測定が欠かせない存在となります。
コンテンツを更新する重要性は前述しましたが、全てを作り変えなければならないというわけではありません。
自社内で制作している場合、変更があった点だけを作り変えることもできますし、何本もあるシリーズの中から変更のあったものだけを作り変えるという方法もあります。またナレーションを入れるのが大変であれば、文字情報だけで変更を伝えることもできます。
どのような方法で更新を行うにしても、受講者がその更新に気づけるということが第一ではあるものの、できるだけスピーディかつ運用担当者の負担が少ない方法で変更できるような体制をとることが望ましいです。
更新するべき事柄は、日常的に使う人たちの方が気づきやすい傾向があります。学習管理システムに問い合わせフォームを設置し、変更依頼や確認依頼をしやすくする工夫も重要です。
eラーニングの効果が認められれば、さらにコンテンツの充実を図っていけます。一般的には、アルバイトや経験の浅い社員向けのものから作成をはじめますが、効果があれば、中堅レベルや専門的なものにも広めていけます。
特に最近は、10代後半から20代前半のZ世代と呼ばれる世代を中心に、動画から情報を得る習慣が身に付いている人が増えています。またeラーニングの作成ノウハウは、情報をスピーディに伝える有効な手段ですので、コンテンツのこまめな更新を実施し、学習効果を上げてください。Z世代に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、よければご覧ください。
■参考記事はこちら
Z世代とは何歳から?特徴やこれまでの世代との違い、効果的な研修方法についてわかりやすく解説!
eラーニングは今や 従業員教育に欠かせないツールとなっています。IT技術が進化し、文字情報をメインにするにしても、動画を活用するにしても、作成者は簡便に作成でき、学習者はどこでも気軽に学べるようになりました。
最近は、社内でコンテンツを作成するところが増えています。これまで、動画を作成したことがない人には雲をつかむような話かもしれませんが、もしかすると若い世代の中に、すでに動画を公開している人がいるかもしれません。そういった方と、コンテンツ構築のノウハウに優れた人を組み合わせることで、すばらしい化学反応がうまれる可能性もあります。
これからもますます注目を集めるであろう e ラーニング。テレワークが広がったことで、手持ち無沙汰な時間も増えたとも言われています。その時間を活用し、企業の生産性を上げる方向に持っていくのはいかがでしょうか。