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残業を減らす方法とは?残業が減らない理由や減らすことによるメリットも紹介

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Jun 16, 2023 2:50:42 AM

2020年4月から大企業だけでなく中小企業にも「罰則付きの時間外労働の上限規制」が始まりました。残業は人件費の増大につながり、従業員の集中力の低下や体調不良、生産性の低下を招くこともあり、できるだけ残業時間を減らし業務時間内に業務を遂行できるよう企業意識が高まっています。

一方で、人手不足などから思ったように残業の削減ができていない企業があるのも実情です。そこで当記事では、残業が減らない理由を紹介し、残業を減らすための方法と成功した企業事例を紹介します。部下の残業の多さに悩む管理者も、社内の残業削減に取り組む人事担当者も、ぜひ参考にして課題解決の糸口にされてください。

 

平均残業時間と企業意識

厚生労働省では、賃金や労働時間、雇用の変動を明らかにすることを目的に「毎月勤労統計調査」を実施しています。令和5年2月分の結果を見ると、月間の所定外労働時間の平均は、一般労働者で「13.7時間/月」です。所定外労働時間とは、就業規則による労働時間を超過した時間のことです。

一般に残業というと、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働を指しますので、厳密には所定外労働時間とイコールではありませんが、残業が常態化している企業の担当者からすると、13.7時間/月という数字は、「意外に少ない」と感じるかもしれません。

そこで別の調査結果も見てみましょう。パーソルキャリア株式会社が令和5年1月に公開した平均残業時間の調査によると、平均残業時間は「22.2時間/月」でした。また平均残業時間の多い上位20職種の平均は「29.3時間/月」、少ない上位20職種の平均は「15.0時間/月」で、約2倍の差があります。

ちなみに残業が最も多かった職種は「プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連)」と「ビジネスコンサルタント」で「37.1時間/月」でした。そして時間外労働の上限、月45時間を超えている人の割合は全体の12.9%です。つまり現状としては、残業時間は企業により偏りが大きいとお考えいただくのがいいでしょう。

引用:「平均残業時間の調査(パーソルキャリア株式会社)」

残業時間は企業により偏りはあるものの、2018年に働き方改革の関連法が成立し、2019年から大企業、2020年から中小企業に施行され、企業の意識が変わってきているのは事実です。オープンワーク株式会社の調査レポート「OpenWork残業と有給 10年の変化」によると、10年前の2013年の平均残業時間は現在の上限値である45時間/月を超える46時間/月でした。そして2018年から2021年の4年間で月間平均残業時間が4時間減少したという結果が出ています。

 

引用:「OpenWork残業と有給 10年の変化

また、タイムクラウド株式会社が中小企業(従業員数50名~300名)の経営者100名に対して2023年2月に行った『経営者の「残業」に対する意識調査』では72%が従業員の残業時間の削減に意欲的だという結果も出ています。

引用:『経営者の「残業」に対する意識調査

2023年4月からは、60時間/月を超える時間外労働の法定割増賃金率が50%以上に引き上げられたこともあり、引き続き残業に対する企業意識は高い状態が続くものと思われます。

 

従業員や部下の残業が企業にもたらす影響

働き方改革実現会議で残業時間の上限規制に関する議論が始まったのは、長時間労働をきっかけとした過労死が後を絶たないからでした。今では誰もが長時間労働が好ましくないことはご存じでしょう。

ここでは、改めて従業員や部下の残業が企業にもたらす影響について3つご紹介します。

 

人件費の増大

企業は当然のことながら残業が発生すれば、その分の費用を支払わなければいけないため、単純に残業が増えればそれだけ人件費の負担が増えます。残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があり、法定外残業に関しては25%以上の割増賃金の支払いが必要です。そして月の労働時間が60時間を超えた場合は50%以上の割増賃金を支払わなければいけません。これは法律で決まっています。

【法定内残業】

会社で規定された所定労働時間は超過しているものの、法定労働時間(1日8時間かつ1週間で40時間未満まで)の範囲で働いた時間のこと。

【法定外残業】

法定労働時間を超えて働いた残業時間のこと。

残業が常態化している企業にとっては、決して少なくない額ですね。

 

社会的信用の失墜による株価低下や採用難のリスク

人件費の増大以上に影響が大きいのが、長時間労働が日常化している企業というレッテルを貼られてしまうリスクです。残業代を支払わない「サービス残業」が常態化している企業はもちろんのこと、長時間労働が当たり前の会社は「ブラック企業」と呼ばれ、非難の的になってしまうことも……。

社会的な信用を失墜すると、株価が下がったり、不買運動が起きたりして、業績悪化のリスクがあります。また従業員の離職や採用難のリスクなど、会社運営に大きく支障が出る可能性があるのです。

 

生産性が上がらない

長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的な知見が得られています(厚生労働省:STOP過労死より)。心身ともに悪影響を及ぼす長時間労働が常態化していれば、従業員は集中力が落ち、モチベーションも下がるため、生産性が落ちるでしょう。

会社としても、残業を前提として業務を組み立て、スケジュールを決めることが当たり前になってしまうと、作業効率をあげて、生産性を上げようと工夫することすらしなくなってしまうリスクがあります。これでは生産性は上がりませんね。

 

残業が減らない理由

人件費が増え、社会的な信用を失墜する可能性がある残業は、リスクでしかないはずなのに、残業が減らない企業があるのは、なぜなのでしょうか?残業が減らない理由をみていきましょう。

 

業務量に対して人員が不足!採用難と業務の繁閑差が大きいため

厚生労働省が発表している「平成28年版過労死等防止対策白書 第1章第2節」によると、企業向けの調査で、所定外労働が必要となる理由として以下を挙げる企業が多いです。

  • 顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため
  • 業務量が多いため
  • 仕事の繁閑の差が大きいため
  • 人員が不足しているため

引用:「平成28年版過労死等防止対策白書 第1章第2節

一方で、労働者(正社員(フルタイム))調査では、所定外労働が必要となる理由として多かったのが以下の項目です。

  • 人員が足りないため(仕事量が多いため)
  • 予定外の仕事が突発的に発生するため
  • 業務の繁閑が激しいため

引用:「平成28年版過労死等防止対策白書 第1章第2節

この調査結果より、企業側も労働者側も、残業が発生する理由として、業務量に対して人員が不足している、つまり担当するスタッフに対して業務量が多いため慢性的な残業につながっている可能性が高いことが分かります。

背景には、少子化に伴う働き手不足が深刻化している現状があり、正社員の募集をしても応募が集まらないといったこともあるでしょう。そして、もう一つ着目したいのが企業向けの調査で多かった「業務の繁閑が激しいため」という理由です。繁忙期の業務量にあわせて人を採用すると、労働契約法では容易に人を解雇することができないため、閑散期に人件費の負担が大きくなり経営が厳しくなってしまうのです。

業務量に対する人員不足により発生している時間外労働は、従業員個人の努力だけで減らすのには限界がある場合がほとんどです。残業を減らすための方法については、後述します。

 

作業効率が上がらない!人員配置が適切でないため

株式会社大塚商会が平成30年に企業の総務・労務担当者に行ったアンケート調査によると、残業が減らない理由として最も多かったのが「人員配置が適切でなく、時間単位の作業効率が上がらない」という声(62.5%)でした。

引用:「大塚商会によるアンケート調査

さらに作業効率が上がらない理由について深く尋ねたところ、「仕事量が社員の能力を超えているから」が83.3%と最も多くなっており、次いで「仕事の能力・特性を活かせていない」が41.7%でした。

引用:「大塚商会によるアンケート調査

作業効率が上がらない原因は、従業員個々のスキルが課題になっているケースもあれば、会社の仕組みや体制が課題になっているケースもあります。

終身雇用や年功序列が前提だった日本では、これまで「メンバーシップ型雇用」が主流でした。メンバーシップ型雇用とは、仕事内容や勤務地、勤務時間などを限定せず、会社にマッチする人を採用し、会社主導での部署異動や転勤、ジョブローテーションを繰り返しながら長期的に人材を育成します。

このため数年単位で仕事内容が変わるケースもあり、幅広く業務を担うことができるゼネラリストが求められる傾向がありました。これは高い専門性を持つ人材が不足してしまうことを意味し、結果として、生産性の低下につながる可能性があるのです。

日本企業の多くは、従業員同士が協力してチームで仕事をしています。これは必ずしも悪いことではありませんが、個人のやるべきことが曖昧になりがちで、スキルの高い特定の人に仕事が偏ったり、他の人の仕事が割り込むことで効率が落ちたり、適切なマネジメントができないことによる作業の無駄が発生したりといった側面もあるのです。

 

残業が評価につながるから

もともと日本では長時間労働を行うことで生産性の低さを補っていた側面があり、「残業をする社員は頑張っている」と評価される傾向がありました。このため、現在もなお残業を評価する組織が残っているのです。

また残業が減れば、それだけ給与が減ってしまうため、基本給が低く抑えられている場合は特に残業代がほしいという理由で時間外労働が減らないといった背景もあります。

こうした組織だと残業を改善する意識が低く、部下は仕事が終わっても先に帰ることに罪悪感があるため、残業が減らないということになってしまいます。

 

残業を減らすことによるメリット

前述した通り、残業は人件費の増大につながったり、社会的信用の失墜による株価低下や採用難のリスクがあったり、生産性が上がらない要因になったり、企業にとって悪影響を及ぼします。また健康のためにもよくありません。

不必要な残業を減らすことで、従業員には余裕が生まれ、企業にとっては経費の削減につながります。つまり労使双方にメリットがあるということです。ここでは残業を減らすメリットについて5つご紹介します。

 

ワークライフバランスが保てることによる離職率の低下、モチベーションアップ

残業が減ることで、プライベートな時間が増え、家族や友人と過ごしたり、趣味の時間ができたりと健全なワークライフバランスを保てます。また資格の勉強をするなどスキルアップのための時間も確保できますね。

そして育児や介護との両立が可能になり離職率の低下につながります。

また残業が多く仕事漬けだと、どうしても会社への不満が募りますが、ワークライフバランスが保てることで、従業員のモチベーションアップにつながります。

 

心身の健康維持につながる

前述した通り長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因であると考えられています。つまり残業が減れば心身の負担が減り、過労死や病気、鬱病などの精神疾患の発症を抑えられるのです。企業側から見ると、労災につながる可能性を減らせます。

残業時間の削減は、従業員の心身の健康維持の観点からもメリットが大きいと言えるでしょう。

 

従業員満足度(ES)の向上につながる

人材確保や社員のモチベーション向上、生産性アップ、離職率の低下などが期待できると言われる従業員満足度(EX)。この従業員満足度の向上に欠かせないのが「魅力ある職場づくり」です。従業員満足度には、やりがいのある仕事や報酬・処遇・福利厚生、良い人間関係、充実した私生活などが大きく影響します。

これらを改善するために欠かせないのが残業時間の削減です。残業が減ることで余裕が生まれ、良い人間関係を構築しやすくなりますし、私生活も充実します。

 

社会的な信用が上がる

現在は、社会全体が残業を減らし働きやすい環境を求める傾向があり、残業を減らし働きやすい会社となることで会社のイメージアップにつながります。「ホワイト企業」と呼ばれることで、社会的な信用が得られ、顧客との良好な関係を築きやすくなったり、求人への応募が増えたりと会社にとってメリットは大きいでしょう。

生産性の向上

残業を減らすためには、業務量を減らす取り組みが欠かせません。そのために必要になってくるのが業務内容の明確化です。そして、そのうえで無駄な業務の整理や効率化、体制の検討などを行います。

残業を減らす取り組みを通して、やるべき業務の優先順位が明確になり、従業員は就業時間内に業務を終わらせられるよう意識が変わるでしょう。

 

残業を減らすための方法

残業時間を減らすための方法をご紹介します。企業に合う方法を複数組み合わせることでより効果を期待できます。

  • ノー残業デーの導入など勤務時間を制度面から改革
  • 残業の把握と労働時間の管理
  • 残業の事前申請制度の導入
  • 人事評価制度の見直し
  • トップダウンの取り組み
  • 社内業務の改善・業務改革
  • 顧客への働きかけ
  • 業務の平準化
  • 従業員教育の強化
  • 外注・フリーランスの活用

 

ノー残業デーの導入など勤務時間を制度面から改革

仕事量はそこまで多くないのに、残業が日常的に行われているような職場で効果的なのが勤務時間を制度面から改革することです。次のような取り組みがよく知られています。

■ノー残業デー・ノー残業ウィーク

週に1回程度、残業しないで定時に退社する日を決めるのが「ノー残業デー」です。書籍「残業時間削減の進め方と労働時間管理(萩原 勝・著)」によると、ノー残業制度を定着させるには「当日の残業は、特別の事情がない限り原則として容認しない」という姿勢を取るのが良いと言います。

ノー残業ウィークは、毎月、残業しないで定時に退社する週を設ける制度です。前述の書籍によると、定時に退社することをためらう者がいる雰囲気が形成されているような職場で、「働くときは働き、休むときは休む」という空気を形成するのに効果的だという意見があるそうです。

一律に曜日や週を決めるのが難しい場合は、各自が決めてそれを全員で共有するというのも良いでしょう。

■1か月変形労働時間制・1年変形労働時間制

1か月変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になる制度です。仕事が忙しい日は長く働き、仕事が忙しくないときは労働時間を短くして、全体でバランスを取れるのが良さ。1か月の中で特定の時期に仕事が集中するような職場に向いています。

1年変形労働時間制は、変形期間を1年以内として、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定することで年間の総労働時間の短縮を図るための制度です。労使協定の締結や届出などが必要ですが、仕事の繁閑の差が大きい場合は選択肢の一つでしょう。

参考:週40時間労働制の実現 1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制(厚生労働省)

■フレックスタイム制

労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができる柔軟な勤務時間制度が「フレックスタイム制」です。ただ、フレキシブルタイムを定めるにしても完全に自由としてしまうと、情報交換の時間などが作りにくいため、多くの企業では「コアタイム(必ず勤務しなければいけない時間帯)」を定めています。就業規則等への規定や労使協定の締結が必要ですので、導入する場合は時間がかかりますが、閑散の差が大きい仕事の場合は一つの選択肢となるでしょう。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい開設&導入の手引き(厚生労働省)

■直行・直帰の奨励

営業職など社外での業務に従事する社員が多い企業で残業削減のために有効なのが、直行・直帰の奨励です。移動を効率化することで、残業の削減、疲労の度合いの軽減が期待できます。

 

残業の把握と労働時間の管理

残業を減らす取り組みを行う際に、必ずセットで行いたいのが残業の把握と労働時間の管理です。

例えば、今日はノー残業デーだけど、もう少し仕事をしたいから家に持ち帰ってやったり、タイムカードだけ先に押して残って仕事を続けたりといったことがあると、残業を減らす取り組みが上手くいっているのか、いないのか把握できませんね。上手くいっていると思ったら、隠れ残業が増えていた……なんてことにもなりかねません。

勤怠管理が従業員の自己申告の場合は、パソコンやスマートフォンで利用できる勤怠管理システムなどのツールを導入するのがいいでしょう。1分単位で記録できますし、出先やテレワーク中の自宅からでも、社内にいるときと同様に管理が可能です。

書籍『「残業しないチーム」と「残業だらけのチーム」の習慣』では、朝礼で退社時間と今日行う仕事の内容を自己申告することを勧めています。上司も部下も朝礼で申告することで、何時に退社しないといけないという強制力が働くのが良さです。またこれに加えて、申告時間に帰れない仕事量だとリーダーが判断すれば、他の人や別部署にサポートをお願いするなど事前に残業が発生しないよう検討できるのです。

 

残業の事前申請制度の導入

残業を減らす取り組みとして、よく知られているのが残業の事前申請制度の導入です。従業員が各自の判断で残業を行うのではなく、残業が必要な場合は毎日、申請を行い、上司による承認を得るといった取り組みです。管理職は、残業申請理由や残業内容、残業予定時間を確認し、部下が本当に残業が必要な業務なのか判断し、不要な場合は翌日以降に行うよう指導します。

こうした制度を導入することで、管理者は残業の実体を把握できるようになり、部下は優先順位をつけて業務を行えるようになるといった効果が期待できるでしょう。

 

人事評価制度の見直し

残業をしているほうが評価されやすいという社風がある場合は、人事評価制度の見直しは必須です。仕事の成果をもって評価するなど、何で評価するのか明確にし、長時間働いても評価はあがらない旨の周知を行います。

そして管理職の人事考課の項目に、部下の時間外労働の評価を組み込むのもひとつです。制度を整えることで、会社全体として残業削減に取り組みやすくなるでしょう。

また社員にとっては残業の削減は、収入の減少につながることから、「残業削減協力金」等を用意するのもおすすめです。制度設計については、書籍「残業時間削減の進め方と労働時間管理(萩原 勝・著)」が参考になるでしょう。

残業削減協力金とは?

  1. 会社として、一定の目標を明確にして残業の削減に取り組む
  2. 目標期間が経過したときに、残業の削減状況を確認する
  3. 残業が削減され、残業代の支払総額が減少したときに、その褒賞・報酬、または代償として、一定の金額を支払う

 

トップダウンの取り組み

日本ではチームで業務を行うことが多いため、残業削減を個人で行うのには限界があります。経営者が残業削減に対して強い意志を持ち推進することが重要です。強制力も必要になってきますので、トップのぶれない姿勢も大事になってくるでしょう。

ただし一方的に「残業禁止」とするのでは、当然上手くいきません。業務量を減らす「業務改革」が必要です(業務改革の詳細については、後述します)。管理職の意識改革を行い、現場を巻き込んで、この業務改革を進めます。

 

社内業務の改善・業務改革

残業を減らすためには、業務量の削減が必須です。そこで行いたいのが「業務改革」です。業務プロセス全体を見直し、職務や業務フロー、制度などの見直しを行います。現状の業務内容、それに掛かっている時間、業務フローを書き出し、課題を把握します。そして洗い出した現状や課題から、改善に向けた方針を決め、実行に移していくのです。

全社的に本格的に実施する場合は、専門家に入ってもらうことも多いため、ここで具体的なやり方までご紹介するのは難しいのですが、以下のような観点だけでも見直してみるといいでしょう。

■社内会議の見直し

書籍「AI分析でわかった トップ5%社員の時間術(越川 慎司・著)」によると、クライアント企業、総計17万人を対象に「一週間でどのようなタスクに時間をかけているか」のアンケートをとったところ、43%が稼働時間を社内会議に費やしていることが分かったそうです。そして、そのうちの37%が成果の出ない会議だったとのこと。社内会議が多いと感じている企業の場合は、社内会議の時短が実現できたときの効果が大きいでしょう。

■調べものに費やす時間の見直し

オウケイウェイヴ総研が2019年4月に発表した調査によると、一般的な会社員は1日平均1.6時間「調べもの」に時間を割いているのだそうです。調べものの時間の削減には、社内でのナレッジの共有、業務のマニュアル化などの環境・体制の整備が有効です。

 

顧客への働きかけ

顧客から終業間際に依頼があったり、顧客とのやり取りが非効率的だったりする結果、残業が発生している場合は顧客を巻き込んだ業務効率化・改善が必要です。例えば、対面の会議の一部をWeb会議にして移動時間の削減を行ったり、書類のフォーマットを統一することで内容確認の時間を削減したり、チャットツールを導入することで迅速かつ確実にコミュニケーションを行えるようにしたり、課題に感じていることを一つ一つ解決していくといいでしょう。

顧客にもメリットがある旨を伝え、Win-Winの関係を築きつつ進められるといいですね。

 

業務の平準化

ベテラン従業員しかできないといった業務の属人化が起きると、手が空いている人が手伝うこともできず、残業が発生してしまいます。このため残業の削減を考える場合は、業務の平準化は必須と言っても過言ではありません。従業員の誰がやっても同じようにパフォーマンスを発揮できるようにスキルの均一化を目指します。

業務の平準化を行うと「業務の品質が向上する」「業務の生産性が向上する」「属人化を防止できる」「部署間の連携が強化できる」といったメリットがあります。

業務の平準化のための具体的な施策としてはマニュアルの作成が効果的です。いつでも、どこでもマニュアルを閲覧できるようツールの導入とあわせて検討するといいでしょう。

詳しくは以下の記事をあわせてお読みください。

■参考記事はこちら

業務標準化とは?実施するメリット・デメリット、進め方を解説

 

従業員教育の強化

残業の削減のためには、従業員の能力開発、教育も欠かせません。社員だけでなく、パートやアルバイトスタッフに対しても必要です。知識を増やし担える業務を増やすのはもちろんのこと、仕事の優先順位の付け方や効率的な進め方、報連相の内容・タイミング、コミュニケーションの取り方など、技能面以外の向上も残業削減に有効です。

集合型の研修やOJTは、教える側の負担も大きいため、基本的な内容はeラーニングを活用するのがおすすめです。一度教材を準備すれば、繰り返し利用できたり、都合の良い時間に閲覧できたり、eラーニングは上手く活用すると企業にとっても従業員にとってもメリットがあります。

 

外注・フリーランスの活用

業務の中には、専門的な知識が必要だったり、機密性が高かったりするものもあれば、比較的単純な内容のものもあります。必ずしも正社員が行う必要がない業務は、思い切って外注先を探したり、フリーランス人材を活用したりするのも一つの選択肢です。業務の繁閑が激しい職場の場合も、外注・フリーランスの活用を検討する余地があるでしょう。

 

残業時間を減らすことに成功した企業事例

残業時間を減らすことに成功した中小企業の事例を3つご紹介します。

株式会社一ノ蔵:特定個人への業務の集中を回避」

引用:「わたしの会社の働き方改革 取組事例集

従業員のスキルアップを目指し「多能工化」と定期的なジョブローテーションを実施することで、特定個人への業務の集中を防ぎ、残業の削減に成功したのが株式会社一ノ蔵です。その他、残業の事前申請制と週1日のノー残業デーも設定。社員ファーストの視点から改革を進めています。

残業しない風土づくりの一手として、退勤時の挨拶を「お先に失礼します」から「お疲れさまです」に変更するなど、細やかな取り組みもとても参考になります。

参考:「社員ファースト」で働きやすい労働環境づくりを目指すー酒蔵伝統の人間関係を大事にする酒造会社「一ノ蔵」の場合ー

 

株式会社サタケ:段階的に残業を削減し、週休3日制を試験導入

引用:「わたしの会社の働き方改革 取組事例集

8〜10月が繁忙期となる株式会社サタケでは、業務の見直しを実施。担当業務の内容や時間など業務のワークフローも含めて、ひとつずつ洗い出し、会社全体の状況を分析したところ、平均して約3〜4割、無駄な業務や何年も見直していない業務があることが判明したそうです。そこでこれらを削減し効率化を図ったところ、2009年月平均で23.5時間だった時間外労働時間が、2019年には月平均6.8時間まで減少しました。

また一気に残業を削減して、ひずみが他で噴出しないよう段階的にノー残業デーを整備。2017年度からは7月から8月までの夏季限定で週休3日制を試験的に導入、2019年度以降は、公休数をキープした上で交代制とし、水曜休を実施するまでになっています。

社員の意識改革を行いながら、業務の効率化を進めている点などは、業種や企業規模を問わず参考になるでしょう。

参考:進取の気性で施策を打ち出す。常に一歩先の“サタケ流”改革-会社を取り巻くすべての人々を幸せにする-サタケの場合-

 

株式会社フレスタ:パソコンを18時に強制シャットダウン

18時になると業務系パソコンの電源が一斉に落ちるのが、広島を中心として、岡山、山口の計3県に61店舗の食品スーパーを展開している株式会社フレスタです。17時にパソコンの画面に社長から「今日も一日頑張ったね」というメッセージを表示し、18時にシャットダウン。「急ぎの仕事がなければ帰ってほしい」という無言のメッセージなのだそうです。

残業代を確保したい社員もいるため、残業を減らした分を報酬として賞与に上乗せする制度も導入しています。その結果、残業が1年で3割減ったと言います。

業務量を削減するために、店舗ではセルフレジや、食器洗い機を導入し、省人化を勧め、グループ内での分担を再考し、負担を平準化しています。

働きに見合ったパート社員の処遇改革や病児保育費の全額負担なども参考になります。

参考:「パソコン18時シャットダウン」残業減への秘策―食品スーパー フレスタの場合―

 

まとめ

残業を減らす方法として、制度面の改革(ノー残業デーの導入、残業の事前申請制度の導入、人事評価制度の見直し)、顧客も含めた業務改革、業務の平準化、従業員教育の強化、外注・フリーランスの活用などをご紹介しました。

当記事で紹介した成功事例の他にも厚生労働省のサイトには多くの事例が取り上げられています。どの企業もある程度の時間を掛けて、残業の削減に取り組んでいますので、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。少しの削減も塵も積もれば大きな削減となります。