研修は、社員の成長に欠かせないもの。「より効果的で有意義な研修を実施するには、どうすれば良いのか」と、日々、多くの企業が試行錯誤しています。
そこで必要となるのが、研修アンケートです。アンケートで社員の意見を聞くことにより、研修がうまくいかない原因や、改善するための対策を突き止めることができます。
本記事では、そんな研修アンケートについて詳しく解説しています。「そもそもなぜ実施すべきなのか」といった基本的なことはもちろん、作成する際のポイント、具体的な項目例などもご紹介していますので、アンケートづくりにお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
なお、すぐにアンケートを使用したいという方は以下のテンプレートをご活用ください。
研修アンケートの実施には、時間も労力も必要です。それでも行うべきと言われるのは、一体なぜなのでしょうか。研修後にアンケートを実施すべき理由は、主に4つ。詳しく見ていきましょう。
「研修」とは、社員に必要な知識・スキルを身につけてもらい、業務改善や能力向上を図るもの。業務に活用するという目的を果たすことができなければ、研修を実施する意味がありません。
そのため、研修に効果があったかどうかをチェックする必要があります。それが研修アンケートの役割です。
アンケートにて「研修によって、どのような効果があったのか」「実施して良かったのか、悪かったのか」を調べることで、研修の根本的な見直しが可能になります。今後、同様の研修を実施すべきかどうか、経営者が判断する際の指標として役立ちます。
また、研修効果を把握することで、うまくいかないときの原因追及も可能に。「業務に活用できる研修を行うには、どうすれば良いのか」という指針を定めるのに役立つのです。
研修にかかるコストを無駄にしないためにも、アンケートは実施すべきと言えるでしょう。
研修は、担当者が主体となって企画・実行するため、どうしても主催者目線に偏りがち。しかし、研修を受けて業務に活用するのは、受講者である社員です。
研修担当者が「良し」としても、受講者が不満を抱えているのなら、最良の研修を実施できたとは言えません。よって、社員の意見を聞く機会を設けること、つまりアンケートを行う必要があるのです。
また、研修の改善を試みる際も、受講者目線での意見が重要になります。改善のためにとった行動が、無駄になる可能性があるためです。
例えば、研修担当者が外部セミナーなどで「効果的な研修の実施方法」を学んだとしても、その方法が自社に合うとは限りません。ですが、予め社員の意見を把握していれば、セミナーで学んだ方法を自社に合わせて応用できます。
このように、着実かつ効率よく”社員にとって”最適な研修を実現するには、社員の反応や要望をアンケートで調査することが重要なのです。
講師の教え方も、研修の学習理解度、業務への活用に影響を及ぼす要素。どのように教えるとわかりやすいか、どのような教え方なら業務に活かしやすいのかを知るためにも、アンケートの実施が欠かせません。
社員にとって効果的な教え方を把握できれば、講師役を務める社員を指導する際に役立ちます。また、外部講師を招く際も、社員に合う教え方での依頼が可能に。
実績のある講師ほど、自分の教え方に自信を持ち、独りよがりになりやすいです。社員を無視した教育指導になる恐れがあるため、アンケートで「社員目線でわかりやすいか、実用的か」をチェックする必要があると言えます。
研修アンケートは、研修に対する評価を得るためだけでなく、受講者自身のための振り返りも兼ねています。
形式にもよりますが、内容の理解度を確認できるようなアンケートに回答してもらうことで、受講者は研修の復習ができます。「理解したつもり」の内容を改めて振り返ってもらうことにより、気づきを与えられます。
また、復習する行動自体に、記憶に残りやすくなる効果が期待できます。内容の理解度が深まれば、その分、業務に活かせる可能性が高まるので、アンケートの実施は有意義と考えられるでしょう。
研修のアンケートを作成する際、悩みの種となるのが内容の選定です。企業や研修テーマ、実施する目的によってさまざまですが、主な内容は以下の4つ。
項目例も併せてご紹介しますので、内容選びに悩んでいる方はぜひお役立てください。
研修に対する全体の評価は、テーマに関係なく記述する項目。総合的な評価を得ることで、「今後、研修を変えていくべきか」「どのように変えていくべきか」といった、その後の指針を決める際の参考になります。
具体的には、以下のような項目です。
満足度などは、「1~5段階」というような選択式での回答形式が答えやすく、適しています。より深く、具体的な意見を聞きたい場合は、記述式の回答形式も用意すると良いでしょう。
教え方が適切だったかを見極めるため、講師に関するアンケート項目も必要です。具体的には、以下のような内容を指します。
自社の社員が講師役を務める場合、受講者が周囲の目を気にして、本音で回答できない可能性があります。よって、本音を隠さず答えられる工夫が必要です。
受講者目線に立って研修を見つめ直すためには、受講者について知ることも大切。具体的には、以下のようなことを質問します。
受講者の研修に対するモチベーションが低いと、将来的に参加者が減る可能性があります。アンケートで、参加意欲が低いとわかった際は対策が必要です。
また、他の受講者の様子について聞くことで、研修担当者や講師には気づけない受講者の姿も把握できます。
例えば、非意欲的な受講者が、アンケートで「自身は意欲的に参加した」と答えた場合、研修担当者は事実に気づくことができません。事実を知っているのは他の受講者です。よって、受講者たちから互いの様子を教えてもらう必要があります。
眺めているだけではわからない情報を見落とさないよう、アンケートを活用しましょう。
研修で使われる教材やツールも、学習効果を左右する要素。改善すべきか判断するため、アンケートで受講者の意見を聞く必要があります。具体的には、以下のような内容です。
「効果的」「有益」と謳われるものでも、社員が効果的・有益と思わなければ意味がありません。教材・ツールにかかるコストを無駄にしないためにも、社員の意見を探りましょう。
研修に関するアンケートは、主に書面とオンラインの2つの方法で行われます。それぞれにメリット・デメリットがあるので、適切な手段を見極められるよう、特徴を把握しておきましょう。
研修アンケートは、書面で調査・集計する方法が一般的。研修後に受講者に記入用紙を配布し、回収する方法です。
その場で回答してもらい、すぐに回収するため、回答漏れを防止できます。また、受講者の記憶が新しいうちに回答できる、というメリットもあります。
しかし、研修の拘束時間が延びるので、受講者から嫌がられる可能性も否定できません。「面倒だ」と思われ、手を抜いて回答してしまう恐れがあります。
さらに、アナログで行う分、集計に時間がかかるというデメリットも。研修内容や規模に合わせて、手段を選ぶ必要があります。
最近では、オンラインでの研修アンケート調査・集計も定番になりつつあります。専用フォームに入力したり、フォームに記入後、メールで送信したりする方法です。基本的には、研修会場を離れて後日回収します。
オンラインでの調査・集計は、研修の拘束時間が短いことがメリット。集計もしやすく、主催者側にとって効率的です。
ただし、その場で回収できないため、回答漏れが起きやすいです。また、時間が経てば経つほど研修に関する記憶が薄れ、回答が曖昧になりがち。受講者全員が忘れずに、正確に答えられるよう工夫が必要です。
研修を着実に改善するには、受講者の率直な意見を集める必要があります。では、そのような質の高いアンケートを作成するには、どうすれば良いのでしょうか。
以下の8つのポイント・注意点について見ていきましょう。
アンケートの項目を考える際は、「何を聞きたいのか」を明確にすることが大切。目的が曖昧だと、アンケートで得た情報を活用できず、実施する意味がなくなってしまうからです。
研修の問題点を洗い出したいのか、研修効果が得られない原因を追究したいのかなど、予め目的をきちんと定めましょう。主観的な目的にならないよう、可能な限り複数人で考えるのがおすすめです。
求めている情報をきちんと得るため、受講者にわかりやすく、答えやすい質問を用意するのもポイント。受講者が「何を聞かれているのか」「どう答えれば良いのか」に悩まないよう、具体的かつシンプルな項目を意識しましょう。
また、回答形式の種類によっても、答えやすさが変わります。
例えば、満足度や理解度に関する項目では「選択式」が向いています。一方、原因や良かった点・悪かった点を聞き出したい場合は、「記述式」の方が回答しやすく適しています。
聞き出したい情報と項目の種類に合わせて、適切な回答形式を選びましょう。
アンケートに回答する受講者は、どうしても上司や担当者からの評価を気にしてしまうもの。本音を言わず、ポジティブな意見ばかりを述べたり、当たり障りのない回答を記入したりしてしまいがちです。
しかし、それでは本当に必要な情報を得られません。よって、時と場合に合わせて匿名回答を許可することも大切です。
特に、マイナス意見や不満は、研修を改善するにあたって非常に重要であり、尚且つ社員が言い出しにくい情報。それらを聞き逃さないよう、匿名回答の許可も検討してみましょう。
研修アンケートは、基本的に参加者にとっては面倒なもの。それでも、より実用的で質の高い研修を実現するためには必要なので、回答者の関心を引く工夫を凝らす必要があります。
『アンケート調査の技術』という書籍の中で、著者の山下長幸氏(以下山下氏)は以下の方法を紹介しています。
回答者の悩みや関心を引く設問を冒頭に配置するようにしています。現状把握質問や回答者の基本属性把握質問など回答者にとって退屈な質問は最後のほうに配置します。
引用:「山下長幸(2014)『アンケート調査の技術』」
山下氏が述べているように、受講者が研修担当者に最も強く伝えたい内容を引き出す項目を、冒頭に置くのがポイントです。「どこがわかりにくかったか」「欲しかったけれど得られなかった情報は何か」などのような、悩みを引き出す項目が該当します。
受講者はアンケートが「退屈だ」と思うと、いい加減に答えてしまう可能性があるので、項目の順番にも配慮しましょう。
社員がアンケートに対し、非意欲的になる原因のひとつに「回答しても意味がない」という考えがあります。せっかく答えたのに何も変わらない、何も改善されないとわかれば、答えるのが面倒になってしまうのです。
よって、アンケートには、実現可能な範囲での項目を記載するようにします。
例えば、社内で行われる研修について聞く場合、研修場所や環境について質問しても、意見を反映できません。外部施設を利用する予定があるなら問題ないですが、そうでない場合は、社内で研修場所・環境を大幅に変更することは難しいです。
その結果、受講者に「回答したのに改善してくれない」と思われてしまいます。最終的に、アンケートに回答する意欲を削ぐこととなるため、実現できる範囲で質問することが大切です。
研修アンケートは、主に書面やオンラインで行なわれますが、どちらの手段を選ぶかによって答えやすさが変わります。それぞれにメリット、デメリットがあるため、適切に見極めることが大切です。
例えば、新入社員向けの研修では、書面によるアンケートがおすすめ。なぜなら、新人研修は内容がボリューミーになることが多く、時間が経てば経つほど忘れやすいからです。また、アンケートに関する質疑応答もその場で可能なので、新人も安心できます。
一方、遠方から参加する社員が多い研修では、拘束時間を短縮できる、オンラインでのアンケートがおすすめです。アンケートに答えることにマイナスな印象を持たれないよう、手段も選びましょう。
アンケートの回答形式には記述式と選択式がありますが、両方用意することで、より深く調査できます。
まず選択式は、5段階評価、7段階評価といった点数で答えてもらう形式で、評価を数値化できるのがメリット。良い・悪いをわかりやすく把握でき、かつ、研修改善に活かす際の指標としても活用できます。
そして記述式は、個人が自由に回答できる項目。集計しにくいというデメリットはあるものの、回答者のリアルな意見を聞ける利点があります。アンケートの評価が悪い場合の原因を特定する際に役立つでしょう。
加えて、記述式には「社員の要望やアイデアを拾える」というメリットも。研修担当者が思いつかないような、新たな発想が生まれる可能性を秘めているのです。
よって、アンケートには記述式と選択式の両方を取り入れることが推奨されます。
受講者の本音をすべて聞き出し、必要な情報を十分に得るアンケートを実現するのは、容易ではありません。たとえ一度成功したとしても、研修テーマや参加者が変われば失敗する可能性があります。
そのため、常に振り返りと改善を徹底することが大切です。アンケートの内容や手段、記入形式は適切だったかなどを客観的に見て、改善することにより、理想に近づけます。
より着実に研修を改善するため、アンケートのPDCAサイクルを回しましょう。
研修アンケートの具体的なイメージを掴むため、ここでいくつかテンプレートをご紹介します。フォームの作成に迷っている方は、ぜひお役立てください。
見やすさを重視し、シンプルなデザインで作成するのがポイント。また、カラーを取り入れて作成すると、回答者が退屈するのを防げます。ただし、色の種類が多いと見にくくなるため、1~2色、多くても3色までに絞りましょう。
尚、テンプレートの「<設問>」は、設問項目を入力して使用する箇所です。アンケートを作成する際、予め決めておいた項目を入力してください。
また、「任意の項目」と表示されている箇所は、それぞれの項目に適した文言を入力してください。例えば、満足度について質問する項目では「とても満足」「やや不満足」などのような文言が適しています。
目的と内容に合わせて、ぜひアレンジしながらご活用ください。
研修アンケートに正解はありません。受講者が違えば、最適なアンケートの形も変わります。
迷ってしまったときは、思い切って受講者に尋ねてみるのも良いでしょう。「アンケートで研修担当者に伝えたいことは何か」「どのような項目がわかりにくく答えにくいのか」など、回答者当人の意見は改善するうえで非常に役に立ちます。
社員目線に立つことを意識し、より実用的なアンケート作成を目指しましょう。