登山・スキー用品を中心に多くのアウトドアファンに支持されてきた株式会社石井スポーツは、近年キャンプ用品やフィットネス用品などの事業も展開しています。
新規事業の拡大に伴い社員に必要な商品知識も増えたため、積極的に人材育成に取り組んできました。中でも、人材育成サービス「shouin+(ショウインプラス)」を研修やOJTに取り入れたことで、教育の効率化や研修コストの削減に成功しています。
本セミナーレポートは、株式会社石井スポーツ人材開発室の倉谷宗輔氏をお招きし、2023年10月18日(水)に行われたwebセミナー「動画研修3年続けてわかった 販売員が受講し商品知識を定着させる具体策」の内容をお届けします。
石井スポーツがshouin+導入以前に抱えていた人材育成課題と、shouin+導入によって変化した社員教育について倉谷氏にお話いただきました。
研修や教育は主にOJT(On the Job Training)に頼っており、内容や進め方は店舗や個人に依存していたといいます。また、登山用品など、取り扱う商品の性質から求められるスキルも専門性が高く、紙マニュアルでは伝えきれないことが多かったそうです。
商品に関する勉強会等は実施していましたが、開催が東京エリアに集中しているなどの影響で、地方店は参加自体も難しいケースがあったそうです。知識習得の機会に地域差が発生し、統一性を担保できないという課題がありました。
集合研修は全国の店舗から移動費や宿泊費など、一定のコストが発生するため頻繫には実施できていなかったそうです。また、研修を実施したのは良いものの、受講状況等の研修履歴が管理できていなかったことも大きな課題の1つでした。
こういった課題を解決すべく、倉谷氏等が検討したのがオンラインでの「動画研修」の実施でした。
店舗やスタッフ間で習得できる知識や参加できる研修に差が出ており、我々としては最終的に「店舗間格差のない統一した知識の浸透」を目指していました。
当時、社内には業務ツールを導入していたのですが使い勝手がよくなかったことと、業務の性質上、文章だけでは使えられないような研修内容が多くありました。そこで、動画を活用してマニュアルや知識の共有をはかることを検討し、ツールの選定を進めました。
石井スポーツ 倉谷氏
課題解決にむけて様々な模索をする中で、従業員個人の研修状況の管理がしやすいという点や動画制作、研修設計などのサポートも手厚いというポイントで、shouin+の選定に至りました。
元々使っていた業務ツールですと、画像の展開のみで動画を見ることができませんでした。また、Teamsも利用はしていましたが、店舗単位のIDの付与だったので、スタッフ個人単位での閲覧が出来ず、研修履歴の管理ができないという課題がありました。そういった課題が解決できるということでshouin+を導入しました。また、動画研修の設計も初めてだったので、制度設計なども手厚くサポートしていただける点も魅力に感じて、shouin+の導入を決定しました。
石井スポーツ 倉谷氏
shouin+導入後は、従来のOJTや集合研修と並行して動画研修を取り入れることで、社員のスキルアップの機会を増やすことに成功しました。
現在もOJTや新入社員向けの集合研修などは継続して実施していますが、店舗の営業時間などの関係で研修時間を確保しづらかった商品知識型研修などは動画で配信しています。動画であれば通年で好きなタイミングで勉強ができるので、今まで研修に参加できなかった社員にスキルアップの機会が提供できるようになりました。
また、そもそもオンラインでの研修や勉強会ですら時間の確保が難しいといった社員には、録画した動画をshouin+上で見てもらうようにしました。
結果的に社員が研修やスキルアップに触れる機会を非常に増やすことができました。
石井スポーツ 倉谷氏
shouin+運用初期に本部で設定した目標は各社員につき「週5本の動画視聴」でした。視聴時間は自由とし、業務の隙間時間での視聴や、まとまった時間が取れた時に一気に学習することも可としました。
運用イメージ
導入当初は物珍しさもあり、高いログイン率・視聴率を確保していましたが、時間の経過に伴いログイン率・視聴率共に低下していきました。そこで、利用率の改善を検討した結果、shouin+の検定機能を導入することに決定しました。
本社でも動画を見てもらうことに意識が集中しすぎていたので、社員のスキルアップという本来の目的に立ち返り、自然と動画を見てもらうことができる環境作りに意識を変えていきました。
石井スポーツ 倉谷氏
shouin+の検定は穴埋め問題となっており、空欄に当てはまる言葉を選んで文章を完成させる形式の学習です。石井スポーツでは「商品知識」「業務手順」「接客販売スキル」など、日々の業務に必要な内容から、新入社員向けの「企業理念」「歴史」といった企業風土を定着させるための内容の検定を実施していきました。
検定機能のイメージ
石井スポーツが社員向けに実施したアンケートによると、多くの社員が、「shouin+がスキル向上や接客に役立っている」と回答しました。具体的には「担当カテゴリ以外のスキルを身に着ける機会ができた」という声や、店長クラスからは「社員がどのような業務を習得できていないか、気付くことができた」という声が寄せられました。
検定機能の導入をきっかけに、現在でもログイン率・視聴率ともに一定の水準をキープしています。検定合否がでることが社員のモチベーションに繋がり、自主的にshouin+を見てもらえるようになりました。また、検定の文章自体が勉強になるように問題づくりや研修動画を見ないと正解が分からないなど、検定受験そのものがスキルアップにつながる工夫も実施しています。
ログイン率・視聴率の推移
shouin+の運用を開始して3年、導入以前に抱えていた課題は次のように改善しました。
集合型研修に依存していた時と比較して移動費や移動時間などのコストが削減され、地域によって研修に参加できなかった社員も参加できるようになりました。
また、コンテンツの閲覧進捗や検定受験状況、研修履歴の管理も実現し、「店舗間格差のない石井スポーツとして、統一した知識の定着」という目標が現実のものとなっていきました。
倉谷氏は、オンライン教育の導入と運用を経て「手間を惜しまず 小まめな運用・更新を行なうこと」が教訓だったといいます。
我々本部の教育ニーズも伝えるべきものは伝えていきますが、現場のニーズを吸い上げて学習コンテンツを用意・更新していくことが重要かなと思います。教育ツールというものも、運用する側が楽をするというものでなく、あくまで現場の運用を進めていくものなので、こまめな更新と運用の手間を惜しまないことで浸透をはかることが重要です。
石井スポーツ 倉谷氏
ピーシーフェーズ社と「shouin+」の評価についてもお伺いしました。
導入当初は、動画研修についてどのような数値や行動目標を設計していけば良いのか、という知見がない状態でした。ピーシーフェーズ社には機能面のサポートだけではなく、目標達成に向けた設計のサポートまで伴走していただけました。運用開始後も、機能実装のスピードが速く、細かい要望をすばやく実現していただいています。
石井スポーツ 倉谷氏
しかし、あくまで教育や研修に関する企業の目的があり、手段としての動画研修であるため、最終的には目的にあったツール選定が重要ということを強調しました。
今後は、新規事業に関する学習コンテンツの拡充や社内資格との連動に挑戦していくといいます。
直近では新規事業の学習コンテンツを拡張し、店舗の売上に直結できるようなコンテンツを揃えていくことが目標です。また、現在は我々本部がコンテンツを用意しているのですが、お店で動画を作成するなどして学習が現場で自走するような状態になれば素晴らしいと考えております。
最終的には、現在配信している検定内容をパッケージにして、社内資格と連動させるようなことも想定しております。こういった目標に向けて、継続的に取り組んでいきたいです。
石井スポーツ 倉谷氏
いかがでしょうか。石井スポーツは、人材育成における課題と「店舗間格差のない統一した知識の浸透」という明確な目標を照らしあわせた結果、解決策としてのオンライン動画研修にたどり着きました。
多店舗経営をされている企業ですと、研修コストの膨らみや社員の業務レベルのバラつきなど、今回ご紹介したような課題をお持ちの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
本セミナーが皆様の今後の人材育成のヒントとしてお役立て頂ければ幸いです。