業務マニュアルや社内教育の効率化に効果的な「動画マニュアル」。文章だけでは伝わりにくい作業や操作も、動画なら直感的に理解できます。
本記事では基本的な作り方から、抑えておきたいコツ、便利なツールまで詳しく解説します。運用に成功した企業事例などもご紹介しますので、動画マニュアルの導入を検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
近年、業務のデジタル化、働き方の多様化に合わせて、マニュアルの動画化を進める企業が増えてきています。
動画マニュアルの活用方法として真っ先に挙げられるのは「人材育成」です。教育内容・質の標準化や、教育担当者の負担軽減を目的として取り入れられています。
引用元:第1回「動画マニュアル実態調査」 3割がマニュアルを倍速視聴/8割が動画と画像を組み合わせた物を希望 ~総合行政ネットワーク「LGWAN」対応。DX推進/引き継ぎ問題を解決~|株式会社スタディスト
2023年に「株式会社スタディスト」が行った調査でも、動画マニュアルの活用シーンとして多く挙げられたのは「日常業務で新しい業務を習得するとき」「新人研修で新しい業務を習得するとき」でした。
動画マニュアルの活用は、従業員教育の手法のひとつとして浸透しているのです。
人材育成手法のそれぞれにメリット、デメリットがあるように、マニュアルの動画化にも良い点と悪い点があります。
動画マニュアルを導入すべきなのはなぜか、どのようなリスクに備えるべきか、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
動画マニュアルは、文章や図では表現しにくい業務のイメージや細かい注意点を伝えられるのが利点です。予め動画で雰囲気を掴んでおくことで、スムーズにOn the Job Training(以下OJT)に取り組めます。
利用者の都合に合わせて、いつでもどこでも学習できるのもメリットです。集合研修のように場所が限定されないため、移動時間のムダを省けます。指導者と学習者のスケジュールを合わせる必要もありません。
また、翻訳した動画マニュアルを使えば、外国人スタッフにも正しい知識・ノウハウを伝えることができます。人材の多様化を進める企業にとって重宝するツールとなるでしょう。
動画マニュアルは、対面での指導とは異なり、相手の反応を見ることができません。本当に理解できたのかわかりにくく、本人も動画を見て理解した”つもり”になりやすいです。理解度チェックテストを行うなどの対策が必要になります。
また、動画の作成には少なからず時間がかかります。特に、撮影・編集のスキルや知識がない場合、多くの時間が必要になるでしょう。ただし、近年はスキル・知識がなくとも動画マニュアルを作成できるツールが開発されています。それらを選ぶことで効率化できるでしょう。
動画マニュアルに興味はあるものの「面倒なのではないか」「複雑で難しそう」と考える人も多いのではないでしょうか。
ですが、動画マニュアルは3つのステップで制作できます。慣れれば短時間で作ることも可能です。具体的にどのような流れで作成するのか、順に見ていきましょう。
動画マニュアルは「企画で完成度が変わる」と言っても過言ではありません。準備を徹底することで、この後に続く撮影・編集がスムーズに進みます。
撮り直しを防ぐためにも、丁寧に準備を整えましょう。企画段階でやるべきことは以下の3点です。
動画マニュアルを「何のため」「誰のため」に作成するのか明確にします。目的・ターゲットが曖昧だと、必要な人に必要な情報が届かなくなるからです。
業務に関する知識が全くない人に向けた動画マニュアルと、経験者のスキルアップを目的とする動画マニュアルでは、内容が変わります。作った後に「何の役にも立たなかった」「全く活用されていない」とならないよう、目的と対象者を定めましょう。
実写動画、パソコンやタブレットの画面録画、スライドと、動画マニュアルにはさまざまな形式があります。どうすればわかりやすく、正しく情報を伝えられるか考え、スタイルを決めましょう。
また、動画マニュアルをどのくらいの頻度で更新するのか、どのようなシーンで見てもらいたいのかなど、運用方法までシミュレーションしておきましょう。
目的と方針が定まったら、具体的な内容を決めます。動画マニュアルに取り入れる内容を洗い出し、優先順位をつけます。優先度の低い内容を排除し、1つの動画が長くならないよう注意しましょう。
最後に、台本を作成します。セリフ、動作、カメラ割りなど、動画の撮り方と内容を細かく決めておくことで撮影がスムーズに進みます。
準備が整ったら、いよいよ撮影です。しかし、慣れないうちはトラブルが起きる可能性が高いため、事前にテストを行うのがおすすめです。
どのように撮影を進めれば良いか、以下の3つのステップを見ていきましょう。
撮影をスムーズに進めるため、当日のスケジュールを細かく決めておきます。具体的には以下のような項目です。
場所や日時を決める際は、撮影時の明るさや環境音に注意します。問題なく撮影できるか下見しておきましょう。
また、出演者のスケジュール調整も必要です。業務に支障が出ないか、話し合って調整しましょう。
撮影する前に、最終チェックを行います。機材に不具合がないか、機材の使い方を理解しているか、台本に抜けている箇所や見落としがないか確認し、撮影のシミュレーションを行いましょう。
事前にチェックリストを作成しておくと、確認漏れを防ぐことができます。
チェックを終えて問題が解消されたら、いよいよ撮影です。カメラの方向や立ち位置、出演者が話す速度など、「見やすさ」「わかりやすさ」を意識することが大切です。
ミスをしても当日中に撮り直せるよう、撮影中は録画を細かく確認しながら進めましょう。
動画マニュアルをより見やすく、わかりやすくするために編集を行います。無駄な部分をカットすることで、重要な情報が伝わりやすくなります。
ナレーションやテロップを付けたり、解説画像やスライドを差し込んだりするのも、わかりやすい動画マニュアルを作るコツです。編集後は「情報に誤りがないか」「従業員目線でわかりやすいか」チェックしましょう。
多くの場合、動画マニュアルの作成は業務の合間に行われます。忙しくても作成・管理できるよう、できるかぎり無駄を省いて効率化したいところです。
最近では、スキルや知識がなくても使えるツールが開発されています。効率アップを図る際は、以下のツールを参考にしてみてください。
スライド作成ツールとしてメジャーな「パワーポイント」。WindowsやMacで日常的に「Microsoft Office」を使用しているという職場であれば、無料ですぐに利用できるのが最大のメリットです。
メジャーなソフトなので、従業員が既に使い方を知っているケースも多いです。新たに技術を学ぶ必要がなく、スピーディーに動画マニュアル制作に取り掛かれるでしょう。
◾️参考:
プレゼンテーションを無料で編集 | Microsoft PowerPoint for the Web
「株式会社スタディスト」が提供する「Teachme Biz」。月ごとに料金を支払って利用する、有料の動画マニュアル作成・管理ツールです。
WindowsやMacの基本機能を使って、画面録画や実写動画の編集を行うことができます。翻訳機能も付いているので、多国籍の従業員に向けた動画マニュアルの作成も可能です。
使い方の解説動画マニュアルがあり、どのような機能があるのか、どのような動画が作れるのかイメージしやすいのもポイントです。作成から管理、更新、受講者の進捗管理など、幅広く活用できます。
◾️参考:
「Tebiki株式会社」が運営する動画マニュアル作成ツール「tebiki」。動画マニュアル編集・管理、人材スキル管理機能が備わっているツールで、製造業を中心に利用されています。
こちらのツールの特徴は、字幕起こし機能がある点です。さらに、100カ国以上の言語に自動で翻訳してくれます。ナレーションの量が多い動画マニュアルの作成に向いています。
また、動画だけでなく文書マニュアルの作成も可能です。有料プランを契約することで利用できます。
◾️参考:
かんたん動画マニュアル作成ソフト tebiki(テビキ) | 作り方のポイントがすぐわかるクラウド作業標準書ツールで社内新人研修を効率化
「iMovie」は、MacやiPhoneなどのApple製品で使用できる、無料の動画編集ツールです。スマートフォンやタブレットを使って、手軽に動画を編集できます。
一般的に親しまれているアプリケーションなので、iPhoneやSNSを使い慣れている若い世代の従業員に受け入れられやすいでしょう。また、スマートフォンさえあれば利用可能で、店舗で働く従業員に作成を任せたい場合にも便利です。
ただし、WindowsやAndoroidでは利用できないため、利用可能デバイスがあるかチェックする必要があります。
◾️参考:
動画マニュアルは、「shouin+」のマニュアル作成ツールを使って作ることもできます。動画や画像、テキストが使える自由度の高い編集機能、シンプルでわかりやすい操作性が魅力です。
作成した動画マニュアルは、カテゴリー別に仕分けして管理できます。見たいマニュアルへとスムーズに辿り着くことができることから、利用率アップが見込めるでしょう。
また、テスト機能を活用したアウトプット、学習進捗の可視化も実現可能です。動画マニュアル作成・更新・共有、学習管理、従業員育成と、幅広いシーンで活躍するでしょう。
◾️参考:
マニュアル作成機能|shouin+|オンライン研修はshouin+(ショウインプラス)|オンライン研修はshouin+(ショウインプラス)
時間をかけて作成するからには、効果的で実用性の高い動画マニュアルを作成したいものです。失敗のリスクを減らすため、作成する際のコツや注意点を押さえておきましょう。
必要な知識を漏れなく伝えたいという思いから、つい情報を詰め込みすぎてしまうことがあります。しかし、長い動画は「集中力の低下」を招きます。業務の合間に見られない、見るのが面倒だ、と従業員がマイナスイメージを抱く恐れもあるでしょう。
そのため、作成する際は動画が長くなりすぎないよう注意が必要です。3〜5分ほどで観られる長さがおすすめです。不必要な部分は編集でカットし、どうしても長くなる場合は複数の動画に分けましょう。
制作者が良しとしても、従業員が「わかりにくい」「使いづらい」と感じる動画マニュアルは実用的とは言えません。見る人の目線に立って作成することが大切です。
企画、撮影、編集それぞれの段階で、実際に業務を行う従業員にチェックしてもらう方法が有効です。動画マニュアル作成チームに参加してもらうのも良いでしょう。
運用開始後のアンケートやヒアリングも欠かせません。実際に使ってから問題点に気づくケースもあるので、モニタリングを継続し、従業員の意見に耳を傾けることが大切です。
従業員にとってわかりやすい動画マニュアルを作成するため、撮り方にも注意する必要があります。作業する手元が隠れている、映像が暗い、光が反射しているなどのような問題があると、情報が正しく伝わりません。「見え方」を意識しながら撮影しましょう。
また、手ブレも「見にくい」と感じる要因です。三脚やアームなどの機材を使用し、カメラを安定させましょう。
重要な情報がきちんと記憶に残るよう、動画にメリハリを付けるのもポイントです。
テロップや、矢印・丸印などのマーカーを付けることで、ユーザーの注意を引くことができます。重要な情報を伝える部分では、静止画を使ってじっくり見せると良いでしょう。
ただし、編集に凝りすぎると、かえって重要な部分がかすんでしまう恐れがあります。どこを強調すべきか考え、客観的な視点で作成することが大切です。
動画マニュアルの撮影方法や編集にバラツキがあると、見にくいと感じやすいです。その対策として、作成のルールを設定するのがおすすめです。
BGMや画角、カットの方法など、基準を設けることで統一感が出ます。マニュアル作成者・管理者が複数人いる場合でも、同じクオリティで作成できます。
属人化の防止、および担当者の負担軽減にも繋がるため、細かくルールを決めておきましょう。
動画マニュアルのゴールは、従業員に「活用してもらうこと」です。業務効率化やスキルアップに活かされてこそ価値があると言えます。
では、どうすれば動画マニュアルを定着させることができるのでしょうか。以下の5つのポイントについて解説していきます。
どれほど良質な動画マニュアルも、従業員に見てもらうことができなければ意味がありません。利用者全員が「簡単にアクセスできる」環境を作ることが大切です。例えば、以下のようなチェックが必要です。
従業員の中には、機械操作に慣れていない人もいます。多機能のツールは魅力的ですが、従業員が使いこなせなくては意味がないため、注意しましょう。ツールの使い方動画マニュアルを別で作成し、対策するのもひとつの手です。
従業員に「動画マニュアルを見て欲しい」と呼びかけても、はじめは見てもらえないことが多いです。特に「動画マニュアルを見る意味はあるのか」「面倒だ」と、動画マニュアルに対し不安や疑問を抱いている人は、活用に消極的でしょう。
そこで対策として挙げられるのが、動画マニュアルを教育体制・フローに組み込む方法です。新人教育を例とすると、以下のようなフローになります。
このように、教育の一部に組み込むことで、活用を促すことができます。
はじめは否定的でも、効果を実感すればイメージが変わる可能性があります。動画マニュアルを使うことが「当たり前」になるのを目指して、工夫しましょう。
知識のアウトプットは、学習内容の定着を促します。チェックテストやクイズが代表的な手法です。問題に答えることで復習できますし、理解できていない部分に気づくこともできます。
また、学んだことについて人と話すことも、学習効果の向上に繋がります。オフラインで話し合うのが難しい場合でも、オンラインミーティングやチャットなどを使えばアウトプットできます。
テスト機能やレポート機能、チャット機能などが備わっている動画マニュアルツールを使い、インプットとアウトプットを繰り返す仕組みを作りましょう。
動画マニュアルの内容と現場での指導が異なると、従業員は不信感を抱きます。動画マニュアルを見ても意味がないと思う人もいるでしょう。
そのため、指導者および管理者との情報共有は重要だと言えます。現場での指導内容と矛盾がないよう、事前に内容について話し合っておきましょう。
対面での教育とは異なり、動画マニュアルは好きなタイミングで、何度でも復習できるのが魅力です。そのメリットを活かすには、情報を探しやすくする工夫が必要です。
カテゴリーごとにフォルダを分けて保管しておくと、見たい動画マニュアルにスムーズに辿り着けます。検索機能があるとより便利でしょう。
欲しいときに欲しい情報がすぐ見つかること。それが、従業員が「使いやすい」を実感する動画マニュアルの条件です。
動画マニュアルの運用に成功した企業は、実際にどのようなことを行ったのでしょうか。4つの事例をご紹介しますので、動画マニュアルの導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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「焼肉うしごろ」をはじめとする焼肉店を経営する「株式会社サング」。当社は以前、画像とテキストで構成されたマニュアルを使用していましたが、見る人によって捉え方や理解度にバラツキがあることに課題を感じていました。
そこで「shouin+」を導入。調理の様子を撮影し、注意点やノウハウを動画で伝える形式へと変えたことで、教育が標準化されました。
また、視聴管理機能を使って学習状況を可視化し、戦略的な人材育成を実現。OJTが効率化され、研修での失敗が少なくなったことから、廃棄ロスも減らせたそうです。
新店舗オープン時や、新入社員の店舗配属時など、飲食業や小売業では大人数をいっぺんに、別々の場所で教育しなければならないシーンが多々あります。そのようなとき、動画マニュアルおよび学習管理ツールは非常に重宝するでしょう。
◾️shouin+導入事例:
動画マニュアルの一元管理でOJTの効率化とコストカットを実現|株式会社サング
新人教育にかかる時間を大幅に短縮 指導内容の統一化を実現 クイズ・検定機能で理解度を把握 分かりやすい操作性で管理の効率もアップ |
全国に映画館を展開する「株式会社松竹マルチプレックスシアターズ」。当社は以前、紙製の研修ノートを使って新人オリエンテーションを行っていました。
対面での新人教育に4時間もかかるのは非効率的だと考え、「shouin+」で動画マニュアルを作成したところ、研修時間はなんと半分に。いまではほとんど時間をかけずに教育できるようになったそうです。
当社は、新人以外の従業員教育にもツールを活用しています。学習の可視化や、検定・コーストレーニングの配信など、「shouin+」のさまざまな機能を使って戦略的・効率的な人材育成を実現しています。操作がシンプルで自由度も高く、管理しやすいと従業員からも好評なようです。
◾️shouin+導入事例:
マニュアル電子化で印刷コストと研修時間を大幅削減し、現場の業務効率化を実現!|株式会社松竹マルチプレックスシアターズ
動画マニュアルを使って教育の標準化を実現 「動画を見ないと業務を遂行できない」状況を作って活用を促進 |
関東を中心にスーパーマーケットを展開する「株式会社いなげや」。当社は、スタッフ育成が店舗ごとに異なることに課題を感じていました。そこで、レジに新たな機能が追加されたことをきっかけに、教育システムの変更に踏み切りました。
動画マニュアルの導入に向けて、当社は全店舗にタブレットを設置。レジの操作方法を撮影・配信し、同じ内容、同じ伝え方、同じ質での教育を実現しました。
注目すべきは、動画マニュアルの利用を「業務に必要不可欠な内容」から始めたという点です。動画を見ないとレジの操作方法がわからない、動画マニュアルを使わざるを得ないという状況を作ったことで、マニュアルの活用が促されたと言います。運用開始時によくある躓きを上手く回避した成功事例です。
◾️参考:
小売業の動画マニュアル導入事例 | スーパー133店舗の現場で動画を活用。レジ打ち、接客時の応酬話法、クレジットカード運用など教育をスピーディに実施。
動画マニュアルは、教育や業務引継ぎをスムーズにする有効な手段です。上手く活用すれば、人手不足の職場でも、業務と従業員教育を両立できるようになります。
ご紹介した手順やツール、ポイントを参考に、現場で活かせる動画作りに挑戦してみましょう。