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小売業の人材育成で効果的な研修内容とは?具体的な研修作成方法やマネジメントについてもわかりやすく解説!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Jul 13, 2022 3:11:04 AM

企業で働く従業員の成長に欠かせない「研修」。多くの企業が、必ずと言っても良いほど行っている、一般的な教育手法のひとつです。

しかし、研修の内容や取り組み方にはさまざまなパターンがあり、どのように行えば良いのか悩む人が少なくありません。「実施してもいまいち効果が得られない」と頭を抱えつつも、改善方法がわからず、結局放置してしまうケースも。

そこで今回は、人材育成で効果的な研修とはどのようなものなのか解説していきます。

また、人材育成の目的や問題点、研修によくある課題など幅広くご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

 

人材育成の目的

そもそも人材育成とは、何のために行われるものなのでしょうか。改めて聞かれるとよくわからない、という人も多いはず。

厚生労働省発行の「平成30年版 労働経済の分析 ー働き方の多様化に応じた人材育成の在り方についてー」によると、人材育成の目的は主に以下の3つ。詳しく見ていきましょう。

 

目的1:労働生産性の向上

(引用元:「平成30年版 労働経済の分析 ー働き方の多様化に応じた人材育成の在り方についてー」厚生労働省)

 

厚生労働省のデータを見てみると、人材育成の目的として最も多く挙げられているのは「労働生産性の向上」です。

企業が継続して運営していくためには、業績を向上させ、利益を上げることが必要不可欠。そして業績・利益アップを図るには、生産性を上げる必要があります。

しかし、従業員の知識や能力が不足していると、生産性を十分に高めることができません。そのため、従業員を育成することが重要なのです。

企業間の競争は年々激しくなり、さらにグローバル化も進んでいます。現時点で問題なく経営できていたとしても、現状を維持するだけでは、いずれ競合他社に負ける恐れがあります。新しい経済環境について行くことができず、最悪の場合、倒産に追い込まれることも。

よって企業は、成長し続けることが求められます。そのために人材育成を行い、生産性を向上させ、競争力を高める必要があるのです。

 

目的2:モチベーションの向上

従業員の能力を十分に発揮させるには、モチベーションの維持・向上が欠かせません。福利厚生の整備やインセンティブ制度の導入など、さまざまな対策が挙げられますが、人材育成もモチベーションを向上させる方法のひとつです。

人材育成によって成長すると、従業員は仕事で成果を出すことができ、自信がつきます。反対に、従業員への教育が行き届いていないと、仕事で成果を出すことができず、自信を失ってしまうのです。成長を実感できないことに不安を抱え、モチベーションがダウンしてしまうでしょう。

従業員のモチベーションの低下は、離職につながる恐れのある重要な問題です。

 

(引用元:「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

 

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った調査によると、前職での新人研修での教育・指導が十分だったと答えた人の割合は、正社員で41.1%、非正社員で32.4%、パート・アルバイトで33.2%と、どの雇用形態においても半数を下回っています。

このことから、人材育成に不満を抱いている人が多いことがわかります。

 

(引用元:「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

 

また同調査では、正社員、非正社員、パート・アルバイトのいずれも60%〜70%前後の割合で、入社後4年以内に離職しているという結果も出ています。

つまり不十分な教育は、早期離職の原因となる可能性があると考えられます。そして、従業員の離職を防ぐためには、人材育成を強化する必要があるのです。

 

目的3:将来の事業展開に向けた準備

厚生労働省が行った同調査では、人材育成の目的として「数年先の事業展開を考慮して、今後必要となる人材を育成する」が第3位にランクイン。企業が現時点で抱えている問題を解決するためだけでなく、将来を見据えて人材育成に取り組む企業も多いようです。

経営改革や新規事業の立ち上げなど、企業の大きな変化には失敗や障害がつきもの。とはいえ、損失を恐れて何も変わらなければ、成長は見込めません。変わり続ける経済環境の中、企業が生き残っていくためには、新しいことに挑戦し続けることが大切です。

つまり、企業の存続に必要な変革を行う際は、ロスを最小限に抑える必要があるということ。そしてロスを可能な限り減らすには、失敗に対応できる、知識とスキルが豊富な従業員をできるだけ増やしておく必要があります。よって、事前に人材育成を行い強化しておくことが重要なのです。

 

良い研修とはどのようなものか

研修は人材育成を行う上で欠かせないもの。しかし、実施すれば必ずメリットが得られる、というものではありません。意味のない研修を行っても、時間と費用が無駄になってしまいます。

では、「良い研修」とはどのようなものなのでしょうか。さまざまな条件が挙げられますが、代表的な以下の3点に絞って見ていきましょう。

 

1:行動・結果につながる

研修で知識とスキルを身につけても、実際に行動に移すことができなければ、研修を行う意味がありません。また、何も成果が得られなかった場合も、研修は無駄になったと言えるでしょう。

『人材育成担当者のための絶対に行動定着させる技術』という書籍の中で、著者の永谷研一氏も以下のように述べています。

行動に結びつかない、やりっぱなしの研修は必要ありません。

(引用元:「永谷研一(2015)『人材育成担当者のための絶対に行動定着させる技術』ProFuture株式会社」)

つまり、身につけた知識やスキルを活かして行動し、成果を出すことができてこそ、はじめて「良い研修」であると認められるのです。

例えば接客力アップ研修は、店舗で実際に接客するときに役立つ知識、スキルが学べる内容であることが必須です。そして実行に移した結果、個人または店舗の売上げが向上すれば、その研修は有効だったと言えます。

しかし、研修で学んだことを活用できないケースが少なくありません。特に、効果的で良い研修を行おうと狙うほど、実施すること自体をゴールとしてしまいがちです。また、研修直後は意識して行動できても、日々の業務をこなすうちに次第に忘れ、取り組みをやめてしまうことも。

本当の意味で良い研修を行うためには、終了後のフォローアップの徹底や、成果につなげる工夫が必要なのです。

 

2:企業の戦略・ミッションに沿った内容

どんなに有意義な研修でも、内容が会社の方針と異なるようでは意味がありません。学んだことを活かして実行しても、会社の利益になりにくいからです。また、研修受講者の行動が会社の方針から逸れてしまい、組織の団結力が低下する恐れもあります。

よって研修の内容は、企業の戦略・ビジョンに沿ったものにすべきと言えます。会社のミッションをクリアするために必要なスキル、知識が得られる研修が「良い研修」です。

例えば、顧客満足度アップを会社のビジョンとして掲げている場合、接客力やクレーム対応力が身につく研修が理想的です。また、シェア率の向上が戦略上の目的なのであれば、マーケティングやマネジメントについて学べる研修が有効と考えられます。このように、研修内容を会社の目的に合わせることで、求めている研修効果が得られるでしょう。

 

3:受講者が主役

研修は基本的に、講師や運営側が主体となって行うもの。しかし、講師・運営が「主役」になり、研修受講者が「脇役」となってしまうと、従業員の主体性が失われてしまいます。

このような状態では”やらされている感”が強くなってしまい、研修に対するモチベーションが下がってしまいます。「学んだことを活かそう」とする意欲が損なわれ、行動に移さなくなる恐れがあるのです。そのような研修は「良い研修」とは言えません。

効果的な研修を行うには、受講者が主役であることが大切です。講師ではなく受講者が理解できるように伝える、実際の業務で役に立つ情報を伝えるなど、従業員の目線に立って内容や伝え方を考える必要があります。

また、研修参加者が意見を述べたり、アイディアを出したりする研修も、受講者を主役とした良い研修の例です。グループワークなどを取り入れ、自己表現をする機会があるとなお良いでしょう。

研修実施後、受講者に向けてアンケートを行うことで、ニーズを掴むことができます。このニーズにこたえるように研修をデザインすることで、参加者が主役の研修を行うことが可能になります。

 

人材育成に関するよくある勘違い

「精一杯従業員を教育しているのにうまくいかない」このような問題を解決するため、人材育成に関するよくある勘違いについて触れておきましょう。

人材育成にありがちな問題点は、主に以下の3つ。詳しく解説していきます。

 

1:成長が可視化されていない

人材育成とは、従業員の能力を高めて成長させること。しかし、成長を目に見える形にしなければ、どれほど変化したのか確認することができません。

成長が可視化されていないと、現実とは違った評価をしてしまう恐れがあります。成長できているかどうかの判断が、個人の主観という曖昧な基準に委ねられるためです。

もしも過小評価してしまった場合、実際は成長しているのにも関わらず、従業員は「自分は仕事ができない」と考えて自信を失ってしまいます。反対に、過大評価した場合は慢心してしまい、成長が止まる可能性があります。

よって、従業員のモチベーションを高め、さらなる成長を促すためには、成長の可視化が不可欠なのです。どのような点が成長したのか、何が要因となって成長したのかを具体的に見える化することで、成長具合を正確に把握することができます。

可視化する際は、売上げや客単価などのような数字で表すことが大切です。そうすることで、誰が見ても変わらない指標となり、具体的な改善策を考えやすくなるでしょう。

 

2:教育担当者との認識のズレ

人材育成は、教育担当者と従業員がタッグを組んで行うものですが、コミュニケーションが不足していると認識のズレが生じます。担当者は「できている」と判断しているのに本人は「できていない」と思っている、担当者は「できていない」と判断しているのに本人は「できている」と思っている、といったすれ違いが起きてしまうのです。

認識のズレが生じた場合、間違った教育指導を行ってしまう恐れがあります。教育担当者が従業員の頑張りを認めず、過剰に指摘してしまうなどが例です。また、能力が基準に満たない従業員が、自身の実力に気づかず「上司から認められていない」と思ってしまうことも。これらの状況はどちらも、モチベーション低下の原因となります。

こういった認識のズレをなくすためには、定期的に面談を行うなど、コミュニケーションを増やすことが大切です。成長具合について頻繁に話し合うことで、双方が正確に状況を把握することができます。

また、先ほど挙げた成長の可視化も、認識のズレを減らすのに有効です。互いの価値観で判断するのではなく、揺るがないデータとして表記することにより、同じ基準で成長具合や課題点を確認・分析することができるでしょう。

 

3:個人のペースに合わせていない

従業員は1人1人、成長速度が違います。同じ入社1年目、2年目でも人それぞれ価値観も経歴も違うため、能力に差が出てしまうものです。

そのため同じ内容、同じペースで育成しても、成長に違いが出てしまいます。成長スピードが速い人は教育に物足りなさを感じ、本来の力が発揮されません。反対に、成長スピードが遅い社員は教育の内容を理解できず、自信を失ってしまうでしょう。

従業員の個性を生かしつつ、効率よく育成するためには、それぞれに合わせた教育を行う必要があります。なかでも、教育担当者と従業員が1対1で行うOJT研修が有効です。

近年、人材の多様化が進んでおり、企業にはさまざまな経歴・個性・能力を持つ従業員が所属しています。社員それぞれを効率よく育成し、能力を高めるためには、教育手法を柔軟に変化させることが大切です。

 

研修を実施する際によくある課題

それでは、次に研修を実施する際によくある課題について解説していきます。

主な課題は以上の3つ。従業員、そして企業にとって利益をもたらす研修を行うため、どのようなことが障害となりうるのか把握しておきましょう。

 

1:教育担当者と研修受講者の時間を合わせなくてはならない

教育担当者が常に研修を行っているケースは少なく、通常業務をこなしつつ、定期的に研修を運営するのが一般的。そして研修受講者も、研修に参加するために時間を作らなくてはなりません。

このように、研修を実施する際は、教育担当者と研修受講者の時間を合わせるのが難しいといった問題が発生する可能性があります。

小売業に多い店舗でOJT研修は、担当者と従業員の時間を合わせることが難しく、研修が途切れ途切れになったり、内容が厳かになったりすることが珍しくありません。シフトがかぶらず研修の進みが遅くなる、閉店後に残業して教育を行う、などといった問題を抱えがちです。

また、集合研修の開催場所と受講者の勤務地が離れている場合、移動にも時間を割かなくてはなりません。宿泊が必要なほど遠方であれば、さらにスケジュールの調整が難しくなるでしょう。

よって研修を実施する際は、互いの業務に支障をきたすことなく行えるよう、体制を整えておくことが大切です。研修の時間を確保するため、場合によっては業務の見直しも必要となります。

遠方で働く従業員への研修は、オンライン研修を活用するのもひとつの手です。そうすることで、研修に費やす時間を最小限に抑えることができ、教育担当者と受講者、双方がスケジュールを合わせやすくなるでしょう。

 

2:研修と現場の連携が取れていない

研修で知識やスキルを習得しても、実際に行動に移せない、成果につながらないといった問題は、研修と現場の連携がとれていないことが原因のひとつとして挙げられます。

例えば、新しい取り組み方を研修にて学んだ場合、現場の上司からの理解を得られなければ、実行に移せない可能性があります。情報共有ができていないせいで、「そのやり方はうちでは無理だ」と却下されてしまうのです。せっかく研修で有効な手法を習得しても、無駄になってしまうでしょう。

また、研修に参加するメリットが現場に伝わっていない場合、従業員が参加することさえ拒まれることも。現場をマネジメントする人からしてみれば、研修参加によって人員が削られるのは痛手です。そのためメリットを理解できないと、研修に参加する時間を設けてもらえないのです。

このように、研修を実施する際は現場の協力が必要不可欠。受講者がスムーズに参加でき、かつ研修を業務で活かすことができるよう、研修開催者は現場をマネジメントする人に対してもアプローチする必要があるでしょう。

 

3:受講者の研修に対する意欲低下

受講者の全員が、研修に意欲的とは限りません。通常業務が滞ることを懸念し、参加することを嫌がる人がいるものです。また、単純に「面倒だ」と思う人もいます。

研修に対してネガティブなイメージを持たれてしまうと、知識やスキルの吸収率が下がってしまいます。学んだことを活用する、現場に持ち帰って行動に移すといった前向きな姿勢も期待できないでしょう。

このようなマイナスイメージを1人でも抱いていると、周囲にも広がっていくもの。上司や先輩が「研修に行っても意味がない」「研修に行くのが面倒」と口にすれば、部下・後輩も同じように考え、多くの従業員が研修参加に消極的になる恐れがあります。

意欲低下を防止するには、研修に参加するメリットをきちんと伝えることが大切。さらに、「自分にとって有効な研修だ」という当事者意識を持ってもらうことが重要です。

『研修デザインハンドブック』という書籍の中で、著者は以下のように述べています。

研修を行う時、その内容に対して「これは必要である」「学ぶと自分の役に立つ」と参加者に感じてもらう工夫をすることは、とても大切です。ニーズを感じているかどうかで、同じ研修を受けても吸収力が大きく異なるからです。

(引用元:「中村文子、ボブ・パイク(2018)『研修デザインハンドブック』日本能率協会マネジメントセンター」)

研修を実施する際は、事前に開催場所や日時を記した案内を送るものですが、その中に”参加するメリット”を記載すると良いでしょう。

「1on1ミーティングの効果的なやり方を習得できる」「リピーター客を増やす接客スキルが身につく」など、具体的なシチュエーションと内容を記し、参加者にとっての利益をイメージしやすくすることがポイントです。

 

研修デザインの8つのステップ

それでは、研修を作成するプロセスを、8つのステップでご紹介していきます。「接客スキル研修」を例に挙げながら解説しますので、研修デザインにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

 

ステップ1:ニーズ分析

研修参加者にとって有意義なものにするため、まずはニーズを確認し、分析します。現時点で何が問題となっているのか、どのような情報を必要としてるのかを確認することで、着実に業務で活かせる知識やスキルを提供できるようになります。

ニーズ分析を行う際は、調査対象を広げるのがポイント。また、実際に現場を訪問して観察する、ヒアリングを行う、データを分析するなど調査方法の幅も広げ、的確で具体的なニーズを確認するよう意識しましょう。

ニーズ分析の対象を3つ、接客スキル研修を例にご紹介します。

 

研修受講者

店舗スタッフの接客スキル研修をデザインする際は、参加者の働いている様を観察し、接客の現状を把握します。そこでどのような課題があるのか、どのような点を評価すべきなのかを分析します。

笑顔で接客できているか、言葉遣いは適切か、顧客へのニーズチェックは十分かなど、細部まで観察しましょう。

 

研修受講者の上司

店舗をマネジメントしている上司にヒアリングを行います。観察するだけではわからない情報や、上司からの目線で気になっている点を聞き出し、スタッフに必要な知識やスキルを見極めます。

上司からの情報は、研修受講者本人が自覚していない課題点、評価点を見つけるのに有効です。普段の仕事ぶりは、マネジメントしている上司が一番よく観察しているので、より正確な情報を得るため丁寧にヒアリングを行いましょう。

 

会社

会社が記録しているデータからも分析を行います。売上げやリピート率、客単価、お客様アンケートの調査結果などを見て、課題点や評価点をより明確にします。

特に接客は、数値化しにくい業務。「できている」「できていない」の判断が、個人の主観によって変わってしまうものです。観察やヒアリングで得た情報は、主観的で根拠がないため、数字を利用した分析も必要です。

 

ステップ2:研修受講者の分析

参加者にとってわかりやすく、実用性の高い研修を実施するため、研修受講者の分析も行います。

ここでは、主な4つの視点で分析するのがポイントです。

接客スキル研修を例に交えて見ていきましょう。

 

知識

入社して1年目の店舗スタッフと、3年目のスタッフでは、接客に関する知識量に差があります。研修の内容が受講者のレベルに合っていないと、能力アップにつながらないため、受講者にどれほどの知識があるのかを分析することが重要です。

 

興味

研修に対してどのくらい意欲的なのか分析します。受講者が意欲的な場合は問題ないですが、消極的な場合は、モチベーションを高める対策を考える必要があります。

なぜマイナスな印象を抱かれているのかを分析することで、意欲アップへのアプローチ方法を見つけることができるでしょう。例えば、「課題点がわからないから研修を受ける意味がないと思う」というスタッフが多い場合は、研修で課題点を明確に伝えることで、前向きな姿勢へと促すことができます。

 

言語

受講者がわからない専門用語を使って研修を行っても、内容を理解してもらうことができません。そのため、受講者がどれほど専門用語を理解しているかを把握することが大切です。

基本的には、専門用語は避けて誰でもわかるようにします。ただし、店長クラスやマネージャークラスなど、接客歴の長い受講者は、全社共通の専門用語を用いたほうがかえってスムーズに理解できる場合もあるので、理解度を確かめておきましょう。

 

影響力

研修受講者に現場での影響力がないと、学んだことの実行が難しい場合があります。例えば役職がついていない従業員は、現場での影響力が低いことが多く、上司からの許可を得ない限り行動に移しにくいのです。

そのため、受講者の影響力を事前に分析しておく必要があります。影響力がない場合は、影響力のある人にも話を通し、体制を整えてもらうなどの対策をしておきましょう。

 

ステップ3:目的の設定

何のために研修を行うのか、4つの領域に分けて目的を定めます。ここでも幅広い視点で目的を考えることで、参加者にとってより効果のある研修をデザインすることができるのです。

それでは、接客スキル研修の例を挙げながら解説していきます。

 

認知

受講者が研修を通して何を認知するのか、どの範囲まで認知するのか目的を定めます。具体的には、現状における課題点や強み、改善方法などが挙げられます。

「接客時の表情と言葉遣いにおける課題を認知してもらう」「客単価をアップさせる商品の提案方法を認知してもらう」など、研修受講者が認知すべきことのターゲットを決めましょう。分析した受講者のニーズ、課題をクリアするような目的設定を意識するのがポイントです。

 

感情

受講者が研修を受けて、どのような感情を持つようになることを目的とするのか決めます。接客スキル研修においては、「自分の接客に自信が持てるようになる」「自ら接客力を高めたいと思うようになる」などが例として挙げられます。

研修は、問題を解決するためだけでなく、従業員の能力を高めるためのもの。成長し続ける従業員を育てるためには、モチベーションの向上が欠かせません。業務に対する意欲を向上させるよう、感情を刺激する目的も定めておくことが大切です。

 

行動

研修を通して、受講者がどのような行動をとるようになるのかを定めます。「お客様の表情を汲み取って商品を提案できるようになる」「お客様のニーズを幅広く聞き出せるようになる」などが例として挙げられます。

可能な限り、具体的にイメージすることが大切です。また「多忙時でも笑顔で接客できるようになる」というように、シチュエーションも含めることで目的が明確になります。

 

対人関係

受講者が”誰に対して”行動するときのスキルを高めるのか、対人関係の領域でも目的を決めます。例としては、「客層に関係なく、好印象な言葉遣いで接客できるようになる」「新規顧客に対してリピートを促す接客ができるようになる」などが挙げられます。

接客業務は、年齢・ニーズ・好みが異なる顧客と関わる仕事。相手に合わせて適切な対応ができる能力が求められます。

そのため、接客スキル研修を通して柔軟な対応力を身につける必要があります。「誰に対して」という対人関係領域での目的を定めることで、どのような顧客への対応力を上げたいのかが明確になるでしょう。

 

ステップ4:オープニングとクロージングをデザイン

次に、研修の始め方と終わり方、オープニングとクロージングを考えます。

オープニングでは、主に課題点の提示を行います。どのようなことが問題となっており、なぜ改善すべきなのかを研修のはじめに解説することで、内容の理解度と吸収率が高まります。

ただし、指摘ばかりするようなマイナスイメージのオープニングは、受講者の意欲を下げてしまう恐れがあります。よって、受講者の評価点や好事例を伝えたり、褒めたりするなど、ポジティブな内容にも触れておくことが大切です。

クロージングでは、研修で学んだことをどのような手順で、どのような手段で実行していくのか、具体的なアクションプランを考えてもらう時間を設けます。アクションプランの作成は、現場に戻ってからの行動につながる重要な要素です。

また、研修に対して好印象を持ってもらうため、クロージングでもポジティブな内容を伝えます。オープニングとは異なる好事例、評価点を伝えましょう。

オープニングとクロージングの内容が決まったら、それぞれに割く時間を決めます。長すぎても良くないですが、アクションプラン作成の時間は十分にとりましょう。

 

ステップ5:研修コンテンツを作成

いよいよ研修の内容を決めます。

コンテンツを作成する前に、まずは研修に組み込みたい内容を洗い出します。ニーズ分析や参加者分析をもとに、伝えるべきことをできるだけ細かく書き出しましょう。

次に、時間配分を決定します。先ほど作成したオープニングとクロージングを除くと、どれほどの時間が残るかを計算することで、規模を定めることができます。

そして、時間内に必要な情報を伝えるため、内容を厳選します。排除すべきか悩んだ際は、あらかじめ決めた目的に沿って判断すると良いでしょう。

最後に、どのように研修を進めていくか順番を決めます。内容が前後したり、途切れ途切れになったりしてしまうと理解しにくくなるため、スムーズな流れを意識しましょう。

 

ステップ6:受講者との関わり方を定める

受講者との関わり方によっては、モチベーションを下げてしまう恐れがあります。「接客のやり方が悪いから売上げが悪い」といった指摘の仕方や、アイコンタクトを取らずに暗い表情で話す講師の接し方は、ネガティブなイメージを持つ原因となるでしょう。

そのため「ステップ6」では、どのように受講者と関わるのかを決めておきます。ダメ出しをするのではなく、より良くするための方法を伝えるなど、ポジティブな姿勢を持つことが大切です。また、講師が話す際の表情、言葉遣い、アイコンタクトなどといった細かい点も定めておきます。

 

ステップ7:研修後のフォローアップと効果測定をデザイン

研修で得た知識を活用し、成果につなげるためには、研修後のフォローアップが欠かせません。また、研修が本当に効果的だったかどうかの評価、効果測定も必要です。「学習と成長のサポート」「実践のサポート」「評価・測定」の3段階に分けてデザインしましょう。

 

学習と成長のサポート

研修終了後は、学んだことを忘れないようにするための振り返りを行います。現場に戻ったときに上司に報告してもらう、研修参加者同士で成果発表会を行うなど、アウトプットする機会を設けましょう。学んだことを人に話すことで、より理解が深まります。参加者同士が離れている場合は、オンラインツールを利用するのも良いでしょう。

実践のサポート

研修終了後、間を空けて再び受講者の職場を訪れ、きちんと研修で学んだことを実行しているか確認します。実行できていない場合は、何が障害となっているのかヒアリングを行い、サポートを行います。

確認しに行く時期に決まりはありませんが、約1〜3ヵ月後が理想的です。研修直後は行動に移しやすいですが、次第にやらなくなってしまう恐れがあるので、ある程度時間を置くのがポイントです。いつごろ現場訪問するのかをあらかじめ決めておき、スケジュールを調整しておきましょう。

 

評価・測定

研修が本当に効果的だったかどうか、改善すべき点はないかを終了後に確認します。どのような方法で評価・測定するのか、研修をデザインする時点で決めておきましょう。

例として、以下のような方法があります。

  • アンケート
  • テスト
  • ヒアリング

研修受講者にアンケートを行い、研修が効果的だったか確認します。ただし、正直な感想・意見が聞けるとは限りません。自分の評価に響くことを気にして、良い印象のみを伝える可能性があるからです。

そこで、受講者の上司にもアンケート、ヒアリングを行うのがおすすめです。受講者の仕事ぶりを見て研修効果があったかどうか判断できる人物なので、客観的な意見を得ることができます。

また、知識や技術が身についているかテストしたり、顧客からの評価を取り入れたりする方法もあります。研修内容や参加者、目的に合わせて適切な手法を選びましょう。

 

ステップ8:会場・資料の準備

最後に、研修で利用する会場や資料の準備を行います。

研修を本社で行うのか、レンタルスペースを利用するのか、開催場所を決めます。本社で行う場合は、席数や席の配置を決定する必要があると想定されます。レンタルスペースを利用する場合は、予約の手続きなどが必要となるでしょう。

また、資料を用意する際は形式をあらかじめ決めておきます。紙に印刷した資料を作成する場合、どのようなスタイルで記載するのか、誰が作成するのかを決定します。スライドショーを利用する場合は、スライドの作成やパソコン、プロジェクター、スクリーンといった機材の準備も必要です。

研修当日スムーズに進行できるよう、準備を徹底することが大切です。そして準備の漏れをなくすため、研修をデザインする時点でシミュレーションしておきましょう。

 

まとめ

既に取り組んできた研修スタイルを変えるのは、容易ではありません。新しい取り組み方にチャレンジしようとしても、周りからの理解を得られない場合もあります。

しかし、従業員の成長に少しでも伸び悩みを感じているのであれば、変更する価値があります。チャレンジしてすぐに成功するとは限らないですが、失敗を経験して分析し、改善を繰り返すことで、研修効果を高めることは可能です。

従業員が成長すれば、企業に大きな利益をもたらします。ぜひ本記事を参考にし、できることから始めてみてはいかがでしょうか。