的確な指示出しは、業務を円滑に遂行するうえでの要となります。しかし、口頭で指示を伝えようとすると、聞き間違いや伝え漏れ、誤解が生まれるものです。それが原因でミスが発生したり、従業員同士でトラブルになったりするケースも少なくありません。
その問題を解決する手段として挙げられるのが「指示書」の活用です。本記事では、指示書の意味や「手順書」「標準書」との違いなどといった基本的なことから、指示書作成のポイントまで幅広く解説していきます。指示書作成に役立つ、具体的な書き方の例やフォーマットのアイデアなどもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
指示書とは、文字通り「指示を出すための文書」のこと。ビジネスにおいては、作業や業務の指示を出す際に使われる文書のことを言います。「作業指示書」「業務指示書」と呼ばれることもあります。
作業の場所や日時、担当者、スケジュールなど、「誰が・いつ・どこで・何をするのか」を可視化することで、業務遂行に必要な情報を正しく伝えることができます。認識齟齬、コミュニケーションエラーの発生を防ぐことにより、業務効率化、安全性の向上が期待できます。
指示書は、社内の従業員に指示する際と、外部企業に仕事を依頼する際の両方で活用されます。具体的なシーンとして以下が挙げられます。
事前にフォーマットを作成しておき、必要事項を記入、チェック完了後に配布するという流れが基本です。最近では、業務効率の向上やコスト削減のため、指示書の電子化に取り組む企業も増えています。
指示書は「手順書」や「標準書」と字面が似ているものの、意味は異なります。
手順書は、作業の手順や器具などの操作方法を具体的に記したもの。従業員の誰もが「同じやり方で」作業できる状態を目指します。作業の流れ、それぞれの工程にかかる時間、使用する設備や道具などを記載します。
標準書は、作業に取り組む際に守るべきルールや基準を記したもの。従業員の誰もが「同じ品質で」成果を出すことを目指して利用します。作業内容や品質基準、検査基準などを中心に記載します。
手順書や標準書では、日時や担当者を特定しません。日常的に行われる業務の手順や基準といった「基本」を示すためのツールです。
一方で、指示書には決められた日時や担当者を記載します。特定の作業における細かな注意点、イレギュラーな対応など、マニュアルにない情報を伝えるのが指示書の役目です。
反対に、指示書には詳しい業務手順やルールは記載しません。それらはマニュアルを見れば済むからです。指示書と手順書・標準書にはそれぞれ違う役割があり、互いに補い合う関係にあると言えます。
指示書の役割は、作業・業務に必要な情報を「正確に伝えること」です。その背景には、以下の3つの目的があります。
口頭で指示した場合、認識の違いなどによるコミュニケーションエラーが発生する恐れがあります。きちんと正しい情報が伝わらず、差し戻しや”やり直し”が起きたり、何度も連絡を取ったりと、業務に「ムダ」が発生するのです。
時間や労力をかけるだけで済むならまだしも、ミスやクレームなど、トラブルが発生する可能性もあります。従業員、顧客、外注業者に危険が及ぶ可能性も否定できません。
よって、効率よく、正確に情報を伝えるための「指示書」が必要なのです。
なお、作業手順書の主な目的は「作業手順の標準化」、標準書の主な目的は「品質の標準化」です。業務効率化、品質向上、安全性の確保と最終ゴールはどれも同じですが、それぞれ違う役割を担っているのです。
指示書は、業界問わずさまざまな企業で活用されています。いくつか種類をご紹介します。
作業を指示する際に使われる指示書の総称です。日時や場所、担当者など、作業をスムーズに進めるために必要な情報を記載します。
建設業などで使われることの多い「工事指示書」。工事の依頼を受けた業者が作成し、発注者や元請け企業に内容を確認してもらったのち、作業員へ渡す、という流れが一般的です。工事の基本情報に加え、作業内容や予定人員、資材、機材の情報なども記載されます。
製品の製造を依頼する際に使われる「製造指示書」。製造指示の内容や責任者の情報、製造期間、納期などを記載します。現場の作業員が混乱しないよう、誰が・いつ・何を・いくつ・どのように製品を作って欲しいかを明確にするのがポイントです。
「訪問看護指示書」は、主治医が訪問看護サービスの指示を出す際に交付する書類のこと。特別訪問看護指示書や精神科訪問看護指示書など、さまざまな種類があります。薬剤の用量・用法、使用する医療機器、留意事項など細かく記載し、ミスの発生を防ぎます。
出荷作業の指示を出す際に使われる「出荷指示書」。商品を着実に指定の場所へと届けるための文書です。送り先の情報や注文者の情報、商品名、個数、価格などを記載します。
チラシやパンフレット、Webページなどのデザインを依頼する際に使用する「デザイン指示書」。エンジニアに依頼する場合は「コーディング指示書」と呼ばれることもあります。デザインの詳細やコーディングのルール、カラーイメージなどを伝えることで、制作者との間で食い違いが起きるのを防ぎます。
指示書を作成する際は「実行者がどのような情報を求めているのか」を第一に考えます。どうすれば滞りなく、正確に、安全に作業できるか、相手の視点に立って考えることが大切です。
とはいえ、何から書き始めれば良いのか迷うこともあるでしょう。そこで、ここからは指示書に記載すると良い基本項目と、項目ごとの書き方について解説していきます。
タイトル・作業名は「どの作業に関する指示なのか」を明確に伝えるための重要な項目です。「作業指示書」「訪問看護指示書」と大まかなタイトルをつける場合もありますが、「〇〇について」「作業名:〇〇」と細かく指定すると、わかりやすくなります。
その作業をいつ行うのか、スケジュールを具体的に示すため、日時や期間を記載します。作業に締め切りがある場合は、作業期間、納期などを明確に記載し、遅延を防止します。
作業を行う場所も指示書に記載します。口頭で伝えると、聞き間違いや伝え漏れが発生する恐れがあるため、指示書で可視化することが大切です。
作業する場所と集合場所が異なる場合は、集合場所も指示書に記載します。作業員が迷わないよう、必要に応じてアクセス方法や地図を書いておくと良いでしょう。
指示書には、作業の責任者・担当者に加え、発注者や依頼者の情報も記載します。「誰が誰へ指示したのか」を明確にすることは、コミュニケーションを円滑化するうえで重要です。
連絡先も記載しておくと、疑問点や問題点が浮上した際、どこへ連絡すれば良いかすぐに把握でき、さらに業務効率が上がるでしょう。
何人で作業して欲しいのか伝えるため、作業人数も記載します。予定人員を提示することで、管理者が現場をマネジメントしやすくなります。
また、何人で作業したのか「記録」として残すことも可能です。上手く活用すれば、業務効率化のヒントが得られるでしょう。
作業のスケジュールを細かく指定したい場合は、それぞれの作業工程にかかる「時間」も記載しておきます。現場のスケジュール管理に役立つのはもちろん、目標設定による効率アップも期待できます。また、時間通りに取り組めたか、なぜ遅延が発生したか、時間配分は適切だったかなど、のちの振り返りにも役立つでしょう。
ただし、標準書や手順書に作業時間が記載されている場合は省略します。
作業の準備を効率よく進められるよう、設備や器具、材料の確認も必要です。ミスの発生を防止するため、名称や型番など詳しく記載するのがポイントです。必要に応じて、使用方法や注意点も書いておきましょう。
作業の流れを把握できるよう、作業手順も記載します。実行者が作業の全体像を掴むこと、注意点を頭に入れることが目的なので、簡潔に書くのがポイントです。詳しい取り組み方については、手順書に書いておくと良いでしょう。どの手順書を見れば良いか注釈を入れると、作業員が迷わずに済みます。
注意事項は、ミスやトラブルを防ぐための重要な項目です。口頭ではなく「書面」で伝えるのは、注意事項に関するコミュニケーションエラーを防止するためといっても過言ではありません。
作業員が正しく、効率よく取り組めるよう、わかりやすく記載することが大切です。必要に応じて図やイラストを添えると伝わりやすくなるでしょう。
記載すべき項目は、指示書の種類と目的によって異なります。
例えば製造指示書なら、生産数、工数などの項目が必要です。工事指示書の場合は、安全チェックリストなどを設置し、ミス発生の防止を徹底します。デザイン指示書を作成する際は、写真やフォントなどの細かい指示も記す必要があるでしょう。
実行者が正しく、安全に、かつ効率よく取り組めるよう「作業員の目線」に立ち、項目を設定することが大切です。
指示書のミスは、効率低下やトラブルの発生を招きます。作業員の怪我に繋がる可能性もあるため、正しく記載することが重要です。
よくあるミスを把握し、対策を練っておきましょう。
指示を出す側である人が、現場の作業について深く知らない……なんてケースはよくあります。詳しくないからこそ、専門知識を持つ人材に任せるのが効率的な組織の在り方というものです。
しかし、依頼者の知識不足は、指示書の記載ミスを招きます。作業遂行にどのような情報が必要かわからず、「記載漏れ」が発生する恐れがあるのです。
それだけでなく、ヒューマンエラーが起きる可能性も考えられます。「うっかり書くのを忘れた」「うっかり間違った情報を記載してしまった」そのような小さなミスが、思わぬトラブルに繋がることもあるため注意が必要です。
作業中にトラブルが発生することは多々あります。指示書やマニュアルで解決できないときは、依頼者に確認をとらなければなりません。
その際、指示書に連絡先が書かれていないと作業が滞ってしまいます。誰に連絡すれば良いか迷う時間は、業務効率低下の要因となるでしょう。
現場が指示どおりに動いてくれない。想定とは異なる結果が返ってきた。
そのような問題は、指示内容の曖昧さが原因だと考えられます。誰が何をするのか、どのような成果を求めているのかが不明確だと、現場は混乱してしまいます。
依頼者の求める結果にならなかった場合、やり直しの「ムダ」が発生します。作業員との信頼関係も崩れる恐れがあるでしょう。
詳しく正確に指示書を書いたとしても、相手に伝わるとは限りません。実行者が指示書の内容を理解できなければ、結局は指示どおりに動けないのです。
失敗を招く指示書の特徴として、例えば以下が挙げられます。
指示書は、実行者が内容を理解できて、はじめて役に立つツールです。相手のスキルや経験、知識のレベルを考慮したうえで作成することが大切です。
では、そのようなミスを防ぎ、的確に指示を出すにはどうすれば良いのでしょうか。5つのポイントについて見ていきましょう。
記載漏れを防止しようとすると、情報を事細かに書きたくなるものです。しかし、内容が複雑な指示書は、読み手を混乱させます。作業における注意点など、重要な項目が埋もれてしまう可能性もあります。
指示書を作成する際は、明確・簡潔に書くことを意識することが大切です。「いつ」「誰に」「何をして欲しい」のか、最も伝えるべきことは何か、整理してから書くと良いでしょう。
細かい注意点や説明は、手順書や標準書にて補足するのがおすすめです。また、「~してください。」を「~する。~する。」という言い回しに変える、箇条書きで記すといった書き方も、見やすい指示書を作成するコツです。
現場を混乱させないため、曖昧なこと、不確定なことは指示書に書かないようにします。作業にかかる時間や予定人員を書くにしても、憶測ではなく、根拠のある数値を設定することが大切です。
不明確なことがある場合は、必ず確認をとってから指示書に記載するようにしましょう。
指示書のフォーマット化は、記載漏れを防止する方法として有効です。項目を埋めるだけで、必要な情報を漏れなく記載することができます。指示書作成の経験がない従業員も、迷うことなく作成できます。
指示書を電子化すれば、さらなる効率アップも期待できます。データとして残した指示書を複製し、日付など一部を変更するだけで指示書を作成できます。記入項目が減ることで、作成スピードが上がるとともに、ヒューマンエラーの発生も防止できます。
可能であれば、指示書の電子化もぜひ検討してみましょう。
作業の詳しい手順や基準、ノウハウをすべて指示書に記載することはできません。手順書や標準書が必須です。反対に、手順書・標準書が充実していれば、指示書に書く情報を減らせるとも言えます。
シンプルでわかりやすい指示書を作成するため、改めてマニュアルも見直しておきましょう。具体的なチェックポイントとして、以下の4点が挙げられます。
改めてマニュアルをチェックし、指示書と連動させられるよう調整しておきましょう。
指示書に記載すべき内容は、受け取る人のスキルや経験によって変わります。日時や場所などは、実行者が誰であっても必須項目ですが、例えば新人が読み手となる場合、専門的な内容を書いても理解できません。使用する用語や、指示内容のレベルに配慮する必要があります。
よって、指示書を作成する際は、「誰が」見るのかを明確にすることが重要だと言えます。外部の業者なのか、社内の従業員なのか、新人なのかベテランなのか。ターゲットを明確にし、相手の目線に立って作成することが大切です。
予めフォーマットを用意しておくと、効率よく指示書を作成できます。具体的にどのようなフォーマットを作成すれば良いか、いくつか案をご紹介しましょう。
具体的な作業の説明が不要な場合は、word形式のシンプルな指示書が適しています。社内でファイルを共有しておけば、すべての部門・部署で使えるテンプレートとして活用できるでしょう。
作業日時、場所、工程、注意事項など、必要な項目のみで構成されたシンプルなフォーマットです。作業の取り組み方や注意点について詳しく説明したい場合は、こちらのように「作業工程」「注意事項」の項目に広いスペースを設けると良いでしょう。
製造指示書などとして活用できるフォーマットです。製品名や製品コード、使用機器に関する項目が追加されているのが特徴です。機器や設備の使用方法、注意事項についてマニュアルへ誘導する際は、マニュアル名とアクセス方法を「備考」欄に記載しておくと良いでしょう。
工事指示書などとして活用できるフォーマットです。簡易的ではありますが、品質管理書、安全管理書の役割も兼ねています。品質・安全チェックについてより詳しく記載したい場合は、別で文書を作成して添付しましょう。
指示書は、作業のスピードや正確性を高める重要なツールです。作成には手間も時間もかかりますが、結果的にミスやトラブルが減り、業務効率が上がると考えれば、投資する価値はあると言えます。
テンプレートを作成したり、電子化したりすることで、作成にかかる時間を短くすることも可能です。まずは、問題が頻繁に発生している作業をピックアップし、指示書を活用できないか検討してみましょう。