「採用してもすぐ辞めてしまう」「離職が続いて現場が疲弊している」という声は、多くの企業の人事担当者から聞かれます。本記事では、定着率の定義・計算方法・業界別の平均値から、定着率を高めるための具体的な改善策まで解説します。自社の現状を把握し、離職防止の取り組みを進めるための参考にしてください。
目次
定着率とは、ある一定の期間に入社した社員のうち、期間が終了した時点で「どれほどの社員が在籍しているか」を表す割合のこと。主に、企業や職場の働きやすさを測る指標として活用されています。
定着率は残った割合を示すのに対し、離職率は「どれほど離れたか」を表します。視点が違うだけで、2つの指標が示す状況は同じです。定着率が高い企業は、離職率が低い企業であると言い換えることができます。
なお、定着率がわかれば離職率を、離職率がわかれば定着率を求めることができます。計算式については、次で詳しく解説します。
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定着率の計算式は次のとおりです。
定着率(%)=(入社人数 − 退職人数)÷ 入社人数 × 100
計算の前提として、対象期間(1年・3年など)と対象者(正社員のみか、パート含むかなど)を統一して設定することが重要です。比較対象によって数値の意味が変わるため、前提条件を明記した上で経年比較することをおすすめします。
自社の定着率を評価するには、業界・規模・雇用形態ごとの平均値と比較することが一つの目安となります。
厚生労働省発行の「令和6年 雇用動向調査」を見てみると、2024年度の常用労働者の離職率は14.2%とあります。定着率は「100(%) ― 離職率」という計算式で求められることから、定着率は85.8%であると言えます。
なお、85.8%という数値は、新型コロナウィルスの発生およびロックダウンの影響を受けた2020年と同じです。2021年以降下がり気味でしたが、再び戻り、2015年からの10年間で最も高い定着率をマークしています。
■参考:「令和6年 雇用動向調査結果の概要」厚生労働省
厚生労働省が発行する「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」によると、2022年の大卒の離職率は33.8%。つまり定着率は66.2%、新卒10人のうち6人は残り、4人は3年以内に辞めているという状況です。なお、短大等卒の定着率は55.5%、高卒の定着率は62.1%という結果になりました。
新卒採用者の定着率が下がると、そのぶん採用・育成コストがかかります。時間と資金を無駄にしないためにも、定着率を向上させたいところです。
■参考:「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」厚生労働省
正社員と非正規雇用では定着率に差があります。非正規雇用は雇用形態の特性上、転換・契約終了による離職が多く、定着率が低く出る傾向があります。雇用形態ごとに離職の要因が異なるため、施策もそれぞれに合わせて設計することが重要です。
業界別で比較してみると、定着率に差があることがわかります。厚生労働省が行った調査2024年の調査結果を見てみましょう。
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業界 |
離職率(一般労働者) |
定着率(100-離職率) |
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鉱業・採石業・砂利採取業 |
9.1% |
90.9% |
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建設業 |
9.7% |
90.3% |
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製造業 |
8.8% |
91.2% |
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電気・ガス・熱供給・水道業 |
7.8% |
92.2% |
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情報通信業 |
9.8% |
90.2% |
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運輸業・郵便業 |
9.1% |
90.9% |
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卸売業・小売業 |
10.7% |
89.3% |
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金融業・保険業 |
7.4% |
92.6% |
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不動産業・物品賃貸業 |
12.6% |
87.4% |
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学術研究・専門・技術サービス業 |
10.3% |
89.7% |
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宿泊業・飲食サービス業 |
18.1% |
81.9% |
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生活関連サービス業・娯楽業 |
16.9% |
83.1% |
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教育・学習支援業 |
8.8% |
91.2% |
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医療・福祉 |
13.1% |
86.9% |
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複合サービス事業 |
7.0% |
93.0% |
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サービス業(その他) |
19.0% |
81.0% |
一般労働者の定着率が最も高い業界は「複合サービス事業」、続いて「金融・保険業」という結果になりました。
反対に、定着率が特に低かったのは「宿泊・飲食サービス業」「生活関連サービス・娯楽業」という結果に。肉体労働の多い仕事や、接客を必要とする仕事、シフト制勤務が多い仕事は、定着率が上がりにくいと分析できます。
定着率向上がもたらす経営的メリットを整理します。
定着率が高い組織では、業務知識やノウハウが個人に蓄積され、組織全体の知的資産となります。また、自社文化を理解した社員が増えることで、リファラル採用(社員による紹介採用)の活性化にも期待できます。優秀な人材の定着が組織の安定と成長を支えます。
1人の社員が離職するたびに、採用・教育にかかるコストが発生します。求人広告費・面接工数・入社後の研修費などを合計すると、1人あたり数十万〜数百万円のコストがかかるとも言われます。定着率を高めることは、コスト削減の観点からも重要な経営課題です。
業務に習熟した社員が増えると、教育の手間が減り、チーム全体のアウトプットが増加します。新人の研修に割く時間が削減されることで、現場の業務効率が改善され、残業時間の短縮にもつながります。
人員が定着することで、過度な残業や人手不足による疲弊が解消されます。職場に安心感が生まれることで、心理的安全性が高まり、社員が積極的に意見を出しやすい環境が整います。モチベーションの高い職場は、さらなる人材の定着を生む好循環を生み出します。
定着率の高い組織には、文化・制度・コミュニケーションにおいて共通する特徴があります。
評価基準が透明で、結果に対するフィードバックが丁寧な企業では、社員の納得感が高まります。「ちゃんと見てもらえている」という実感は、モチベーション維持に不可欠です。評価と報酬が適切に連動していることも、社員の定着に大きく寄与します。
テレワーク・時短勤務・フレックスタイムなど、多様な働き方を認める制度は、ライフイベントによる離職を防ぐ効果があります。「育児や介護があっても続けられる」という安心感が、離職防止につながります。個々の事情に合わせた働き方を選択できることが重要です。
1on1ミーティングや社内交流イベントなど、上司と部下・同僚間の対話機会が多い組織では、悩みや不満の早期発見が可能になります。心理的安全性が確保された職場では、問題が表面化しやすく、早期解決につながります。
企業のビジョンや価値観に共感している社員は、帰属意識が高まり、組織への貢献意欲が持続します。理念が言葉だけでなく日々の業務に体現されている組織では、一体感が醸成されやすく、離職を防ぐ文化的な下地が生まれます。
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定着率向上の鍵は「育成の見える化」にあり
自らキャリアを選ぶ時代となった今、「この会社で成長していけるか」は、離職の判断基準のひとつとなりつつあります。人材育成の見える化は、定着率を上げるうえで欠かせない取り組みと言えるでしょう。 shouin+には、コーストレーニングやチェックリストなど、育成プランおよび学習進捗の可視化を可能にする機能があります。従業員の成長意欲を刺激し、定着率アップをサポートします。 |
なぜ社員は離職を選択するのでしょうか。主要な要因を整理します。
過度な残業、休暇が取りにくい雰囲気、ハラスメントの放置など、基本的な労働環境の問題は離職の直接的なトリガーになります。安全で安心して働ける職場環境の整備は、定着率向上の前提条件です。
評価基準が曖昧で、結果に納得感がない場合、社員のモチベーションは急速に低下します。「頑張っても評価されない」という感覚は、離職の大きな引き金となります。評価の透明性を高めることが、不公平感の解消に直結します。
職場内のコミュニケーション不全や、ハラスメントが見過ごされている状態は、社員の精神的な消耗を招きます。人間関係の問題は離職率に直結するため、早期発見と迅速な対応が求められます。
採用時に期待していた業務内容と、実際の仕事にギャップがある場合、早期離職につながりやすくなります。求人情報や面接での情報開示を丁寧に行い、リアリティを持って入社してもらう取り組みが重要です。配置の段階でも、本人の志向と業務内容のマッチングを意識しましょう。
定着率が低下すると、採用コストの増加・ノウハウ流出・残留社員への負担増という3つのリスクが連鎖します。人材流出が続くと「あの会社はすぐ辞める」というイメージが広まり、採用難につながる悪循環に陥ります。この連鎖を断ち切るために、離職防止を経営課題として優先的に取り組む必要があります。
定着率を向上させるための具体的なアクションを項目別に解説します。
退職者面談(エグジットインタビュー)を実施し、離職の本音を定性的に収集します。在職者へのエンゲージメント調査と組み合わせることで、定量・定性の両面から課題を特定できます。データを蓄積することで、離職傾向のある社員層が見えてきます。
採用基準の見直しや、入社前のリアリティショック軽減(職場見学・現場との面談機会の設置)が効果的です。オンボーディング(入社後の受け入れプログラム)を充実させることで、入社後のギャップを早期に埋め、早期離職を防げます。
評価基準を明文化し、評価者によるフィードバックの質を高めましょう。評価者トレーニングを実施することで、評価の一貫性と公平性が保たれます。定期的な1on1を通じて、成長の実感をタイムリーに伝えることも重要です。
チームを越えた交流イベントや、部署横断のプロジェクトは、社員間のつながりを深めます。コミュニケーションツールの活用によって、日常的な雑談や相談が生まれやすい環境を整えることも有効です。
健康支援、育児・介護支援、資格取得補助など、社員のニーズに合った福利厚生の整備が、職場への満足度を高めます。「自分の生活やキャリアを会社がサポートしてくれる」という実感が、定着率向上に寄与します。
定着率について、よくある質問をまとめました。
定着率80%とは、ある期間(通常1年または3年)に入社した社員のうち、80%が期間終了時点で在籍していることを示します。つまり10人採用したうち8人が残っている状態です。一般的には定着率70〜80%以上が「比較的高い」水準とされますが、業界や雇用形態によって基準が異なります。
定着率の目安は業界によって異なりますが、一般的に1年後定着率は80〜90%、3年後定着率は大卒で約70%が目安とされています。自社の数値を単体で評価するより、同業・同規模の平均値や自社の過去データと比較することが重要です。
定着率は「(入社人数 − 退職人数)÷ 入社人数 × 100」で算出できる重要な経営指標です。離職理由の分析、採用ミスマッチの防止、評価制度の透明化、職場環境の整備など、多角的なアプローチが定着率向上には必要です。まず自社の現状を数値で把握し、優先度の高い課題から着手することが、改善の第一歩となります。
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