流通小売業、レジャー、飲食業態に就業する店長やマネージャーなどの、従業員を指導・教育する立場にある人にとって、課題と感じていることの一つは部下となる従業員、販売スタッフとのコミュニケーションではないでしょうか。
「従業員に効果的な指導ができていない」 「店舗スタッフと意思疎通がスムーズにできるようにするにはどうすればよいか」 「会議をしても売上向上につながるような意見が出てこない」など、部下のとコミュニケーションに関する悩みはつきません。
あらゆるビジネスシーンにおいて、コミュニケーションが存在しています。同じ職場で働く従業員たちには世代や経験値、スキル、性格などさまざまな違いがあるなかで、より良い職場となりより良い業績を求めるときに、コミュニケーションの向上は不可欠となります。
いま、ビジネスにおいてコミュニケーションは上から下への一方方向のものではなく、双方向で意思を通じ合わせる「双方向コミュニケーション」が重要視されています。
今回はビジネスに欠かせない双方向のコミュニケーションとはなにか、また双方向のコミュニケーションのメリットやどのように促進させると良いかについて解説します。
従業員や部下とのコミュニケーションスキルを向上させたい、実践方法を知りたい方のお役に立つことができればと思います。
コミュニケーションとは「情報が伝えらえること、伝達」を意味しており、人とのコミュニケーションは「互いの意図や感情の伝達」を指しています。
情報を分かりやすく正確に伝えること、効果的な情報の『伝え方』としてのコミュニケーションは重要です。
コミュニケーションには一方向に向かうものがあり、これは情報の拡散に役立ちます。マスメディアや講演、書籍やコンサートなどを通して多くのひとに情報が届けられます。人々が情報を取りたい、知りたいというときにこのような情報伝達がなければ調べることができないので、一方向のコミュニケーションは意味があって重要だといえます。
しかしこのような一方向のコミュニケーションでは、部下へのアドバイスやフィードバックの場で上司からの一方的な話の伝達になってしまったり、話の受け手がほんとうに伝えた内容を理解してくれたのかを確認できません。
これに対して一方向への情報伝達にとどまらずお互いに情報や意志、感情を伝え、受け取り合うのが双方向コミュニケーションです。
日本ヘルスコミュニケーション学会によると、「医療機関では患者との双方向コミュニケーションを取ることで患者満足度の向上、 紛争の予防・解決に結びつくという認識が広まっています。また職員のやる気・能力を高め、 組織内の紛争を防ぐことに役立っている」とあります。
さまざまな職場においてコミュニケーションが果たす役割は重要で、双方向コミュニケーションへの関心が高まっているといえます。
双方向コミュニケーションとは、こちらから相手に向けてアプローチするだけでなく、相手からもこちらにアプローチできる状態を指します。
言い換えた表現や類似の言葉がありますので、違いについてまとめます。
【インタラクティブ】
インタラクティブは、英語のinteractiveに由来した言葉で、「相互に作用する」という意味を持ちます。
ITにおいてインタラクティブは「対話型」という意味で用いられることが多く、一方的に情報を提供するのではなく、チャット形式のカスタマーサポートなどのように対話形式で操作を行うことを指しています。
ビジネスの場面では、例えば会議室などで円になって座り、誰もが発言できるようにした上で行うミーティングは、相互にコミュニケーションを取れる状態なのでインタラクティブといえます。
マーケティングにおいては、顧客とコミュニケーションを取り反応を見ながら、商品開発や販売促進を進める形式が取られ始めていますが、このように販売元と消費者との対話型のコミュニケーションもインタラクティブな状態だといえます。教師と生徒や上司と部下などが、双方向にやり取りする状態もインタラクティブであるといえます。
【対話型】
対話型とはお互いが話せるという形のコミュニケーションを指しています。意見交換しながら物事を決定していけるので、一方の意見が押し通される状態とは反対の状態という意味でインタラクティブと類似しています。
多くの職場では世代も職歴も雇用形態もさまざまな従業員が複数人いて、ともに働いています。そこには従業員同士、上司と部下、経営と現場などさまざまな関係性のコミュニケーションが存在しています。
リクルートワークス研究所「コミュニケーション不全解消のシナリオ・序章」によると、組織とは次の3つを行うところだとあります。
組織はこれら3つを満たしながら活動をしていて、これらの活動(目的)を確実に達成する手段がコミュニケーションです。
1においては、マネジャーは部署の方向性をはっきり示し、その上で各メンバーに対して指示や要望を伝え、説得や確認を行います。
2においては、個人が成果を出すためにどのような能力を高めていけばよいかを明示し、期待をかけ、激励し、評価します。
3においては、チームでだれかが成果を挙げたときに一緒に喜ぶ、難しい仕事を乗り越えたときにはねぎらう、失敗したときには慰め、励ます。人がしてくれたことに感謝するなど、感情に寄り添います。
引用:リクルートワークス研究所「コミュニケーション不全解消のシナリオ・序章」
このように組織での活動はコミュニケーションによって成り立っています。このためビジネスにおいては一方向に偏らず、双方向にベクトルが向いたコミュニケーションがとれていることが重要になります。
「双方向にコミュニケーションが取れている」とはどのような状態なのか、例を挙げます。
部下とのコミュニケーションが双方向に取れているとき、どのようなメリットがあるのでしょうか。
双方向コミュニケーションとは、相手の話を受け止めてそれに反応を返す、というアクションとリアクションの行き来といえます。
諸橋 奈々氏の著書『「コーチング」で部下とのコミュニケーションがとれる本 (中経出版) 』によると、この反応の行き来が上手くできていることで、部下との間に安心・安全な環境を整えることができると述べています。
双方向コミュニケーションが取れると、指示された業務に必要な情報をスムーズに共有しやすくなり、意図した結果を生み出しやすくなります。
やるべき業務を情報共有しながら進められるので、業務パフォーマンスも上がりやすく、生産性の高い働きができるようになるでしょう。
また、諸橋氏は書籍においては上司にとってのメリットも大きいといいます。部下から上司への方向で会話やアクションが見られると、上司はより部下の状況や心情を理解しやすくなります。部下が安心して意見を上司に話してくれることで、上司にとって必要な決断や判断、情報収集などが得られ、上司にとって大きなメリットをもたらすとあります。
引用:リクルートマネジメントソリューションズ「人事評価制度に対する意識調査ビジネスパーソンの声からみる、働きがいを高める人事評価とコミュニケーションの鍵とは?」
リクルートマネジメントソリューションズ「人事評価制度に対する意識調査ビジネスパーソンの声からみる、働きがいを高める人事評価とコミュニケーションの鍵とは?」によると、評価の場面における上司とのコミュニケーションで、意欲が上がった瞬間を自由記述で回答してもらったところ、「高い評価そのものに意欲が上がった」と答えた人よりも「承認の実感」が多かった。さらに、「自分を見てくれている」ことそのものへの喜びや、次なる成長に向けた「効果的なフィードバック」を挙げる人が多く見られました。
承認されている実感があると、悩んでいるときや意見があるときにいつでも発言できるようになります。双方向のコミュニケーションが取れる風土が整っていれば、チームや自社に貢献する前向きな気持ちが生まれ、やる気が育成されやすくなります。これによって定着率も上がりやすくなり、離職による人材流出リスクも下げられます。
双方向コミュニケーションが成立していると、業務の枠を超えた会話が生まれやすく、フランクなやり取りがしやすくなります。職場やチームに対して好感を持って、働く環境や組織に安心感を得られやすくなります。
厚生労働省 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」によると、会社として部下と上司の適切な接し方などに取り組んでいる企業は、取り組みのない企業に対して従業員の前向きな行動につながったと効果を認めている企業が多いという結果がみられました。
社内における双方向にコミュニケーションが取れているポジティブな人間関係は、組織の信頼関係を構築します。組織と従業員に信頼関係が構築されている状態にあると、業務においてさまざまなプラスの影響を与えます。
ミスなくスムーズに業務を遂行することで生産性を高めてチームや企業に利益をもたらす、活発な意見交換によって、一人では思いつかないアイディアを提案できるようになるなど、さまざまな相乗効果が生まれることを期待できます。
コミュニケーションが一方向にしかない場合、業務にどういった支障をきたすのでしょうか。コミュニケーション不足に起因するトラブルの例を3つ取り上げます。
HR総研「社内コミュニケーションに関するアンケート2021結果」によると、社内コミュニケーション不足がどのような業務障害を引き起こすかという質問に対して最も多かったのが「迅速な情報共有」でした。
小売店や飲食業では従業員はシフト勤務をしていることが多く、一斉に情報を発信して従業員全員に行き渡ることが難しい環境にあるといえます。また情報共有の指示系統が店長、係長、フロア長、従業員と降りてくる中でコミュニケーション不足があると、情報が滞ってしまい伝達が遅くなる、伝えるべきことが漏れるという恐れがあります。
引用:HR総研「社内コミュニケーションに関するアンケート2021結果」
HR総研のアンケートは2021年に実施したこともあり、働く環境の変化によって通常よりも「情報共有」に対する意識が強く表れる傾向がみられました。
コロナ禍のもとで急きょ導入されたテレワークの拡大によって、社内コミュニケーションは対面からオンラインに切り替えられました。慣れない仕事環境のなかでコミュニケーション不足が発生し情報共有が滞ってしまうと「情報共有の漏れ」につながる恐れがあります。
アンケート結果で、「迅速な情報共有」は前年の2020年より20ポイントほど増加していることから、実際に社内コミュニケーション不足による障害として、情報共有に対する滞りが起きているという意識がうかがえます。
リクルートマネジメントソリューションズ「人事評価制度に対する意識調査ビジネスパーソンの声からみる、働きがいを高める人事評価とコミュニケーションの鍵とは?」によると、
評価の場面における上司とのコミュニケーションで、意欲が上がった瞬間を自由記述で回答してもらったところ、「高い評価そのものに意欲が上がった」と答えた人よりも「承認の実感」が多かった。さらに、「自分を見てくれている」ことそのものへの喜びや、次なる成長に向けた「効果的なフィードバック」を挙げる人が多く見られました。
承認されている実感があると、悩んでいるときや意見があるときにいつでも発言できるようになります。双方向のコミュニケーションが取れる風土が整っていれば、チームや自社に貢献する前向きな気持ちが生まれ、やる気が育成されやすくなります。これによって定着率も上がりやすくなり、離職による人材流出リスクも下げられます。
双方向コミュニケーションが成立していると、業務の枠を超えた会話が生まれやすく、フランクなやり取りがしやすくなります。職場やチームに対して好感を持って、働く環境や組織に安心感を得られやすくなります。
厚生労働省 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」によると、会社として部下と上司の適切な接し方などに取り組んでいる企業は、取り組みのない企業に対して従業員の前向きな行動につながったと効果を認めている企業が多いという結果がみられました。
社内における双方向にコミュニケーションが取れているポジティブな人間関係は、組織の信頼関係を構築します。組織と従業員に信頼関係が構築されている状態にあると、業務においてさまざまなプラスの影響を与えます。
ミスなくスムーズに業務を遂行することで生産性を高めてチームや企業に利益をもたらす、活発な意見交換によって、一人では思いつかないアイディアを提案できるようになるなど、さまざまな相乗効果が生まれることを期待できます。
職場に置いて従業員同士の双方のコミュニケーションが大切だとわかっていても、実際に部下へのフィードバックや教育の場面でどういった指導をすれば良いのか、悩んでいる上司・マネージャーは多いと思います。双方向のコミュニケーションを実際の職場で取り込むためのポイントを4つ取り上げます。
上司と部下とのコミュニケーションにおいて、距離感については双方が悩んでいるケースが多いといいます。部下と上司が双方向にコミュニケーションをとるためのポイントのひとつは、程よい距離感を持つこと、相手との距離をはかることが大切です。
ビジネスコーチングを専門とする諸橋奈々氏の著書には、双方のコミュニケーションを始めるにはルールがあるといいます。相手の性格に合わせて近すぎず遠すぎずの距離で互いの中で確認をしていくことが大切だと書かれています。
人材育成・コミュニケーション教育者である桑野麻衣氏の著書『「部下を元気にする、上司の話し方」 CrossMedia Publishing』によると、上司と部下では距離感に対して感じ方に相違があるといいます。上司が親しみやすさをもって接する言動が、部下にとっては馴れ馴れしいと感じているのです。はっとさせられる上司の方もいらっしゃるかもしれません。
この両者の感じ方の相違について桑野氏は、「親しみ」と「馴れ馴れしさ」を分ける点がひとつあると著書の中で述べています。それは親しみと勘違いして人の気持ちにずけずけと入っていくということです。そして人の心に土足で踏み込んでくる上司の特徴には「適切な距離感が測れない」「部下をバカにしてみている」があると言及しています。
部下を尊重していることを示す例として、敬語で話すことがあります。相手との関係性が成り立つ前に厳しい命令口調で話したり、馴れ馴れしい口調で話さないことが大切です。
また部下に対して、意見が聞きたい、コミュニケーションを始めたいという意志表示をすることが大切です。「5分ほど時間をいただけますか?」と話しかけて部下の許可を得ることも双方のコミュニケーションを円滑に進めるポイントになります。
一度のコミュニケーションでひとつに絞ることを心掛けることも円滑な情報共有を行うために有効です。
いくつもの項目を詰めこむと、情報過多となり部下は何を言われたのか不明になります。伝えるべきことが伝えられず情報共有に漏れが生じてしまいます。
また会話が脱線して別の話題に話をすすめてしまうと、結局何を伝えられたのかがわかりにくくなります。
「コーチングで部下とのコミュニケーションが取れる本」によると、情報を伝える側が、何のために今この話を伝えるのか、コミュニケーションの目的を明確にしておくことで脱線を防ぐことができるとあります。
経験値や立場、考え方が違う相手に対して一度に複数の伝達をすると、受け取り方のズレやミスコミュニケーションが発生する可能性があります。
一度のコミュニケーションで伝える情報をひとつに絞ることで、伝えたいことに焦点が当たり、内容を理解しやすくなります。一度のコミュニケーションにかかる時間が短くなるので、双方にとってストレスのないやり取りができるようになります。
コミュニケーションを一方向に終わらせないようにするには「伝える力」だけではなく「聴く力」が必要となります。
部下の提案や意見を「すでに分かっていること、 つまらないことまで 聴くのは 時間の無駄だ」と思うときもあることでしょう。しかし簡単に「ダメだ」「無理だ」と否定してしまうと、部下からのコミュニケーションは閉ざされてしまうかもしれません。
相手の話をじっくり 聴くというのは、忍耐力が必要な場合もあります。
本間正人氏の著書『 [図解] ビジネス・コーチング入門 「双方向」コミュニケーションへの50の視点 (PHP文庫) 』には、 相手はコミュニケーションを通して「共感して欲しいという欲求」を期待しているため、最後 まで 聴くという 姿勢を持つ だけで人間関係が改善する場合もあると書かれています。
双方向コミュニケーションを向上させる大切なポイントは聞いている姿勢を見せることです。
「目線を合わせる」「顔を向き合わせる」「頷きや相槌など反応を見せる」「メモを取りながら聴く」などがあります。
本間正人氏は著書において、相手の話を遮ったり否定してしまわないように相槌のフレーズを用意して置くことを勧めています。
「 なるほど」「そうですね」「 それで」「そういう考え方もありますね」「 うーん、そういう ふうに 考え たことはなかったなあ」「それは 面白い考えだね」など、いいやすいフレーズを準備しておき、相手の話に挟んでいくと、話を聞いてもらえていると伝わり、安心してコミュニケーションを取ってくれるようになります。
ポジティブなコミュニケーションを取るために、忙しくとも相手をないがしろにしないよう意識していきましょう。
部下へのフィードバックで指摘したいポイントがあるならば、内容を明確にしておくことが重要です。明確にした指摘ポイントを的確に伝える方法として、結論から話し始めることも有効です。
結論先出しで話し始めることで、前述した「伝えたい内容」が一目で伝わります。
PREP法を意識して、Point(結論)→Reason(理由)→Example(実例・具体例)→Point(結論)の順で話せれば、より分かりやすくなるでしょう。
さらに相手に伝わりやすく話すには、具体的な説明をすることが大切です。
抽象的な表現で伝えると人によって受け取り方が異なるため、ミスコミュニケーションを引き起こす原因を生じやすくなります。
そもそも上司が頭に浮かべているイメージを言葉で相手に伝えることは、難易度が高いものです。言葉での不完全な情報伝達はときとして業務遂行の障害になりえます。
本間正人しは書籍「図解 ビジネス・コーチング入門」において、自分のメッセージを的確に、そして効果的に部下に伝えたい場合には、ビジュアルサポートを活用すると良いとしています。数字や根拠など客観的かつ定量的に伝える方法を探し、図や表、グラフ、画像、動画などを取り入れるなどがあります。このポイントによって、情報を伝える側と受ける側に大きな相違ができることを防ぎ、効果的に伝えられるとしています。
他の人よりも売上が低い部下に対して、
「客単価をもっとあげる努力をして」と話しても、どのように努力すればよいか部下はわかりません。
これを、「あなたの先月の平均客単価は、店舗平均よりも◯◯円低いので、セット販売できるようにもう1点プラスしたくなるようなセールストークを準備して接客してくださいね」というように、指導のための伝え方を変えてみると良いでしょう。
双方向のコミュニケーションを実現させるためには、いくつか効果的な方法があります。ここでは 4つご紹介します。
双方向のコミュニケーションを促すための方法のひとつに、定期的な1on1の実践があります。上司と部下が1対1でコミュニケーションをとれる機会を定期的に設ければ、普段の業務においては話しにくい内容も話し合うことができます。部下にとっては普段の業務で感じている疑問や不安、困っていることなどを伝えることができ、上司は組織として現場で働く部下に何を求めているか伝えることができます。定期的に話せる機会を設けて互いに理解を深めるきっかけにしましょう。
部下と話す機会は、回数や頻度も重要だといいます。
松下直子氏の著書「OJTで面白いほど自分で考えて動く部下が育つ本 あさ出版」によると、コミュニケーションは頻度が重要だと書かれています。
月に一度3時間話すよりも、毎日1分でいいので部下に声をかけるほうが、部下にとっては上司とコミュニケーションが取れていると感じらられるといいます。
職場の上司は職務・業務の指示・命令を行い、組織目標の達成を行います。
それに対してメンター制度とは、新入社員(メンティ)に対し、社内の先輩社員(メンター)を割り当てて悩みに対する助言を行う個別支援制度です。
新入社員は慣れない環境のなかで業務を覚えていくなかでさまざまな悩みを抱える可能性があります。
定期的にメンターとメンティとが面談(メンタリング)を重ねることで信頼関係を育む中で、メンターはメンティの抱える仕事上の課題や悩みなどに耳を傾け、相談に乗ります。そして、メンティ自らがその解決に向けて意思決定し、行動できるよう支援します。
メンターとの双方向のコミュニケーションが取れて何でも相談できれば悩まされることが減りますし、孤立せず社内に馴染みやすくなります。
厚生労働省「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によると、メンター制度による効果を調査したところ、メンティ(部下)のモチベーションが上がったとの回答が63.6%ありました。双方向のコミュニケーションによって、部下のやる気を引き出す効果があることがうかがえます。
カフェスペースを設置して、部署を超えてコミュニケーションが取れる場所を作るなど、オフィス環境を整備することもひとつです。
喫煙者の方々が「喫煙スペースが情報交換の場として大切だ」と話しているのを聞くことがありますが、上司と部下が、また他部署の人同士がフラットに話ができる場所をつくることも、双方向のコミュニケーションを構築しやすくするひとつの方法です。
フリーアドレス制を採用する企業も多いと思います。オフィス環境美化にもつながる制度ですが、他部署の人と席が近くなることで、お互いがどんな業務を行っているかが分かりますし、情報交換もしやすくなります。
店舗のキャンペーンや決済方法の追加など店舗には日々の連絡事項があり、店長やマネージャーは店舗に関わる従業員全員に対して情報をくまなく周知させなければいけません。
しかし店長から係長、フロア長を通してパート従業員まで情報が伝わるのには時間がかかります。また情報が途中で間違った内容に変換される恐れもあります。
さらに多くの小売店では、シフトを組んで勤務しているため、コミュニケーションが十分に取れないなかで情報共有が難しい場面もあります。
このような勤務期間が従業員によってバラバラとなる職場であっても、ツールを導入することで、共有したい情報や連絡事項がもれなく従業員ひとりひとりに伝えることができます。
双方向のコミュニケーションを徹底することで、上司と部下の間に信頼関係が生まれ、このことが情報共有の徹底や業務の効率化、また部下のモチベーションの向上につながります。
職場の従業員が全員で同じ情報を共有し、同じ方向を向いていると業務はスムーズにすすめることができて、よりよい成果を生み出すことが期待できます。
部下とのコミュニケーションに不安や問題を抱えているならば、上記の内容でできるところから始めてみるましょう。情報共有には適切なツールの活用も検討してみるのも一案かと思います。