「劣悪な労働環境」「労働環境の整備が必要」など、ニュースや書籍でよく耳にする「労働環境」。
近年、従業員にとって働きやすい環境を作ろうと、労働環境を整備する企業が増えてきています。しかし、職場環境への不満を漏らす人はまだまだ多いのが現状。「劣悪な労働環境が原因でうつ病になった」「仕事を続けるのが困難になった」という訴えるケースも少なくありません。
では、経営者や人事担当者は、どのようにして労働環境を改善すれば良いのでしょうか?
当記事では、労働環境とは何か、問題視される労働環境問題、改善するための対策例など、労働環境に関する知識を解説します。
従業員からの不満の声や離職にお悩みの方はもちろん、問題発生防止のために対策を取りたい事業者の方も、ぜひご覧ください。
労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のこと。場所や時間など、従業員が働く上でのあらゆる環境のことを指し、労働環境が悪い企業のことを「ブラック企業」と呼ぶこともあります。
事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。労働基準法特別法である「労働安全衛生法(以下安衛法)3条の1」においても、以下のように記されています。
快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。
労働環境の改善は、従業員の定着や生産性の向上など、企業の利益アップに繋がるため非常に重要です。
「コストをかけたくない」「自社で労働災害が発生していないため問題ない」などを理由に、労働環境の改善をおろそかにしてしまいがち。しかし、従業員の健康を害する恐れがあるため、事業者は労働環境の整備を軽視してはならないのです。
従業員の身に危険を及ぼす労働環境の要因とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。次に、労働安全衛生法(以下安衛法)にて定められている、主な3つの環境要因について解説します。
気候的な環境要因の条件には、気温や気圧、湿度、風速、紫外線などが挙げられます。
例えば、オフィスや現場が寒すぎる、暑すぎるなど、従業員が不快に感じてしまう室温だと、仕事に集中できなくなり、生産性が落ちてしまいます。
最悪の場合、熱中症などのような体調不良を引き起こす可能性もあるため、対策を取るべき要因として重視すべきとされています。
物理的な環境要因の条件には、振動、照明、騒音、超音波、電離放射線などが当たります。一時的であれば問題なくとも、常態化すると体調を崩したり、職業病を引き起こしたりする恐れがあるため、注意が必要です。
科学的な環境要因の条件には、ガスや蒸気、病原体、粉じん、有害物質、酸素欠乏空気などが挙げられます。「じん肺」と呼ばれる肺の病気や、めまい、意識喪失などの体調不良を引き起こす可能性があるため、未然に防ぐための対策を取るよう規定されています。
安衛法は、労働災害の発生を防ぐために必要な最低限の基準。安衛法の基準をクリアしていても、従業員にとって不適切な労働環境になりうる可能性が十分にあります。
そこでここからは、一般的に問題視されている主な4つの労働環境問題を紹介します。
労働環境改善への適切な対策・措置をとるため、どのようなことが問題になりやすいのか事前に把握しておきましょう。
給与は、従業員に与えるストレスレベルを左右する、重要な要素。労働に見合う対価が与えられないと、従業員の仕事に対するモチベーションは下がってしまいます。また、貯蓄が難しくなることから、将来への不安が募り、精神的に不安定になることも。
(出典:令和3年 国民生活基礎調査(令和元年)の結果から グラフでみる 世帯の状況)
「国民生活基礎調査」によると、1世帯当たりの平均所得金額は、1994年の664万2千円をピークに減少傾向にあります。2013年より徐々に回復しつつあるものの、ピーク時と比べると、2018年時点では約17%減少しており、労働者の給与低下は未だ改善されていません。
事業者としては、会社の利益率アップのため、従業員への給与を削減したいという考えもあるでしょう。しかし低賃金は、労働者に不安や不満、ストレスを与え、仕事対するモチベーションを奪ってしまいます。仕事に対するやりがいをなくしてしまうと、生産性が落ちるため、かえって逆効果になるのです。
また、従業員が給与に満足できないと、より待遇の良い会社への転職を考えることも。離職する人が増え、人員不足や長時間労働などの問題へと発展する可能性があります。
売上げの低迷などにより、どうしても十分な給与を確保できないということもあるでしょう。しかし、低賃金は労働環境悪化の原因となり、従業員にとっても企業にとっても、良いことはありません。定期的に給与を見直し、適切な金額かどうかを確認、そして調整することが重要です。
長時間労働は、肉体的にも精神的にも負担がかかるもの。仕事への集中力が低下し、生産性が下がるだけならまだマシですが、度を超えると病にかかったり、最悪の場合死に至ったりする可能性があるため、慎重に捉えるべき問題です。
「平成30年版 子供・若者白書」のデータによると、長時間労働は初職の離職理由として「仕事が自分に合わなかったため」「人間関係が良くなかったため」に次ぐ第3位に挙げられており、全体の約2割を占めています。
社員が病にかかった、過去に死者が出たなどのような事例がない会社でも、長時間労働が理由で従業員が離職することは十分起こり得るため、管理者は決して無視できません。
労働基準法により、法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められています。それを超える場合は長時間労働とみなされ、「36協定(サブロクきょうてい)」と呼ばれる届け出を提出しない限り、行ってはならないという決まりです。36協定に関しては以下の記事を参考になさってください。
■参考記事はこちら
長時間労働を引き起こす原因には、さまざまな事柄が挙げられます。
例えば、人員削減により一人当たりの仕事量が多すぎる、というケース。就業時間内に仕事を終えることができず、残業や休日出勤をせざるを得ない状況を引き起こします。
また、職場の人間関係が長時間労働を引き起こす原因となることも。日本では、上司や先輩よりも先に帰宅すると、失礼になるという風潮があります。徐々に改善されつつあるものの、まだまだそのような風潮が残っている会社が多いようです。
「ノルマは達成しているのに、定時で退社すると上司から嫌味を言われる。」と悩む社会人も少なくないので、事業者は職場の人間関係にも目を向け、改善していく必要があるでしょう。
事業を運営する上で、利益を上げるために人員削減を行うことが多々あります。収益がなかなか上がらない場合に、コスト削減を目的として講じる対策のひとつです。
しかし人員不足は、従業員一人一人への負担が大きくなり、労働環境を悪化させる原因に。「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」による調査の上図でも分かるとおり、長時間労働や人間関係の悪化、労働意欲の低下など、職場にさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあります。
また人員不足の職場では、従業員へ十分な教育をすることが難しくなってしまいます。
教育が行き届いてないと、仕事を正しくこなすことが困難になるため、従業員は「自分は仕事ができない。」と自信を失うことに。「この仕事に向いていないかもしれない。」と考え、離職するケースもあり、結果的に人員不足が続く負のループに陥ってしまうことでしょう。
人件不足を回避するには、企業は従業員の定着、および離職防止への対策を取る必要があります。そのためにも、従業員が心地よく働ける労働環境を整えておくことが大切です。
労働生産性とは、「従業員一人あたりが会社の利益のために生み出す成果」のこと。「労働の成果」を「労働の投入」で割って計算することで数値化されます。
労働生産性が高ければ高いほど、少ない人員でも成果が出やすく、効率よく利益を生み出せます。反対に労働生産性が低ければ、いくら人員を投入しても成果が少なく、会社の利益を増やすことが困難になるでしょう。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査(地方調査)」を元にした参議院の調査「労働時間、賃金、労働生産性の関係について」によると、労働生産性が低いと従業員への給与が少なく、労働時間が長いという結果に。つまり労働生産性の低下は、「低賃金」や「長時間労働」などの労働環境問題を引き起こす要因であるということです。
労働生産性の低迷は、従業員のスキルが不十分、仕事に対するモチベーションの低下などが原因として挙げられています。
さらに元をたどると、給与の減少、人件不足、長時間労働といった労働環境問題が原因。また、労働生産性が低いと会社の利益が上がりにくくなるため、結果的に給与の減少、人員不足、長時間労働などの問題が発生します。
つまり、一般的に問題視されている労働問題は、それぞれが因果関係にあるということになります。一つの問題を解決するには、その他の問題に対しても対策を取る必要があり、反対に一つの問題を改善すれば、他の問題が解決する可能性が高いと言えるでしょう。
日本の労働環境は、メディアによる認知度アップや、労働基準法の改定などの影響で徐々に改善されつつあります。しかし、未だに解決していない問題点が多いのも現状。時代の変化によって新たに発生した労働環境問題も加わり、まだまだ改善の余地があります。
ここでは、なかでも把握しておくべき「パワハラ・セクハラ問題」「長時間労働・サービス残業の常態化」が、現在日本でどのような状況にあるのか解説します。
パワーハラスメント(以下パワハラ)とは、役職や職場での優位性を理由に、相手に精神的・肉体的な苦痛を与える行為のこと。厚生労働省では、「優越的な関係に基づいて、業務の適正な範囲を超えて身体的、若しくは精神的な苦痛を与えること」と定義しています。
具体的には、体を叩く、暴言を吐き罵倒する、特定の社員のみを意図的に組織から除外する、休日出勤を強制するなどのような行為が、パワハラ行為として過去に訴えられている事例です。
またセクシュアルハラスメント(以下セクハラ)とは、労働者の意に反する性的言動により、労働者が職場での不利益を被ったり、就業環境が害されたりすることを指します。男性労働者から女性労働者へのセクハラが多いイメージがありますが、近年は女性から男性へ、同性間でなど、性別問わずセクハラを訴える事案が増えてきています。
パワハラ・セクハラは、従業員の離職に繋がる可能性があるとして、メディアでも多く取り上げられている労働環境問題のひとつ。実際に、「レバレジーズ株式会社」が公表したデータによると、パワハラ・セクハラが理由で離職した経験がある人は2018年時点で全体の29.2%、2019年には41.8%を占めるという調査結果が出ています。2018年から2019年にかけて12.6%も増えており、年々悪化しているという状況です。
そのため厚生労働省では、職場でのパワハラ・セクハラ問題解決に向けて、相談窓口を設けるよう義務付けています。また、問題発生時に迅速かつ適切に処置をとることも、事業者の義務としています。
しかし、どこからが問題でどこまでがセーフなのか、判断が難しいとも言われています。精神的、肉体的な苦痛を受けているにも関わらず、被害者が訴えることを躊躇してしまい、我慢し続けるというケースも少なくありません。
また、行為者側に自覚がないことが多いのも、パワハラ・セクハラ問題が解決されにくい原因のひとつ。指導やコミュニケーションのつもりで行っている場合も多く、指摘されてからようやく気づくということが多々あります。
パワハラ・セクハラ問題を減らすためには、さまざまな対処法を考えておく必要がありますが、まずは職場内でのコミュニケーションを円滑にすることが大切。パワハラ・セクハラが起きていないか監視しやすくなり、未然に防ぐことができるからです。
また、被害を受けている人の悩みを聞くことで、深刻化の防止にも繋がるため、事業者は職場の風通しを良くするよう労働環境を整えておく必要があるでしょう。
労働基準法「36協定」により、日本の長時間労働問題は徐々に改善されつつあるものの、未だ問題視されている課題です。
総務省の「労働力調査」によると、週の労働時間が60時間を超える雇用者の割合は、減少しているかのように見えます。しかし実際は、タイムカードを切った後に仕事をさせる、休日出勤をさせて出勤の記録を残さないなど、いわゆる「サービス残業」を行なっている会社が少なくないと言われています。
また、厚生労働省の「令和2年度 過労死等防止対策白書」では、脳や心臓の疾患を発症する要員として最も多いのは「拘束時間の長い勤務」であるというデータもあり、長時間労働は深刻な問題として捉えられています。
有給休暇が取りにくいことも、長時間労働問題を引き起こす要因として挙げられます。
日本では労働基準法により、半年以上継続して勤務していて、かつ全労働日の8割以上を出勤している労働者に対し、年に10日以上の有給休暇が与えれています。しかし、人員不足や生産性の低迷などの理由で、仕事が追いつかず、有給を消化しきれない労働者が多く存在します。
また、有給休暇の申請をすると上司に嫌な顔をされるなど、人間関係が理由で有給休暇が取りにくいという労働者も。日本特有の遠慮する文化、角を立てない風潮が、未だに多くの事業内で根付いていることが原因として考えられます。
最近では「働き方改革」などのような、労働環境を改善するための対策も講じられるようになりました。とはいえ、長時間労働に苦しむ人はまだまだ多いため、事業者はそれを把握し、自社の労働環境整備に務める必要があるでしょう。
労働環境に関する問題点が分かったところで、次に改善方法について解説します。
企業によって最善の解決策は異なりますが、ここでは一般的に有効とされる方法を3つ紹介します。自社に導入できるものがないか、ぜひ検討しながらチェックしてみてください。
従業員にとって働きやすい環境を作るためには、一人一人に合わせた働き方を提供するという方法があります。2019年4月に執行された「働き方改革」がまさに、働き方の多様性を持たせるために設けられた施策です。
具体的な解決案としては、女性や高齢者が働きやすい環境を作る、障害のある人や国籍に関係なく雇用する、などが挙げられます。また、リモートワークやサテライトオフィスの導入も、労働環境改善のために近年多く取り入れられている方法です。
例えば、「サントリーホールディングス」ではテレワーク、フレックスタイム制度を導入しています。さらに、出産・育児支援制度も取り入れており、育休後の復職率100%を達成。時間に制限がある社員でも心地よく働ける環境を作るため、多様性のある働き方を活用しています。
労働環境の改善には、労働時間短縮などの肉体的な負担軽減だけでなく、精神的な負担を減らすためのサポートも必要です。
「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」による研究では、メンタルヘルスの再発を繰り返せば繰り返すほど、従業員の退職率が上がるという結果が出ています。「ほとんど再発はない」場合でも退職率17.5%と高く、一度でも精神的な病を抱えてしまうと離職する可能性は十分にあります。つまり、従業員にとって働きやすい職場を作るためには、メンタルヘルス対策の徹底が必要不可欠なのです。
厚生労働省が掲げる、「メンタルヘルスケア対策の指針」は以下の4つ。
「セルフケア」は、労働者が自身のストレスに気づき、対処すること。手っ取り早くストレスの深刻化を防止できますが、本人が適切な対処法を理解していない限り、解決へと導くのは難しいでしょう。
「ラインによるケア」とは、職場の管理者が労働者を監視し、相談に応じたり、問題が起きた場合に対処することを言います。セルフケアでは改善できないストレス問題に対し、適切な対処を取るために必要です。
「事業場内産業保健スタッフによるケア」とは、事業内部の産業医や保健師、精神科の医師、人事労務管理スタッフが、労働者のメンタルケアを行うこと。セルフケアやラインケアのサポートをしたり、メンタルヘルスケア実施のための企画を立案したりすることを指します。
「事業場外資源によるケア」とは、都道府県メンタルヘルス対策支援センター、地域産業保健センター、医療機関など、事業の外部から労働者のメンタルヘルス対策を行うこと。また、専門家とのネットワークを構築し、いつでも活用できるような状態にしておくことも、メンタルヘルスケア対策のひとつです。
感じるストレスの度合いは、人によってさまざま。自分がどれだけストレスを感じているのか、本人では気づきにくいということもあるでしょう。
その結果、うつ病を発症してしまうことも。一度病気にかかってしまうと勤務するのが難しくなり、仕事に復帰するのにも時間がかかります。
生活するのが困難な状態が何年も続くということになりかねないので、あらゆるメンタルヘルスケア対策を講じておくことが重要です。
最近はIT技術が進み、労働環境の改善に役立てられるITツールも数多く存在します。
などのようなツールが代表的です。
Web会議システムを使えば、遠方で働く従業員とミーティングを行う際、わざわざ移動する必要がありません。このツールはリモートワークにも活用でき、労働者の肉体的負担を減らすことへと繋がります。
またビジネスチャットは、複数人でコミュニケーションを取りたい場合に便利。メールよりもやりとりが簡単で、報告、連絡、相談をスピーディーに行うことができます。仕事の効率アップ、生産性の向上に貢献してくれるでしょう。
「日産自動車株式会社」では、社員が積極的かつ効率良くテレワークを行えるよう、在宅勤務専用のサイトを立ち上げ、活用しています。また、休職中の従業員にはパソコンの貸し出しを行っており、「復職後スムーズに仕事ができる」「休職中でも疎外感を抱かない」などの前向きな意見も多く寄せられているそうです。
従来のやり方を変え、新しいツールを導入することに対して抵抗がある、という人も少なくありません。しかし、さまざまな問題を抱える労働環境を改善するには、人の手だけでは不十分ということもあります。
事業者は、自社の状況に合わせてベストな対策を講じられるよう、常に柔軟な考えを持って取り組むことが大切です。
労働環境問題への対策をとれば、必ずしも状況が改善されるというわけではありません。改善したつもりがかえって逆効果になったり、新たな労働環境問題が発生する可能性もあります。
最も適切な処置を取れるよう、労働環境を改善するときに注意すべきポイントも把握しておきましょう。
労働環境を改善する際は、事業者や管理者側のみで判断しないことが大切。従業員にとって良かれと思って講じた対策でも、かえって負担になる可能性があるためです。
従業員にとって本当に働きやすい環境を作るためには、従業員満足度を調査する必要があります。社員にアンケートやインタビューを行うことで、何が問題なのか、最適な改善策は何かをきちんと把握できるようになるのです。
ただし、従業員満足度の調査に対し、従業員が全てを真実で伝えるとは限りません。「角を立てたくない」「自分への評価が下がるのではないか」という不安から、本音を隠してしまう可能性があるからです。
従業員が本音で調査に応えられるよう、アンケートの記入を匿名にするなどの工夫を凝らすことが大切。また、従業員満足度の結果が全てと思わず、日頃から観察して判断するようにしましょう。従業員満足度に関しては、以下の記事を参考になさってください。
従業員満足度(ES)とは?測り方や満足度を高める方法、改善事例を解説!
ある業務を特定の従業員が担当することを指す、「属人化」。担当する社員のスキルアップになる、顧客の獲得・定着に繋がるなどのメリットがあり、営業職や接客業などでは積極的に取り入れている手法です。
しかし、担当者が不在の場合に他の従業員が対応できず、業務が滞る、担当者への負担が大きくなるなどのデメリットもあります。結果として労働環境が劣悪になる恐れがあるため、状況によっては属人化を避けなくてはなりません。
労働環境を整える際、従業員が行う業務システムを変更することもあるでしょう。その場合に、属人化が適切なのか、かえって状況を悪化させてしまわないか、慎重に見極めることが重要です。
労働環境の改善するために社内システムを変更すると、不利益が生じることもあります。例えば、新システムの大幅な変更によって従業員がストレスを感じる、労働時間削減により一人一人の作業負担が増える、などの問題が発生することが考えられます。
そのような事態を回避するには、労働環境改善への対策が本当に適切かどうか、何度も検討することが重要。また、対策を講じたらそのまま放置するのではなく、定期的に問題がないか確認することで、より良い解決方法が見つかりやすくなります。
労働環境の改善に成功した事例を3つご紹介します。どのような制度を導入しているのか、具体的な内容もご紹介するので、自社に取り入れられるものがないかぜひ検討しながらご覧ください。
ファッション事業やフード事業、ビューティー事業など幅広い事業を手がける「マッシュホールディングス」。当社では、従業員の9割が女性であることから、子育てをサポートする制度を設けています。
なかでも注目されているのが、従業員の就業中に子どもを預かる「マッシュの森保育園」。生後57日〜2才までの子どもを朝9時〜夜8時まで預けることができる、従業員のために作られた事業内保育園です。
接客業は、シフトによって帰りが遅くなることもあり、幼い子どもの送り迎えに苦労する親が少なくありません。しかし「マッシュホールディングス」では、事業内保育園を設置することで、就業しながらの子育てを可能にしています。
有給制度があるにも関わらず、有給を取ることに対する抵抗があるという従業員も多いでしょう。
「株式会社三菱ケミカルホールディングス」では、そのような問題への対策として、「ライフサポート休暇」という独自の制度を導入しています。有給休暇を連続して2日以上取ると、プラスで特別休暇が与えられるというものです。
また、勤務時に使うコンピューターへのログイン・ログオフ時刻を記録する、勤務表で休憩をきちんと取れているか確認するなど、長時間労働を避けるために労働時間を徹底管理しています。ITツールをうまく活用し、従業員の肉体的負担の軽減に注力している企業です。
地域の月刊情報誌を発行する、栃木の企業「新朝プレス」。こちらの会社では、残業時間の削減や職場環境の整備・改善など、社員に心地よく働いてもらうため、さまざまな取り組みを行なっています。
なかには、従業員の家族が職場を見学できる「ファミリーデー」や、所定のスポーツジムを自由に利用できるなどのユニークな制度も。形にとらわれない労働環境の整備に、社員から好評の声も多いとのことです。
労働環境を改善するための方法は、多岐に渡ります。「これを行うと良い」といった正解はなく、どのような環境が従業員にとって一番良いのか、事業それぞれで考える必要があります。
また、時代の変化や従業員の入れ替わりによっても、ベストな労働環境は変化します。長期的な会社の利益へと繋げるためにも、労働環境が適切かどうか常にチェックし、実行、改善し続けることが大切です。