人の入れ替わりが激しく、業務品質が安定しない。従業員教育が追いつかない。そもそも教える時間も指導者もいない。
それらの問題をまとめて解決する方法として挙げられるのが「フォーマット化」です。誰が担当しても効率よく、かつ同じ品質で作業できるよう仕組み化することを指します。
本記事では「フォーマット化」の意味や目的、取り組むべき理由についてわかりやすく解説していきます。フォーマット化の具体的な例や進め方など、現場で活かせる情報も記載していますので、業務の効率化、品質向上を目指している方はぜひご覧ください。
フォーマット化とは
近年は、さまざまなシーンで「フォーマット化」という単語を耳にします。しかし、言葉の明確な意味は知らない……という方も多いのではないでしょうか。
まずは「フォーマット化」とはどういうことなのか、基本から見ていきましょう。
基本的な意味
フォーマットは、英語の「format」を日本語に訳した単語です。「型」「構成」「形式」などといった意味があります。
このことから、フォーマット化は「形式化」と言い換えることができます。物事のバラツキを解消するため「一定の型や枠組みを作る」ことを指します。
ビジネスでは、一般的に「書類やメールなどの基本構成・骨組みを作る」という意味で使われます。
出張報告書を例に挙げてみましょう。出張報告書には、出張期間、出張先、訪問先などを記載します。それらを「必須項目」とし、共通のルールとして従業員に共有します。
報告者が書類を作成する際は、その枠に沿って項目を埋めていくだけです。そうすることで、誰もが正しく、わかりやすい報告書を作成できます。それが「フォーマット化」です。

書類だけでなく、業務手順や従業員教育などもフォーマット化できます。業務のやり方、従業員への教え方の「型」を決めることでバラツキの解消を図ります。
なお、IT分野では「初期化」という意味でフォーマット化が使われることもあります。ですが、本記事では「型や枠組みを作り、やり方を統一すること」という意味で使用します。
目的
フォーマット化の目的は、主に以下の3つです。
- 業務効率化
- 業務と成果の品質安定
- 従業員教育の負担軽減
従業員は、一人ひとり能力も性格も異なります。スムーズに仕事をこなせる人もいれば、完了までに時間がかかる人もいるでしょう。仕上がりに差が出るのも当然です。
フォーマット化は、そのようなムラをなくすために行います。
道しるべとなる「型」があれば、経験が浅い人も、迷わず作業を進められます。枠に沿って進めるだけで、誰もが効率よく取り組めるようになるのです。やり方が統一されることにより、業務品質も標準化されます。
また、部下・後輩育成を行う際、基本となる型があれば、いちから教える必要がなくなります。報告書の書き方を事細かに教えるより、型を渡して、部分的に修正する方がずっと効率的です。教える側と教わる側、双方の負担を減らすためにも、フォーマット化は欠かせない取り組みなのです。
フォーマット化が求められる背景
フォーマット化、仕組み化、マニュアル化といったワードが飛び交うようになったのは、最近のことではありません。それでも廃れることはなく、むしろ注目度は年々上がっています。
なぜそれほどまでに重要視されているのか。なぜ、いま業務のフォーマット化に取り組むべきなのか。理由を深掘りしていきましょう。
業務の複雑化とスピード要求
企業の人手不足が進む現代。従業員一人ひとりが担う業務は増え、内容も複雑になってきています。
そのうえ、目まぐるしく変化する社会に合わせて、企業も変わっていかなければなりません。新たに開発された技術に目を向け、ときには組織そのものの形を変え、新たな価値を創造し続ける……そうしなければ生き残っていくことができない時代です。
日々の業務をこなしつつ、企業が前へ進むための時間を確保するには、何かを削らなくてはなりません。そこで候補に挙がるのが、レギュラー業務のフォーマット化です。誰もが等しく、効率よく業務を遂行できる仕組みを作ることで、イレギュラーな業務、クリエイティブな業務に投資するための時間と人を確保するのです。
教育・引き継ぎの負荷増加
転職や独立へのハードルが下がったこともあり、近年は、どの業界も人材の定着率低下に悩まされています。人が辞めるたびに育成を繰り返し、従業員教育の負担は増加する一方。人手不足により、つきっきりで教育する時間を確保するのも難しい状況です。
かといって、すぐに人員を増やせるほど、今の労働市場は甘くありません。採用して教育するのにも、定着率を上げるのにも時間がかかります。そこで、人材育成の負担を少しでも減らす策として、フォーマット化が求められているのです。
情報の散在・非デジタル管理の限界
以前は、会社で使う書類はすべて紙に印刷され、フォルダで管理されていました。従業員を教育する際も、口頭で伝え、あとは見て覚えてもらうといったスタイルで問題ありませんでした。
しかし、人手不足が深刻化し、業務が複雑化し、人材の流動化が激しくなった今、紙媒体のデータを管理するのには限界があります。書類一枚をフォルダの山から探す時間はありません。
また、今は「データが会社の未来を左右する」と言われる時代。スピーディーに変化する環境に適応するため、素早くデータを収集・分析する必要があります。
つまり、必要な情報がすぐに見つからない状況は、企業の成長を妨げる”足枷”になるのです。したがって、会社の書類はフォーマット化し、データをデジタルで管理する必要があると言えます。
フォーマット化のメリット
フォーマット化は、企業と従業員にさまざまなメリットをもたらします。仕組みを作るのには時間も手間もかかりますが、これらのメリットを考えれば、取り組む価値はあると言えます。
具体的にどのような効果が期待できるのか、4つのメリットについて見ていきましょう。

メリット1.書類作成のムダ・モレ・ムラ削減
報告書や申請書など、社内で使用する書類のフォーマット化は、ムダ・モレ・ムラの防止策として有効です。
文書のフォーマットがあれば、決められた項目を埋めていくだけで質の高い文書を作成できます。「うっかり書き忘れてしまった」というようなミスがなくなり、ミスの修正に割く時間と手間を省けます。
書類作成に慣れていないと無駄な情報まで記載してしまうことがありますが、フォーマットがあれば、そのようなムダも減らせます。書類の構成に悩む時間も必要ありません。書類作成のスピードアップが期待できるでしょう。
そのようなモレ・ムダのない文書を「誰でも作れる」というのもメリット。経験やスキルのない従業員も、完成度の高い書類を提出できます。書類作成に対する従業員のストレスが軽減されるでしょう。
メリット2.コミュニケーションの円滑化
ムダ・モレのない書類は、従業員同士のコミュニケーションを円滑にします。直接会う機会が少ない場合でも、文書を通じてスムーズに意思疎通できるようになるのです。
特に、リモートワークが多い職場では、フォーマット化の恩恵を強く感じられるでしょう。また、複数の地域に店舗を展開している企業も、店舗と本社、店舗同士で情報を共有しやすくなります。組織全体の業務効率化、および団結力向上に繋がるでしょう。
メリット3.組織の生産性向上
書類作成における無駄な時間、書類の記載ミスを修正する時間、業務手順や判断に迷う時間……それらがフォーマット化によって短縮されれば、空白の時間が生まれます。無駄な時間を、より付加価値の高い業務へと充てられるようになるのです。
報告書の書き方に悩んでいた時間は、報告内容を考えるための時間へ。業務で迷っていた時間は、組織の仕組みを構築したり、新しい企画を考えたりする時間へ。付加価値の高い業務に集中できるようになります。
加えて、コミュニケーションの円滑化、業務効率化による組織の生産性向上も期待できます。ムダなものは削り、時間と労働力を価値あることへ投資できる「強い組織」が構築されるでしょう。
メリット4.企業価値の向上
業務が標準化され、成果の質が高まると、企業価値が向上します。村のない成果を出すことによって、顧客や取引先から信頼されやすくなるのです。
業務だけでなく書類も同様です。ムダ・モレ・ムラのない整った文書は、企業イメージを高めます。「この会社は信頼できる」と思ってもらえるチャンスが増えるのです。
外部企業や顧客は、コミュニケーションをとる機会が少ないからこそ、一回一回のやりとりが重要です。企業イメージが経営に影響する今だからこそ、たかが紙一枚……と軽視せず、気を配りたいところです。
フォーマット化の具体例
フォーマット化は、さまざまな業務の効率化に役立ちます。具体的にどのように活用できるのか、4つの例を挙げて解説していきます。
書類・報告書のテンプレート化

フォーマット化の導入例として真っ先に上がるのが、届け出などの書類や報告書のテンプレート化です。文章の大まかな骨組みや、記入項目を統一することで、書き方に悩む時間を減らせます。
例えば「企画書」は、企画の背景・目的、企画内容、所感などが必須項目です。「調査報告書」の場合は、調査の目的、調査方法、日時、結果、所感などの項目が必要です。このように構成を決めておくことで、スピーディーに書類を作成できるようになります。
また、テンプレートがあれば、誰でも「わかりやすい文書」を作成することができます。読みやすく、内容を把握しやすいので、確認する側の負担も減ります。書類の作成者と承認者、双方の業務効率化に繋がるでしょう。
業務手順のチェックリスト化

業務のやり方がバラバラ……フォーマット化は、その問題を解決する方法のひとつです。基本となる手順を設定することで、誰でも同じ品質で成果を出せるようになります。
具体的な手法としては「チェックリストの作成」が挙げられます。業務遂行にあたって満たすべき基準・手順をリスト化し、作業者は、そのリストに沿って取り組むという流れです。ヒューマンエラーの発生を防止でき、品質向上が期待できます。
細かいミスが減ると、指導する側の負担も軽減できます。1対1で教育するOJT(On the Job Training)の時間を短縮するためにも、ぜひフォーマット化を導入してみましょう。
教育・研修のフォーマット化

従業員教育や社内研修も、担当者ごとにバラつきが出やすいです。目的によって教育内容も変わるため、すべてをテンプレート化することもできません。
そこで有効なのが、フォーマット化です。集合研修の流れ、OJTの流れ、新人教育の流れなど、大まかに骨組みを作成することで、育成のブレを減らせます。教え忘れを防止できるうえ、教育プランを練る時間も短縮できます。人材育成の質向上、教育担当者の負担軽減に繋がるでしょう。
ツールでのフォーマット化

テンプレートやチェックリストは、デジタルツールを使って作成・管理すると効率的です。クラウド型の社内システムにアップロードするなど、オンラインで管理することにより、いつでもどこでもフォーマットを共有できるようになります。内容の更新もリアルタイムで反映できます。
フォーマットは、常に最新・最適な状態を保つことが大切です。業務内容や環境が変わったのなら、フォーマットの形も変えていく必要があります。運用時のことを考え、従業員が更新・共有しやすいフォーマット化を目指しましょう。
フォーマット化を成功させる進め方
ただ「型を作るだけ」では、フォーマット化の本来の効果は得られません。いきなりサンプル作成からはじめても、失敗する可能性が高いです。
従業員が業務に活かせるフォーマットを作成するため、そして業務効率化、品質安定を実現するためには、計画的に取り組むことが重要です。どのように進めれば良いのか、流れを確認しておきましょう。
ステップ1.企画
プロジェクトの成功は「企画」から。何のためにフォーマット化するのか、どのような問題を解決したいのか、まずは「目的」を明確にします。プロジェクトの関係者全員が一丸となって取り組むためにも、ゴールを明確に示すことが重要です。
また、スケジュールの設定も必要です。スケジュールを決めておかないと、実現するのが遅れる可能性があるからです。日々の業務に追われ、いつの間にかフォーマット化に取り組んでいたことさえ忘れていた……なんてことにもなりかねません。
いつから始めて、いつまでにフォーマット化を実現したいのか、きちんと計画を立てておきましょう。
ステップ2.調査・分析
次に、どの業務をフォーマット化すべきか見極めるため、調査・分析を行います。チェックポイントの例として、以下が挙げられます。
- どの書類の作成に時間がかかっているのか
- フォーマット化が可能な文書はあるか
- フォーマット化によって作業スピードが上がるのか
- 教育や引き継ぎに苦戦している作業はあるか
- 成果のバラツキが発生している業務はどれか など
業務の状況を最も理解しているのは、現場の従業員です。よって、調査する際は現場へのヒアリングが欠かせません。従業員を巻き込むことで、問題意識が高まるほか、モチベーションアップも期待できます。
調査・分析の結果をもとに、どの業務のフォーマット化に取り組むか、方向性を定めましょう。
ステップ3.構成
プロジェクトの方向性が定まったら、「型」を考えるフェーズに移ります。業務内容や、書類に記載する内容を洗い出し、構成を練ります。
すでに手本となるものがあれば、それをモデルとします。例えば、報告書をフォーマット化する場合は、過去の資料の中で「最もわかりやすく書かれた報告書」がモデルとして最適です。業務手順のフォーマット化に取り組む場合は、「最も効率よく作業できる従業員のやり方」をモデルとするのが良いでしょう。
それらをベースに型を作ることで、効率的かつ高品質な業務遂行を実現する「フォーマット」が完成します。
ステップ4.作成
作成の段階に入る前に、どのようにフォーマットを作成するか「手法」を選定します。デジタルツールを利用するか、どのようなシステムで共有・管理するのか決めておきましょう。
準備が整ったら、フォーマットを作成します。なお、フォーマットはあくまで「枠」「骨組み」です。構成を細かく設定してしまうと、使用する際、応用しにくくなります。誰でも使えるよう、構成はなるべくシンプルにするのがポイントです。
ステップ5.運用
本格的に運用し始める前に、テスト運用を行います。フォーマットにミスがないか、実践で活かせるか、再現性が高いかなど、さまざまな角度からチェックし、必要に応じて修正します。
チェックが完了したらフォーマットを共有し、いよいよ運用開始です。開始後もモニタリングを行い、改善を繰り返しましょう。「フォーマットはあるけれど、今の状況に合っていないため使えない」なんてことにならないよう、チェック・更新を継続することが大切です。
まとめ
業務効率化、品質安定、人材育成の負担軽減、従業員同士のコミュニケーション円滑化……と、「フォーマット化」は組織が抱えるさまざまな課題に応えてくれます。しかし、忙しい職場では、フォーマット化に取り組む時間さえ確保しづらいということもあるでしょう。
そのようなときは、小さな変化から始めてみるのがおすすめです。よく使う書類をフォーマット化するだけでも、業務効率は上がります。小さな積み重ねが時間と心の余裕を作り、やがて大規模な改革にもチャレンジできる環境へと整っていきます。まずは身近な業務から見直してみてはいかがでしょう。