【例文あり】キャリアビジョンとは?理想を言語化する方法、考え方・書き方を解説
有名な企業に就職すれば、一生安泰。ひと昔前はそれが当たり前でした。
しかし、今は未来を「自分で選ぶ」時代。被雇用者は働く場所・働き方を自ら選択し、会社はその意思を尊重したうえで支援・育成する……互いに利益をもたらす関係を築くことが理想とされています。
そこで課題となるのが「キャリアビジョン」です。自分が将来どうなりたいのかわからない、思い描いている未来をうまく言語化できない、と悩む人が少なくありません。
本記事では、キャリアビジョンの描き方を具体例と共に解説しています。目的や活用方法などもご紹介していますので、自分や部下のキャリアビジョン設計にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
キャリアビジョンとは?
キャリアビジョンとは「将来、このように働きたい」「このような姿になりたい」などといった仕事・人生における理想像のことです。「キャリア(career)」には生涯、経歴、職業など、「ビジョン(vision)」には未来像、理想、構想などの意味があります。
企業が目指す”未来の姿”、理想像を「企業ビジョン」と言います。それを個人の規模に置き換えたものがキャリアビジョンです。
自分がこれから進む道、働き方・生き方を選ぶ権利は自分にある。与えられたものをただ享受するのではなく、自分で考え、行動を起こすことが大切。そのような考えが浸透した今、自らのキャリアを見直す人が増えています。
企業側には、従業員のそのような意思や決断を尊重することが求められています。従業員個人の理想と企業の理想、両方実現することが、組織の繫栄へと繋がるからです。こういった背景から、これまで以上にキャリアビジョンを描くことの重要性が高まっています。
なお、「キャリアプラン」とはビジョン達成に向けた計画のこと。「こうなりたい」という理想を実現するための戦略を指します。キャリアビジョンと言葉は似ていますが、意味が異なります。
キャリアビジョンを描く目的
そもそもキャリアビジョンは、何のためのものなのか。それが理解できていないと、ビジョンの軸もブレてしまいます。
個人と組織、双方の視点で目的を確認していきましょう。

目的1.ビジョン・目標の明確化
何の用意もなく、将来のビジョンをハッキリと語れるという人は多くありません。「漠然とした理想はあるものの、上手く言葉にできない」「将来どうなりたいか、よくわからない」というケースがほとんどです。
ですが、曖昧なままでは行動できません。何を目指し、どのようなスキルを身につければ良いかわからないため、成長もできません。成長できたとしても、目標がある場合と比べて達成感は薄れるでしょう。
そこで重要となるのが、キャリアビジョンの明確化です。自分の意思、価値観、願望を改めて客観視し、明確にすることで、向かうべき方向が定まります。
目的2.組織力の強化
予測不可能で不安定な現代。企業が環境の変化に適応し続けていくには「団結力」が欠かせません。そして、組織全体で一丸となって取り組むには、共通のビジョンが必要です。
企業と従業員、どちらかの理想に偏ると組織は崩壊します。何のビジョンも語らない組織には、人はついていきません。かといって、企業の”独りよがり”では従業員は離れていきます。
企業と個人が互いの理想を理解し、ひとつのゴールを決めることで、変化に揺るがない強い組織が構築されるのです。よって、従業員の声に耳を傾けること、そのためのキャリアビジョンの言語化が重要だと言えます。
目的3.人材育成プランの設計
キャリアビジョンの明確化は、人材育成においても重要です。従業員が「将来どうなりたいのか」を知ることで、どのように育てていけば良いか、どのような教育が必要か明確になるからです。
従業員の意思を無視して計画を練ることも可能です。しかし、そのような方法では成長に遅れが生じます。「自分の人生の目標から外れてしまうから」と、途中で離職する可能性もあります。何より従業員の主体性が失われるのは、組織にとっての痛手です。
また、従業員が自身のプランを実現するためにも重要です。理想の実現に必要な学習・経験は、自分1人で得られるものではありません。人に伝えて協力してもらう必要があります。
キャリアビジョンの明確化は、人材育成の効率化を見据えた「情報共有」としての役割も担っているのです。
目的4.採用のミスマッチ防止
キャリアビジョンには、採用や人材配置における判断材料としての役目もあります。
入社希望者のキャリアビジョンを知ることで「組織が求める人材か」を適切に見極めることができます。人材採用の効率化が望めるほか、採用時のミスマッチによる早期退職も防止できます。
人材配置では、従業員のキャリアビジョンを参考にすることで、配属後の不満を減らせます。「希望しないポジションに配属された」「想定していたキャリアから外れてしまった」などの理由で離職者が増えるのを防げるのです。
時間をかけて育てた貴重な人材を失わないためにも、従業員のキャリアビジョンに耳を傾けることは重要と言えるでしょう。
キャリアビジョンを描くメリット
キャリアビジョンを描くことは、本人にはもちろん、企業にも多くのメリットをもたらします。具体的にどのような利益が得られるのか、主な3つのメリットについて解説していきます。
メリット1.離職防止
近年、被雇用者は所属する企業に「自分が成長していける場所」であることを求めています。『組織の未来はエンゲージメントで決まる』という書籍にて、成長は従業員エンゲージメントの向上に関係すると言われています。
参考:「新居佳英、松林博文(2018)『組織の未来はエンゲージメントで決まる』英治出版株式会社」を参考に弊社で図を作成
キャリアビジョンを描き、プランを練り、達成に向けて取り組むことは、書籍で紹介されている「達成感」「成長機会」につながります。そのような機会を与え、サポートすることは「自己成長への支援」に該当すると言えます。
企業に対する従業員エンゲージメントが高まれば、離職率が下がります。人が会社を選ぶ現代において、キャリア形成のサポートに力を入れる企業は高く評価されるでしょう。
メリット2.組織の生産性向上
従業員エンゲージメントの向上には、組織の生産性向上が期待できます。自らのキャリアが明確で、「この会社で成長できる」というビジョンが見えており、いきいきと働けている……そのような従業員が増えることで、職場全体が活性化されるでしょう。
また、キャリアビジョン達成に向けて取り組めば、少なからずスキルが高まります。従業員のスキル向上による生産性アップも望めるでしょう。
メリット3.将来に対する不安解消
キャリアビジョンを描くことは、従業員本人の不安解消にもつながります。理想が明確になり、これから自分が「どこを目指すのか」「そのために何をすべきか」がわかることで、将来への漠然とした不安が薄れるでしょう。
自身の精神的な健康、ウェルビーイングを実現するうえでも、キャリアビジョンについて考えることは重要です。キャリアビジョンの取り組みに対し消極的な従業員がいる場合は、その点について触れて導くと良いでしょう。
キャリアビジョンの描き方
自分の未来の姿を明確にし、かつ他者へ共有できる状態にすることは簡単ではありません。ぼんやりと頭の中にあるものの、うまく言語化できず悩むこともあるのではないでしょうか。
そこで、ここからはキャリアビジョンの描き方について解説していきます。

ステップ1.過去と現在を洗い出す
自分の理想を見つけるには、まず自分の考え方や価値観を理解する必要があります。そのために、はじめに過去と現在の振り返りを行います。過去の経験や感情が、いまの自分にどのような影響を与えているかを読み解くことで、自分への理解が深まります。
過去の振り返りとして、具体的には以下のような項目を洗い出します。
- 幼少期、学生時代の出来事で印象に残っていること
- 好きだったもの、夢中になっていたこと
- 嫌いだったもの、悲しかったこと
- 感動したこと
- 印象に残っている光景
- 自分の価値観や行動を変えた出来事 など
現在の自分に関する情報も洗い出します。
- いま好きなもの、夢中になっていること
- 嫌なこと、不満
- 所有しているスキルや資格 など
これらが自己分析の材料となります。自分の価値観の本質を探るため、可能な限り具体的に洗い出すのがポイントです。
また、自分が好きだったもの/好きなものについて考える際、それが「本当に自分が好きなもの・ことなのか問いかけること」が大切です。誰かに言われて好きになった、周りにこう見られたいから好きになった……など、本当は好きではないのに好きだと”思い込んでいる”ケースがあるからです。
心の底から湧き上がる感情、自身の本質に注目しましょう。
ステップ2.自己分析
集めた材料をもとに、分析を行います。自己分析の大まかな流れは以下のとおりです。
- 理由を探る
- 抽象化する
- 共通点を見つける
はじめに、ステップ1で洗い出した内容の理由を探ります。なぜ夢中になったのか、なぜ印象に残っているのかなど、深掘りして理解を深めます。
次に、分析結果を抽象化します。抽象化することで、自分の価値観の本質が見えてきます。
例えば「小さい頃、冒険の物語を読むのが好き」で、理由が「知らない街の景色を想像するとワクワクしたから」だったとしたら、自分は「未知の体験」「新鮮さ」「挑戦」に心惹かれるのだと分析できます。
最後に、共通点を見つけます。抽象化によって導き出したキーワードを並べ、それらに共通するのは何かを考えます。
例えば「小さい頃、冒険の物語を読むのが好き」で、いまは旅行に行くのが趣味、という人がいたとします。これら2つの要素の共通点は「未知の体験」「新しいものとの出会い」です。そこから、自分は同じことを繰り返すより、新しいことにチャレンジできる環境を好む、と読み解けます。
このように、過去の経験や感情を深掘りし、共通点を見つけてつなげていくことで、自分の”軸”が浮き彫りになっていきます。
ステップ3.ビジョンを構成する
いよいよキャリアビジョンを構成していきます。過去と現在から続く自分の未来、「これからどうなりたいか」「何をしたいか」を考えるフェーズです。
自己分析の結果を1つのビジョンへとまとめるには、3つの軸がキーになります。書籍『WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方』の著者、大川陽介氏が掲げている要素を参考にしてみましょう。
バリュー(ありたい判断軸)
ミッション(やりたい行動)
ビジョン(なりたい結果)
引用元:大川陽介(2024)『WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
バリューは価値観、ミッションは使命、ビジョンは理想像です。自分が大切にしたいことは何か、これからやりたいことは何か、どうなりたいのか、何を実現したいのか。このような疑問を自身に投げかけながらキャリアビジョンを組み立てていきます。
ステップ4.型に落とし込み言語化する
ビジョンが固まったところで、最後に言語化を行います。言語化することで、自分のこれからの行動基準が定まります。
誰にでもわかりやすく伝わるキャリアビジョンを作成するには「型」を活用するのがポイントです。バリュー・ミッション・ビジョンを基準に「自分は、将来〇〇になりたい。なぜなら〇〇だから。そのために〇〇をしたい。」というようにまとめると自然です。
後に紹介する例文も参考にしつつ、自分のキャリアビジョンを完成させましょう。
「描いて満足」を防ぐには?キャリアビジョンの活用例
キャリアビジョンは「完成させること」がゴールではありません。個人や組織の行動に変化をもたらしてこそ、時間をかけて設計する価値があると言えます。
では、どのように活用すれば良いのでしょうか。活用例を4つご紹介します。

活用例1.自身のキャリアプランの設計
キャリアビジョンは、他でもない自分自身のためのものです。自分が将来どうなりたいのか、働き方や生き方を見つめ直すことは、自身のさらなる成長につながります。
とはいえ、ゴールへたどり着くまでの「道筋」が曖昧だと、行動を起こすことができません。そこで必要となるのが「キャリアプラン」の設計です。
キャリアビジョンの達成に何が必要か、どのような学習が必要かなど、具体的な計画を練ります。途中でゴールを見失ったり、モチベーションが下がったりするのを防ぐため、小さな目標も設定しておきます。
せっかく決めたキャリアビジョンが”夢物語”で終わらないよう、戦略を立てましょう。
活用例2.育成プラン、研修プランの設計
キャリアビジョンによって明らかになった従業員の「なりたい姿」。そして、企業が求める「理想の人材像」。
それら2つをマッチさせることで、具体的な育成プランを立てることができます。誰に何を教えるべきか、自分が何を学ぶべきか……教える側と教えられる側の成長の方向性を合わせることで、より早い成長が期待できるでしょう。
また、キャリアビジョンが示す当人の価値観は、教育手法の分析にも役立ちます。人とのコミュニケーションで成長するタイプ、知識より体験を好むタイプ、仕組みが理解できないと知識が定着しないタイプなど、部下の性質を読み解き、効果的なアプローチ方法を考えましょう。
活用例3.中長期的な従業員の育成
人材育成計画における「Who」「How」を設計したのち、次に考えるべきは「When」です。いつからいつまでに育てる必要があるのか、ということです。
キャリアビジョンによって明確になったゴールから逆算し、いつまでにどのような教育が必要かを考えます。数年後、数十年後の未来を見据えて設計することで、中長期的な人材育成が実現します。
中長期の人材育成は、従業員が途中で離脱しないことが前提です。会社から一方的に計画を”指示”した場合、離職やモチベーション低下が起こる恐れがあります。
つまり、持続可能な経営の実現には、従業員と「共に未来を考える時間」が重要だと言えます。キャリアビジョンを活用し、いつまでに何を学び、どのようなスキルを身につけるべきか、一緒に考える機会を設けましょう。
活用例4.次期リーダー候補の発掘
組織の持続性を保つには、次期リーダーの発掘と育成が欠かせません。しかし、自ら「次のリーダーになりたい」と挙手する人は多くないでしょう。
キャリアビジョンには、そのような人材を発掘するチャンスが秘められています。価値観や物事の考え方を読み解くことで、リーダーへの隠れた憧れや才能が見つかる可能性があるのです。また、ビジョンについて話す過程でヒントが得られることもあります。
キャリアビジョンは設計すること自体が重要なのではありません。共に考えること、そして話し合うことで価値が生まれるのです。設計後も定期的に面談を実施し、コミュニケーションをとることを意識しましょう。
相手に”伝わる”キャリアビジョンの描き方と例文
自分のキャリアビジョンなのだから「自分らしさ」が大切。自分らしい言葉で表現することで、自身のビジョンを深く理解できます。
しかし、ビジネスに活用する以上、相手に伝わらなければ意味がありません。そこで必要となるのが「型」です。
キャリアビジョンは「結論」「理由」「行動・目標」の流れに沿って書くと、相手に伝わりやすくなります。例文とともに紹介するので、言語化にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

要素1.結論
はじめに結論を書きます。キャリアビジョンにおける結論とは「ビジョン」「自分がどうなりたいか」です。
結論の項目には、以下のような内容を書きます。
- 自分がなりたい姿
- 成し遂げたいこと
- 見たい光景 など
思い描いている姿や光景がどのようなものなのか、相手がイメージできるよう明確に書くのがポイントです。グループセッションなどで、相手に伝わるかどうか確かめながらワードを探すのがおすすめです。
例文
- 人と人を結ぶ信頼の架け橋になりたい。
- 自分のアイデアで喜ぶみんなの笑顔が見たい。
- お客さまや仲間が「安心」を感じる人になりたい。
要素2.理由
次に、結論の理由を書きます。「私は〇〇になりたい。」という結論から「なぜなら〇〇だから。」とつなげることで、ビジョンの内容および根拠が相手に伝わりやすくなります。
理由の項目は、具体的に書くのがポイントです。可能であれば、経験や実績などを加えると良いでしょう。
例文
- 人の価値観や考え方の違いは、チームに摩擦を起こす。しかし、その違いがあるからこそ新たな発想が生まれ、思いもよらぬ喜びに繋がることを何度も目にしてきたため。
- 自分のアイデアが認められることも嬉しいが、そのアイデアが人のためになったとき、より大きなやりがいを感じるため。
- 大きな成果の後ろには、いつでも「目立たないけれど重要、かつ丁寧な仕事」がある。学生時代にそのことを実感し、憧れを持ったから。
要素③行動・目標
最後に、行動・目標を書きます。要素①のビジョンに到達するため「何をするか」「これから何をしていきたいか」を考えます。
何をすれば理想像に近づけるのか、を考えるのがコツです。実際の業務をイメージすると言葉が見つかりやすいでしょう。
例文
- 部署の壁を越えて、多くの人々とコミュニケーションをとりたい。将来的には、組織全体をつなぎ、支える存在となりたい。
- 自分とは異なる価値観を持つコミュニティに身を置き、刺激を受けたい。
- 失敗を恐れずチャレンジする習慣を身につけたい。
- 「誰の支えとなる仕事なのか」を常に考えて仕事に向き合っていきたい。
- ミスなく、滞りなく業務を遂行するためのスキルを身につけたい。
- いずれは、身につけた知識やスキルを次へ継承できる存在になりたい。
まとめ
働き方・生き方の選択肢が増え続ける現代。選択することの難しさを感じることも多いでしょう。
しかし「自分が何を望むのか」を見極め、決断するスキルは、これからの時代を生きていくうえで重要です。特に、組織を牽引する立場の人にとって、ビジョンを描き、伝える力は必須スキルとも言えます。考え方の基礎を身につけておけば、チームビジョンや企業ビジョンの設計に役立つでしょう。
まずは、自分の過去や現在について、話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。管理側の方は、そのような機会を計画するところから始めてみましょう。

