人材育成のよくある課題とは?解決策と具体的な手法、効果的に進めるために大切なことを紹介
日本における労働市場は労働人口の減少が想定されています。働き方の多様化や働く環境の変化などを受けて、今「人材育成」に力を入れる企業が増えています。
しかし人材育成を進めるにはさまざまな課題があります。
飲食店や小売店においては運営に常に人手が必要な業種であることから、パートやアルバイトなどの非正規スタッフを多く雇用しており、さまざまな雇用形態が存在する職場における人材育成に悩んでいる管理職は多いのではないでしょうか。
今回は、流通小売やレジャー、飲食業態においては従業員の教育、育成において、現状と課題はなにか、また課題の洗い出す方法や解決策、人材育成をおこなうための大切なことについて解説します。
人材育成の目的
厚生労働省「企業が人材育成を行う目的について」によると、企業が人材育成を行う目的には従業員の能力をアップさせて労働生産性を高める、従業員のモチベーションを維持・向上させる、数年先の事業展開にむけた能力開発、今いる従業員が当面の業務をこなすために必要な能力をつけさせるなどが挙げられます。
引用元:厚生労働省「企業が人材育成を行う目的について」
流通小売やレジャー、飲食業態における職場では、パートやアルバイト雇用の人材は入社と退職の動きが頻繁に発生する傾向があるため、人材の採用が日常的に発生します。
新たに採用した従業員には、現場で活躍してもらうための教育が必要です。研修・OJTなど従業員への教育体制をしっかりと整える必要があります。またモチベーションを維持・向上させることで雇用を定着させていく必要があります。
企業における人材育成の現状と課題
厚生労働省が2014年に発表した労働白書「人材育成は企業経営上の重要な課題」によると、企業が自社の競争力を更に高めるため、今後強化すべき事項として「人材の能力・資質を高める育成体系」(52.9%)が最も高くなっており、人材育成は企業経営上、重要な課題となっています。
引用:厚生労働省(2014年)労働白書「人材育成は企業経営上の重要な課題」
令和2年12月に厚生労働省の人材開発統括官が発表した「人材開発政策の現状と課題について」によると、人材育成に関する問題があるとする事業所割合は7割を超えています。
問題点の内訳として、指導する人材の不足(58.1%)や時間の不足(49.7%)があげられており、十分な人材育成を行うことができない職場環境があることを示しています。また「人材を育成しても辞めてしまう」は、50%台を超えていました。
引用:令和2年12月 厚生労働省人材開発統括官「人材開発政策の現状と課題について」
よくある人材育成の課題
厚生労働省の調査結果から、人材育成については多くの企業が問題・課題があると認識していることがわかりました。ここでは企業が抱えている、よくある人材育成の課題を5つ紹介します。
課題1:指導する人材が不足している
人材育成の指導者となる人材が不足している場合や人材育成についての知識やスキル、ノウハウが社内に不足している場合、人材育成をうまく進めることができないという企業が多いようです。事業の発展や業績アップに注力する一方で「人に教え、育てる」ための知識やスキルの習得が課題として残っているケースも少なくありません。
また、2018年厚生労働省の労働白書によると、人材育成の課題には「社内で人材育成を積極的に行う雰囲気がない」ということも挙げられています。人材育成に対する育成側の意識の低さも指摘されています。「育成は本来の業務ではない」と人材育成を軽視する管理職もなかにはいるようです。育成する側も人材育成の重要性を認識し、全社をあげて意欲的に取り組もうとする雰囲気づくりがもとめられます。
課題2:人材を育成しても辞めてしまう
人材育成には手間や時間だけではなく費用もかかるものです。手をかけて育成したとしても、途中で退職されてしまえば育成に使った時間や手間、お金が無駄になってしまいます。
育成の対象となる従業員が「仕事に対するやりがい」を見つけられないと退職意欲が高くなり、退職のリスクが増大する傾向があります。
課題3:人材育成を行う時間がない
人材育成を推進しようとしても、育成担当者が忙しくて時間と余裕がないというケースは非常に多いです。現場の従業員は日常の業務や設定した目標、納期などに追われています。業務遂行を優先していると、人材育成のための時間を割くことがむずかしくなってしまいます。
また、管理職側の課題として、マネージャーでありながらも自らもプレイヤーとして実績をつくっていくプレイングマネージャーが一般化してきたことで、管理職の担う業務が大幅に増えています。そこに人材育成の仕事が加わってくると、管理職は任務過多で機能しなくなってしまいます。
部下の育成については、管理職の担う業務の一部をほかの人に任せるなど、ひとりに業務が集中しないように対策を講じる必要があります。
課題4:鍛えがいのある人材が集まらない
「育成対象の従業員が受け身であり、学ぶ意欲が低い」といった課題もあります。育成担当者や人事部が意欲的であっても、育成される側に成長しようという意欲がなければ期待する効果は得られにくいといえます。
育成対象の従業員の意欲を引き出すには、人材育成の目的と重要性を明確に伝えて、指導する側と共有することが大切です。
課題5:人材育成の方法がわからない
人材育成に取り組むにもどのように進めればよいかメソッドがない、方法がわからないといった育成側のスキル不足も課題の一つとして挙げられています。
育成スキルが不足していると場当たり的な指導になりがちです。
育成計画が明確に立てられていない、また計画に対する進捗を管理する能力が未熟だと、「なにを」「いつまで」「どのように」習得すればよいのか見えにくくなります。また育成対象者の習得レベルを分析するスキルが未熟であると、急に難易度の高い業務を与えてしまうことも起きてしまいます。
人材育成において、指導者は好き勝手に指導して良いのではなく、自社の育成方針や理念に沿った指導を行う必要があります。松尾睦氏の著書「OJT完全マニュアル ダイヤモンド社人材開発編集部」によると、指導は自社の方針・理念と関連付けて、自分太一の仕事のMission(使命)、Value(価値)、Pride(誇り)を確認して部下に伝え、共有することが有効だと言及しています。
育成側にもスキルを高める努力が必要となりますし、企業全体で育成計画を立てて、人材育成の道筋を作成しておく必要があります。
若年層、中堅層、管理職層階層別の人材育成課題とは
人材育成にはさまざまな課題が挙げられます。人材育成は、新人の育成のためだけにあるのではありません。成長過程において適切な人材育成の場が設定されています。ここでは若年層、中堅層、管理職という階層に分けて人材育成の特徴と課題を整理していきます。
若年層
厚生労働省の「人材育成の現状と課題(2014)」によると、若年層に対する人材育成はOJT等により計画的、系統的に取り組んでいる企業が多いことがわかります。
具体的な人材育成の取組として「定期的な面談(個別評価・考課)」「計画的・系統的な OJT」「企業が費用を負担する社外教育」等が多く、中堅層(若年層及び管理職層 に該当しない者)に比べると、「計画的・系統的なOJT」「指導役や教育係の配置」や「企業内 で行う一律型のOff-JT」を行う割合が高くなっています。
一方で若年層の従業員がへの人材育成上の課題としては、「業務が多忙で、育成の 時間的余裕がない」「上長等の育成能力や指導意識が不足している」「人材育成が計画的・体系的に行われていない」が相対的に多くなっているのが見られます。
また、中堅層や管理職の層と比べると若年層に対する人材育成は「離職等で人材育成投資が回収できない」ことが挙げられています。
中堅層
厚生労働省の「人材育成の現状と課題(2014)」によると(14年)、中堅層への人材育成は若年層とは違った性質が見られています。
中堅層に対する人材育成は、将来の管理職を見据えたキャリア形成を目的としています。なかでも人事異動について注目してみると中堅層に対しては、「(事業所内)同じ職種での人事異動」以外にも「他企業との人事交流(出向等)」「転勤(事業所間の配転)」など多様な人事異動の機会が多くなっています。
また、中堅層にむけた人材育成の取り組みとしては「目標管理制度による動機づけ」「計画化・系統化されていないOJT」が多くなっており、若年層に比べて出向、転勤等のバリエーションの多い人事異動や、計画化・系統化されていないOJT等の職場経験を通じて人材育成を図っていることがうかがえます。
このような中堅層の人材育成における課題をみてみると、若年層と同様に「業務が多忙で、育成の時間的余裕がない」「上長等の育成能力や指導意識が不足している」「人材育成が計画的・体系的に行われていない」が比較的多くなっていて、これらの項目に対して課題であると答えた企業の割合は若年層より高くなっています。若年層への人材育成よりも中堅層に対する人材育成に課題を抱えている企業が多いことがわかります。
管理職層
職務において「三面等価の原則」という考え方があります。責任と責務と権限のバランスは等しいというもので、新入社員は責務や責任は重くないので持っている権限も小さいし、管理職になって責務が増えると責任も増えて同様に権限が増えることを指しています。
管理職は企業における経営層と現場の結節点としての役割を果たしており、企業の実績への影響は大きいと考えられます。
厚生労働省の「能力開発基本調査」(2013年度)によると、OFF-JTを実施した事業所の実施内容(複数回答)は、「新規採用者など初任層を対象とする研修」(75.4%)に次いで、「マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)」(47.0%)や「新たに管理職となった者を対象とする研修」(42.51%)が多くなっています。企業にとって管理職の育成を重要視していることがわかります。
また、厚生労働省 「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」によると、管理職の育成・登用上で、近年感じている課題(複数回答)としては、「世代等により管理職候補者の能力・資質にムラがある(質的確保が困難な世代がある)」(49.1%)が最も多くなっており、計画的に管理職候補を育成することの難しさがうかがえる。次いで、「管理職の業務が増大している」(46.9%)や「管理職になりたがらない者や、転勤の敬遠等で管理職要件を満たせない者が増えている」(38.7%)が続いています。
引用:厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」
厚生労働省の労働白書によると、近年の管理職に不足している能力・資質(複数回答)については、「部下や後継者の指導・育成力(傾聴・対話力)」が最も多く、「リーダーシップ、統率・実行力」「新たな事業や戦略、プロジェクト等の企画・立案力」が続いていました。管理職には、成果を生み出す行動力に加えて、人材育成の能力を期待されていることがわかります。
管理職のうち、ミドルマネジャー(「課長」相当職)については、その育成に課題も抱えているといいます。(一社)日本経済団体連合会「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」(2012年)によると、ミドルマネジャーはマネージャーとしての職責のほかにプレーヤーとしての業務を担っており、業務負荷が増大しています。これに加えて、部下の指導・育成も任された場合、なかなか部下の育成に十分な時間を割くことができないという課題に苦悩しているといいます。
管理職層にかかる業務負担増大という課題は、部下育成に時間が割けないといった若年層における人材育成の課題を生むことにつながります。
これに対しては企業全体で以下の点を進めることで、管理職の育成に対する課題解決の道筋が見えてくることが期待できます。
- 実務的な負担を軽減し、業務のマネジメントや部下指導・育成に取り組める状況を組織的に整備、
- より良いマネジメントの実践を可能とするためのOJT(仕事を通じた部下指導・育成)への制度的支援、
- ミドルマネジャーの自律的な成長を支援するためのOFF-JT(企業内研修)の強化
- ミドルマネジャーのやる気や意欲を高めるような精神的な支援の充実
現状を分析し、課題の要因を洗い出す方法
人材育成における課題は企業それぞれに異なるでしょう。人材育成を効果的に進めていくためには、まず自社の人材育成を進める上でボトルネックになっているもの、課題がなにかを把握する必要があります。
ここでは自社の人材育成における課題を洗い出す方法をご紹介します。
方法1:社内サーベイ
人材育成を効果的に行うために自社の人材育成の課題がなにかを洗い出すには、現場に聞いてみることが重要です。社内サーベイを行う、つまり従業員にリサーチすることが一つの方法です。
中原淳氏の書籍『「データと対話」で職場を変える技術 サーベイ・フィードバック入門 これからの組織開発の教科書 株式会社PHP研究所』によると、 サーベイ(組織調査)を通して、 普段は見つめていないチームや組織の課題を可視化することがステップの一つ目だとあります。
また、サーベイによって組織の状況やコンディションを常に把握しておくことで課題が見えてくるといいます。次のような点が見られる場合には、そこに人材育成の課題が隠れている場合がありえます。
- 退職者の多い部署と少ない部署との比較でみられる差異
- 同種の業務を行う拠点間の残業時間の差異
- 勤怠の傾向
- 業務成績の傾向
例えば退職者の多い職場や残業時間の多い職場において人材不足が課題の要因である場合には、組織の仕事内容を細分化し誰がどのように担っているかなど把握すること、業務効率化を図ったうえで、部署の内外で業務の適正な割り振りをするなどで解決の糸口を見出すことができます。
方法2:1on1面談
部下一人ひとりの持っている課題を拾うには、上司と部下の一対一で行う面談が効果的です。
前述のサーベイではあらかじめ質問項目が決まっているため「予想外の課題を拾いあげることは難しい」 という面がありました。面接・ヒアリングをすることで、見えなかった課題を見つけることがことができます。これを一対一で行うことで、従業員個々の感じる課題点を拾えます。中原氏は著書において、多くの組織で課題抽出および解決において「 面接・ヒアリング」は必ずといっていいほど 行われていると述べています。
方法3:人事評価の体制の見直し
人事評価の策定や見直しも課題を抽出する1つの方法です。レイヤーごとのスキルマップを作成し、求める人材像を明確にすると、より課題を洗い出しやすくなります。スキルマップとは、職種、在籍年数、レイヤーごとに求められるスキルを一覧表にまとめたものです。
スキルマップと照らし合わせながら、現場の社員にヒアリングをすれば、足りないスキルが何か、つまづいている要因はなにかを客観的に判断できます。
例えば人材育成の方向性が定まらないというような課題であれば、人事評価の基準が会社の経営方針やビジョンに向けて合っているか照らし合わせることで、人材育成の向かう方向、会社、組織の求める人材像が見えてくることもあります。
方法4:利用しているツールで分析
使用している人材育成ツールがあれば、従業員のツールの利用状況や進捗状況、コンテンツ個別の効果などを検証することで、いまの課題が浮き彫りになることも考えられます。
コンテンツの視聴状況やチェックリストの進捗、試験の正解率などからつまづいている箇所を拾いあげることができます。
解決策と具体的な手法
ここまで、人材育成を効果的に進めるための課題の抽出方法について説明してきました。次は自社や部署の浮き彫りになった課題や問題の解決に着手していきます。
課題とは一般的に障害や困ったことなどのことですが、人材育成における「課題・問題」とはなんでしょうか。
宮川氏の著書「中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで 総合法令出版」によると、人材育成における課題・問題とは「あるべき姿・目標と現状のギャップ」のことを指します。ここではあるべき姿とのギャップを埋めるために、効果的な手法を紹介します。
1:OJT
部下の育成において、現状のできること、できないことを確認した上で、できないこと、理解が不足していることに対してできるように分かるようにするための育成計画を立てます。計画を実施して育成をフォローし、できるようになるという育成のゴールを達成します。
育成の手段として、挙げられるひとつがOJTです。
OJTとは「On the Job Training」の頭文字を取った略称で、職場での業務を通じて「職務に必要な能力」を習得させる育成手法を指します。
人事コンサルタントで社会保険労務士の松下直子氏の著書「OJTで面白いほど自分で考えて動く部下が育つ本 あさ出版」によると、OJTのメリットには
- ・その場に合った指導ができる
- ・部下一人ひとりの状況に合ったもっとも適切な指導ができる
- ・必要に応じていつでも指導ができ、特別な費用がかからない。
- ・指導したことをすぐに仕事に生かすことができ、また良く身につく
などがあるとしています。
2:Off-JT
OJT教育と対をなすのがOFF-JTです。
OFF-JTとは「Off the Job Training」の頭文字を取った略称で、職場から離れた場所で行う研修のことです。階層別にみると、新人研修としてビジネスマナーや、管理職向けにマネジメント研修などがあります。
宮川氏の著書には、OFF-JTは知識のインプットや情報の共通言語化のために必要だとあります。多数の対象者が同一の内容を学べることから、全体のスキルの底上げが期待できます。
また、近年ではコンプライアンス遵守のための研修も増えています。2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は31.4%でした。これをうけて近年ではOFF-JT研修にハラスメント防止などのコンプライアンス研修などを取り入れる企業が増えてきているといいます。
3:自己啓発
3つ目は自己啓発です。宮川氏の著書において、自己啓発はOJT教育、OFF-JTと合わせて育成の3本柱とあります。
自己啓発とは、従業員が自分の伸ばしたい分野や補いたい分野について自発的に知識を習得することです。休日や就業後などの時間を使って、書籍や通学、通信教育などで学んだり、社内外の勉強会に参加したりすることなどが挙げられます。
社員の自己啓発を促すために、企業はさまざまな取り組みを行っています。
- 対象となる書籍の購入費用の補助
- 通信教育の受講費用の補助
- 資格取得時のお祝いの金一封の提供
政府が掲げる「リスキリング」政策として、学び直しが注目されています。
リスキリングとは、経済産業省の報告書によると「これからも職業で価値を創出し続けるために」「必要なスキル」を学ぶことだとあります。従業員個々の知識レベルを底上げし、業務に必要なスキルを習得して自己の価値を上げていくことも、従業員育成の1つの手法です。
4:目標管理制度
宮川氏の著書には、各等級・レイヤーにおいて求められる能力や行動ができるようになることが、個々の従業員にとっての成長で、上司にとっては部下の育成だとあります。
人材育成における目標管理とは一定期間内にやるべきことを明確にしたものです。目標の設定には評価基準となるあるべき姿を設定しなければいけません。各等級・レイヤーにおいて求められる能力や行動を定義したものがスキルマップです。
スキルマップと従業員の現状の能力と照らし合わせて足りないスキルが何かをあぶり出すことができれば、従業員がそれぞれに不足するスキルを習得しできなかったことができるように来期の育成計画に生かしていくことが可能です。
5:eラーニングシステムの導入
eラーニングシステムを活用することで、人材育成の課題として挙げられている「指導する人材がいない」「あるいは人材育成を行う人がいない」「人材育成の方法が分からない」という課題を解決することが期待できます。
eラーニングとは、インターネットとパソコンやタブレット、スマートフォンなどのデジタルデバイスを利用して教育、学習、研修を行うことです。
ネット環境が整っていれば時間や場所を選ぶことなく受講可能なため、受講者は自分のスケジュールに合わせて学ぶことができます。すき間時間を活用できる、聞き逃した箇所を繰り返し視聴できるなどのメリットがあります。
指導する人材不足が課題である場合には、eラーニングを活用することで指導者の負担の軽減に効果的です。また、受講者全員に同じ内容のコンテンツを届けることができ、教育の均一化が図れます。
研修を開催する側も、研修開催の場所の選定や予約、会場設営の準備、参加者のスケジュール調整など一連の作業を行う必要がなくなります。
eラーニングの導入によって、研修開催にかかる手間や負担が軽減されることで「運営側も含めて社員の時間と余裕がない」という課題に対する有効な解決策となるでしょう。
人材育成をより効果的に行うために大切なこと
人材育成をより効果的に行うためにはいくつかのポイントがあります。ここでは人材育成に大切なこととして3つ取り上げます。
設定した目標管理や計画を職場に浸透させる
人材育成をすすめていくには、従業員ごとに目標を策定する必要があります。松下直子氏の著書によると、目標設定とは、ある一定期間に成し遂げるべき成果を具体的に描いたもので、①何を(目標)、②どのレベルまで(達成基準)、③いつまでに(期限)、④どのようにやるか(行動計画)を明確にすることだとあります。
達成したいことはなにか、どんな状態を手に入れたいのかを明確にし、各自が等級・レイヤーにおいて設定した目標や計画を、職場が共有して浸透させることが大切です。
人材育成の進捗を把握できるようにする
目標を設定して人材育成を進めていく中で、育成対象者の習得について進捗状況を把握していることが大切です。現在どれほど習得が進んでいるのか、どのレベルにあるのか、なにか分からない点、人材育成を進めるうえでネックになっていることはないかなど、状況を掴んでいることで、適切なアドバイスを与えたり、行動を軌道修正できたり、必要な知識を補充したりすることができます。
部下が上司にコミュニケーションを取りやすい環境を作る
人材育成を効果的に進めていくためには、適時にフォローを行うことが大切です。行動したことに対するフィードバックを定期的に行い、良かった点や改善すべき点を具体的に伝えることで、部下はどの点が良かったのかを知ることができ、改善すべきことがあった場合にどのように行動すると良いのかを学ぶことができます。
上司と部下とのコミュニケーションには、当事者間のギャップが存在するといいます。
前述の松下直子氏の書籍において、上司と部下の意識のギャップについて興味深い調査結果が示されています。
上司には「成果を上げた部下に対して褒めているか」、部下には「上司はあなたを褒めるか」を聞いたところ、上司は90%が褒めていると回答し、部下は約50%がほめると回答しています。上司は褒めていると思っていても部下はそうは受け取っていない場合があることがわかります。コミュニケーションは受け取る側が決めるものなので、相手に伝わるようにコミュニケーションを工夫する必要があるといえます。
「shouin+」を活用して人材育成課題を解決した企業例
「shouin+」を導入したことで抱えていた人材育成課題を解決した企業があります。ここでは3社の持っていた課題と「shouin+」の活用事例をご紹介します。
株式会社セピアプロミクス
株式会社セピアクロスは愛知県を中心に「Be・Escort(ビー・エスコート)」をはじめとする、美容脱毛・エステサロンを約50店舗展開しています。
よりよいサービスを提供するにあたって課題は大きく2点ありました。ひとつはサロンスタッフのスキルアップを図りたいが従業員が学べる環境が整っていなかったこと、もうひとつは新しいキャンペーンやルール変更などに対応する情報共有が周知徹底されにくい点でした。
「shouin+」を活用したことで、ひとつめの課題としてサロンスタッフ全員に対して好きな時間に学習できるようになりました。またふたつめの課題については従来の紙のマニュアルでは読みにくかった、情報が更新されていないものを使っていたなど問題を抱えていましたが、「shouin+」を活用したことで、常に最新の情報が集約されていていつでも確認することができ、いままで本社にあった不明点の問い合わせが大幅に減りました。
「shouin+」は動画でもPDFでもマニュアルがアップできる点、検索しやすい点が魅力です。
株式会社オンリー
株式会社オンリーはオーダー紳士服をはじめビジネスウェアを販売する「ONLY」を全国で約60店舗運営しています。
新人の育成は店舗の店長に委ねていたことで、店舗ごとに教育のレベルに差が生じたり、マニュアルとは異なる指導があったりと習得内容やレベルにばらつきが生じてしまうことが課題でした。
「shouin+」 を取り込むことで、動画を活用したコンテンツによって接客の基礎を教えることができました。さらに動画レビュー機能で全国にいる新人の習得レベルを確認することも可能で、定期的にアウトプットさせることで適切なアドバイスを送ることもでき、スキルや知識の平準化を図ることができました。
「shouin+」は動画を繰り返し視聴できるだけでなく、動画投稿やクイズ検定などによって習得したことをアウトプットできる仕組みがあり、人材育成が効率的に行うことができます。
株式会社きちりホールディングス
株式会社きちりホールディングスは、レストラン経営における飲食事業、及び食を中心に生まれるホスピタリティの提案、提供事業を行っています。
アルバイトスタッフを中心に2,000名を超える従業員への人材育成には、育成内容やルール変更などに対応した教育が均一化されにくい状況であることが課題でした。
「shouin+」を導入したことで、サービスのやり方などを動画マニュアルで学ぶことができ、従業員への均一の教育を実現することができました。教える立場にある店長の教育に割かれる時間が50%短縮され、教育担当者の不足を解決することができました。
まとめ
今回は、人材育成について企業がよく抱いている課題や、役職別の課題を説明しました。まずは自社の人材育成が何であるか整理し、紹介した方法を参考に施策を検討しましょう。