shouin+ブログ

コンプライアンス研修とは?主な内容や目的、実施のポイントを詳しく解説

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Nov 29, 2023 7:58:20 AM

コンプライアンス違反とされる行為の幅は、年々広がっています。以前は問題なかった行為でも、今では不祥事として、大きな問題に発展することも珍しくありません。

そのため多くの企業が、日々、コンプライアンス対策に取り組んでいます。「コンプライアンス研修」はその対策のひとつです。

本記事では、そんなコンプライアンス研修について詳しく解説しています。研修の実施方法や内容にお悩みの人事部の方、研修担当者の方はぜひお役立てください。

 

コンプライアンスとは

コンプライアンスは、要求や命令に従うこと、法律を守ることを意味する言葉です。日本語では「法令遵守」と訳されます。

しかし、現在、企業が守るべきとされるのは法律だけにとどまりません。社会規範、社会道徳など、社会で認識されている常識や倫理に反する行為・発言も、コンプライアンス違反と評価されます。「法律を守ってさえいれば良い」という時代ではないのです。

「長瀬佑志・斉藤雄祐(2020)『コンプライアンス実務ハンドブック』日本能率協会マネジメントセンター」をもとに弊社で図を作成

 

上記の図のように、コンプライアンスには「法規範」「社内規範」「倫理規範」が含まれています。つまりコンプライアンス遵守とは、法律、企業のルール、倫理規範のすべてに反さないことを意味します。

企業がコンプライアンスに抵触すると、行政処分や損害賠償などの責任に問われる場合があります。また、”不祥事を起こした企業”として世間にマイナスイメージを持たれるほか、取引先や顧客からの信用を失うなどのリスクもあります。

そのような損失を避けるため、多くの企業が社内体制の整備や研修などを行って対策しています。

 

コンプライアンス研修

コンプライアンス研修とは、その名のとおり「コンプライアンスについて社員に教育する研修」のこと。企業と社員が守るべき法律や規則、不適切とされる行為など、コンプライアンスに関する知識を身につけてもらうカリキュラムのことです。

研修では、コンプライアンスの重要性や違反した場合のリスク、社員が知っておくべき一般常識、社内規範、倫理規範などを主に学んでもらいます。また、コンプライアンス違反とされる対応・行為も、研修で教えられます。

引用:「HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関するアンケート 結果報告(2020年)」HR総研

HR総研」の調査によると、2020年度に最も多く行われた研修はコンプライアンス研修でした。

また、規模が大きい企業ほど、コンプライアンス研修の実施率が高くなる傾向にあるようです。とはいえコンプライアンス違反は、どの企業でも起き得ることなので、企業規模に関係なく研修は実施すべきと言えるでしょう。

 

コンプライアンス研修の目的

コンプライアンス研修を行う主な目的は、以下の4つ。詳しく見ていきましょう。

コンプライアンス違反の発生防止

不祥事は、「違反になると知らなかった」「悪気がなかった」などという理由では許されません。そのため、知識を身につけておく必要があります。

社員に習得してもらうべき知識とは、主に以下の2つです。

  • どのような発言・行動がコンプライアンス違反になるのか
  • コンプライアンス違反にはどのようなリスクがあるのか

何気ない発言・行動が、実はコンプライアンスに違反していた、というケースが少なくありません。知識不足は不祥事を招く恐れがあるため、社員に知識を習得させる研修を実施する必要があるのです。

また、罰則があることを知らない、もしくは大きな問題にならないという考えから違反行為を行う可能性を考え、リスクについても学んでもらいます。

コンプライアンスで守るべきとされる常識や倫理観は、人それぞれ違うもの。「問題ないだろう」という個人の判断が、コンプライアンス違反につながる恐れがあります。そのような事態を防ぐため、研修を実施し、社員の認識を統一する必要があるのです。

 

社員のコンプライアンス意識の向上

日々、業務を行っていると、コンプライアンスに対する意識が低くなってしまいがち。利益向上や業務効率化のみを追求するあまり、気づかぬうちに違反行為に手を染めてしまう、なんてこともあります。

「自社にとって利益となるなら良い」という閉鎖的な職場風土を改めるには、コンプライアンスを遵守することの重要さを、定期的に再認識させる必要があります。コンプライアンス研修は、そのような役割も担っています。

 

最新のコンプライアンスの把握

世間の常識、倫理観は時代と共に変化するものです。したがって、コンプライアンスの範囲も常に変化します。

例えば以前は、SNSの取り扱いにコンプライアンスは求められていませんでした。それが最近では、「社員が社外秘の情報をSNSに投稿してしまった」というような、SNS関連の不祥事が頻繁にニュースになっています。

よって、コンプライアンス研修を実施し、最新の知識を社員に身につけてもらう必要があります。知らないうちに違反してしまう可能性を考え、既に研修に参加したことがある社員も含め、全社員に向けて実施すべきでしょう。

 

企業価値の向上

不祥事のない、健全な経営を行っている企業は、世間から良いイメージを持たれます。取引先や顧客からの信頼度が上がり、最終的には利益向上につながります。

反対に、目先の利益を求めてコンプライアンス違反の行為を行うと、信用も利益も失います。

つまり、企業のコンプライアンス意識の高さは、企業価値の高さに比例するのです。経営を継続するため、そして利益を守るためにも、研修の実施が重要と考えられます。

 

コンプライアンス研修の主な内容

コンプライアンス研修で取り扱うテーマはさまざま。社員の階層によって教えるべき内容は異なりますが、一般的に選ばれることが多いのは以下の5つです。詳しく見ていきましょう。

ハラスメント対策

パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、モラルハラスメントなど、近年さまざまなハラスメントが問題視されています。ハラスメントは、相手を傷つける許されない行為です。なかには

ハラスメントに適切に対応することは、企業の義務です。また、従業員の生産性が低下したり、社員が心身を害したりするリスクもあるため、対策を講じる必要があります。

その取り組みのひとつとして挙げられるのが、コンプライアンス研修です。社員にハラスメントの知識を身につけさせることで、発生防止を図ります。

「加害者側に自覚がないこと」が原因で、ハラスメントが起きることも多々あります。ハラスメント行為とは知らずに、相手を傷つけたり、不快にさせたりしてしまうケースです。

そのため、「原因となる発言・行動」は特に研修で教えるべき内容と言えるでしょう。

 

就業規則や経費に関する内容

就業規則や経費に関する内容も、コンプライアンス研修で触れられることが多いです。働くうえで守るべきルールを明確に示すことで、違反行為や不正を防止します。

例えば、就業時間中に仕事以外のことを行った場合、就業規則違反となる可能性があります。そのような不正行為を防ぐには、社員に「やってはいけないこと」を把握してもらう必要があるのです。

また、領収書の改ざんや偽造、残業の不正受給などもコンプライアンス違反です。これらの行為は、詐欺罪に問われる可能性があります。

不正行為の多くは、「少しくらい良いだろう」という油断や知識不足が原因です。そのため、研修にてコンプライアンスに反する行為と、そのリスクをきちんと理解してもらうことが大切です。

 

情報セキュリティ対策

個人情報の漏洩など、情報管理の甘さは重大な問題へと発展します。取り返しのつかないことになる前に、情報管理についてのコンプライアンス研修も実施すべきでしょう。

特にSNSの取り扱いに関しては、厳しいルールを設け、禁止行為と違反のリスクを研修で説明することが大切です。思わぬところから不祥事が起こることもあるので、非正規雇用の社員にも教育しましょう。

 

著作権や特許権など法律に関する内容

法律に背く行為と知らずに、社員が違反するケースも少なくありません。著作権や特許権の侵害が代表的です。

法律違反をすると、罰金や懲役を科せられる恐れがあります。企業を守るため、そして社員を守るため、具体的な例を挙げながら違反行為について教えることが大切です。

大きな問題にはならないだろう、という軽い気持ちがコンプライアンス違反を引き起こします。そのため、「コンプライアンスに抵触するとどうなるのか」も、きちんと理解させることが重要です。

 

クレーム対策

クレームは、法律違反や情報漏洩などと違って日常的に起こるもの。発生頻度が高いため、つい油断してしまいがちですが、意外にも大きなトラブルへと発展するリスクが潜んでいます。

 

クレームに対する企業側の不適切な対応は、コンプライアンス違反になります。例えば、「クレームに逆上して暴言を吐く」「暴力をふるう」というような行為です。そのため、研修にて冷静かつ適切に対応する方法を学んでもらう必要があります。

また、カスタマーハラスメントへの対策方法も、研修で教えるべきと考えられます。

悪質なクレームは、社員に精神的な苦痛を与えるものです。労災認定を受けるほどまでに、心身を害することもあります。よって、社員を守るための体制を整えると共に、カスタマーハラスメントへの対応方法について研修で教育する必要があるのです。

 

コンプライアンス研修の実施方法

コンプライアンス研修を実施する方法は、いくつか存在します。内容と企業の状況に合わせて、適切な手法を選ぶことが大切です。

ここでは代表的な3つの方法をご紹介します。

社外研修

コンプライアンスは、常に変化するもの。加えて、指導には専門的な知識が必要であり、間違いがあるとトラブルのもととなります。

そのため、コンプライアンス研修は、専門知識を持つ講師に指導を任せることが多いです。外部で開かれる講習やセミナーを受講させることで、専門的かつ正しい知識の習得を図ります。

社外研修の参加には、移動費や移動時間、参加費などがかかります。また、社員の拘束時間が長くなりやすいですが、スケジュール調整さえできれば、スピーディーに知識を習得してもらうことが可能です。

 

講師を招く社内研修

講師に指導を任せる研修は、社内で実施することも可能です。こちらは社員が移動する必要がなく、拘束時間が短く済みます。自社の都合に合わせて、研修実施日を調整しやすいのも利点です。

また、基本的に同じ講師が教えるため、指導内容の質も統一されます。複数回に分けて研修を行う場合でも、参加者全員が等しく学ぶことができます。

その反面、指導の質が講師の力量に左右されます。企業の目的に適した研修を実現でき、かつ参加者にとってわかりやすい指導が可能な講師を見極める必要があります。

 

オンライン研修

コンプライアンスは、オンライン研修で学ぶ方法もあります。

オンライン研修は、いつでもどこでも学習できるのがメリット。時間や距離の都合で、社員が研修に参加するのが難しい企業でも実現しやすいです。

 

また、「shouin+」のようなツールであれば、動画研修の実施も可能。学習者は、何度も見返して理解を深めることができます。コンプライアンス研修は内容が複雑になることも多いので、復習しやすいのは大きなメリットです。

ただし、学習の様子を監視できないデメリットもあります。内容を理解した”つもり”になっていたり、学習を怠ったりする可能性があるため、チェックテストを行うなどの工夫が必要です。

オンライン研修を成功させるポイントについては、以下の記事でも解説しています。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

 

■参考記事はこちら

オンライン研修とは?質が上がらない原因やメリット・デメリットをわかりやすく解説!

 

研修実施の流れ

コンプライアンス研修は、どの方法をとるにしても「段取り」が重要です。目的や計画を立てずに実行すると、得るべき知識を得られず、時間も費用も無駄になってしまいます。

効果的かつ効率的な研修を実施するため、流れを把握しておきましょう。

①現状の把握

研修の目的と内容を決めるため、まずは調査・分析を行います。現在の社員のコンプライアンス知識はどれほどか、どのような問題が発生する恐れがあるのか、もしくは過去にコンプライアンス違反があったかなどを調査します。

調査・分析は、のちに決める「目的」と「ゴール」の判断材料になります。優先的に実施すべき研修テーマを見定めるため、現状の把握から始めましょう。

 

②目的とゴールを定める

コンプライアンス研修を実施するうえで最も重要なのは、目的とゴールを決めること。「誰が」「何を」「どれほどの知識を」習得すべきなのか、どのようなコンプライアンス違反を防止したいのかなどを明確に決めます。

目的とゴールは、研修参加対象の社員の「階層ごと」に設定します。階層によって、担当する業務や担う責任の範囲が異なるからです。それぞれに求められるコンプライアンスレベルに合わせて、適切な目的・ゴールを定めましょう。

 

③内容の策定

設定した目標とゴールをもとに、内容を決めていきます。実施する研修のテーマが複数ある場合は、どの順番で行うべきか決めましょう。

社外研修の場合、開催されている研修すべてに参加するのは厳しいものです。そのため、参加すべき研修の内容を予め決めておく必要があります。

講師を招いて社内研修を行う場合も同様、内容の策定が必要です。講師に丸投げしてしまうと、社員が学ぶべきことを学べなくなる可能性があるため、企業側で決めておきましょう。

 

④研修手法を決める

次に、研修手法を決めます。研修内容、研修参加対象者、社員の勤務状況、予算などを考慮したうえで適切な手法を選びましょう。

さらに、社外研修の場合は「どの研修に参加させるのか」、社内研修では「どの講師に依頼するのか」、オンライン研修には「どのツールを使うのか」などといった細かい部分まで決めます。

オンライン研修を実施する際は、目的に必要な機能が備わっているかを確認して選ぶのがポイントです。

 

⑤各種手続き/依頼/コンテンツ作成

研修手法が決まったら、必要な手続きや依頼、コンテンツ作成を進めていきます。

社外研修に参加させる場合は、申し込み手続きや支払いなどが必要です。参加できない社員が出ないよう、業務予定と研修スケジュールを確認しましょう。

社内研修で講師を招く場合は、目的に沿った研修を実施できる講師を見極めます。また、事前の打合せを徹底し、要望をきちんと伝えましょう。打合せが丁寧な講師を選ぶのもポイントです。

オンライン研修のコンテンツを作成する際は、視覚的にわかりやすいものを作るよう意識します。作成が難しい場合もしくは時間がかかる場合は、外部企業にコンテンツ制作を依頼するのも、ひとつの手です。

 

⑥実行と振り返り

準備が整ったら、いよいよ実行です。そして実施後は、必ず振り返りを行います。

参加者全員が、研修内容をすべて理解できるとは限りません。そのため、テストを行い理解度を確かめる必要があります。不足している場合は、もう一度研修に参加してもらう、テキストを配布する、オンラインで講師に再指導してもらうなどの対策を練りましょう。

また、研修に対する振り返りも必要です。手段は適切だったか、内容はわかりやすかったか、不足がなかったかなどを確認し、次回に役立てましょう。

 

実施のポイント

コンプライアンス研修は、スキルアップ研修や新人研修と違って、OJT(On the Job Training)によるフォローアップができません。そのため、理解度を高める工夫、研修内容を忘れない工夫が必要です。

では、実施する際に意識したい3つのポイントについて見ていきましょう。

 

アウトプットする機会を設ける

コンプライアンス研修は、学んだ内容を実践して理解を深めるということができません。そのため、他の方法でアウトプットする機会を設ける必要があります。

代表的なのは、テストの実施です。オンラインテストであれば、場所や時間に関係なく行うことができます。また、理解度を数値化できるのもメリットです。

グループワークも、理解度アップに効果的です。他者に話すことで学んだことを整理でき、記憶に残りやすくなります。

部署や店舗のミーティングでグループワークを行えば、チームワークの向上も期待できます。「共にコンプライアンスの意識を高めよう」という気持ちが強まり、さらなる違反防止につながるでしょう。

 

「他人事」にしない工夫

企業が訴えられる、多額の損害賠償を請求されるなどといったスケールの大きい話は、社員にとって他人事になりがち。「自分には関係ないことだ」「自分が不正するわけがない」と研修内容を聞き流してしまうことがあります。

そのため、社員1人1人に自覚させるための工夫が必要です。例えば、具体的な事例を挙げると、シチュエーションをイメージしやすくなり、意識が高まりやすくなります。できるだけ社員の日常に近い例を挙げるのがポイントです。

また、企業のリスクだけでなく、個人のリスクを挙げるのもひとつの方法です。企業のリスクばかりでは、一般職社員は「経営者/管理者が責任を問われるのだろう」と思ってしまいます。個人が被る恐れのある罰則や責任についても触れておきましょう。

 

eラーニングを活用する

アウトプット以外にも、理解度を高める方法はあります。なかでも、eラーニングは復習に便利です。

研修内容でわからないところがあっても、eラーニングであればいつでも、どこでも、何度でもオンラインで確認することができます。また、検索機能付きのツールなら、欲しい情報がすぐに見つかるため、マニュアルとしての活用も可能です。

ちなみにeラーニングは、事前学習にも役立ちます。予め知識を身につけてもらうことで、より研修内容を理解しやすくなるでしょう。

 

コンプライアンス研修の事例

最後に、コンプライアンス研修の企業事例を2つご紹介します。どのような研修が実施されているのか、具体的にイメージしたいという方はぜひご覧ください。

三菱自動車工業株式会社

大手自動車メーカーの「三菱自動車工業株式会社」。当社は、コンプライアンス対策の一環として、入社時と昇進時に、階層別のコンプライアンス研修を実施しています。コンプライアンス問題に纏わる歴史と教訓を知ってもらうことで、全社員の意識向上に取り組んでいます。

「基礎講座」「情報セキュリティ」「時間外労働・休日労働時間」に関するコンプライアンス研修は、eラーニングを活用して実施。また、いつでも振り返りができるよう、規範を記載した冊子の配布やスマートフォンアプリの配信なども行っています。

コンプライアンス意識を高めるため、社員がコンプライアンスを忘れないために、デジタル技術をうまく活用している事例です。

 

ソニー銀行株式会社

ソニー株式会社」の関連会社である、「ソニー銀行株式会社」。当社は、派遣社員も参加者に含め、セクシャルハラスメント防止研修を実施しています。

実施した結果、ハラスメント相談窓口の利用者が増えたとのこと。研修にて、「相談者のプライバシーが保護される」「相談者の不利益にならない」などを伝えたことが、利用者増加につながったのだそうです。

ハラスメント対策を機能させるため、研修をうまく活用した例であると言えます。

コンプライアンス研修は、あくまで対策のひとつです。研修を実施すること、知識を習得させることがゴールではありません。位置づけに注意し、違反発生の防止につなげるよう意識しましょう。

 

まとめ

雇用形態に関係なく、すべての社員の参加が求められるコンプライアンス研修。業務の都合上、全社員を参加させるのが難しい場合は、オンライン研修およびeラーニングを活用するのがおすすめです。

研修が終わった後も、eラーニングを活用すれば定期的に情報を発信することが可能。最新のコンプライアンス知識を習得させることで、社員のさらなる意識向上が見込まれます。

自社に適したツールやシステムを導入し、健全な企業運営を目指しましょう。