動画を活用したeラーニングは有効?効果的な作成方法や活用事例をわかりやすく解説!
YouTubeやTikTokなど動画配信サービスが若い世代を中心に人気が出て、今では私たちの生活に浸透しています。動画は様々な場面で活用されるようになり、人事系の分野にも動画を取り入れる動きが見られています。例えば、人材教育のテキストや新商品の説明、人材採用などに動画が活用されています。
人材教育への動画活用の広がりは、テレワークの普及に伴って働き方が変わったことを受けて、企業の研修や教育がオンライン化したことに影響されています。企業はインターネットを利用した学習形態であるeラーニングを取り入れて、人材教育を効率的に進めるようになりました。
今回は、動画を使った効果的なeラーニングはどのようなものか、また動画の活用例を紹介し、動画の制作方法や、その効果的な動画制作のポイントについて解説します。
eラーニングにおける動画活用とは?
eラーニングに動画が活用されていますが、いったいどのようにして動画活用が広がってきたのでしょうか。ここではeラーニングが拡大してきた背景と動画活用の拡大の背景について解説します。
eラーニング拡大の背景
eラーニングが拡大した背景の1つとして、コロナ感染症の拡大により多くの企業がテレワークを導入するようになったことが挙げられます。テレワーク導入に連動して企業の新入社員への教育方法も形を変えてきていて、新人研修は従来の集合研修からオンライン化が進んでいます。
これまで採用されていた研修の形態は集合研修がメインでした。集合研修は対象者が一堂に会して行うため、会場の利用料のほか遠地の人は交通費がかかる上に、会場のキャパシティがあるので参加者が限られるというデメリットもありました。日時と場所が決まっているという制約があるために、出席対象者の中には都合がつかない人も出てきます。
コロナ禍をきっかけに研修形態の見直しが図られ、企業研修は集合研修からオンライン研修へと移行し、日時と場所の制約なしで学ぶことができるeラーニングが取り入れられるようになりました。
eラーニングが拡大する背景の2つ目として、スマホやタブレット、パソコンといったデバイスとネット環境の進化があります。今は従業員や新入社員の大多数が、なんらかのデバイスを所持していることから、eラーニングを導入する土壌ができているといえます。
また、今までの研修や学習は講座を受けたあとに個々に課題に取り組むという流れで行われていましたが、eラーニングが活用されることによって、講座内容を予習してから講座で課題に取り組むという「反転学習」が取り込まれるようになりました。反転学習は、より理解度が深まる学習方法として注目されています。
動画活用が今広がっている
動画活用がいま拡大していますが、情報通信技術が発達してきたことに起因しています。動画配信サービスや動画編集ソフトが発達して利用しやすくなり、プロでなければ難しかった編集も趣味で行う人も増えています。スマホやビデオカメラの性能も高くなって、専用機材を用意しなくても気軽に動画撮影ができたこと、サービスや技術の進化したことによって動画作成が普及しました。いまでは多くの動画がアップロードされ、アプリを通して私たちは無料で視聴することができます。
また動画の持つ表現力の高さも、動画の活用が進む理由です。動画は動作を交えて表現できるため、視聴する人に伝えたいことが伝わりやすいのです。百聞は一見に如かずといいますが、丁寧に書かれた説明書を何度読んでも腑に落ちなかった点が、動画で一連の動作を見てはじめて理解できることがあります。
伝えたいことが伝わりやすい動画が活躍の場を増やしています。
従来の紙マニュアルと動画の違い
紙に印刷したマニュアルと動画マニュアルにはどのような違いがあるのでしょうか。主な相違点を4つ挙げます。
1:情報量が多い
紙媒体のマニュアルと動画マニュアルには取り込める情報量に大きな違いがあります。紙マニュアルは視覚から文字で情報を捉えますが、これに対して動画では動作や背景までも情報を視覚で取り込むことができる上、聴覚で耳から音の情報も得ることができます。動画は文字情報と比較すると圧倒的に多くの情報を伝えることができます。Forrester ResearchのJames McQuivey博士は、1分間の動画は180万文字と同等の情報量の価値があると発表しています。180万文字とは400文字の原稿用紙4,500枚に相当します。動画に盛り込まれる情報量の大きさと、動画と紙マニュアルとの伝わりやすさに違いがあることが分かります。
2:閲覧場所を選ばない
紙のマニュアルは職場に保管してあるもので、企業の重要な資料ですから外への持ち出しを禁止されているものがほとんどだと思います。従来の紙マニュアルで学ぶには、出勤している場所で勤務時間中に確認することになり、利用機会の場所と時間が限られています。動画マニュアルは、本人確認のパスワードを設定し利用者を限定することで社外に自社情報が流出しないように対応でき、マニュアル自体のセキュリティを守ることができます。
マニュアルが動画であれば、スマホなどのデバイスを通して、気になったときにいつでもどこでも、時間や場所を問わず、スキマ時間を有効に活用してマニュアルを閲覧することができます。
3:学習効率が高い
紙マニュアルに比べて動画マニュアルは学習効率が高い点が注目されています。
認知特性について研究をしている医学博士の本田真美氏は自身の著書で、人は何かを記憶するとき、視覚、聴覚、言語のいずれかを手がかりにしているといいます。また、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが実験結果から提唱する「メラビアンの法則」によると、人と人がコミュニケーションを図る際に、「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合で影響を与えているといいます。
(メラビアンの法則を弊社で図化)
動画マニュアルでは、紙マニュアルの文字による「言語情報」を字幕やテロップとして網羅させていて、さらに人物の動作や表、イラストによる「視覚情報」やナレーションや効果音での「聴覚情報」が加わるため、記憶に必要な3種類の情報を同時に受け取っています。このため紙マニュアルに比べて学習効率が高いのです。
以下のような業種では、動画マニュアルの活用はより有効です。
接客・サービス業では、お客様への話しかける声のトーンや大きさ、話し方、タイミングなどまで、模範とされる動作を確認することができます。
看護・介護職では、患者や入居者とその家族に対して接し方が難しい職業です。紙マニュアルでは、体に触れるケアの仕方や細やかな気配りといったデリケートな接し方や適切な処置方法が分かりにくいものです。動画マニュアルであれば、講師による適切な対応方法や所作を見ることで細かなニュアンスまで確認できますので、受講者の理解度を高めることができます。
流通・小売業においては、店舗運営に多くの従業員を抱える必要があります。大勢の新入社員全員に対して毎年一定量の研修を実施し続けることになりますが、大きな時間と手間、コストがかかります。動画マニュアルの導入によって、講師にかかる人件費や会場費、交通費などの研修コストを大幅に削減できます。また動画マニュアルであれば、オンラインで対象者にのみ共有できるため、入社前研修に利用することもできます。
4:改訂コストが安い
紙のマニュアルのデメリットのひとつに、印刷されたものは改訂が難しいということがあります。誤植の対応もそうですが、内容を書き換えるなどの修正が容易ではありません。
私たちの携わる業務は、日々進化していくものですので、時間の経過とともに方針ややり方が変わっていきます。このほか最新データを盛り込む、記載された数字が変わるなどマニュアルの内容を修正する必要が生じます。
紙マニュアルの改訂は、再度原稿を直して印刷にかけなければなりません。印刷コストはページ数や紙サイズのほかに、紙質や色数によっても大きく変わりますが、まとまった部数を印刷すれば、大きな費用があらたに発生することになります。また以前の紙マニュアルは廃棄となり、資源の無駄遣いともいえます。
動画マニュアルは、修正が必要な個所を部分的に撮影をし直すことで内容改訂に対応できるなど、臨機応変に対応することができます。部分的に修正をかけたら、再度配信サービスにのせることで、最新のマニュアルを対象者に届けることができます。
eラーニングで効果的な動画活用例
ここまでは従来の紙マニュアルと動画マニュアルの違いについて見てきました。ここでは、eラーニングに効果的な動画の活用例を紹介します。マニュアルとしての動画の活用例のほかに、経営理念等の浸透を目指した動画の活用法もあります。
1:業務知識に関する解説動画
eラーニングの研修項目に業務知識に関する解説を取り上げる場合についても、従来のテキストやイラストのみの教材を動画にすることでより理解度が深まります。
効果的に学べるように、自社商品の知識などの解説を動画にまとめるなど、eラーニングに動画が取り入れられています。
新入社員に対する自社商品やサービスに関する説明のほかに、新商品が発売される場合にも新商品やサービスの概要を動画にまとめて配信すれば、営業担当者や店舗スタッフが発売前にその特徴やラインナップ、差別化ポイントなどの情報を学んでおくことができます。
自社商品の解説以外にも、業界全体の専門知識や職場全体の業務とその目的について解説する研修についても動画教材は有効で、動画の活用場面は多岐に渡ります。
2:具体的な業務内容に関する実践動画
業務内容を誰でも習得できるように手順を網羅して説明したものがマニュアルですが、紙マニュアルの文字と写真やイラストでは伝わりにくい部分もあります。
調理製造において魚を卸す工程を説明する場合に、文字の説明書では工程を想像しながら進めていくことになります。動画ならどこにどの程度包丁を入れるのか、手の動きはどうかという具体的な動作を見ることで手元の繊細な動きまでを捉えることができます。機材の使い方や品質チェックの仕方、接客の基本動作、お客様とのコミュニケーションの取り方からお見送りまでの動作など、職場に応じたさまざまな作業工程を、動画で習得することができます。
動作だけで伝わるものもありますので、外国人スタッフに対して文字でのマニュアルや言葉で説明するよりも実践動画を取り入れるほうが効果的な研修になるといえます。
動画での業務実践動画を確認できると、職場でのOJT教育で学ぶ前に業務内容を把握することができます。
3:集合研修の講義内容を録画した動画
集合研修の講義を録画した動画をeラーニングの講座のひとつとして置き換える、という活用の方法もあります。新しく講座を設計して動画を撮るのではなく、開催した集合研修に時間や場所の都合によって出席できなかった人や、内容を再確認したい人の振り返りのために利用されています。
集合研修では聞き逃してしまった場面については、情報をとり逃してしまいますが、動画のコンテンツとして配信されていれば繰り返し復習することができます。
4:優秀なスタッフの業務を撮影した動画
好成績を残す優秀なスタッフに共通する行動特性をコンピテンシーといいますが、近年では従業員一人一人の成長を促し、生産性を向上させる手段として、コンピテンシーを導入する企業が増えてきています。どのような行動特性によって高い成果が生まれるのかを従業員が理解し、行動特性に従った行動をすることで、企業全体の業績向上につながります。
優秀な従業員がどのように業務を行っているのか撮影した動画をお手本として配信することで、受講者が模倣しながら練習すれば、職場全体の業務レベルが上がることにつながります。
5:社長などの幹部からのメッセージ動画
社長をはじめとする経営トップのメッセージを従業員全員に伝えるために動画を活用する企業もあります。経営トップ層のメッセージを組織の末端まで届けることで、あらためて初心に戻って業務に取り組もうとする意識改革や、会社の方向性をトップの言葉でつたえることで従業員一人ひとりのモチベーションの喚起につなげることが狙いです。
年頭の挨拶や期首の社長挨拶をコンテンツとして配信する企業も多くあります。会場に集合して「年始会」を行う企業もあり、遠方の従業員の参加は難しいためライブ配信を行い、場所を問わずにリアルタイムで社長のメッセージを受け取ることも可能にしています。
しかしその時間にシフトに入っているなど都合のつかない従業員にとっては受講の機会を逃すことになります。動画をeラーニングのコンテンツとして配信すれば、従業員が都合の良い時間に見ることができます。
動画を制作する3つの方法
eラーニングに効果的に活用されている動画ですが、動画を制作するにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは3つの方法を紹介します。
方法1:外部委託で制作する
動画制作の一つ目の方法は、プロに任せて作成することです。プライベートで楽しむ動画を制作する人が増えているとはいえ、教育の場で使用する動画には、高いクオリティが求められます。また、制作物が多数あれば、やはり外部委託することを検討しましょう。
教材として利用する動画には、画面上での構図の取り方や撮影の角度などの見せ方からナレーションでの説明やテロップまで、考えて制作していきますが、プロに任せることで精度の高いものを作ることができます。
動画コンテンツ制作専門の業者に依頼して制作をすすめる中で、企画の立て方や見せ方などについて有益なアドバイスを得られることもあり、無形のメリットだといえます。
自社制作に比べてコストはかかりますが、クオリティの高さとかかる手間に見合っているなら、従業員教育に活かすための分かりやすい教材の制作にはプロの業者を利用することも良い方法です。
方法2:コンテンツ提供会社から購入する
eラーニングに使う動画を、購入することもできます。
近年、eラーニングが拡大してくるなかでeラーニング用の教材を販売する業者が増えています。
新人研修においては、どの企業にも共通するビジネスマナーやロジカルシンキングなどのビジネスマンとしての一般的な教養についても教育する必要があります。たとえば社会人としてのマナーや名刺の渡し方、あいさつの仕方、心構えの研修内容が当てはまりますが、このような各社共通のコンテンツについては、販売されているものを購入して活用するのも有益な方法です。
自社ならではの研修内容の動画コンテンツのみを作成するようにすれば、動画制作にかかる担当者の負担を減らすことができます。
方法3:自社で制作する(内製)
従業員研修に利用する動画を内製することができれば、大幅なコスト削減につながります。また、一度動画制作をすることでノウハウを社内に蓄積させていけば、内容を修正したい時にも自ら更新でき、学習内容を最新の状態にしておくことが可能です。
自社で制作すれば、作り手の理想とする動画イメージやポイントになる点が社内で共有されているので、意図した通りに動画に反映しやすいというメリットがあります。外部委託先の業者に対して自社の教育環境や作りたい動画のイメージ、研修教材としての動画の位置づけなどについて、説明して正しく理解してもらうのはなかなか骨の折れる作業です。この点からも、自社内で動画の企画と制作が完結できるのはメリットだといえます。
動画を内製する具体的な作成ステップに関しては以下の記事をご覧ください。
■参考記事
eラーニングの教材は自社で作成できる?内製のメリットと作成方法をわかりやすく解説!
効果的なマニュアル動画を制作するポイント
どこで動画を制作するのかとは別に効果的なマニュアル動画を作るには、ポイントがあるます。3つのポイントに分けて解説します。
ポイント1:教える業務は1動画につき1つ
1つ目のポイントは、1つの動画にいれるのは1つの業務にすることです。マニュアルを作るにあたって、一番大切なことになります。紙マニュアルでも同様ですが、一つのコンテンツにあれもこれも入れ込んでは教えたいことが埋もれてしまい、結局何を知ってもらいたいのかが伝わりにくくなります。ワンコンテンツ、ワンコンセプト、ワンメッセージを守ることが大切です。
ポイント2:なるべく短い時間にまとめる
マニュアル動画は、短い時間にまとめることも受講しやすさに関わる大切なポイントです。
コンテンツを教える1項目ごとに作成することを守れば必然的に1つの動画は短くなります。
受講者が動画マニュアルを視聴するのは、スマートフォンが主流です。いつも持ち歩くデバイスで動画マニュアルを閲覧できるため、電車の中や飲食店などで視聴するということもあります。このときに動画が30分以上と長尺だと、スキマ時間を利用した学習に使いにくくなります。
1つの動画は1分〜5分にまとめると、閲覧しやすくなり、また不明点だけをピンポイントで見返しやすくなります。
ポイント3:字幕を活用する
動画に字幕を入れることも大事なポイントです。
今、YouTubeを見るとほとんどの動画に字幕が入っているのがわかります。字幕があることでキャッチ―で、かつ分かりやすい動画になるため、動画に字幕を入れるアプリも多く出ています。
eラーニング動画の説明を耳で説明を聞く場合、聞き取れなかったり、同音異義語と勘違いしてしまうことがあります。説明はナレーションと同時にテロップがあると、説明の意図することを理解しやすくなり意味を取り違えることもありません。
受講する場所や場面によっては音を出さずに視聴する人もいるでしょう。この場合にも字幕があることで内容を理解することができます。字幕のフォントや色を工夫することで大切なポイントを強調することもでき、より分かりやすくなり効果的な教材になります。
まとめ
今回はeラーニングにおける研修に動画を活用することについて、なぜ動画マニュアルが効果的といわれるのか、動画マニュアルの活用例、効果的な動画マニュアルの作り方について見てきました。
紙マニュアルに比べ情報量の多い動画マニュアルは受講者が理解しやすく、研修教材に適しているといえます。
動画制作には手間やコストがかかります。自社で内製するかプロに委託するか、作りたいものの内容に合わせた選択をしましょう。