作業効率の高め方とは?作業の無駄を見つけ、改善する方法
企業・店舗の生産性を上げるためには、効率よく作業を行うことがなにより重要です。しかし、「作業が終わらず頻繁に残業をしている」「作業スピードが一向に上がらない」と悩む職場は少なくありません。
そこで今回は、作業効率の高め方について解説します。
作業効率を上げる目的や、無駄な作業を見つける方法、効率アップに成功した事例などもご紹介しますので、作業の効率化にお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
作業効率が求められる理由
そもそも、なぜ作業効率を上げるべきなのでしょうか? 従業員に教育する上でも目的の把握は重要なので、改めて確認しておきましょう。
「業務」効率化のための「作業」効率化
作業効率を上げる目的は「業務をスムーズに遂行する」こと。作業の1つでも効率よく行われていなければ、業務全体に遅れ・ムダが生じてしまうからです。
企業では、業務を複数の部署・チームで分担し、連携して行っています。それぞれの作業が互いに影響し合っているため、作業効率が悪いと業務全体の進みも悪くなるのです。
反対に、作業の効率が上がれば、業務全体の効率も上がると言えます。
業務効率が上がると、企業の生産性は高まるもの。ムダが無くなることで、時間と労力を、より利益が得られる業務へと回すことができます。
例えば店舗型ビジネスの場合、バックヤード業務の効率が上がれば、接客に割く時間を増やすことができます。日常業務の時間が短縮されれば、会社の成長につながる企画の考案、企業の課題点解決などに時間をかけることも可能です。
そして、最終的には店舗・企業の売上げアップ、利益向上へとつながるため、作業の効率化は取り組むべき重要な課題と言えます。
作業効率が悪くなる理由
より着実に作業効率を上げるためには、原因を把握する必要があります。さまざまな原因が考えられますが、共通して言えるのは以下の5つ。詳しく見ていきましょう。
理由1:時間配分を考えていない・不適切
時間配分が上手くできていないと、作業効率は悪くなります。「何に時間をかけるべきか」「どの作業を省略すべきか」の判断が不適切なため、無駄な作業にばかり時間をかけてしまうのです。
また、そもそも時間配分を一切考えずに作業している場合もあります。
時間を気にせず作業すれば、当然遅れが発生するもの。未完了のタスクが増え続け、焦りや疲れからミスが生じることもあります。ミスの対処に余計な時間を取られ、さらに作業効率が悪くなる……という悪循環が生まれてしまうのです。
理由2:未計画で作業している
企業では、作業マニュアルが設けられている場合がほとんど。しかし、マニュアルに記載されていない細かい作業も多々あります。状況や予定により、作業内容が変化することも。
そのような作業を未計画で進めてしまうと、作業効率は悪くなります。優先順位をつけず、手当たり次第に作業に取り掛かってしまうのです。それでは無駄な行動が増えてしまいます。
特に、臨機応変に対応すべき作業は未計画になりがち。段取りをつけて作業する習慣がなければ、作業効率を改善することはできないでしょう。
理由3:伝統や習慣に縛られている
「今までずっと、このようにやってきたから」「過去の成功例があるから」
このような理由で行っている作業は、無駄である可能性が高いです。過去に実績があり、良いとされた方法であっても、現時点で利益にならないのであれば、それは不必要な作業と言えます。
利益にならない作業は非効率的。時間と労力を浪費することになります。
しかし、長年続けてきた業務には違和感を感じにくいもの。変更すべきかどうかの判断が鈍りがちなので、話し合って精査する必要があります。
理由4:チームワーク力不足
複数人の従業員で分担して作業を行う場合、チームワークが必須です。しかし、協力し合おうとする姿勢、行動がないと、連携を取ることができず作業効率は下がってしまいます。
また、分担した作業量に偏りがある場合も、スムーズに進めることができません。チームバランスが崩れ、キャパシティオーバーの従業員が出てくるからです。ミスしたり、作業が遅れたりといったトラブルが発生します。
よってチームの作業効率を上げるためには、互いに助け合うチームワーク力と、適切な作業分担が必要と考えられます。
理由5:コミュニケーション不足
コミュニケーション不足も、作業効率低下の原因として挙げられます。
例えば、連絡・返答を待っている時間は、作業が強制的にストップします。もし連絡が取れたとしても、内容がわかりにくければ、何度も確認を取るなど無駄に時間を消費することとなるでしょう。
また、コミュニケーション不足は、チームワークの欠如の原因に。互いに助け合いながら進める、といった効率の良い業務進行が実現できなくなるため、円滑に情報共有できる対策が必要であると言えます。
無駄な作業の見つけ方
作業効率の低下は、無駄な作業が多いことが原因。しかし、日頃業務に取り組んでいると、どの作業が無駄なのか、何を省くべきなのか判断に困ってしまうものです。
そこで、ここからは無駄な作業の見つけ方について解説していきます。
方法1:作業の洗い出し
日々取り組んでいる業務には、無意識のうちに行っている作業が多々あります。その中には、無駄な作業が隠されている可能性が高いです。
そのため、まずは作業の洗い出しを行います。「いつ」「誰が」「何を」しているのかを改めて明確にすることで、作業1つ1つの比較・検討が可能になります。
その際は”可視化”することが大切。頭の中だけで考えるよりも、内容を整理しやすくなるためです。
また、複数人で話し合いながら判断するためにも、誰が見てもわかりやすいように可視化することが重要です。
方法2:目的との照らし合わせ
作業の洗い出しが完了したら、次に目的との照らし合わせを行います。「目的を果たすのに必要だ」と判断した作業は、残すべき作業であると判別できます。
- 今まで続けてきたから
- そのように教育されたから
- 過去に評価されていた方法だから
反対に、上記のような理由で行っている業務は、「目的を果たす上で必要ない」と判断できます。その場合、本当に継続して実施するべきかどうか疑う必要があるでしょう。
方法3:排除・簡略化・変更の見極め
洗い出し、目的との照らし合わせが完了したら、いよいよ見極めの段階に入ります。見極める際は、無駄な作業を単純に「排除」するだけでなく、「簡略化」「変更」まで視野を広げて判断することが大切です。
目的を果たす上で必要ないと判断した作業でも、すべてが無駄とは言い切れません。間接的に良い効果をもたらすのであれば、簡略化や、方法の変更を検討することで、最善策を編み出すことができます。
また、排除しないと決断した作業も、簡略化・変更が可能か検討することで、さらなる効率向上が見込めるでしょう。
作業は、工程数が少なければ少ないほど効率は上がります。とはいえ、簡略化しすぎて本来の目的を達成できなければ、意味がありません。残すべきか、変更すべきか、省略すべきかの判断は慎重に行いましょう。
作業効率が高い人が意識していること
作業効率を上げるためには、組織としての取り組みが必要不可欠。ですが、従業員1人1人の意識・考え方にも大きく影響されます。
では、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。主な6つのポイントをご紹介します。
1:業務の全体を把握する
作業効率が高い人は、自分の担当する作業が、後に続く作業に与える影響を考えて行動しています。「自分が遅れれば他の作業も遅れる」ということを、きちんと理解した上で行動しているのです。
また「他の作業を効率よく進めるためには、自分は何をすべきか」も考えます。最終的なゴールである”業務効率化”を把握し、全体像を掴むことが、本当の意味での作業効率アップにつながります。
2:主体性を持って行動する
従業員の能力向上、成長促進などさまざまなメリットをもたらす「主体性」。作業効率の高い行動にも、この主体性が欠かせません。
主体的に取り組むとは、つまり「先読み」をすること。これから起こりうることを予測して行動するため、イレギュラーが発生してもペースを崩さず対処できます。
反対に、受動的な姿勢は対処の遅れを招きます。目の前の作業にだけ集中しているため、イレギュラーが発生した際、後手に回ってしまうのです。その結果、作業に遅れが生じ、効率が悪くなります。
ありがちなのが「周りの人からの頼まれ事が多く、作業が進まない」というシチュエーション。先読みし、予め対策を練っておけば、作業の中断を回避できる可能性が高まります。
また、頼まれ事をすべて受け入れるのではなく、相手にとっても自分にとっても都合の良い方法を見つけることも可能です。作業効率を下げないため、自らの「軸」を保つ考え方が必要なのです。
3:ルールに従って判断する
すべての作業が、常に決まったとおりに進むとは限りません。状況に合わせた決断を迫られる場面は、多々あります。
悩む時間によって作業効率が下がらないようにするためには、ルールに従って判断することが大切です。
例えば、スケジュールを立てるときは、予め決めておいたスケジュールの手順に沿って実行することで、スピードアップが期待できます。イレギュラー発生時の判断基準を設けておくと、急な変更にも素早く対応できるでしょう。
ルールに従っての判断は、間違った決断の防止にもなります。トラブル対応に時間を割かないためにも、「決断する手順」を用意しておくことは重要です。
4:返信待ちは「仮置き」で進める
複数の部署・チームで作業する場合、返信待ちで作業がストップすることが多々あります。相手の都合により、大幅に作業が遅れることも珍しくありません。
そこで作業効率が高い人は、現時点でわかることをまとめて、「仮置き」で作業を進めます。修正が効く範囲で進めれば、後に変更を強いられた場合でも対応できるからです。作業を停止するよりも、早くタスクを完了できます。
また、仮説を立てて行動することは、作業工程の減少にもつながります。
引用:「羽田康祐 k_bird(2020)『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』フォレスト出版株式会社」
上記図を見てもわかるように、すべての情報が集まってから実行すると、確認作業に時間がかかります。一方、仮説を立てた場合は、確認すべき項目が絞られるため、時間短縮につながるのです。
自分でわかること・できることを行い、行動、そして修正を繰り返す……という流れを習慣化している人は、作業効率が高いと言えるでしょう。
5:優先順位をつける/「すべて完璧」を目指さない
「頑張っているのに、作業が遅いと注意される」と悩む人は少なくありません。
そのような人は、すべてにおいて完璧を目指していることが多いと推測されます。8~9割できていれば合格と認められることでも、10割を目指すがゆえに、作業が遅れてしまうのです。
対する作業効率が高い人は、優先順位を適切に見極め、現時点での”合格”を目指します。
何を優先すべきか、何に注力すべきなのか。完璧に仕上げるよりも、今はスピードの方が重要か。これらを見極められる人は効率的です。
6:周囲に協力を促す/役割分担
1人当たりの作業量が多ければ多いほど、作業効率は悪くなるもの。そのため作業効率が高い人は、周囲に協力を促すことを意識します。
役割分担すると、従業員1人1人の精神的・肉体的な負担が減り、余裕ができます。ミスやトラブルが減る、冷静な判断が可能になるなど、効率よく作業できる環境を構築できるのです。
また、複数人で作業を同時進行することも可能に。その分、より早く作業を進めることができます。
器用な人、仕事歴が長い人ほど「自分がやった方が早い」と思ってしまいがち。しかし、ひとりで多くの作業を抱えてしまうと、かえって遅くなってしまうため、「任せる」ことが大切なのです。
作業効率向上のための具体的な方法
作業効率は、ただ「効率良く」と意識するだけでは改善されません。
では、どのようなことをすれば向上するのでしょうか。具体的な方法を5つご紹介しますので、職場の作業効率改善に悩んでいる方はぜひお役立てください。
方法1:作業マニュアルの作成/見直し
作業の手順が決まっている場合は、マニュアルを作成するのが効率アップへの近道。ムダ・ムリのない方法を予め定めておくことで、実際に作業に取り組む際、悩まずに済みます。
また、既にマニュアルが存在する場合も、改めて見直すことが大切です。普段では気付かなかった改善点や、より効率の良い方法が見つかる可能性があります。
マニュアルの作成・見直しの際は、ご紹介した「無駄な作業を見つける方法」を参考にしてみましょう。特に「目的達成に必要な作業か」という基準は、効率的なマニュアルの作成に役立ちます。
手順が決まっていない作業、状況によって対応が変わる作業も、基礎となるガイドラインを設けることで作業効率は上がります。考える時間・悩む時間をできるだけ省略するのがポイントです。
方法2:「時間管理マトリクス」を使った適切な時間配分
時間配分の改善には、「時間管理マトリクス」が有効です。書籍『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』に記載されている、以下の図を参考にしましょう。
引用:「羽田康祐 k_bird(2020)『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』フォレスト出版株式会社」
このように、作業は4種類に分けることができます。なかでも時間を多く割くべきなのは、「重要度の高い作業」です。
そのためには、重要度の低い作業を工夫する必要があります。「役割分担はできないか」「取り組み方に問題があるのではないか」などを検討し、作業の排除もしくは時間短縮を図りましょう。
時間配分を改善する際は、作業の担当者と共に考えるのがおすすめ。普段、実際に業務に取り組む従業員の意見を取り入れることで、実用的な方法が見つかりやすくなります。
方法3:コミュニケーション方法の見直し
作業の遅延・停止を防止するため、コミュニケーション方法も見直しが必要です。以下を意識することで、情報共有の効率化が期待できます。
- 情報の伝え方
- 情報の定量化
- 伝えるべき要点を絞る
- 適切な伝達手段
やり取りの回数を減らすため、相手にとってわかりやすい言葉、わかりやすい順番で伝えることが大切です。相手の立場に立って考え、内容がきちんと伝わるよう意識しましょう。
定量化も、認識のズレによるすれ違いの防止になります。「いつ」「どのくらい」「いくつ」と数字で表すことで、明確に情報を伝達することができます。
作業効率化のためのコミュニケーションですが、内容を理解するまでに時間がかかるようでは本末転倒です。結論と根拠を明確にし、要点を絞って伝えることを意識しましょう。
また、そもそも手段に問題がある可能性もあります。メールの見落としがあるのであれば通知機能付きのチャットを、内容が複雑でわかりにくいのであればビデオ通話を、というようにわかりやすくスムーズに伝わる手段を選びましょう。
方法4:フレームワークを活用したアイディア発案の効率化
発想力を必要とする作業は、アイディアが思い浮かばない、と悩む時間が多くなりがち。
そこで活用できるのが「フレームワーク」です。フレームワークに沿って進めることで、思考を巡らせる時間を縮めることができます。また、アイディアのモレ・ダブり防止にもなるため、効率的と言えるでしょう。
例えば、店舗の問題解決に当たる際は「PDCA」などのフレームワークが有効です。そのほか、顧客への販促企画考案には「5W1H」、商品企画には「マインドマップ」などが役立ちます。
目的に合ったフレームワークを活用し、無駄に悩む時間の短縮を図りましょう。
方法5:ツールやシステムの導入
作業効率を上げるためには、ツールやシステムを導入してみるのもひとつの手です。
タスク管理や情報共有などにツールを活用することで、作業の実行漏れや伝達ミスの防止につながります。コミュニケーションエラーが改善され、チームで取り組む作業の効率アップにつながるでしょう。
また、ツールやシステムによっては、作業の可視化も可能に。いつ、誰が、何の作業をしているのかが明確になるため、管理しやすくなります。管理者が作業の無駄を発見し、指導するといった方法で効率化することも可能になります。
少なからずコストはかかりますが、作業効率向上によって生産性が上がれば利益として得られるので、投資してみるのも良いでしょう。
作業効率を改善した事例
作業効率アップの具体的なイメージを掴むため、いくつか事例をご紹介します。「改善したいが、実際に何をすれば良いのかわからない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
事例1:クラウドサービスによるコミュニケーションの効率化
インターネットで情報を一括管理できる「クラウドサービス」。チーム内、企業内での情報共有に便利で、コミュニケーションの効率化に役立ちます。
そんなクラウドサービスを利用し、作業効率向上に成功したのが、電子機器の開発・生産等を行っている「有限会社エクサス」。当社は、見積から請求までに必要な書類と、取引の進捗をクラウドで一元管理することで、担当者同士のやり取りの減少に成功しました。
また、いつどこにいても作業の進行状況を把握できるようになったため、書類発行の漏れも減少したとのこと。その結果、業務のクオリティが上がり、残業も減ったのだそうです。
事例2:習慣化された作業の改善による労働時間削減
「長年続けてきたから」と見直しを怠っている作業は、意外と多いもの。そこに気づき、改善したのが、香川県・小豆島にある「小豆島国際ホテル」です。
当社は、専門家のアドバイスの元、まず各作業の状況を分析。その結果、客室清掃部門の作業において、計4.6時間/日の無駄が発生していることがわかりました。
対策として、掃除ロボットの導入や、客室内でのお茶の提供方法変更などを実施。清掃に必要な道具を収納している作業場の配置見直しも行い、清掃作業の効率化を図りました。
取り組んだ結果、当社は20%、年間2058時間の労働時間削減に成功したのだそうです。
事例3:売り場改装による作業効率UP・生産性UP
店舗型ビジネスの場合、作業の取り組み方やシステムを工夫しても改善されない場合は、思い切って店舗を改装するのもひとつの手です。
厚生労働省発行の資料によると、愛媛県のとある飲食店は、非効率な配膳業務に問題を抱えていました。
そこで改装を行い、店舗レイアウトを変更したことで、スムーズかつ安全な配膳業務を実現。来店客の回転率がアップした上、顧客満足度の向上にも成功しました。
生産性が向上したことにより、パート従業員3人の時間給も平均110円アップ。作業効率の向上が企業の利益向上、そして顧客と従業員の満足度向上へとつながった好事例です。
まとめ
近年、働き方改革などの影響を受け、多くの企業が残業時間短縮に注力しています。そのため、作業の効率化は必要不可欠。時間内に効率よく、質の高い業務を行うことは、以前以上に重要です。
効率を高めるには、ご紹介した方法のほかにも数多くあります。まずは自社の状況を分析し、適切な取り組み方を見極めましょう。