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人材育成ロードマップとは?作成するメリットや方法、活用のポイントを解説!

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2024.08.02
『shouin+ブログ』マーケティング担当

次に何が起こるかわからない、予測不可能な時代といわれる現代は、企業がなりたい姿「ビジョン」を明確に描くことが大切です。そして、ビジョンを達成するためには人材のパワーが欠かせません。ゆえに、多くの企業が中長期的な視点での人材育成に取り組んでいます。

そこで必要となるのが、戦略的な人材育成の実現に役立つ「人材育成ロードマップ」です。

本記事では、そんな人材育成ロードマップの作成方法やメリット、活用のポイントなどについて解説しています。また、人材育成ロードマップの活用方法のひとつ「人材育成計画」に役立つテンプレートもご用意しましたので、ぜひお役立てください。

 

人材育成ロードマップとは

まずは、人材育成ロードマップの意味から見ていきましょう。

そもそも「人材育成」とは、企業の目標やビジョン達成に貢献する人材を育てること。従業員の成長を促す取り組みを指します。

そして、「ロードマップ」という単語には以下のような意味があります。

自動車を運転する者のための道路地図。ドライブマップ。
ある作業をするときの手順表。行程表。
企業が将来発表する予定の製品を時間順に並べた図表。

引用:「デジタル大辞泉」小学館

つまり、これら2つの単語を組み合わせた「人材育成ロードマップ」とは、企業が求める人材を育てるための道筋のこと。企業の人材戦略を示す手順表やマップを意味します。

ロードマップには、人材育成のほか経営、技術、製品などさまざまな種類があります。人材育成においては、企業が「どのような人材を育てたいか」「その人材を育てるには、どのようなことを学ぶ・経験させる必要があるのか」がロードマップに記されます。

人材育成ロードマップに描くのは、企業の意思・理想です。「このような人材を育てるべき」といったルールや、予測を記すものではありません。

企業が目指す人材育成のビジョンを可視化することで、方向性の提示と社員の飛躍的な成長、および企業ミッションの達成を図ります。

 

人材育成計画表との違い

「人材育成ロードマップ」と「人材育成計画表」は、どちらも人材育成の未来を記すものです。ですが、それぞれ役割が違います。

人材育成計画表は、既に決定しているゴールに向けて、社員をどのように育てるかを可視化したもの。ゴールまでの過程と手段を決めるためのツールです。

一方、人材育成ロードマップは、企業が目指す人材育成のゴールと、ゴールまでの流れ全体を示すもの。人材育成計画表と比べて視座が高く、人材育成の方向性を示すために用いるものです。

『ロードマップの誤解をとく本』という書籍にて、著者の出川通氏は、ロードマップと計画表の違いについて以下のように述べています。

スケジュールは戦術であり、アクションプランなので目先の対応重視ということにつきます。一方のロードマップは実際の企業でイノベーションを起こすときに必要な不確定性への対応の戦略、全体を俯瞰した未来のありたい、あるべき姿を示すものとなります。

引用:出川通(2020)『ロードマップの誤解をとく本ー「未来創りツール」の作成と活用のノウハウ』株式会社言視舎

このように、人材育成計画表は「対策、手段を考える」ため、人材育成ロードマップは「企業の意思を決める・示す」ためと、目的に違いがあります。

人材育成ロードマップは、人材育成計画表を作る際の軸となります。そして人材育成計画表は、ロードマップに記したゴールにたどり着くための手段を考えるのに有効です。

2つはこのような因果関係にあり、同義語ではないため注意しましょう。

 

人材育成ロードマップを作成するメリット

これまで一度もロードマップを作成せずに人材育成を行ってきた、という企業も多いでしょう。実際、ロードマップがなくても従業員を教育することは可能です。

しかし、これからの時代の人材育成には、ロードマップが欠かせないといわれています。なぜ注目する企業が増えているのか、主な5つの理由、および人材育成ロードマップを作成するメリットについて解説していきます。

 

メリット1.人的資本経営の実現

近年、注目されている「人的資本経営」。従業員を資本と捉え、投資することで持続的な企業価値の向上を目指す考え方です。

人的資本経営の実現には、中長期的な視点での人材育成が欠かせません。

そこで必要となるのが、人材育成ロードマップです。ロードマップを活用することで、今後どのような人材を育てていきたいのか、長期的な目線で戦略を立てることができます。サステナブル経営に必要な人材を「計画的に」育てることが可能になるのです。

また、人材育成ロードマップは、企業が持続可能な経営を目指していることの証明にもなります。「戦略を立てて人材に投資していく」という企業の姿勢が、投資家や顧客、従業員に良い印象を与えるのです。人材育成に注力している企業として、社会から高く評価されます。

このように、人材育成ロードマップは、企業の価値が重視される現代において重要なツールといえるでしょう。

■参考記事はこちら

人的資本経営とは?注目される背景や国内外動向、情報開示の内容などについてわかりやすく解説!

 

メリット2.企業理念に沿った人材の育成

人材育成の本来の目的は、企業のビジョン・ミッションを実現すること。その目的を見失わないためにも、人材育成ロードマップが必要です。

従業員教育に力を注いでいる最中は、つい個々の能力を高めることばかりに集中してしまいがち。ですが、人材育成ロードマップがあることで、目指すべきゴールから逸れずに教育を進めることができます。

ロードマップに沿って研修カリキュラムを組み、スキルを習得させれば、自ずと企業理念に沿った人材が育つ。そのような仕組みを作るのに有効なツールといえます。

 

メリット3.人材戦略の共有

人材育成ロードマップは、人材戦略の共有ツールとしても活躍します。ロードマップを活用することで、経営陣との情報共有がスムーズになり、経営と人材育成の連携を強化できます。

また、従業員と直接関わる管理職者、研修担当者、教育担当者も、企業が「どのような人材を必要としているのか」を正確に把握できます。教育される側である従業員本人も、自分がどのように成長していけば良いのか知ることができます。

人材育成を成功させるには、企業が一丸となって取り組むことが大切。そのためには、全社員が人材戦略を把握しておく必要があります。人材育成ロードマップは、その要となる情報共有の手段として役立つのです。

 

メリット4.人材育成の効率化

VUCA時代と呼ばれる現代。予測不可能なことが次々と起こるいま、無計画に人材育成を行うのは非常にリスクが高いです。

つい最近まで必須といわれていた人材スキルが、突然不要になり、全く違うジャンルのスキルを迅速に習得しなければならなくなった……なんてことも珍しくありません。企業はいま、臨機応変かつスピーディーな人材の育成が求められています。

よって、人材育成ロードマップの作成が重要視されているのです。企業が目指す人材育成のビジョンを掲げ、育成の道筋を明確にすることで、戦略的かつ効率的な人材育成を行うことができます。

そして、企業理念に沿って成長を遂げた従業員は、会社独自の「強み」となります。環境が変化しても揺るがない、強い組織の構築へとつながるでしょう。

参考記事はこちら

VUCAとは?言葉の意味や企業に求められていること、VUCA時代における人材育成についてわかりやすく解説

メリット5.従業員の離職防止

従業員の多くは、自分の将来に不安を抱えています。このまま会社に残ってもキャリアが積めない、先行きが見えないと判断すれば、転職を考えるものです。

人材育成ロードマップがあると、従業員は自分の未来をイメージしやすくなります。「自社でキャリアが積める」と社員に明確に提示することで、離職を防止できます。

また、人材戦略をオープンにすることは、教育体制が整っていることのアピールにもなります。その結果、会社に対するエンゲージメントが向上し、社員の定着を促せるでしょう。

 

人材育成ロードマップを作成する方法

人材育成ロードマップは、予測不可能な時代を生き抜く企業に欠かせないツールであることがわかりました。

では、実際どのように作成すれば良いのでしょうか。以下の6つのステップについて見ていきましょう。

人材育成ロードマップを作成する方法

ステップ①現状の把握・調査

ロードマップは「予測」ではなく「理想」です。とはいえ、あまりに突拍子もないビジョンは、失敗の可能性を高めます。よって、まずは現状の把握が必要です。

自社の従業員のスキル、人員構成、市場の人材や経済環境などを調査・分析します。そのうえで、数年後どうありたいのか未来をイメージすることで、ロードマップで描くビジョンの基礎が見えてきます。

ときには大きく舵を切り、経営方針を大きく変えなくてはならない場合もありますが、企業が目指すゴールは現在の延長線上であることを理解しておきましょう。

 

ステップ②目指す人材像の明確化

調査をもとに、企業が求める人材像を明確にします。

企業のミッション、企業トップの意思をベースに「どのようなポジション」で「どのようなスキルを発揮する人物」かを考えます。可能な限り理想を具体的に表すのがポイントです。

また、従業員の中からモデルとなる人物を選ぶのもひとつの手です。周囲が憧れる社員の要素、いわゆる「コンピテンシー」を設定し、理想の人材像を組み上げる方法です。

対象となる従業員にインタビューやアンケートを行い、人材育成で目指すゴールの項目を決めましょう。

 

ステップ③ビジョン達成に必要な要素の抽出

次に、ゴールにたどり着くにはどうすれば良いか、何が必要かを考えます。

「ステップ①」で明らかになった現状と、「ステップ②」で設定した理想を比較します。そして、そのギャップを埋める方法を考えます。

理想を実現するのに必要なスキル・マインド・経験などを挙げていくことで、ビジョン達成までの道筋が明らかになっていきます。

 

ステップ④ロードマップ全体の構想

ロードマップに盛り込む要素が定まったら、全体の構想を練ります。どのような流れで育成するか、そして、それをどのように表現するのか考えましょう。

ロードマップにはさまざまな表現方法がありますが、代表的なのは「マトリクス型」です。

ロードマップ全体の構想

引用:野口𠮷昭(2017)『ロードマップのノウハウ・ドゥハウ』株式会社PHP研究所

『ロードマップのノウハウ・ドゥハウ』という書籍に掲載されている例では、企業のミッションとコンピテンシーを2軸とするマトリクス図で表現しています。

 

そのほか、ステップアップしていく様子がイメージしやすい「階段型」や、段階ごとに身につけるべきスキルがわかりやすい「表形式」など、さまざまなスタイルがあります。

階段型

ロードマップ例 階段式

表形式

img_04-2

ロードマップに記載する内容と規模に合わせて、適切な表現方法を選びましょう。閲覧者の視点に立つこと、活用シーンをイメージしてスタイルをチョイスすることがポイントです。

 

ステップ⑤作成

構成が決まったら、いよいよ作成です。

人材育成ロードマップを作成する際は、誰が閲覧するのかを意識することが大切です。コーポレートサイトなどに掲載する場合、社外の人が見ることも考え「企業が人材育成をどのように捉えているか」「どのような教育体制をとっているのか」が伝わるように表現します。

従業員が閲覧する場合は、身につけるべきスキルや研修内容、基準がわかりやすいように記載します。

具体的に表現することで、研修担当者や教育担当者が人材育成の計画を立てやすくなります。反対に、企業のビジョンや理想の人材像をイメージさせたい場合は、抽象的に表現すると良いでしょう。

また、ロードマップの図には、カラーやイラストが使われることも多いです。他社の表現方法も参考にしつつ、自社独自の人材育成ロードマップを作成しましょう。

 

ステップ⑥活用方法の考案

人材育成ロードマップは、図を作成したら終了ではありません。完成後、どのように活用するか考えることが大切です。

教育カリキュラムへの活用はもちろん、経営、商品開発など、人事以外の分野にも活用できる方法はないか探りましょう。部門の壁を越えて従業員を巻き込み、共に考えることで、より活用の幅が広がります。

 

人材育成ロードマップ活用時のポイント

人材育成ロードマップは、活用してこそ作成する意味があるといえます。では、具体的にどのようなことを意識すれば良いのでしょうか。

以下の3つのポイントおよび注意点について詳しく見ていきましょう。

ポイント1.経営ロードマップと連携させる

人材育成ロードマップの目的は、企業のミッション達成に必要な人材を育てること。ゆえに、経営ロードマップとの連携は不可欠です。人材育成ロードマップのゴールは、経営ロードマップのゴールへとつながっている必要があります。

経営ロードマップと連携させる

企業が目指す姿を実現するには、何を行うべきか。そして、それを実行するには、どのような人材が必要か。このように組み立てていくことで、経営ロードマップと結びついた人材育成ロードマップを作成できます。

また、ロードマップ作成時および作成後も、企業ビジョンから外れていないか常に確認することが大切です。

このことから、人材育成ロードマップを作成する前に、企業のビジョンと経営ロードマップを確立させておく必要があるといえます。

 

ポイント2.人事評価と連動させる

人材育成ロードマップさえあれば、従業員のキャリアに対する不安を解消できる、ということではありません。未来に対する希望を持ってもらうためには、人事制度と連動させた人材育成ロードマップの提示が必要です。

ロードマップを軸にスキルを身につけ、ステップアップするごとに評価される、というシステムにより従業員のモチベーションが上がります。きちんと評価されることで、ロードマップに対する信頼度が上がるのです。反対に、ゴールに近づけたにもかかわらず評価されないと、ロードマップに対し不信感を抱いてしまいます。

そのため、人材育成ロードマップを作成する際は、人事評価と連動させることが大切です。そして、いつ、どのような状態になれば「ステップアップした」と判断するのか、予め基準を決めておきましょう。

 

ポイント3.社員に説明する場を設ける

どれほどわかりやすいロードマップを作成しても、社員にすべてを理解してもらうのは難しいです。そのため、社員に説明する場を設ける必要があります。

  • 人材育成ロードマップの内容、詳細
  • 人材育成ロードマップの立ち位置
  • 人材育成ロードマップに対する価値観
  • 具体的な活用方法

などを共有し、共通の認識を持つことが重要です。特に、研修担当者や教育担当者に対しては、教育カリキュラムへの反映方法なども詳しく解説し、活用へのサポートを行います。

時間と労力をかけて作成した人材育成ロードマップが、単なる「飾り」とならないよう、落とし込みの作業を怠らないようにしましょう。

 

人材育成ロードマップの活用方法アイデア

人材育成ロードマップには、幅広い活用方法があります。どのように活用するかは企業次第。自由に決めることができます。

活用方法の例として2つのアイデアを挙げるので、ぜひ参考にしてみてください。

人材育成計画への活用

人材育成ロードマップは、基本的に企業全体の取り組みとして作成されます。従業員1人1人の育成計画を立てる際は、そのロードマップが指標として役立ちます。

人材育成ロードマップにて設定された「理想の人材像」が、人材育成計画のゴールとなります。そして、いつまでに、どのようなスキルを、どのように身につけるか、目標達成までのプロセスを設定することで、計画的な人材育成が叶います。

計画を立てる際は「人材育成計画書」を活用するのがポイントです。

可視化することで、管理者、教育担当者、従業員間での情報共有がスムーズになります。また、人材育成ロードマップと比較し、社員教育が企業理念から逸れていないか常にチェックできます。ズレに気づき、軌道修正することで、企業が求める人材を効率よく育てられるでしょう。

人材育成計画書は、テンプレートを利用すると作成時間を短縮でき、効率的です。テンプレートをご用意しましたので、ぜひお役立てください。

人材育成計画書テンプレート

研修カリキュラムの策定

担当者が、どのようなテーマの研修を行うか迷うのはよくあること。

人材育成ロードマップは、そのようなときにも役立ちます。人材育成のゴールと、ゴールまでの道筋、身につけるべきスキルなどが明らかになっているからです。研修担当者は、ロードマップに沿ってカリキュラムを組むことができます。

変化の時代といわれる現代、人材育成の在り方を見直すべきときが多々訪れます。しかし、企業が目指すビジョンが明確であれば、柔軟な対応が可能です。ロードマップのゴールと現在の環境を比較し、分析することで、実施すべき人材育成の「形」が見えてきます。人材育成に対する迷いを減らせるのです。

変化が激しい今の時代において、人材育成ロードマップは研修担当者にとって心強い味方となるでしょう。

 

まとめ

人材育成ロードマップは、企業のイノベーションに向けて作成されることも多いです。しかし、大規模な変革を行う予定がなくとも、作成して損することはありません。いまあるビジョンを可視化するだけでも、人材育成の効率化と成功に貢献してくれます。

まずは、理想の人材像を明確にするところから始めてみましょう。全社で目指すゴールを見定めるため、経営陣や現場と話し合いながら進めることが大切です。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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