社内の情報共有を円滑に行うコツとは?よくある課題や解決法も事例つきで解説!
日々、企業は社内でありとあらゆる情報を共有し、業務を行っています。しかし「内容が間違って伝わっていた」「知らされていなかった」と、情報共有がうまくいかず悩んでいる職場も少なくありません。
そこで今回は、社内の情報共有を円滑に行う方法をご紹介します。具体的な対策法のほか、基本知識や成功事例なども記載しておりますので、情報共有の改善に取り組みたいと考えている方はぜひお役立てください。
社内で行う情報共有の基本
そもそも情報共有とは、何のために行うものなのでしょうか。目的や目指すべきゴール、マインドなど、まずは情報共有の基本を見直しましょう。
目的とゴール
社内で情報共有を行う目的は、社員が業務を円滑に行うため。届くべき情報が届くべき人にきちんと伝わっていないと、業務が滞ったり、トラブルが起きたりと運営に支障が出てしまいます。
「業務を円滑に行う」という目的を達成するには、社員が情報を「理解していること」が条件。ただ伝えただけ、ただ言われただけで、内容を理解していないようでは、業務に活かすことができないからです。情報共有を円滑に行うこと自体を目的としてしまわないよう、注意する必要があります。
情報を共有する際のマインド
情報共有は1人で行うものではありません。常に相手が存在します。
そのため、情報共有を行う際は「相手の立場に立って考えること」が重要。共有する側と共有される側、双方が歩み寄ることでスムーズに情報を伝達することができます。
特に、情報を発信する側は自分本位になってしまいがち。相手にとってわかりやすいか、負担にならないか、業務に活用することができるかなどを意識することが大切です。
■参考記事はこちら
情報共有とは?メリットや問題点、ツールの活用についてわかりやすく解説!
社内の情報共有を徹底すべき理由
社内の情報共有は、企業が運営していく上で欠かせないもの。しかし、なぜそれほどまでに重要視されているのか、いまいち説明がつかないという人も多いでしょう。
そこでここからは、情報共有を徹底すべき理由について解説していきます。
情報共有を怠るとどうなる?リスクとデメリット
社内の情報共有を怠ると、どのようなことが起きるのでしょうか。まずはリスクとデメリットについて見ていきましょう。
ミス・トラブルの増加
情報共有を怠ると、ミスやトラブルが発生するリスクが高まります。
例えば、顧客情報の共有漏れは、発注ミス・遅延の原因に。人事制度の変更について知らされていない社員がいると、重要書類の提出ミスなどが発生する恐れがあります。
さらには、社員から「聞いていない」と不満の声が上がり、トラブルになることも。企業も社員も損をすることになるため、情報共有を徹底しなくてはならないのです。
従業員の成果や成長に差が出る
情報共有は、共有される側全員に伝達され、かつ全員が理解して初めて「成功した」と言えます。共有されていない社員がいる場合、もしくは内容の理解度に差がある場合、社員の働きに差が出てしまうからです。
社員の仕事の成果にバラつきがあると、職場全体の生産性が下がります。顧客へのサービスクオリティ低下も考えられるでしょう。
また、共有される情報の内容によっては、社員の成長の差が開く原因になることも。「共有不足で成長のチャンスを失った」となれば、人事評価が不公平なものとなるため、情報共有は非常に重要なのです。
従業員エンゲージメントの低下
ミス・トラブルの発生や、成果・成長の差は社員の不満につながる要因です。
例えば、業務ノウハウの共有不足が原因で、顧客からクレームを受けた場合、その社員は理不尽だと感じます。「共有してくれなかったから、自分は損をした」と、会社に対する不満を抱いてしまうのです。
また、情報をオープンにしない不透明な会社だ、と思われることも。特に幹部からの情報共有を厳かにすると、「トップが何を考えているかわからない」と社員の不信感が募ります。
その結果、従業員のエンゲージメントが低下し、離職や生産性低下のリスクが高まるでしょう。
従業員同士の人間関係の悪化
情報共有の不足による社員の不満は、人間関係を悪化させる原因に。経営陣と社員、部署間、チーム内など規模にかかわらず、信頼の低下につながります。
人間関係の劣悪さが原因で離職する人も少なくありません。チームワーク力の低下、生産性の低下など、さまざまな悪影響を及ぼすため、情報共有の徹底は企業存続のためにも欠かせないと言えます。
情報共有を徹底するとどうなる?効果とメリット
では反対に、情報共有を徹底するとどのような良いことがあるのでしょうか。効果とメリットについて見ていきましょう。
組織のチームワーク力向上
情報共有を徹底すると、従業員が必要な情報をきちんと理解した状態になります。そして、業務に携わる社員全員が状況を把握していることから、互いへのサポートが可能になります。
例えばチーム内での情報共有が徹底されていれば、担当者が不在の場合も、他の従業員が代わりに請け負うことができます。またミスをした際も、お互いにカバーし合うことができます。
その結果として、組織内のチームワーク力向上が期待できるでしょう。
業務の生産性向上
組織のチームワーク力が高まると、生産性が向上します。連携が取れていれば、業務が滞ることがなく、むしろスムーズに進めることができるからです。
また、互いにアイディアを出し合うことも可能に。困難が訪れた際も、新しい企画を提案し合ったり、問題解決のため知恵を出し合ったりと、チーム全員で取り組むことができます。
このように情報共有は、環境の変化に揺るがない強い組織の構築につながるのです。
人材育成のミス防止・効率化
情報共有は、人材育成でも頻繁に行われます。その際、共有を徹底しておくことで、連携を取りながら効率良く教育することができます。共有不足による教え漏れ、重複などの無駄を省けるほか、教育担当者と従業員の間に起きるトラブルの発生防止にもつながるでしょう。
教育担当者が付きっきりで社員を教えるのは稀です。不在時に教育がストップしないようにするには、情報共有を徹底しておくことが重要であると考えられます。
社内での主な情報共有手段と共有事項
社内での情報共有は、メールで行われるのが一般的。ですが、他にもさまざまな手段で行われています。
具体的にどのような方法があるのか、また共有される情報の内容にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
主な手段
(引用元:「HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート2021 結果報告」HRプロ)
「HRプロ」が行った調査からもわかるように、情報共有の手段には「メール」が最も多く選ばれています。企業の規模に関わらず、コミュニケーションツールのひとつとしていまだに浸透しているようです。
一方、第2位にランクインしている「オンライン会議ツール」の利用は、最近になって利用率が高まっている情報共有手段。同時に複数人に情報を共有できる、遠方でも顔を見ながら話せる、その場で質疑応答ができるなどさまざまなメリットがあることから、利用する企業が多いと推測できるでしょう。
また全体を見てみると、1001名以上の大企業はメールとオンライン会議ツールを中心に利用、1000名以下の中小企業は情報共有手段が分散していることがわかります。
情報共有の手段は、状況と内容に合わせて選ぶことが大切。調査結果がそれを裏付けています。
主な共有事項
社内で共有すべき情報は、業界や企業、部署、チームによって違いますが、主な内容としては以下が挙げられます。
企業全体で共有すべき内容もあれば、チーム内で共有する内容などさまざま。担当する業務によっても扱う情報は変わります。
ただし、いかなる場合でも自分、もしくは自分の部署がどのような情報を共有するべきなのか、予め把握しておくことが大切です。事前に把握しておくことで、共有漏れの防止につながります。
社内で情報共有を円滑に行う6つのポイント
情報共有の目的と重要性、内容を把握したところで、いよいよ円滑に行うためのコツをご紹介します。以下の6つのポイントに絞って解説しますので、社内の情報共有改善にぜひお役立てください。
目的・内容・優先順位に合わせた手段の選定
情報共有を円滑にするためには、効率の良い手段を選ぶことが大切。そして、最適な手段は目的・内容・優先順位によって異なります。
具体例を挙げてみましょう。
- 緊急性の高い情報:チャットツール
- 会議・セミナーの内容:オンライン会議ツール、対面
- 重要事項:確認したことがわかる機能が備わったツール など
チャットツールなどのデジタルツールは便利ですが、デメリットもあります。文章よりも言葉で伝える方がわかりやすい場合は、対面での共有が向いているでしょう。
このように、適切な手段を選ぶことで、効率よく情報共有を行うことができます。また、確認漏れや内容の理解不足といったミスの防止にもつながるため、見極めが重要です。
情報共有ルールの整備
情報共有を行うたび、適切な手段を見極めるのは非効率的。従業員によって判断に差が出る可能性も考えられます。
そこで必要となるのが基本ルールの整備です。「いつ」「何を」「誰に」「どのように伝えるのか」を予め決めておくことで、迷うことなく最適解を選べます。
手段のみならず、伝え方や問い合わせ先などのガイドラインも設置しておくと安心です。ただしルールに縛られてしまうと、柔軟な対応ができなくなるため注意しましょう。
情報を発信・受信しやすい環境を整える
「情報を発信・確認する時間がない」といった状況では、共有漏れ、確認漏れが発生する恐れがあります。よって、社内の情報共有を円滑に行うためには、環境の整備も必要です。
例えば、以下のような対策が挙げられます。
- 出勤後に共有事項を確認する時間を設ける
- 会議終了後、共有する時間を予め決めておく
- 定期的に情報共有のためのミーティングを行う など
特に、少人数で業務を行う店舗やシフト制勤務の職場は、業務に追われて情報共有が厳かになりがち。事前にルールと環境を整備しておきましょう。
情報共有の効率化および単純化
伝言ゲームのように、人づてに情報共有を行うと、内容が間違って伝わりやすいもの。また人を介せば介すほど、伝達しきるまでに時間がかかります。
上記図のように、体制の効率化・単純化を行うことで、正確かつスピーディーな情報共有が可能になります。情報の発信源を絞り、共有プロセスの段階を少なくしましょう。
情報共有を主導するリーダーを決める
情報共有の効率化には、リーダーを選出するのもひとつの手です。情報の発信元と社員のつなぎ役として担当者を設けることで、より効率よく、より正確に情報を伝えることができます。
また、共有事項に関する疑問が生じた際も、リーダーがいるとスムーズです。「誰に聞けば良いのかわからない」と社員が戸惑わずに済みます。
ただし、リーダーには正しい情報を伝える責任があるため、内容をよく理解している人を選ぶことが大切です。
情報共有の知識・スキルを習得および育成
情報共有は、会社のトップだけ、教育担当者だけが行うものではありません。全社員が必ず経験することです。
多くの社員ができていても、一部の社員ができていなければ、情報共有はスムーズに行われないもの。よって、全社員が知識・スキルを身につけておく必要があります。
そのような知識・スキルを社員に習得させるのが人事の役目です。研修を実施し、社内の情報共有を改善するサポートを行いましょう。
社員に習得してもらうべき知識には、例として以下のようなことが挙げられます。共有する側と共有される側、両方の立場での例を挙げてご紹介しますので、研修内容を考える際にぜひお役立てください。
情報を共有する側が心掛けるべきこと
情報を共有する側になった際は、主に以下のようなことを意識します。
- 専門用語の使用・乱用を控える
- 受け取り手の立場に立って文章、言葉、伝え方を考える
- 共有する目的を伝える
共有する側は、共有される側の立場に立って考えることが第一。伝え方や文章の組み立て方に配慮するのはもちろん、専門用語も内容が複雑になる原因なので注意しましょう。
また「なぜ、この情報を伝えるのか」と目的を伝えることで、相手に浸透しやすくなります。業務を行う上で必要な情報である、と納得してもらえるよう意識するのがポイントです。
情報を受け取る側が心掛けるべきこと
情報を共有する側だけでなく、受け取る側にも意識すべきことがあります。
- 共有する側に責任を押し付けない
- わからないことを、わからないままにしない
- 時間を設けるなどの提案、要請
受け取る側が”受け身”になると、共有する側の負担が大きくなります。責任を相手に押し付けるだけで、情報共有の改善も見込めません。
そのため、受け取る側にも自主性が必要です。お互いに歩み寄ることが、情報共有の成功につながります。
情報共有でよくある課題と解決法
情報共有に悩まされている企業は、いまだに数多く存在します。具体的にどのような課題が上がっているのでしょうか。
「NTTコム リサーチ」が行った調査によると、主な課題は以上の3点。それぞれの課題と解決法について詳しく見ていきましょう。
社員が求める情報にリーチできない
(引用元:『「企業内コミュニケーションの実態」に関する調査結果』NTTコムリサーチ)
同調査によると、なかでも最も多いのは「誰がどんな情報を持っているのかがわからない」という課題です。わからないまま、放置してしまっているケースも少なくないでしょう。
必要な情報が得られないと、業務に支障が出ます。社員の成長を妨げる原因にもなるでしょう。
また最終的に情報を得られたとしても、探すためにかかった時間と労力はロスになります。そのため、社員が効率よく情報にアクセスできるシステム作りが必要です。
解決法1:リーダーの選出
この課題に対する解決法としては、第一に「リーダーの選出」が挙げられます。誰が、どの情報を持っているかが明確になり、社員は迷うことなく必要な情報を取得できます。
共有内容に関する質問があった場合も、リーダーがいるとスムーズに解決できるでしょう。
解決法2:全社員がアクセスできる情報発信ツールの活用
情報共有ツールを活用するのもひとつの手です。いつでも、誰でも、どこでもアクセスできるツールを選べば、共有する側とされる側、双方の負担を減らすことができます。何度も内容を見返すことができるのも利点です。
特に、業務ノウハウや会議の内容など、情報量が多いものを共有する際に役立つでしょう。
情報過多による社員への負担増加
同調査では「情報が多すぎて、欲しい情報がすぐに見つからない」「情報の取捨選択に手間がかかる」が30.1%と第2位にランクイン。
業務を円滑に行うための情報共有が、かえって業務の妨げになるようでは本末転倒です。そのため、情報を整理し、探しやすくする工夫が必要になります。
解決法:タグ付けなど検索しやすい工夫
情報過多の問題を解決するには、まず情報の取捨選択が必要です。口頭で伝えるべきこと、文面で伝えるべきことを整理したり、内容に合わせて共有手段を分けたりすることで、情報を探しやすくなります。
さらに、タグ付けなどの機能を活用すれば、より検索がスムーズに。何度も見返したい内容や、似た情報が多い場合は、特に検索機能が活躍するでしょう。
情報共有ツールが使いにくい
デジタルデバイスを使ったツールは、利便性の高いアイテム。
しかし、同調査では「機能が多すぎて使い方がわからない」が課題として挙げられています。つまり、使いこなせず活用できていない社員も存在する、ということです。
どんなに便利なツールでも、利用者が使えなければ意味がありません。そのため企業は、全社員が活用できるよう対策する必要があります。
解決法1:共有する側・される側双方が使いやすいツールの選択
情報共有を円滑に行うため、ツール選びも重要。共有される側はもちろん、発信する側にとっても使いやすいものを選択するのがポイントです。
また、便利な機能がついたツールも魅力的ですが、操作が複雑だと使いにくくなります。なるべくシンプルでわかりやすいものを選びましょう。
解決法2:情報共有ツールの研修を実施
わかりやすいツールを採用しても、機械に詳しくなく、使いにくいと感じる人は少なからずいます。その対策としては、ツールの活用方法を学ぶための研修実施がおすすめです。
研修の実施は利用率の向上が見込めるほか、ツールに関する意見が聞けるメリットもあります。より自社に合ったツール・情報共有方法の発見につながるでしょう。
社内の情報共有に成功した事例3選
社内の情報共有に悩む企業が多い一方で、成功した企業も存在します。具体的にどのように解決・改善したのか見てみましょう。
株式会社ファクトリージャパングループ
整体サロンを運営している「株式会社ファクトリージャパングループ」。同社は以前、情報共有手段としてメールを活用していましたが、従業員への負担を懸念して「shouin+」の利用を開始しました。
搭載されているタイムライン機能を活用し、本部が店舗従業員へ、直接情報を共有することが可能に。店舗責任者が現場スタッフへ共有するのにかかっていた時間、労力の削減に成功しました。
また、タイムラインで情報を発信する際は、タグ付け機能を活用。1日の投稿数が多い場合でも、従業員が情報を見つけやすいよう工夫しています。
その結果、現場から本部への問い合わせが、以前と比べて約30%減ったのだそう。店舗型ビジネスの課題となりやすい「情報共有の負担」の軽減に成功した事例です。
シチズン時計株式会社
「シチズン時計株式会社」は、「シチズンウォッチ」ブランドで知られる、精密機器・電子機器の製造会社。同社は2012年より、社内SNSを活用した情報共有を実施しています。
同社も以前は、メールを使って情報共有を行っていました。しかし、社内SNSを導入してからは、メールでのやりとりが約7割減少。従業員はその分、業務に集中できるようになりました。さらに、部門の壁を乗り越えた情報共有も実現しています。
また、新しいツールは、社員の利用率が低くなりやすいもの。そこで同社は自由参加型方式ではなく、強制的に利用するよう促しました。ツールを有効に活用するためには、時には強制力も必要であることがわかります。
株式会社ヒロコーポレーション
化粧品メーカーの正規販売代理店として営んでいる「株式会社ヒロコーポレーション」。同社は、情報共有ツールとして「LINE WORKS」を活用しています。
「LINE WORKS」は、コミュニケーションアプリ「LINE」と互換性のある、ビジネス向けのチャットツール。従業員が使い慣れているアプリと似たものを採用したことで、ITに詳しくない従業員も、すんなりと受け入れることができたのだそうです。
非技術者が多い企業では特に、情報共有ツールの定着に苦戦しやすい傾向にあります。そのため、従業員目線で使いやすいツールを選ぶことが大切です。
まとめ
リモートワークの普及により、以前にも増してコミュニケーションをとるのが難しくなった現代。デジタルデバイスやアプリを活用した情報共有は、もはや必須です。
しかし、対面でのやりとりも求めている人が多いのも事実。ツールを活用しつつ、直接会話する機会も設けることが、組織を成功へ導くと考えられます。情報共有を行う際はそのことを念頭に置き、適切な手段で行いましょう。