リーダー研修の目的や内容、設計方法について詳しく解説!
目標に向かって成長し続ける強い組織には、優秀な「リーダー」の存在が不可欠です。しかし、そのような人材を採用するのは簡単ではありません。
そこで必要となるのがリーダー育成、およびリーダー研修です。本記事では、リーダー研修を実施する際に役立つポイントや進め方について解説しています。また、実施する目的や研修にて身につくスキルなどもご紹介していますので、人事部・管理部の方はぜひ最後までご覧ください。
リーダー研修とは
リーダー研修とは、これからリーダーになる人や、現在リーダーの立場にある人に向けて行われる研修のこと。チームや部署、部門など、何らかの組織を牽引する役割を担う「リーダー」を育てるための研修です。
研修では、リーダーシップを発揮するのに必要な知識・スキルを育てます。研修手法はさまざまですが、集合研修やオンライン研修、eラーニングなどが代表的です。
リーダー研修は、リーダーシップスキルの向上に効果があることが、研究によって示されています。また、研修の受講を通じて、「リーダーシップは自分には関係ない」という認識から、「役職に関係なく誰もが発揮できるものだ」と意識が変化したというデータも報告されています。(堀尾志保「リーダーシップ研修の研修効果に関する研究」より)
このことから、リーダー研修にはスキルアップのほか、マインドを育成させる効果も期待できると考えられます。次期リーダー候補者の発掘に役立つでしょう。
なお、研修効果については下記の記事にて詳しく解説しています。
■参考記事はこちら
リーダーシップとは?マネジメントとの違いから各リーダーシップ論までわかりやすく解説!
リーダー研修の目的
リーダー研修を成功させるためには、周囲の協力が必要不可欠です。しかし、目的がわからないと人は動かないものです。研修に参加する側も、理由が曖昧だと学習意欲が湧きません。
なぜ実施すべきなのか説明で活きるよう、研修を行う目的について改めて確認しておきましょう。
目的①役割・責任の認識
リーダーに任命された人は、誰しもはじめは自分が何をすれば良いのかわからず、戸惑うものです。そのため、研修を実施して役割と責任を理解してもらう必要があります。
リーダーは、自分のチームと外部を繋ぐ役割を担っています。また、チームで発生した問題を適切に対処し、ゴールへと導くのもリーダーの役目です。それらを研修にて学習することで、これからリーダーとしてどのように行動すべきか、具体的にイメージできるようになります。
リーダーの役割・責任を本当の意味で理解するには、経験が必要です。しかし、研修で事前に知識を習得しておくことで、より早く成長できるでしょう。
目的②マインドの育成
ただ仕事を「こなす」だけではリーダーは務まりません。日々の従業員とのやり取り、何気ない行動ひとつひとつに、リーダーとしての力量が現れるものです。
そのようなマインドを育てるのも、リーダー研修を実施する理由のひとつです。リーダーとしてどうあるべきか、研修を通じて理想のリーダー像を学んでもらいます。また「自分はリーダーになる」「リーダーである」という自覚を持たせる狙いもあります。
マインドが未熟なままリーダーになると、「なぜ自分がこのようなことをしなければならないのか」と不満を抱いたり、ミスした際に責任転嫁したりする恐れがあります。リーダーになるための準備として、研修での学習は必要不可欠なのです。
目的③知識・スキルの習得
リーダーとしての役割を果たすためには、もちろん知識やスキルも必要です。それらを習得するためのカリキュラムを組み、リーダー研修にて教育します。
具体的な内容はのちに解説しますが、リーダーが身につけるべき知識・スキルは多岐に渡ります。習得するのに時間がかかる内容も多いため、計画的に実施することが大切です。
目的④現状の把握
責任者だからといってすべてを任せきりにすると、リーダーの心身に多大な負担がかかります。よって、企業側からのサポートが必要不可欠です。
しかし、相手を知らなければ適切に支援することはできません。研修は、そのためにリーダーのことを知る場でもあります。
研修を通じて「誰がどのようなスキルを持っているか」「何が強みで何が弱みか」などを把握することで、必要なサポートがわかります。誰にどこを任せるか、担当チームを見極めるのにも役立つでしょう。
また受講者本人も、研修での学びを通じて自身の現状を把握できます。自分の課題に自ら気づき、自ら解決策を考えることが、優秀なリーダーになる第一歩となるでしょう。
リーダー研修で身につくスキル
リーダー研修を行う目的のひとつである、スキルの習得。具体的にどのようなスキルを身につけることができるのでしょうか。
代表的な5つのスキルについて見ていきましょう。
スキル①リーダーシップスキル
引用元:「次世代リーダーの育成」に関するアンケート結果報告 | ProFuture株式会社/HR総研
2024年に「HR総研(ProFuture株式会社)」が行った調査によると、リーダーのスキル・特性として重視するのは「リーダーシップ・影響力」であるという回答が多くを占める結果となりました。このことから、リーダーシップスキルはリーダー研修にて特に重視されるスキルであると考えられます。
リーダーシップスキルとは、例えば以下のような能力を指します。
チームを率いる役割を担うリーダーは、自ら考え、行動することが求められます。メンバーが抱える問題や不安に気づくための洞察力も不可欠です。
また、チームのまとめ役として、物事の本質を見抜き理解する能力も必要です。これらが身につくリーダー研修を受講することで、チームメンバーおよび企業から信頼されるリーダーへと成長できるでしょう。
スキル②コミュニケーションスキル
リーダーシップを発揮するためには、高いコミュニケーション能力が必要です。目標やビジョンの浸透、チームメンバーの不安解消、メンバーのモチベーション向上……これらすべての実現には日々のコミュニケーションが欠かせません。
また、リーダーは担当チームと外部のコネクションを築く役割も担っています。チームの意見を経営幹部へ伝えたり、他部署に協力を促したりするのにも高いコミュニケーション能力が必要です。
したがって、リーダー研修ではコミュニケーションスキルの強化も行います。役職に関係なく、すべての従業員が身につけるべき能力ではありますが、組織をまとめる立場にとっては特に重要なスキルといえるでしょう。
スキル③戦略的思考力・ビジョン構築力
リーダーにとってのチームとは、経営者にとっての企業のようなもの。経営者が会社を発展させるために戦略・ビジョンを立てるように、リーダーはチームを導く戦略・ビジョンを考えます。
そのためのスキル「戦略的思考力」「ビジョン構築力」も、リーダー研修にて習得します。
戦略的思考力とは、問題が発生したときや課題が与えられたとき、どうすればゴールへと辿り着けるか考える力のこと。ビジョン構築力は、チームのビジョンを作り上げる力です。それらを研修にて習得することで、困難を乗り越えられる強いチームを構築できるようになります。
戦略的思考力・ビジョン構築力は、経営幹部に求められるスキルでもあります。リーダー研修にて身につけておくことで、将来的なキャリアアップにも繋がるでしょう。
スキル④マネジメントスキル
マネージャーとリーダーは異なりますが、1人が両方の役割を担うケースも少なくありません。特に、中小規模の企業や店舗などでは、管理職者に管理と組織のリードの両方を任せることが多いです。
よって、リーダー研修ではマネジメントスキルも磨くべきと考えられます。チームメンバーや業務の状況、目標の進捗などを把握し、問題を解決する能力を高めることで、組織を正しい方向へと導くことが可能になります。
スキル⑤人材育成スキル
チームリーダーが人材育成を行う機会は、意外と多いものです。例えば、教育担当者の教育・サポートを担うのはリーダーです。また、企業に新システムが導入された際も、多くの場合、現場の指導とサポートをリーダーに任せます。
そのため、リーダー研修では人材育成スキルの強化も行われます。知識を正しく伝える方法だけでなく、自ら成長する従業員を育てる方法を学ぶことが重要です。
また「教育者」を育てる方法を学ぶ点も、リーダー以外の研修とは異なる点です。“人を育てる人”を指導する立場にあるリーダーには、一歩進んだ教育が必要なのです。
リーダー研修の主な内容
リーダー研修の企画を任された際、どのような内容にすれば良いか悩むこともあるでしょう。
そこで、ここからはリーダー研修の主な内容を6つご紹介します。研修内容に迷ったときは、ぜひこちらのテーマを参考にしてみてください。
内容①リーダーとして活躍するための基礎知識
リーダーとしての自覚を持つため、そしてリーダーの役目を果たすため、基礎知識を習得するカリキュラムは必須です。リーダーとしての日々の業務や理想のリーダー像、リーダーとしての立ち回り方などについて研修にて理解してもらいます。
知識を与えるだけでなく、自分で考える機会を設けることがリーダーマインドを育てるポイントです。グループディスカッションができる集合研修が最適でしょう。
内容②コミュニケーションスキル強化
リーダーがチームを引っ張っていくには、話す能力と聴く能力の両方が必要です。
話す能力は、チームメンバーに指示するときや、ビジョン・目標を伝えるときに発揮されます。正しく、わかりやすく意図を伝達できることで、スムーズに業務を進められるでしょう。
聴く能力は、チームメンバーの話を聞き出すスキル、相手の言葉を的確に受け取るスキルです。聞く能力を伸ばすことは、メンバーとの信頼関係の構築に役立ちます。
コミュニケーションスキルは、知識を身につけるだけでは不十分です。実践で活用できるよう、研修ではロールプレイの機会を設けると良いでしょう。
内容③チームビルディング
チームビルディングとは、チームを構築すること。メンバーそれぞれの能力や特性を生かしつつ、チームをまとめてゴールへと導くことを意味します。
リーダー研修では、チームビルディングに関する学習として以下のようなことを教育します。
- チーム内の衝突に対する対応
- メンバー同士の信頼関係を構築する方法
- 目標の示し方
- チームが機能するよう管理する方法 など
特に、新しく結成されたチームのリーダーになった際、メンバーの入れ替えがあった際は、チームビルディングに関する知識が必要不可欠です。リーダーとしての仕事が始まる前に、研修にて教育しておきましょう。
内容④ビジョンマネジメント
チームが向かう方向を指し示すというリーダーの役割を果たすためには、ビジョンマネジメントについて学んでおく必要があります。具体的には、以下のような内容です。
- チームビジョンとは何か
- ビジョンを設定することの重要性
- 企業や部署のビジョンに沿ってチームビジョンを設定する方法
- ビジョンをチームに浸透させる方法
- メンバーがビジョンに向かって行動するよう支援する方法 など
実際にビジョンを立てて、フィードバックを受けながら学ぶと効果的です。受講者が直接質問・相談できるよう、対面での研修手法を取り入れると良いでしょう。
内容⑤コンプライアンス
リーダーの言動がコンプライアンスに違反するとして、問題になるケースも少なくありません。そのため、リーダー研修ではコンプライアンスに関する内容も取り上げる必要があると言えます。
具体的には、以下のようなことを学びます。
- コンプライアンスを守ることの重要性
- コンプライアンスに違反することのリスク
- ハラスメントに関する知識
- 法令、企業倫理、社会的責任に関する知識
- 情報セキュリティに関する知識 など
リーダーはチームメンバーを教育する立場でもあるため、コンプライアンスへの深い理解が求められます。eラーニングなどを活用し、正しい知識を身につけてもらいましょう。
内容⑥メンタルヘルス
リーダーには、チームメンバーの心身の健康を守る責任もあります。そのため、メンタルヘルスについての学習も必要です。
経営幹部および幹部候補のリーダー研修を行う際は、組織のメンタルヘルス対策に関する知識をメインに身につけてもらいます。管理職者および管理職者候補の場合は、従業員の精神的健康を守るための行動や対処方法などを学んでもらいます。
また、セルフケアについての教育も必要です。責任のある立場だからこそ、リーダー自身もメンタルを崩しやすいからです。
専門的な分野になるため、外部の研修サービスやセミナーの利用も検討してみましょう。
リーダー研修設計の流れ
実用的かつ効果的なリーダー研修を実施するには、しっかりとした準備が必要です。
とはいえ、どのように進めれば良いかわからず悩むこともあるでしょう。そこで、ここからはリーダー研修を設計する際の大まかな流れをご紹介します。
流れ①現状調査
自社に必要なリーダー研修とはどのようなものなのか把握するため、まずは調査を行います。調査内容の例として、以下が挙げられます。
- 企業が求めるリーダー像
- 研修受講者の知識・スキルレベル
- 現在行われているリーダー研修の課題 など
現状調査および分析を行い、「誰に」「何を」「どのように」教えるべきか判断するための材料を揃えましょう。
流れ②目的の明確化
リーダー研修に限らず、研修を実施する際は目的を明確にすることが大切です。目的がはっきりすることで、研修の設計チーム、受講者、受講者の関係者全員の認識を統一することができます。
スムーズに準備を進めるため、そして何より研修の成功率を高めるため、どのような知識を習得して欲しいのか、何をどこまで学ばせたいのか、どのような人材へと成長させたいのか明らかにしましょう。
流れ③内容の検討
次に、どのような内容の研修を行うか決めるため、スキルの洗い出しを行います。洗い出し後は、これまでの工程で明らかになったニーズ・目的に沿って優先順位を決めます。
リーダーの育成には幅広いスキルの習得が必要ですが、時間には限りがあります。短期間に詰め込みすぎると覚えきれなくなるため、何を優先的に教えるべきか見極めましょう。
流れ④計画
リーダー研修は、予めスケジュールが決められていることも多いです。ですが、もし決められていない場合は、ここで「いつ何の研修を実施するか」決めます。目的・目標・研修内容に合わせて実施期間を定めましょう。
カリキュラムのボリュームや業務の都合によっては、スケジュール変更の交渉が必要な場合もあります。受講者が「参加できない」といったことにならないよう、業務との兼ね合いを見ながら決めましょう。
流れ⑤手法の検討
スケジュールが定まったら、リーダー研修を「どのように」実施するのか決めます。代表的な研修手法は集合研修、オンライン研修、eラーニングの3種類です。
1つの手法にこだわる必要はなく、テーマやスケジュールに合わせて決めるのがポイントです。また、集合研修とeラーニングを組み合わせるなど、複数の手法を混ぜる方法もあります。効果的かつ効率的に学習できる取り組み方を選びましょう。
流れ⑥コンテンツの作成
研修で使用するコンテンツも準備しておきます。集合研修を実施する場合は教材や講師の台本を、オンライン・eラーニングの場合は動画やスライドなどを作成する必要があります。
コンテンツを作成する際は、受講者目線に立つことが大切です。受講者にとってわかりやすいか、日常の業務に活かせるかなどをチェックしながら取り組みましょう。
流れ⑦アフターフォローと効果測定のデザイン
研修は「実施すること」がゴールではなく、学んだことを業務に活かすことが重要です。そのため、研修後の観察方法とサポート方法を決めておく必要があります。
また、研修自体に問題がなかったか、改善すべき点はないかなどのチェックも必要です。実施後に「やりっぱなし」にならないよう、予め研修効果の測定方法を決めておきましょう。
リーダー研修を成功させるポイント
リーダーは、企業にとっての重要な存在です。求められるスキルのレベルも高く、育成には時間がかかります。
それゆえに、できる限り研修の成功率は上げたいところ。どうすれば上手くいくのか、リーダー研修を実施する際に意識すべき4つのポイントについて解説します。
ポイント①求める人物像の明確化
リーダー研修を実施する目的は、次期管理職の育成、現在の管理職者のスキルアップ、次期幹部候補の育成および発掘など、状況によってさまざまです。誰をどのような人材へと育てたいのかが曖昧だと、教育内容もズレたものになります。
よって、理想の人物像を明確にしておくことが大切です。経営戦略・人材戦略を実現するにはどのような人材が必要か、どのような役割を与えたいのかを考えることでターゲットが定まり、適切に教育できるでしょう。
ポイント②情報共有の徹底
研修は、学んだことが実践で活かされてはじめて「成功」と言えます。しかし、周囲の協力を得られなければ、学びを実行に移すことはできません。例えば、研修で学んだとおりに行動したら、上司や同僚から批判されたというようなケースです。
そのような事態を避けるため、リーダー研修に関する情報は予め共有しておく必要があります。内容と重要性について理解してもらえるよう、研修を実施する前に説明しましょう。
特に、経営幹部との情報共有は必須です。認識を統一し、組織全体で取り組むことで、研修の成功率が上がると考えられます。
ポイント③アウトプット学習の活用
リーダー研修では多くのことを学ぶこととなります。学んだことを忘れないようにするための工夫が必要です。
知識・スキルの定着にはアウトプット学習が有効です。例えば、集合研修でのディスカッションが挙げられます。自分で考えて話す機会を設けることで、研修内容への理解が深まります。また、何が理解できていないのか気づくこともできます。
研修後に、1on1ミーティングや理解度チェックテストを行うのも効果的です。特に、オンライン研修とeラーニングは一方的な学習になりやすいため、意識的にアウトプット学習をデザインしましょう。
ポイント④eラーニングによる効率化
研修カリキュラムのボリュームが多い場合、人材戦略に間に合わなくなる可能性があります。そのようなときは、eラーニングを活用し、効率化するのがおすすめです。
予習として事前にeラーニングで知識を身につけてもらうことで、研修内容をスムーズに理解できるようになります。また、研修後もeラーニングを活用して復習することができます。より効率よく、効果的に教育を進めることができるでしょう。
リーダー研修の受講対象者となる人は、多忙なことが多いです。業務と両立できるよう、場所と時間に縛られないeラーニングを上手く活用しましょう。
まとめ
複雑な内容が多いリーダー研修は、上手くいかないことも多いです。一度で成功することは稀なので、研修後は必ず振り返りを行い、改善を繰り返すことが大切です。
優秀なリーダーが育つ仕組みを構築できれば、労働力不足、不安定な経済環境などといった困難に負けない強い組織へと成長できます。会社の未来を担う次期トップを育てるためにも、リーダー育成の基盤をつくりましょう。