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省人化とは?メリットや具体的な実現方法、ポイントを紹介!

ノウハウ ナレッジ
2024.04.10
『shouin+ブログ』マーケティング担当

日本は少子高齢化や人口減少が進み、それに伴って今後はますます労働人口も減少していくことが予想されています。

大手全身脱毛サロンの倒産が記憶に新しいところですが、人手不足による企業倒産も発生しており、多くの企業が人材確保に頭を悩ませています。人材不足を解消させるには、業務工程を見直し、無駄をできるだけ削減し、限られた人材を有効活用できるような工夫をしなければなりません。

人手不足の解消や生産性の向上には「省人化」が不可欠となり、いまさまざまな業界において多くの企業が「省人化」に注目しています。

今回は、「省人化」とは何か、省力化・少人化との違いやメリット・デメリット、省力化の進め方、成功させるための注意点について解説します。また省人化に取り組む企業の好事例についてご紹介します。

省人化とは

省人化は企業活動における業務効率化や生産性向上を図る効果的な手法として取り上げられています。ここでは、省人化とはなにか、言葉の意味や類似した言葉である「省力化」「少人化」との違いについて解説します。

言葉の意味

「省人化」とは、業務プロセスに存在する無駄や非効率を削減し、労働者の人員を減らすための取り組みです。

機械やDXの活用によって、これまで人が行っていた業務を機械やコンピューターによって自動化して、もともと10人で行っていた作業を9人で行うように改善するといったことは、省人化となります。機械やコンピューターに代替できる業務を自動化することで、人が行わなければならない重要な業務にリソースを割くことが可能です。

人の仕事と機械の仕事を分離する

石川秀人著「トヨタ生産方式の基本と実践がよ~く分かる本」によると、省人化とは「人の仕事と機械の仕事を分離すること」とあります。

トヨタにおける省人化とは、機械を導入して生産工程を自動化させることにとどまらず、異常があれば機械自ら以上を検知して止まるような判断をさせるような装置を装備させることで、機械の見張り番となる人員の配置をなくしています。書籍では省人化とは「付加価値にないような仕事は人にさせず、できるだけ少ない人数(工数)で今の仕事量がこなせるように仕事の生産性を高めること」だと言及しています。

将来にわたり、日本の労働市場においてはますます労働力の確保が難しくなると予想されているなか、できるだけ業務の無駄を減らして効率化を図り、限りある人材資源を有効に活用していく体制を整えることが不可欠です。

省人化を進める例には、製造工程の自動化や物流現場への積載ロボットの導入などが該当します。

省力化との違い

省力化は、人が行う作業を見直し、無駄や非効率を削減して業務効率を改善していく取り組みを指します。省人化の目的は人員の削減ですが、省力化の目的は業務を精査して、作業にかかる時間や手間、労力を削減することです。省力化を実現することは必ずしも人員を削減することとはつながりません。

たとえば人員を4人で行っている作業が、省力化によって3.3人相当の作業量に減少した場合、0.7人分の作業を減らすことができていることから業務効率が向上し、生産性が上がったといえます。しかし小数点以下の0.3人分の作業のためには人員は1人必要となるため、人員は4名から減らすことはできません。

省力化は、手間や労力の軽減を目指す取り組みですが、たとえば、コールセンターにおけるチャットボットの導入や、物流倉庫における倉庫管理システムの導入などが挙げられます。

少人化との違い

書籍によると、少人化とは「生産必要数に応じて生産性を落とすことなく何人ででも生産できるラインを作ることで、需要変動に柔軟に対応し、生産減があればフレキシブルに人を削減すること」を指すとしています。

受注量は日によって変動があります。毎日変わる作業量に対して、決まった人員を投入し続けるのはコストの無駄となります。

たとえば、人員を4人投入している作業現場で、作業の必要人工が4人工である場合、4名が適正人員です。必要工数が2.8人工に変化した場合はどうでしょう。4名が0.7人工分ずつをこなすのでは、コストの無駄が生じ、生産性が下がってしまいます。

少人化の目的は、決まった人員を置く定員制を止めて、生産必要料に応じて対応する人員数を変化させて、何人であっても柔軟に生産に対応できるラインを作り上げるように、知恵を絞って工夫することです。書籍には、トヨタではラインを連結・混流・集合させることで、1に満たない端数工数を吸収し、定員制を排除して、受注量に関係なく常に1人が1人分の業務を請け負うことをめざしているとあります。

少人化によって作業部門での非定員化や部署や部門を超えて労働力を異動させる助け合い作業などの導入ができれば、つねに変化する需要に最小限の適正な人員で対応していくことができます。

 

製造業を中心に対応が迫られている

深刻な人手不足に対応するために、近年さらに省人化は注目されています。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、15歳から64歳の生産年齢人口は1995年の8716万人をピークに減少し続けており、2050年には5540万人に、2070年には4535万人まで減少する見込みです。働き方改革によって働き方の多様化が浸透し、子育て世代の女性やシニア世代の労働参加が広がり、労働力人口は増加傾向がみられますが、長期的に見れば労働力人口全体が減少することが予想されています。

さまざまな業界で省人化の取り組みが進められていますが、製造業では特にその動きが活発です。

補助金制度なども省人化を後押し

2023年11月に内閣府は2023年度補正予算案に省人化・省力化補助金制度を盛り込みました。「中小企業省力化投資補助事業」とは、人手不足解消のため、IoTやロボットなどのシステムを導入し、付加価値額や生産性の向上を図るとともに、賃上げを目指す制度です。

補助の対象となるのは中小企業などです。補助率は二分の一で、補助金額上限は事業規模によって以下のように設定が変わります。

  • 【従業員5名以下】200万円
  • 【従業員6~20名】500万円
  • 【従業員21名以上】1,000万円

引用:『令和5年度補正予算「中小企業省力化投資補助事業」に係る事務局の公募について

 

省人化のメリット

省人化に取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを解説します。省人化のメリット

メリット1.生産性の向上

省人化に取り組むメリットのひとつに、生産性の向上が挙げられます。これまで人の手によって行ってきた作業工程を、機械やシステムが代替することで、生産性の向上が期待できます。

人は作業をすれば疲労を感じ、集中力が低下していくため適度な休息、休憩が必要です。また人は体調を崩して休むこともあります。従業員の休憩や欠勤の間は作業工程が進まず生産性はありません。これに対して機械やシステムは疲れを感じることはなく、一定のスピードで安定した生産を実現することができます。

機械へ作業工程を代替させることで、従業員の手が空くことになります。この人員を活用して、より生産性の高い仕事を行う、改善策を見出すなど機械にはできない創出性の高い価値ある業務に時間を充てることができます。これによって企業全体の生産性が向上することにつながるでしょう。

 

メリット2. 人手不足の解消

省人化を進めていくことで、作業工程の見直しから無駄の排除が進む、機械への作業工程の代替が行われれば単純作業を自動化することができることで、人手不足を解消できます。さらに危険な業務を機械に任せることもできます。効率よく作業できる環境や体制を整備すれば、今までより少ない人員で作業に取り組めます。

少子高齢化や人口減少の影響を受け、さまざまな業界が人手不足に陥っています。働き方改革も進んでいて、長時間労働などへの規制も厳しくなっており、このまま状況が改善されなければ、今後ますます企業は人材の確保が難しくなると考えられます。

省力化に取り組み、効率よく業務に取り組める環境を構築すれば、現状の人材リソースを有効活用できるようになり、人が増えないまでも限られた人員で成果の最大化を目指すことができます。

 

メリット3.人的ミスの発生リスクの軽減

省人化を進めるメリットにはヒューマンエラーの解消があります。

ベテランの作業員でもうっかりミスをしてしまうことがあるように、人が行う作業には人的ミスが発生する恐れがあります。一方、作業を機械に任せれば人的ミスが発生するリスクは軽減され、人が業務を行うことで発生していた品質のばらつきも削減することができます。

作業工程の自動化によって、人によるばらつきや、集中力が低下して起こるミスを防ぎ、安定したサービスや商品の品質を保つことができるといえます。

 

省人化のデメリット

省人化を進めていくにあたって、どのようなデメリットがあるのでしょうか。2つのデメリットについて取り上げます。    

デメリット1. 機械導入による投資コストの発生

省人化を進めるデメリットとして挙げられるのは、投資コストがかかることです。

省人化の実現のためには、人の手で行ってきた業務を置き換える機械やデジタルツールの導入が不可欠です。機械やデジタルツールの導入には初期投資が大きくかかるものもあります。

このため機械の導入にあたっては機械やデジタルツールの導入によって得ることができる効果を算出し、費用対効果についてしっかりと検討する必要があります。

機械やシステムは導入すればそれで終わりということではありません。メンテナンスにかかる費用や故障などの発生による修繕費もかかることも合わせて想定しておきましょう。

 

デメリット2.DX人材の採用・育成コストの発生

省人化のデメリットとしては、専門知識を持った人材の確保にかかるコストがかかることが挙げられます。

新たな機械やデジタルツールを導入し、社内で活用、運用していくためには、これらを扱える人材が必要です。特にデジタルツールの導入に際しては、専門的な知識や技術を持ったDX人材の獲得・育成が不可欠です。DX人材が社内にいなければ、人材育成やリスキリング、もしくは外部からの新たな人材の獲得が必要となり、人材育成のコストや新たに雇用する採用コストがかかります。

省人化を図る方法

省人化を進めていくには、どのような方法があるのでしょうか。省人化の実現方法について解説します。

方法1. 作業工程を見直し無駄を省く

省力化の推進にあたっては、はじめにすべての作業内容とフローの洗い出しをし、省略できる工程はないか、間違いが起こりやすい箇所はないかなどを拾い出しましょう。些細な作業、細かな作業と思うことでも、その積み重ねで多くの時間を割いているという業務もあるのかもしれません。これらの作業内容も洗い出し、必要な作業であればそれらも含めて作業工程を見直していきます。

作業工程の見直しによって無駄を省くことができたら、自動化できる部分がないか、また自動化には向かない部分はないかを明らかにしていきましょう。自動化できる部分は機械やロボットを導入することを検討していきます。人の手によって行うべき作業工程があれば、その業務に優先的に人員をあてがうことを検討します。

 

方法2.業務を標準化する

省人化を推進する方法には、業務の標準化が欠かせません。

業務の作業工程やノウハウを有するのが一部の従業員に偏って、業務の属人化が発生している状態は早急に解消するようにしましょう。特定の人しか行えない業務があれば、その従業員が休む、あるいは退職するなどで職場からいなくなった場合に、業務が滞り生産性が低下する恐れがあります。作業スピードや成果物の品質にもばらつきが生じてしまいます。

これらの問題を解決するには、作業内容のマニュアル化が有効です。マニュアル化により、一番効率のよい作業工程をたどって誰でも同じ品質で業務を行うことができるようになり、作業スピードや品質が安定するようになります。

業務を標準化しマニュアルに落としておくことで、新人の教育にも生かすことができ、育成コストの削減につながることも期待できます。

 

方法3.システムやツールを導入する

省人化を進める方法の3つ目は、システムやツールの導入することです。機械やシステムを導入して活用することで、手で行ってきた作業工程を自動化し、効率化を図ります。

最新のAIやIoTなどは技術の改良や進化が早いので、専門の業者に相談するなどしながら、トライアルやお試し期間などを利用して吟味した上で自社にとって最適なシステムを導入するようにします。

最先端の技術を導入することがゴールではありません。機械やシステムの導入によって自動化を図り省人化を実現できるのか、また自社の抱える課題を解決できるかどうかが重要です。機械やシステムの導入には、検討を重ねたうえで進めていきましょう。

 

省人化を進める上での注意点

省人化を進めていく上で、留意するべき点にはどのようなものがあるのでしょうか。

注意点1.目的の明確化

省人化を進める際の注意点のひとつに、省人化の目的を明確にすることがあります。

省人化によって何を実現したいのかを明確に掲げましょう。本来の目的があやふやになると、ただ人員を削減することが目的のように独り歩きしてしまいます。

従業員の中には、省人化を進めていくと自分の仕事が奪われるのではないかと不安に感じる人も出てくるかもしれません。省力化を進める前に、省力化は従業員の負担軽減や業務の効率化を目指すもので、従業員を削減するリストラ目的ではないことを理解してもらうよう働きかけも必要です。

全社で目的を共有することでしっかりと方向性を定めていくことが重要です。

 

注意点2. 導入コストの検討

機械やシステムを導入しDX化を図るには、一定の初期投資コストがかかります。省人化により削減できる時間や労力をコスト換算し、導入コストを比較して、コストに見合っているかについて、十分に検討が必要です。自社にとって最適な省人化ソリューションを選び、無駄な機械やシステムの導入などがないようにしましょう。

注意点3.管理者やオペレーターの教育

省人化を推進する注意点の3つ目は、導入する機械やシステムの管理者を置く必要があることです。DX化を推進し、機械やシステムを導入したとしても、それらを管理するのも運用するのも人間なのです。

DXに明るいひとが社内にいなければ教育が必要ですし、社内に適した人材がいなければ社外から採用する必要があります。機械やシステムの管理者の育成には、一定の時間とコストがかかる点を把握しておかなければなりません。

企業の成功事例

物流業界や製造業界におけるロボットの導入やDX化なども省人化の代表的な事例です。ここでは省人化に取り組み成果の見られる企業の事例を3社紹介します。

リコージャパン CSセンター

リコージャパンCSセンターでは、チャットボット導入によって省力化を実現しています。

問い合わせ対応にチャットボットを導入し、自動化することができます。活用シーンとしてはコールセンターでの対応や社内ヘルプデスクなどが挙げられます。自動でFAQに返答できるチャットボットを活用すれば、問い合わせ対応の効率が上がり、生産性向上が図れます。

人事・総務部・IT部門などの管理部門には、社内からの問い合わせが集中することがあります。

寄せられる質問の内容は同じ内容や類似したものが多いこともあり、1件ずつ対応していては時間を取られてしまい、担当する部門にとっては効率が悪く、業務に支障をきたすほどの大きな負担となりかねません。

この場合は社内ヘルプデスクにチャットボットを活用することが効果的です。

チャットボットを取り入れて、問い合わせの多い質問を定型質問とし、適切な回答を返す用に設定すれば問い合わせ対応の作業工数が減り、人員リソースに余裕が生まれ、本来の業務に時間を割くことができます。

リコージャパンCSジャパンセンターでは、チャットボット導入したところ、導入前には月当たり合計で約4,000件発生していた問い合わせのうち電話による問い合わせが9割でしたが、導入して約1年後には電話の比率は約5割に低減しました。さらに、チャットボットの利用率は2割に達する結果となったといいます。

お客様からの問い合わせに対応するコールセンターにおいても、同じような問い合わせが多い場合には、チャットボットの導入は有効だといえます。自動で問い合わせ対応ができるチャットボットを活用することで、作業工程が減少し、省人化を実現することができます。

 

六甲バター株式会社

チーズ等の製造販売を行っている六甲バター株式会社では、手作業の多い食品製造において設備を導入し、省人化を進め生産性を高める取り組みをしています。チーズの検品をAIを活用したカメラ画像分析によって不良品の判断を自動で行う「最終製品検査システム」を導入しました。

システム導入の目的は、食の安全安心を担保することと、熟練を必要とする検品作業を省人化することで、取り組み効果が表れているとしています。

人の手による作業は、個人の体調や気持ちの状態によって、検品結果に影響する懸念がありますが、AIによって安定した検査が行われます。今後の展開として他の工程でもAI技術の適用を増やせるかを検討していくとあります。

広島県 ホテル

厚生労働省が発表した平成31年「生産性向上の事例集」には、機械やシステムを導入したことで、省力化を実現した企業事例が記載されています。

広島県のホテルでは、省力化を推進し、新型食器洗浄機を導入したことにより、人の手で行ってきた洗浄・乾燥にかかる人員や時間を削減することに成功しています。これによって掃除や整理整頓など、他の作業にとりかかる時間を創出できています。

このほか、スーパーやニトリやユニクロ、無印良品などの小売店では、新たにレジを導入し、お客様が自ら商品をレジを通して、清算まで完結するところも増えています。

コンビニエンスストアでは省人店舗、無人店舗を構えているところもあり、AIやカメラを設置し、複数のタグを一括でスキャンできるRFID(電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム)や清算にキャッシュレス決済などを組み合わせて、店舗の人員を極力減らして運営する店舗にも注目が集まっています。

このような省人店舗は、コロナ禍において人との接触を避けたい場合にも対応しており、新しい生活行動様式に沿った取り組みです。



まとめ

今回は省人化とはなにか、省人化にはどのようなメリットがあるか、省人化の取り組み方法について解説し、すでに取り組みを始めている企業の成功事例を紹介しました。

省人化とは、単純に既存の業務を機械やシステムに置き換えることだけではありません。省人化に先立ち、業務フローの見直しや業務プロセスの標準化を進めることで、ムダな業務を排除する動きが必要です。

しかしこの動きには、従業員にとって工数と労力がかかるため、全従業員の省力化への理解が不可決となります。経営による強いリーダーシップで、全社で省力化に取り組む意義を伝えて浸透させ、全社で組織体制の変革や企業風土の変革を行うことまでの働きかけが重要となります。

自社の将来のあるべき姿を見据えて、省力化に取り組んでいくことが大切です。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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