OJTにおける効果的な指導方法とは?失敗例から学ぶ育成計画の立て方についても解説
アパレルや量販店などの店舗ビジネスを行う企業にとって、営業売上に最も貢献するのは店舗活動です。店舗で働く従業員の教育に一般的に用いられているのがOJTですが、あわただしい店舗や現場では、現場任せの対応になってしまっていることが多いため、結果的に新人が戦力となるまでに多くの時間がかかってしまうだけでなく、店舗ごとで指導内容に差が生まれ、業務の標準化、従業員スキルの平準化から遠のいてしまいます。
本記事では、そのような店舗任せのOJTから脱却して、従業員の育成スピードを高速化するために、教育担当者が知っておくべき知識や指導方法、具体的な育成計画の立て方について詳しく解説します。
目次
- OJTとは
- OJT指導のよくある失敗例
- 教育担当者がまず意識すること
- OJTの効果を最大化する具体的な指導方法
- 教え方がうまい教育担当者が+αでやっていること
- 効果的な育成計画の立て方
- OJTの効果をさらに高めるには?
- まとめ
OJTとは
OJTとは、「On The Job Training」の略称で、現場での実務を通して仕事を覚えてもらう教育訓練のことで、主に職場の先輩や上司が新人に対して行う教育方法として知られており、そのルーツは米国の造船所での指導方法にあります。OJTの基本については、以下の記事で詳しく解説しています。
■参考記事はこちら
OJTとは?実施時の注意点や必要な準備についてわかりやすく解説!
前述した発展の経緯もあり、OJTは現場での個別指導に強みがあり、それとは対照的な指導方法にOff-JTが存在します。
Off-JTは「Off The Job Training」の略称で、職務現場を一時的に離れて行う座学形式の教育訓練のことで、主なものだと、店舗内外でマニュアルを読んで知識を習得する、コンプライアンス研修、ビジネスマナー研修、外部講師によるセミナーなどがOff-JTに該当します。
Off-JTは知識を身につけるためのもの、OJTは現場で実践していくものと考えるとわかりやすいかもしれません。しかしこの2つの研修手法は対立構造にあるわけではなく、Off-JTで知識を身につけてからOJTに臨むといった形で、組み合わせることで高い効果を発揮します。店舗ビジネスは、豊富な知識とその場での臨機応変な対応が求められることが多いため、Off-JTによる知識定着とOJTによる業務習得をどれだけ効果的に行うかによって、従業員のその後の店舗での活躍ぶりに大きな影響を与えます。
OJT指導のよくある失敗例
OJTは現場での個別指導に向いている特性があるものの、そのような現場であってもOJTが機能していない企業も存在しています。たとえば、社会人向け学習動画サービス『Schoo』を運営している株式会社スクーがOJTを実施している企業向けに行った調査では、OJTには「人手不足」「属人化」「多忙」の3つが課題になりやすいことが示されています。
(参考情報:【人事の悩みが発覚】96%の企業がOJT研修に課題を感じていると回答!【社会人向け学習動画サービス「Schoo」自社調査】)
同調査ではこれら3つの課題には相関関係があり、いずれかを解決するのではなく、全ての課題を解決することがOJTを効果的に行う必要があると述べられています。たとえば、OJTを行う人手が不足すると教育担当が属人化、業務がより多忙になり、更に属人化する...などの負のサイクルに陥ってしまいます。
明らかになったOJTが抱える人手不足と属人化の課題について、それぞれの課題が深刻化するとどのような失敗がおきやすくなるのか、どのように防ぐべきなのかを確認していきましょう。
失敗例:人手不足による失敗
OJTは現場で実践するものと言う特性から、現場任せになりがちです。。しかし、OJTの目的が新人の戦力化であるなら現場だけにOJTを任せるのは望ましくありません。たとえば、OFFJTなどの座学式の研修であれば本部が取りまとめて開催し、人事部が参加者の評価を管理していることが一般的です。
OJTもOFFJTと同様に、お客さんへの対応を高く平準化し、売り上げへ貢献することが最終的な目標。つまり、OJTもOFFJTのように人事部が一緒になり指導計画を立て、そのプロセスを他店舗にも適切な形で展開することに意味があるということです。
指導計画がなければ、現場教育担当、店舗ごとで教える内容にズレが生まれ、習熟度に差が出るだけでなく、学ぶべきことを学べていないといった事態にもつながり、最終的にはお客さまの不満足に繋がることになります
それゆえ、綿密な指導計画の作成をするために、本部の適切な人事担当者をOJTプログラム作成に巻き込み、現場でのOJTを行う担当を振り分け、全て現場任せの行き当たりばったりなOJTにならないように最新の注意を図りましょう。
失敗例:属人化による失敗
OJTを担当する現場社員は、OJTを通常業務に加えるかたち日常業務を行っているのが実態で、「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」で紹介されているように、実に33.2%のOJT運用企業が専門人材不足であると回答しています。
前述したように、店舗ビジネスにおける主要な売り上げは店舗で発生するため、。その売上目標達成の業務をこなしつつ、空いた時間で新人に業務を教えることは現場にとって多大な負荷になることは明らかです。
OJTは現場でより未経験者に教えるため、接客業であればお客さまに対しての所作を見せて覚えてもらい、在庫管理やバックヤードでの作業などでも実際の搬入や付随する作業を見せることがより効果的です。
つまり、通常業務に併せて未経験者に説明をすると言うを十分な時間を教育担当者から確保するために業務の切り分けも大変重要になります。業務の切り分けなどを計画的に行わずに現場の教育担当者に丸投げをすれば、教育担当者の都合の良い時間と都合の良い教え方になることは避けられず、OJTの進め方や内容が属人化し、新人などの未経験者は適切な業務遂行をすることがさらに難しくなります。
未経験の従業員を教育するための重要な取り組みを調査をした同調査では、50%以上の人たちが新しいことを覚えてもらうためには「相談に乗ったり助言をするようにしている」と回答していることを考えると、教育のための適切な場を双方に持ってもらうことがOJTの属人化を避け、成功への一歩には欠かせないと言うことができるかもしれません。
教育担当者がまず意識するべきこと
OJTはなるべく現場や部署ごとにズレがないようにするべきですが、多少なりとも教育担当者による違いは起こるものです。OJTを成功させるためには、先に述べた課題や怒りやすい失敗を回避するかたちでOJTを行うことが重要になります。この項では、効果のあるOJTを実践するために、まず教育担当者が意識するとよいことをご紹介します。
意識するべきこと1:行動に対しては目的を添えて教える
同調査では、「目指すべき仕事や役割を示している」と答えた小売業や飲食サービス業の企業は30%にも満たず、いないことがわかります。どんなに重要な業務であっても、それがなぜ重要なのかを伝えないことには相手は理解してくれません。言い換えれば、行動に対する目的をきちんと伝えられれば、しっかりと納得して行動できるということです。
たとえばお買い物いただいた商品をレジで渡さずに店舗の入口までお持ちしてお見送りするというサービスがあります。これはお客様に対して少しでも長く接客し、リピーターになってもらう、気持ちよくお帰りいただくという目的があって行うものです。しかし、それを伝えずに見送りをすることだけを実践させても、お客様も気まずくなりますし、スタッフも何のためにやるのか分からないのでたとえお客様に断わられても「決まりですので」と言ってしまうような失敗につながりやすくなります。
OJTを行う際には、OJTで教えるひとつひとつの業務にどのような意味があり、どんな目的で行っているのか。それを意識して伝えるようにしましょう。
意識するべきこと2:新人を所在がない状態にしない
入社したばかりの新人は、自分が1日でも早く戦力になりたい気持ちだけでなく、先輩に迷惑をかけられないという気持ちも抱えているものです。新人は「何をしたらよいのか分からない」ときに自分で考えて臨機応変に対応できる人ばかりではありませんので、新人を所在がない状態にしないことは教育をする側が意識しておきたいことです。
特に繁忙期は時間を取って教育をすることが難しくなります。OJTを行う際には1つの作業だけでなくそれが終わったら何をすればよいか、手が空いたときは何をすればよいかを伝えておくことをおすすめします。繁忙期であれば忙しそうな社員を見て、新人はいつも以上に質問がしづらくなります。あらかじめやるべきことを伝えておくことで教育担当側の負担も減らせます。
アパレルショップであれば、新作入荷の時期、セールやバーゲンの時期はとても店舗が忙しくなります。あまりに忙しいと新人に的確な指示が出しづらくなります。たとえば常に服を畳むのを1日の行動の基本とする、品出しを基本とするなど、手が空いたときに何をするかを伝えておけば、新人もしっかりと自分の役割を果たしながら、繁忙期の先輩たちがどのように動いているかを学ぶことができます。
意識するべきこと3:新人の相談相手を自分以外に設ける
(参考情報:人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査の8ページ)
OJTを受ける側が新卒社員の場合は、これから社会人としての意識や業務知識を身につけていくことになります。新人がスムーズに仕事や職場環境に馴染めるように、OJTを始める前に誰が教育担当でこれからどのようなことを教えていくのか、教育担当がいない場合には現場の誰に相談すればよいのか、などを明確にしておくことが重要です。
上記の表をご覧いただくと、「仕事について相談に乗ったり、助言している」と答えた企業のうち、56.4%の企業がOJTがうまくいっていると感じていることがわかります。このことから新人のメンタルケアのために、相談に乗ってあげることとOJTの成功の関連性が高いことがわかります。
ただ常に1人の教育担当者が新人のために時間を作る、ということが難しい現場も少なくありません。その場合は、担当者1人だけに任せきりにするのではなく、現場全体でサポートする、サブの担当者を置く、などの対策をとって、新人に対して手厚いサポート体制を設けましょう。教育担当1人ににすべてのOJT業務を任せると属人化したり、教育担当が多忙になりすぎて手が回らなくなったりといった問題が起こりやすくなるので、それらの解消にも効果的です。
OJTの効果を最大化する具体的な指導方法
OJTは新人教育ですが、教育担当者の一方的な教えになってしまってはもったいないです。新人が教育を受けやすいような環境を整えることも重要です。
指導方法1:相手に考える時間や余裕を与える
OJTで物事を伝える際には、行動の仕方だけでなく目的も添えることが重要になります。しかし、何でもかんでも1から10まで教えてしまうと、自分で考える力が養われず応用がきかなくなってしまいます。
相手に考える力をつけてもらうためには、相手に一旦考える時間を与えたのちにどうしたらよいと思うかたずねるというのが有効です。お客様が入店した際にすぐに声かけをするか、相手が求めてから対応するかどちらがよいかといった課題は、お店の雰囲気や客層によって異なるものです。単純にケースごとの答えを教えた方が早いと思う気持ちは分かりますが、教育担当者は新人を成長させるのが役割です。教える部分と考えてもらう部分のバランスを取ることが大切です。
さらに、現場にはアクシデントがつきものです。不測の事態に対応するためには自身で判断することが重要です。新人がある程度業務に慣れてきたら、自分で考えて行動できるように促していきましょう。
指導方法2:当日の予定をしっかりと伝える
OJT中は相手がさまざまなことに準備できるように、当日の予定を伝えるようにしましょう。例えば「朝の仕事が始まる前に朝10時から全員で朝礼、その後昼までは自分(OJT担当)と一緒に来客対応、お昼は交代で行くので今日は○○さんの次に1時間、その後は軽く午前の振り返りをするので戻ってきたら自分に声をかけて。その後のスケジュールはそのときに詳しく話すけど、主にはバックヤードでの動き方について終業まで教えます」といった具合です。
自分が1日どのようなスケジュールで動くのかが分かれば、新人も「この時間帯に質問しよう」などといった心構えができます。
何も知らされないまま、突発的な動きを求められるのは体力的にも精神的にも負担が大きくなります。自分がどの時間帯に一緒に行動するか、どの時間帯は席を外しているかといったところまで伝えられるとよいです。
教え方が上手い教育担当者が+αでやっていること
OJTを行うにあたっては、トレーナーへの習熟度の共有、新人従業員への課題の提示などのコミュニケーションが効果測定などが重要です。
ポイント1:定期的に新人と面談を行う
株式会社マイナビが新入社員を対象に行った調査「2016年マイナビ新入社員意識調査 ~3カ月後の現状~」によると、人事部所属ではなく、現場の社員の教育担当(OJTトレーナー)がいる割合は回答者の約64%で、そのうちOJTトレーナーと面談を実施していないのは約30%と結果になっています。
この調査結果からは、OJTとしての担当者の不在、そして習熟度や課題共有のための面談があまり行われていないことが分かります。
たとえ会社としてはきちんとOJTを実施していると、自負していたとしても、受け手となる新人も同じように考えているかはわかりません。新入社員からすれば「自分がきちんとステップアップできているか」は特に気になるところです。習熟度の共有や課題の提示のためにも、定期的な面談は行い、今は何が出来ていて、何が課題かといったところをしっかりと伝えることが望ましいです。
また、新人側に「何を課題と感じているか」「日々の業務で分からないことはないか」といったことをヒアリングするのも、業務への理解を深めるためには効果的です。
ポイント2:相手を否定したり他と比較したりしない
同調査によると、新入社員が社会人になってどう感じたかという問いに対して、「想像していたより厳しかった」、「想像通り厳しかった」という選択肢に7割近い回答が集まっており、その方達がどのようなときに厳しさを感じたかという問いに対しては、「能力・スキル不足を感じたとき」が最も多く、その次が「仕事内容が困難だったとき」、その次が「上司・先輩に叱られたとき」という結果になっています。
この調査からわかることは、「他人と比較して能力のなさを感じさせてしまうような叱り方は新入社員のやる気を削いでしまう可能性が高い」ということです。
OJTを行う教育担当の役割は、経験の浅い新人の育成です。しかし、教育に熱が入りすぎて相手のモチベーションを低下させてしまわないよう注意も必要です。
失敗したらその原因や改善策を伝えるなどし、相手の成長につながるように行動するようにすることが大切です。新人がミスを恐れるあまり、思い切った行動ができなくなるといったことがないように、過度に叱責する、呆れた態度を取るといった行動は避け、根拠をつけて指導するようにしましょう。
例えば、「この行いはこういう点がよくなかった。次からはこういうふうに取り組んでみよう」のように、指導した根拠+改善策をセットで伝えると効果的です。改善策に関しては、本人に考えさせることも良いでしょう。考える力を養うことで応用が身につくので、OJT終了後の行動に良い影響を与えるでしょう。
反対に、成果を出したときには、きちんとほめることも忘れずに行いましょう。こちらも根拠をつけて、「この行動はここが良かった。ここをこうするともっといいと思います。続けていきましょう」のように、次の行動に活かせるアドバイスもセットでつけることで、新人が「自分のことを正当に見てくれている」と感じるようになり、業務へのモチベーションがアップします。
ポイント3:一人で抱え込まず周りと協力してOJTを行う
教育担当者が新人教育の経験が浅い場合、新人のためになんとかしようとする頑張りが空回りしてしまうことも多いです。そういう場合は1人で抱え込まずに、周りのスタッフや経験の豊富な社員に相談することで解決する場合があります。店舗でOJTを行うのなら、すべてを自分が行うのではなく、個別の業務に対して専門の教育担当をつけることも有効です。
例えば、「裏方の仕事は自分が、レジの操作はAさんが、接客についてはBさんが」といったように、分野別の指導をそれぞれのスペシャリストのスタッフに任せることで負担も軽減できますし、教育担当者以外のスタッフにも馴染みやすくなるなどの相乗効果も得られます。
教育担当者は重要な仕事ゆえ、悩みが尽きません。周りのスタッフに相談することで、思いもよらないアイデアをもらえたり、過去の事例なんかを紹介してもらえる可能性も高まるので、結果としてOJTの効果を高めることにつながるかもしれません。
効果的な育成計画の立て方
OJTはただ実施すればいいというわけではなく、その目的や指導方法まで、事前に準備し、計画的に進めることで短い期間で最大限の効果を発揮することができます。ここからは、効果的なOJTを行う上での計画作りは、どのように進めればよいのかについて、ステップを踏んでご紹介していきます。
ステップ1:OJT目的やゴールを設定する
OJTを実施する上で一番大切なのは、目的とゴールの設定です。OJTは何のために行うのか、どこまで業務習得ができたらOJTが終了するのか、などをあらかじめ設定しておきましょう。
例えばアパレル店であれば、「OJTの目的は、新人が基本業務を一通り1人でできるようになること。完了目安は服のたたみ方、レジの操作方法、マネキンの展示、バックヤードからの品出しができること、にしよう」と設定しておけば、それらが達成できたタイミングでOJTが終了、一人前ということが新人と教育担当者間で共有できます。
目的やゴールを設定しない場合、新人は何をするためにOJTをやっているかわからなくなり、OJTを担当する教育担当者も、「何を教えなければいけないのか」、「OJT終了後に新人がどのような状態になっていればよいのか」がわからず、結果として形だけのOJTになってしまいます。
必ずOJTの目的とゴールを設定し、新人と教育担当者間で共有するようにしましょう。
ステップ2:教育担当者の業務配分を見直す
(参照元:「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」の13ページ目)
上の図を見ると、「指導する人材が不足している」と回答した企業が全体の33.2%、「人材育成を行う時間がない」と回答した企業が全体の32.7%と、それぞれ3割以上の企業が、人材育成に関して、人的および時間的な面で課題を抱えていることがわかります。
その原因としては、教育担当者の業務量が考えられます。多くの教育担当者は通常業務と並行してOJTを担当しています。そうすると通常業務の量がOJT担当前と比べて変わらない場合、教育担当者の負担が大きくなるため疲弊してしまい、新人教育が疎かになったり、教育担当者が離職してしまったりを繰り返す、負のループに入ってしまいます。
そういった事態に陥らないためにも、OJT計画策定時に、教育担当者の業務量を見直し、新人教育を行う時間をしっかりと確保することが大切です。例えば、「今月はAさんが教育担当者だから、この業務はBさんに引き継ごう」といった業務の引き継ぎを行うことで、教育担当者の負担を大きく減らすことができ、結果としてOJTに集中して取り組むことができるようになります。
会社や事業所全体で新人教育も重要な業務の1つと捉え、取り組むことで、効果的なOJTを行う体制を作り上げることができます。
ステップ3:教育担当者向けに指導方法を統一する
OJTでは教育担当者によって、指導内容にバラつきが生まれやすいという課題があります。この課題には単に教育担当者の業務スキルに左右されているわけではなく、マニュアル通りの教育が行われていないという側面があります。
例えば、「マニュアルにはこう書いてあるけど、こっちのやり方の方が効率的だし楽だよ」という先輩社員ならではのノウハウで指導するスタッフがいる、などです。そうならないためにも、指導方法や内容を現場任せにせず、きちんと指導マニュアルを用意し、それ通りに指導することを徹底するなど、現場の教育担当者にあらかじめ指導方法を共有しておくことが大切です。
また指導マニュアルに、オペレーションの根拠まで記載されていると、より納得感を持って業務に取り組むことができます。
例えば、「このオペレーションは一見このようにやった方が早くできるように思うかもしれませんが、お客様の安心安全をきちんと確認するために、このやり方で統一しています。」といった記載があれば、新人も教育担当者も「マニュアル通りにやった方がいいんだ。」という理解ができます。バラつきをなくすために、教育担当者向けの研修やマニュアルの中身の見直しも合わせて実施していきましょう。
OJTの効果をさらに高めるには?
ここまで様々なOJTの指導方法や心構えについて、ご紹介してきました。ここからはOJTの効果を最大化するために、どのようなことに取り組んだらよいかをご紹介していきます。
全社的に新人教育の優先度を高いものだと位置づける
(参照元:令和元年度の「能力開発基本調査」の16ページ目)
上の図を見ると、32.6%の企業が「計画的なOJTを実施していない」と回答しています。
会社にとって最も重要なのは人材です。なぜなら売上を上げるのも、会社の評判を左右するのもすべて人によるものだからです。たしかに目の前の業績も大事です。ですが新人教育はそのまま会社の発展に関わる、と捉えることが重要です。会社の将来の発展のために、教育をないがしろにせず、優先度を上げることを共通認識とすることが第一歩と言えます。
例えば、新人教育を任せた人材に「新人教育を任された、やっかいだ」と思われてしまっては元も子もありません。「やっかいだ」と思われるのは、新人教育という仕事が社内で重要視されておらず、ただ普段の業務にプラスされるだけの面倒な業務という認識になってしまっているからではないでしょうか。新人教育が、自身の評価を上げることにつながるとしたら、ぜひ新人教育を任される存在になりたいと思うはずです。
会社として新人教育を重要な業務と捉え、任されることが嬉しいことだと思ってもらえるような風土を作ることで、OJTの成功、優秀な人材の創出につながっていきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。店舗という忙しい場所では、通常業務と並行して形だけのOJTになりがちです。しかし、しっかりと計画を立てて行うことや、担当者が指導しやすいように業務分担を行うことは、新人にとっても教育担当者にとっても大きなメリットになります。
この記事ではOJTをする上で課題となりやすいことや失敗例、効果的にOJTを行うために行うべきことを具体例をあげて解説しました。自社のOJTに不足しているものがないか確認しながら、OJTの指導計画を立てて、効果的な指導方法を実践してみてください。