店舗マネジメントとは?目的や業務内容、学んでおくべきスキルまで幅広く解説!
スーパーマーケットや飲食店、アパレルショップなど、店舗を展開する企業に所属する人なら必ず耳にする「店舗マネジメント」。効率よく売上げを伸ばし、利益を獲得するために欠かせない業務です。
しかし、実際に何をすれば良いのか、何を求められているのか、改めて聞かれると曖昧な方も多いはず。そこで、今回は「店舗マネジメント」について詳しく解説します。
身につけておくと便利なスキルや、成功させるための具体的な改善策などもご紹介しますので、店舗マネジメントにお悩みの店舗責任者の方、店舗運営担当者の方はぜひお役立てください。
店舗マネジメントとは
まずは言葉の意味から見ていきましょう。「マネジメント」を辞書で引いてみると、以下のように記載されています。
経営などの管理をすること。
引用元:「デジタル大辞泉」小学館
つまり「店舗マネジメント」とは、店舗を管理すること。売上や人材、商品など、店舗経営に必要なあらゆるモノ・コトを管理することを意味します。
従業員の教育や販促活動など、店舗責任者・店長が日々行うほとんどの業務は、店舗マネジメントに該当します。また、各店舗の売上管理や企画考案など、本社で店舗運営部が行う仕事も店舗マネジメントに含まれます。
「店舗運営」との違い
「運営」という言葉には、以下のような意味があります。
団体などの機能を発揮させることができるように、組織をまとめて動かしていくこと。
引用元:「デジタル大辞泉」小学館
つまり「店舗運営」とは、店舗が機能するよう業務を取り仕切り、動かしていくことという意味になります。
後に詳しく解説しますが、店舗マネジメントの目的は「店舗および企業の繁栄」です。マネジメントという言葉から「管理すること」という意味合いが強いものの、「店舗運営」とほぼ同意義のため、言い換え表現として扱われています。
店舗マネジメントの目的・役割
店舗マネジメントを行う目的は「企業の業績・利益向上」です。店舗の業績・利益は、そのまま企業の業績・利益へとつながるからです。
その目的を果たすために必要なのが、業務と人材の管理。従業員が十分に能力を発揮し、効率よく生産性の高い業務を行えるよう取り計らうことで、利益向上を目指します。
店舗の業績が下がれば、企業の利益低下も免れません。つまり店舗マネジメントという仕事は、会社経営を左右する重要な役割を担っているのです。
店舗マネジメントの具体的な業務内容
では、店舗マネジメントとは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
担当する業務の範囲は企業や役職によって違いはありますが、主な業務内容は以下の6つです。詳しく見ていきましょう。
人材管理・育成
店舗に配属された従業員を管理する仕事、人材管理は店舗マネジメントにおいて特に重要な業務。具体的には、以下のようなことを行います。
- 従業員の教育、育成
- 勤怠管理
- シフト作成
- 評価
- 採用・面接 など
従業員の教育・育成は、企業の人事部が責任を担っています。しかし、実際にそばで教育を行ったり、サポートをしたりするのは、店舗マネジメントを行う店舗責任者です。
また、勤怠管理やシフト作成といった労務業務も、店舗マネジメントに含まれます。従業員が無理なく働くことができ、個々の能力を発揮できるよう支援する役割を担っているのです。
売上管理
売上管理は、企業の業績・利益に直結する業務。「利益率」「客数」「リピート率」「客単価」など、店舗経営に関するあらゆるものを数値化、計算・記録・分析し、店舗の状況を常に把握します。
もちろん、ただ状況を把握するだけでなく、売上予算と比較し、好調要因や不調要因を考えることも売上管理において重要です。店長や店舗運営部、経営部などが協力し合いながら、売上げ改善に向けて取り組みます。
売り場づくりなどの販促業務
売上管理にて得たデータをもとに、販促業務を行います。販促業務とは、具体的に以下のような仕事です。
- 商品の陳列
- 店内の装飾
- 販促企画の立案・実行
- POP作成・掲示 など
特に接客を行わない店舗では、商品の陳列によって売上げが変わります。POPなどを活用しつつ、効果的な陳列・装飾を行うことで販売促進を狙います。
また、季節のイベントやセールなども、店舗マネジメントに含まれる業務のひとつ。立案や実行のほか、振り返りや改善点の分析も行い、売上向上を図ります。
商品管理
商品を販売して利益を得ている店舗は、商品管理も欠かせません。例えば、以下のような業務を行います。
- 仕入れ数の調整
- 商品の価格設定
- 棚卸および棚卸の振り返り
- 店舗間の商品移送の手配
- 納品の管理 など
商品数や価格の調整を行うことで、販売の無駄をなくし、利益を増やします。また、複数店舗を展開する企業では、店舗間で商品の移送を行い、在庫のロスを減らすこともあります。
そのほか、商品を適切に保管できているか確認するのも、店舗マネジメントの仕事です。納品作業などは基本的に従業員が行いますが、業務をチェックし、改善を促すのはマネジメント業務担当者が行います。
安全・衛生・危機管理
従業員が心身ともに健康に働けるよう、安全・衛生・危機管理も行います。例として以下のような行動が求められます。
- 安全行動の促進・指導
- 災害時の対応・指導
- 什器など設備の取り扱いの注意
- 災害が発生しにくい売り場づくり
- メンタルヘルスケア
全社共通のマニュアルや、テナントが入っている施設のルールに従って行われる安全管理ですが、それだけでは不十分なことも。そのため、店舗独自のガイドラインの設定や、責任者からの指導が必要です。
また従業員へのストレスケアなど、精神面のサポートも行います。ただし、店舗だけでのメンタルヘルスケアでは不十分な場合もあるため、人事部と連携して行うことが多いでしょう。
テナント管理
商業施設や百貨店などのテナントを借り、店舗を営業している企業も少なくありません。そのような場合は、テナント管理業務も店舗マネジメントの一環として行います。
具体的には、契約の相談や手続きなどの業務があります。また、イベントの相談・申請・実行などを行う場合もあります。
継続して店舗を運営するためには、このような取引先とのやり取りも必要です。
店舗マネジメントに必要なスキルとは?
店舗マネジメントは、ただ仕事を”こなす”だけでは「店舗と企業の利益・業績向上」という目的を果たすことができません。成功させるためには、さまざまなスキルが必要です。
身につけておくべきスキルは多数存在しますが、なかでも重要なものをご紹介します。
人材マネジメントスキル
従業員に教育を行い、成長を促すのは店舗マネジメントの役目。とはいえ簡単ではないため、スキルを身につける必要があります。
学ぶべき人材マネジメントスキルとは、例えば以下のような内容です。
- On the Job Training(OJT)での指導方法
- コーチング
- サポートスキル
- 効果的な面談のやり方
- 1 on 1ミーティングの方法 など
業務の取り組み方など、基本的な教育指導のみでは、継続的な成長は見込めません。店舗の戦力になる従業員を育てるためには、自主性・主体性を持たせる教育スキルが必要です。
さらに、長期的なキャリアを見据えた人材育成スキルも、人材マネジメントにおいて重要。キャリア形成のサポートは、従業員の定着にもつながります。
商品やサービスのクオリティが高くとも、従業員への教育が行き届いていなかったり、従業員エンゲージメントが低かったりすると、将来的に店舗の業績は落ち込むもの。よって、人材マネジメントスキルの習得は必須中の必須と言えます。
リサーチ・分析スキル
店舗の業績・利益アップには、的確な経営戦略が必要です。そして戦略を立てるためには、店舗の状況を把握する能力に長けている必要があります。
そのため、リサーチ・分析スキルの習得も必須です。
店舗の売上げに関する数値はもちろん、市場や顧客の要望、トレンドなどの情報も収集。それらの情報をもとに分析し、「今どのような状況にあるのか」「今なにに注力すべきなのか」を考えます。
状況を見極め、取り組むべきことの優先順位をつけられるスキルが、店舗マネジメントの成功へと導くのです。
コミュニケーション能力
店舗マネジメントは、数多くの人々と関わり合いながら行われます。従業員への教育、他部署との連携、取引先との関係構築……これらすべてにコミュニケーションスキルが求められます。
なかでも重要視されるのは、心理的安全性を確保するコミュニケーションスキル。「心理的安全性」とは従業員が安心して発言・行動できる環境のことで、チームワーク力の向上、生産性の向上が期待できます。
発言や挑戦を促す会話、ミス・トラブル発生時の対応などにより、心理的安全性は高まります。しかし、それらを実現するには知識とスキルが必要です。
コミュニケーションスキル自体は、役職や職種に関係なく身につけるべきですが、店舗マネジメントを担う人は、より専門的かつ幅広いスキル習得が重要と言えるでしょう。
店舗レイアウトスキル
商品を店舗で販売するビジネスでは、レイアウトが売上げに大きく影響します。接客を行う店舗でも、効果的な陳列スキルを活用することで、販売促進につながります。
- 顧客の導線を意識したレイアウト
- 視線を集める陳列方法
- シーズン、トレンドを意識した店内装飾
- 商品それぞれに合わせたレイアウト
以上のような陳列を行うためのスキルは、実際に経験して得ることもできます。しかし、スキル・知識を習得することで、より早く成長できるのです。
また、効果的な店舗レイアウトは、顧客の動向や時代によって変化するもの。アップデートし続けることが大切なので、既に店舗マネジメントを行っている人も学び直す必要があるでしょう。
接客スキル
一般社員が接客業務を担っている店舗でも、店長が接客する場面は多々あります。特にクレーム発生時は責任者として応対することが多いため、接客スキルの習得も身につけておくべきと言えます。
また、従業員に接客の指導を行う際も、知識が必要です。接客も店舗レイアウトと同様、効果的な方法は時代と共に変化するため、定期的に学び直すと良いでしょう。
店舗マネジメントにおけるよくある課題
店舗マネジメントがうまく機能せず、悩んでいる企業は少なくありません。しかし、問題点が多く、何から手を付ければ良いか迷ってしまうこともあるはず。
そこで、店舗マネジメントにおけるよくある課題をご紹介します。内閣官房内閣人事局発行の資料をもとに解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
引用元:「管理職のマネジメント能力に関するアンケート調査 結果概要(最終報告)」内閣官房内閣人事局
管理者目線の主な課題
- 長期的なキャリア形成を見据えた効果的な人材育成
- ワークライフバランスの重視と、多様な人材の活用などダイバーシティへの対応
- 新たな課題にチャレンジする組織風土の形成
内閣官房内閣人事局が行った調査によると、管理者側が挙げた課題として、以上の3点が上位を占めました。人材育成、ダイバーシティ化など、人事に関するマネジメントの課題を抱えている企業が多いことがわかります。
人材育成に関しては、人材マネジメント研修の実施など、管理職者への教育を行うことで改善が期待できます。組織風土も、従業員エンゲージメントやリーダーシップに関する知識・スキルの習得により、改善が見込まれるでしょう。
またダイバーシティへの対応には、採用方法や勤務体制などの見直しが必要です。
ただし、いずれも企業全体で取り組まなければ根本的な解決にならないため、経営陣や人事部と協力して取り組みましょう。
一般職目線の主な課題
- コストを意識した業務管理
- ワークライフバランスの重視と、多様な人材の活用などダイバーシティへの対応
- 長期的なキャリア形成を見据えた効果的な人材育成
管理者と同様、「ダイバーシティ化への対応」と「キャリア形成を見据えた人材育成」が課題として多く挙げられているようです。
ただし、管理者目線での回答には上位に上がらなかった「コストを意識した業務管理」が第1位にランクインしています。業務に無駄を感じている従業員が多いと推測され、業務の効率化が必要と考えられます。
また、管理職社員と一般職社員の間に、認識のズレが生じていることにも注目です。
店舗マネジメントを成功させるコツと施策の具体例
店舗と企業の業績・利益向上につながるマネジメントを行うには、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。具体的な施策例と共に、成功させるコツを解説しますので、ぜひお役立てください。
対策1:店舗責任者・管理職の育成
店舗マネジメントを成功させるためには、責任者・管理職の育成が必要です。人材マネジメントに関する課題が多く挙げられていたことから、人材育成に関する教育は非常に重要と考えられます。
また、管理職就任後も継続して教育を行うことが大切。就任前、もしくは直後に身につけた古いやり方に囚われ、時代に合うマネジメントへとアップデートできていないことがあるからです。
既に店舗マネジメントを任されている店舗責任者・管理職者に対しても、教育を行いましょう。
施策例:研修の実施
店舗責任者・管理職への教育には、やはり研修の実施が必須。店舗が本社から離れている場合でも「オンライン研修」ならば、時間と場所に囚われないため便利です。
さらに、オンライン研修のツールによっては、学習の進捗報告、学んだことを実践した際の報告なども可能に。継続的な育成およびサポートが実現しやすくなります。
対策2:従業員の主体性を育てる業務分担
従業員の成長には「自主性」が欠かせません。自ら考え、行動する従業員を育てることで、生産性の高い店舗を築くことができます。
そのためには、従業員に業務を任せることが大切です。業務に取り組み、失敗や成功を実際に体験することにより、自主性が育ちます。また、挑戦に対する不安も薄れ、意欲的に行動する従業員へと成長させることができるでしょう。
特に多忙な職場では、店長ばかりが仕事を抱え込みがち。しかし、それでは従業員の自主性は育たず、モチベーション低下の恐れもあるので注意しましょう。
施策例:教育担当者の割り振り
新人を教える役割を担う教育担当は、入社歴の浅い社員でも行うことができる業務。人に教えることで知識・スキルが身につくほか、責任感や主体性を持たせるのに効果的です。
ただし、担当者に任せっきりにならないよう注意が必要です。定期的に報告・相談する機会を設けるなど、サポートを続けましょう。
施策例:売り場づくり担当者のローテーション・分担
一般的に店舗責任者が行う売り場づくりですが、従業員に任せる方法もあります。すべてを任せるのはハイリスクでも、ローテーションで担当者を作ったり、部分的に任せたりすることで、ローリスクのまま経験を積ませることができます。
店舗レイアウトを経験してもらうことで、早いうちから管理職候補を育てることが可能に。さらに、「自分も一員である」という責任感を持たせるきっかけにもなるでしょう。
対策3:コミュニケーションの効率化・活発化
先ほどの「内閣官房内閣人事局」の調査結果では、管理職者と一般職者の間に、課題に対する認識のズレがありました。そのことから、コミュニケーション不足の問題が発生していると推測できます。
コミュニケーションの強化には、スキル習得はもちろん、コミュニケーションがとりやすい”仕組みづくり”も大切。「会話を増やそう」と意識するだけ、呼びかけるだけでは変化しにくいからです。
そのため店舗マネジメントを行う際は、自然とコミュニケーションが増えるような工夫が必要です。具体的には、以下のような施策例が挙げられます。
施策例:朝礼・終礼の活用
従業員がシフト制で勤務することが多い店舗型ビジネスでは、会話する時間をとりにくく、コミュニケーションが不足しがち。そこで活躍するのが「朝礼」「終礼」です。
毎日、情報共有をする場を設けることで、会話するきっかけを作ると共に、会話の習慣化を促します。朝礼・終礼の司会者をローテーションすれば、主体性の促進にもつながるでしょう。
施策例:ツールの活用
そもそも、コミュニケーション手段の不便さが、問題を引き起こしている可能性もあります。その場合は、コミュニケーションツールの見直しも必要です。
気軽にやり取りできるチャットツール、オンライン通話ツール、社内システムツールなどさまざまなものがあります。何が適切なのか、店舗の状況・内容に合わせて見極めて選択することが大切です。
対策4:マニュアル・ガイドラインの整備
最後に、業務の効率化にはマニュアル化が効果的です。マニュアルに沿って業務に取り組めるようにすることで、担当者の代わりが効くようになります。店舗のスタッフで協力しながら、効率よく業務を進められるのです。
また、既にマニュアルやガイドラインが存在する場合でも、改めて見直すことで、業務の無駄や問題点の発見につながります。より良い取り組み方を考える手助けとなるでしょう。
施策例:従業員がマニュアルを作成
マニュアルを作成する際は、その業務の担当者に任せるのも手です。業務に対する理解が深まるほか、主体性の向上にもつながります。
また、単純に店舗責任者・店舗運営担当者の負担軽減になるというメリットも。店舗マネジメントの改善には、やるべきことが多数あるので、マニュアル作成は分担するのがおすすめです。
まとめ
店舗マネジメントの業務内容は非常に幅広く、すべての課題を解決するのには時間がかかります。特に人材に関するマネジメントは、1人1人違う能力も長所も短所も違う従業員を相手とするため、一筋縄では行かないでしょう。
しかし成功すれば、従業員の成長が促され、チームワーク力の向上も期待できます。周囲からの協力を得て、結果的には店舗責任者・運営担当者の負担軽減につながるはず。
ご紹介した対策や施策例をぜひ参考にし、小さなことから改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。