リーダーシップとは?理論・具体的な行動例・マネジメントの違いを徹底解説!
「リーダーシップとは何か、実際の現場でどう活かせばいいのか」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。
とくに中小企業の現場では、上司と部下の距離が近く、日々の成果とチームマネジメントを両立する力が求められます。しかし、目の前の業務に追われる中で「自分は正しくリーダーシップをとれているのだろうか」と悩む方も少なくありません。
そこで本記事では、リーダーシップの基本概念や主要な理論をはじめ、マネジメントとの違い、そして現場で実践できる行動例まで体系的に解説します。「人を動かす力」を理論と実践の両面から理解し、自社の組織づくりや人材育成に生かすヒントとしてご活用ください。
リーダーシップとは?
現代のビジネス環境では、リーダーシップは一部の管理職だけに求められる能力ではありません。チームや組織を率いるだけでなく、個々人が自ら課題を見つけ、周囲を動かして成果を出す力こそ、これからの時代に必要とされるリーダーシップです。
そこでまずは、リーダーシップの定義と、混同されがちなマネジメントとの違いについて整理していきましょう。
リーダーシップの定義
リーダーシップとは、目標を達成しようとするチームや組織に対して、リーダーが与える影響力のことです。
ジョン・P・コッター著「人と組織を動かす能力 リーダーシップ論」では、リーダーシップを「時代や文化が変わっても不変の行動様式」と位置づけています。
つまり、リーダーとは「肩書き」ではなく「行動」で決まる存在だということです。役職の有無に関係なく、信頼され、周囲を動かす人すべてがリーダーになり得るのです。
マネジメントとの違い
リーダーシップと似ている言葉に、マネジメントがあります。マネジメントも、リーダーシップと同じく目標達成に対して行うことです。経済法令研究所発行の「管理者のあり方とリーダーシップ」では、マネジメントとは、「集団が目指す目標を達成するにあたって、集団内で使用する人、物、金、情報などを最大限に活用し、できる限りの機会損失を防ぐための管理」と定義しています。
リーダーシップを発揮する人がリーダーであるのに対し、マネジメントを行う人は管理者(マネージャー)と呼ばれます。管理者は、目標達成のための資源の重要なポイントをおさえながら、事象をうまく処理、収集することが求められます。たとえば、人事マネジメントなら部下や従業員などの人にあたる資源を、うまく活用かつ処理、収集することです。
ジョン・P・コッター著「人と組織を動かす能力 リーダーシップ論」では、リーダーシップとマネジメントの違いを以下のように比較しています。
・リーダーシップの役割とは競争の激化や変化に対処すること
・マネジメントの役割とは複雑な状況にうまく対処すること
ジョン・P・コッター著「人と組織を動かす能力 リーダーシップ論」
技術革新、国際競争や市場競争の激化、規制緩和や労働力の人口構成の変化などの新しい環境に対して企業が生き残っていくためには、大胆かつ大規模な変革が求められます。大規模な変革が大きければ大きいほど、対処できる力としてリーダーシップが求められることになるのです。リーダーシップは、生身の人間や組織文化など、ソフト面に対して発揮されるものとも述べられています。
一方、企業の複雑な状況にうまく対処し、ある程度の秩序や一貫性を保つために行うのがマネジメントです。そのために、マネジメントでは既存システムである予算や人材など資源を設定し、将来の目標設定を行います。マネジメントは組織の改装や制度など、ハード面を通じて実行させるものとも述べています。
リーダーシップとマネジメントでは、対処する対象や状況が異なります。一方、マネジメントとリーダーシップはいずれにも以下の3つが共通しています。
- やるべきことの設定
- 課題達成のための資源の設定
- 組織メンバーやグループメンバーにきちんと仕事をさせること
上記から、リーダーシップとマネジメントとは相違関係にあるものの、補完しあう行動体系であるとも述べられています。
リーダーシップが求められる背景
なぜ今、リーダーシップがこれまで以上に注目されているのでしょうか?その背景には、組織を取り巻く環境が大きく関係しています。ここでは、現代の組織でリーダーシップが必要とされる背景について、3つの観点から見ていきましょう。
変化が激しい時代への対応
日本企業では長らく、「上司の指示に従い、計画どおりに進める」ことが成果につながる時代が続いてきました。
しかし近年では、デジタル化や国際競争など、環境変化の激しい時代に。トップの判断を待つだけでは対応が遅れ、契機を逃すことも少なくありません。
だからこそ今のような時代においては、変化に素早く対応し、チームを自律的に動かす力=リーダーシップが求められているのです。
組織のフラット化と自律性
近年では、テレワークやプロジェクト型ビジネスが浸透してきたことにより、社内では上下関係よりもフラットなチーム構造が一般的になっています。
その結果、スピード重視の現場では、トップダウンの階層型マネジメントが機能しづらくなりました。
そのため、今の時代に求められるのは、役職に関係なく自分で考え行動できる人材、いわば自律した人材です。つまり、少なからずすべての人材が、リーダーシップを求められているのです。
メンバーの多様性への対応
今では、グローバル化や働き方の多様化により、価値観・スキル・背景の異なる人材が共に働く時代になりました。
しかし、個々の強みを生かしながら成果を出すためには、違いを尊重しつつチームをまとめられるリーダーの存在が不可欠です。
そのため、多様な人材を同じ方向へ導く力=リーダーシップが求められているのです。
リーダーシップの主要な理論
リーダーシップは「才能」ではなく、「理論に基づくスキル」として学び・磨くことができます。これまでにも、数多くの研究によって、リーダーの行動や考え方を分析する理論が提唱されてきました。
そしてその中でもとくに重要なのが、人と仕事のバランスに着目したPM理論、部下の成熟度に応じて行動を変えるSL理論、そして変革型リーダーシップとサーバント・リーダーシップという現代的なスタイルの理論です。
ここでは、それぞれの理論が示す「リーダー像」をご紹介いたします。
人と仕事のバランス理論(PM理論)
PM理論とは、日本人社会心理学者三隅二不二(みすみじゅうじ)によって提唱されたリーダーシップ論です。P行動と呼ばれる目標達成行動(Performance function)とM行動と呼ばれる集団維持行動(Maintenance function)のふたつの行動を軸にした理論です。以下のマトリクス図は、横軸がP行動、縦軸がM行動を表しており、4つのスタイルに分類できるとされています。

(引用:ピーエムシー株式会社「104.TM 研修(1-3)の工夫④ PM 理論、SL 理論、サーバントリーダーシップ」を参考に弊社で作成)
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PM |
目標達成を強調しつつ、人間関係にも配慮できるリーダー。目的に沿った適切な指示と、メンバーへの配慮によるモチベーションの向上を両立できる理想的なリーダー。 |
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Pm |
目標達成を重点的に考え、人間関係にはあまり配慮しないリーダー。目標達成のための指示が威圧的、気遣いに掛けるなどの課題がある。 |
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pM |
目標達成よりもチームの人間関係を重視するリーダー。課題が多い、新しい目標へ向かうシーンでは的確な指示が出せず成果が出ない可能性が高い。 |
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pm |
目標達成にも人間関係の調整にも消極的なリーダー。成果、モチベーションともに低下するリスクがある。 |
部下のレベルで使い分ける理論(SL理論)
SL理論とは、”Situational Leadership”「状況に応じたリーダーシップ」という意味で、メンバーのスキルや知識、成熟度に応じてリーダーシップ行動を変えていく理論です。SL理論では、指示的行動と援助的行動のふたつのリーダーシップ行動を軸に、4つのスタイルのリーダーシップを環境に合わせて変化していくことで、状況に応じたリーダーシップの発揮につながると述べられています。以下の図はSL理論でのリーダーシップ行動の変化を表したものです。指示的行動を横軸、援助的行動を縦軸とし、青の矢印はメンバーや部下の成長に合わせて、リーダーは4つのスタイルにリーダーシップの形を変化していく様子を表しています。
(引用:ピーエムシー株式会社「104.TM 研修(1-3)の工夫④ PM 理論、SL 理論、サーバントリーダーシップ」を参考に弊社で作成)
SL理論で変化させる4つのスタイルのリーダーシップは以下の通りです。
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スタイル |
特徴 |
適した部下の 熟練度 |
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S1型 教示型・指示型 リーダーシップ |
・指示的行動が高く、援助的行動が低い ・具体的に指示し、事細かに監督する ・部下の成熟度が高い場合は、仕事に取り組むモチベーションが低下するリスクがある |
低い |
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S2型 説得型・コーチ型 リーダーシップ |
・S1よりも指示的行動を抑え、援助的行動を高める ・リーダーの考えを説明する、メンバーに質問を投げかける、疑問に答えるなどコミュニケーションを密に取る ・具体的な指示をこまかく行うのではなく、コミュニケーションを通じてリーダーシップを発揮する ・聴く、褒める、認めるなどの援助的行動が疎かになると、まだまだ自信がない若手職員はリーダーに放り出された感じになり、モチベーションを落とすこともある |
徐々に高まっている |
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S3型 参加型・援助型 リーダーシップ |
・仕事へのモチベーションが低下しているメンバーへ、指示的行動をさらに抑え、 援助的行動を高める ・カウンセリング型とも呼ばれる ・ある程度実力はあるが自信がない、不満のある中堅職員の話しに耳を傾け、アドバイスを行い、本人の問題解決能力を高めるコーチングと似た手法 |
独り立ちの一歩手前 |
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S4型 委任型リーダーシップ |
・指示的行動、援助的行動ともに抑える ・仕事遂行の責任を委ねていく |
独り立ち |
変化を導く二つのスタイル
現代のリーダーシップ論としては、変革型リーダーシップとサーバント・リーダーシップの2つのスタイルが注目されています。
まずサーバント・リーダーシップは、「人に尽くす(奉仕する)」という考え方をもとに、メンバーの成長を支援し、チーム全体を底上げすることを目的としたスタイルです。
一方、変革型リーダーシップは、組織を変革し新しい価値を生み出すことを目的としたスタイル。変化の必要性を見極め、時に現状を壊してでも新しい方向へ導くリーダー像を示しています。
そして、これら2つのスタイルは「人を支える力」と「変化を牽引する力」として互いに補完し合う関係にあります。人を育てる段階ではサーバント型を、変革を起こす段階では変革型を発揮するなど、状況に応じた使い分けが重要です。
【実践】成果を出すための行動例
リーダーとして成果を出すためには、理論を理解するだけでなく、日々の行動に落とし込むことが重要です。そこでここからは、成果を出すリーダーに共通する3つの行動例についてご紹介します。
ビジョンを「自分ごと」にする伝え方
リーダーからメンバーへ目標や方針を伝えるとき、「会社のため」「組織のため」といった抽象的な表現で伝えてしまうと、メンバーはそのビジョンを自分の仕事と結びつけにくくなってしまいます。
そのため、リーダーとして成果を出すためには、「何をするか」ではなく「なぜそれをやるのか」を語ることが非常に大切です。
たとえば、単に「売上を10%伸ばそう」ではなく、「このプロジェクトが成功すれば、お客様に新しい体験を届けられる」「その結果として売上が10%伸びる」というように、目的と日々のタスクを結びつけて伝えるとよいでしょう。
目標達成に向けた計画策定の関わり方
成果を出すリーダーは、「計画のすべてを自分で決めない」という特徴があります。マイクロマネジメント(細かい指示や監視)を行うと、メンバーの自律性が失われ、主体的な行動を引き出せなくなるからです。
そのため、リーダーは「目的」と「成果基準」だけを示し、そこへ向かう具体的な手段や計画はメンバーに委ねることが大切です。リーダーはリスク分析と自身のリソース調達に専念しましょう。
このように役割を明確に分けることで、メンバーは「自分が考えた計画」で動けるようになり、責任感と創造性が高まります。
リーダーの役割は、すべてを指示することではなく、成功に必要な条件を整えること。この考えを基本として動くことで、チーム全体の成長につながっていくでしょう。
チームの「成果」を最大化する意思決定
リーダーは最終的な意思決定をする場面が多々あるものです。しかし、スピードを重視するあまり極端な判断をしてしまったり、慎重すぎてチャンスを逃してしまっていては、優秀なリーダーとはいえません。
意思決定の基本となるのは、「早く・正しく・責任を持って行うこと」。とくに重要なのは、多様な意見を聞きながらも、最終的な決断は迷わず行うことです。これらのポイントを踏まえて、バランスよく意思決定を行えるリーダーこそ、優秀なリーダーといえるでしょう。
また、意思決定の後には「なぜその判断に至ったか」をメンバーへ共有することも大切です。透明性を高く保つことでチーム全体の納得感が生まれるでしょう。
【実践】人を育み、信頼を得る行動例
リーダーシップは「成果を出す力」だけでなく、「人を育てる力」でもあります。そこでここでは、リーダーとして信頼を築き、人を育む3つの行動例についてご紹介します。
傾聴と承認の「質」を高めるコミュニケーション
人は、相手の話に「丁寧に耳を傾けているつもり」でも、実際には多くの人が「相手の話を遮る」「結論を急ぐ」など、無意識に相手の発言を制限してしまっているものです。
この点、優秀なリーダーは相手の言葉を最後まで遮らず、相づちや要約を交えながら「あなたの話を理解しようとしている」姿勢を示します。この“聞く姿勢”があるだけで、相手は安心して意見を伝えられるようになるのです。
また、褒め方にも質が求められます。たとえば「すごいね」と感情だけで終えるのではなく、「昨日の会議で、限られた時間の中で要点を整理してくれたのが良かったよ」のように、行動の背景や具体的な場面を踏まえて承認することが大切です。
成長を促す「フィードバック」の具体的な手法
メンバーの成長を促すためには、感情論ではなく事実に基づくフィードバックも大切です。少し難しく感じるかもしれませんが、以下のようなフレームワークをもとに実践をすることで、再現性が高まるでしょう。
SBIモデル(Situation・Behavior・Impact)
- Situation(状況):どの場面での話かを明確にする
- Behavior(行動):相手が実際に取った行動を具体的に述べる
- Impact(影響):その行動がチームや業務にどのような影響を与えたかを伝える
たとえば改善点を伝える際には、「今日のミーティング(Situation)で、意見をまとめる前に結論を急いでいたように見えたよ(Behavior)。その結果、他のメンバーが発言しづらくなっていたかもしれない(Impact)」と伝えます。
このようにSBIフレームを用いて事実に基づいたフィートバックを行うことで、批判的にならず、相手の改善意欲を引き出しやすくなります。
失敗を許容する文化の作り方
チームが挑戦を続けやすくなるような心理的安全性の高い環境づくりも、リーダーの大切な役割の一つです。とくに、失敗を「学びのチャンス」と捉えるリーダーの姿勢は、メンバーにとって安心できる要素となるでしょう。
たとえば、「今回の結果は残念だったけど、どんな気づきがあった?」「次に同じような場面があったら、どう対応したいと思う?」などと声をかけ、次のチャレンジにつながる会話を意識するのがポイントです。
なお、心理的安全性についてよりくわしく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。心理的安全性が低下する原因や安全性を高める方法について解説しています。
■参考記事はこちら
心理的安全性とは?高い=ぬるま湯ではない!低下に繋がる4つの要素や高い職場の作り方について解説
リーダーに求められる3つの「力」とその特徴
「自分はリーダーに向いているのだろうか」
そう感じる瞬間は、どんな立場の人にもあることでしょう。
しかしリーダーシップは、生まれ持った才能ではなく、学びと実践によって磨かれる力です。まずは、リーダーに求められる3つの力とその特徴を知り、自分の強みや伸ばすべきポイントを理解することから始めましょう。
推進力
推進力とは、変化を生み出し、停滞を打破する力です。
具体的には、リーダーとして未来を描く発想力、困難な局面でもリスクを取れる決断力、そして自らが先陣を切って行動し周囲を導く行動力が求められます。これらの力が、成果を着実に生み出す原動力となり、チーム全体の流れを生み出す力となるのです。
人間力
人間力とは、メンバーとの信頼関係を築き、チームを一つにまとめる力です。誠実さや一貫性のある態度は、リーダーが信頼を得るための基本となります。
また、状況が変わっても冷静に判断し、感情的にならず安定した対応を見せることも大切です。メンバーに安心感を与え、信頼を積み重ねられるリーダーこそが、チームの力を引き出す存在となります。
育成力
育成力とは、メンバーの成長を通じて組織の未来を創る力です。
リーダーには、自らの強みや弱みを理解し、自分を客観視できる自己認識の高さが求められます。自分を理解している人ほど、相手の特性を見極め、適切に成長を支援できるからです。
また、他者の成長を心から喜び、それを支援し続ける育成への意欲も、リーダーとして欠かせない素質だといえます。
なお、下記の記事では、人材育成に必要な6つのスキルについてくわしく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
■参考記事はこちら
人材育成で大切なこととは?各階層で抑えるべきポイントや育成に必要なスキルを解説
現場の課題解決とリーダーシップの育て方
リーダーシップは、特別な研修だけで身に付くものではなく、日々の業務の中でこそ鍛えられる「実践的なスキル」です。
とはいえ、実際にどのようにすればリーダーシップを育むことができるのか、疑問に思う方も多いことでしょう。そこで最後に、時間やコストをかけずにリーダーシップを育む方法として、3つの施策をご提案します。
プレイングマネージャー課題の克服策
多くの現場で課題となるのが、プレイングマネージャーの「時間不足」です。自らが実務を担いながらメンバーを導くのは容易ではありません。
まずは、業務の棚卸しを行い、リーダーとして「自分がやるべき仕事」と「任せる仕事」を明確に区分しましょう。これにより、導くための時間を確保し、戦略的な判断に集中できるようになります。
OJTと経験学習の仕組み
リーダーシップを育む最良の方法は、実際の業務経験から学ぶことです。特別な研修よりも、日常業務の中で考えさせ、任せ、振り返るサイクルを仕組み化することが重要です。
たとえば、ミーティングの進行役を若手社員に任せたり、プロジェクトの一部をリーダー候補に委ねたりするのが有効でしょう。日常の中で「小さなリーダー体験」を積むことで、自然と判断力と自信が育まれていきます。
次世代リーダーを教育する方法
次世代リーダーを育てるには、役職や年齢に関係なく「リーダーシップを発揮する機会」を与えることが重要です。発言や提案の場を設けることで、自ずと自ら考え行動する文化が育っていきます。
また、上司が率先して「失敗しても挑戦した姿勢を評価する」態度を見せることも大切です。挑戦を前向きに受け止める空気が、次世代リーダーを育てる土壌になるでしょう。
変革を実現するための8つのプロセス
リーダーシップが発揮される背景にあるのが、組織改革や環境の大きな変化への対応です。ジョン・Pコッターは変革を実現させ、大きな成果を収めるためには以下の8つのプロセスを踏む必要があると提唱しています。
- 緊急課題であるという認識の徹底
- 強力な推進チームの結成
- ビジョンの策定
- ビジョンの伝達
- 社員のビジョン実現へのサポート
- 短期的成果を上げるための計画策定・実行
- 改善成果の定着とさらなる変革の実現
- 新しいアプローチを根付かせる
それぞれのプロセスにおいてのリーダーの行動や役割について解説します。
1.緊急課題であるという認識の徹底
現在の職場環境が安定している、幸せであると感じている場合、メンバーや社員、従業員は危機意識を持つことは難しいです。幸せな状況を手放してまでリスクを承知で変革を行おうとする人はいないでしょう。リーダーはメンバーに対して危機意識を持たせるために、変革は緊急の課題であることを徹底して認識させなければいけません。
まず市場分析によって競合状態を把握すること、さらに現在の危機的状況や今後表面化する課題、現在が変革の大きなチャンスであることを周知します。そのうえで、業績指標についてメンバーがいつでも議論できる環境を提供しておくことが重要です。企業の風通しを良くしておくことで、業績に関する悪い情報も忌憚なく持ち込み、議論ができます。議論がしにくい環境の場合、悪い情報を持ってくる社員は敵にされやすく変革の障害となってしまいます。
2.強力な推進チームの結成
変革のためのプログラムを率いる力のあるグループを結成します。規模も1~2人体制の小さなチームからスタートさせる場合も多いですが、変革へのプロセスが順調に進むたび、チームの人数が増えて大規模になっていく傾向にあると述べられています。
また、変革推進のためのチームに執行役員全員が参加することはほぼないとも言われています。執行役員の中には、変革に賛同しない人物もいるためです。ただし、執行役員がいなくても優秀なメンバーがそろえば、変革は成功します。
変革には組織の境界線や常識を超えたメンバーが必要になるためです。そのために、階級を超えてチームのメンバーをまとめるリーダーシップが発揮されます。リーダーはメンバーに対して自社の問題点やビジネスチャンスを認識させることと、チームでの信頼関係とコミュニケーションの構築が求められています。
短期間でチーム内の結束を高める有効な方法として、合宿などを行っている企業もあります。
3.ビジョンの策定
変革を成功させるポイントに、明確なビジョンの策定があります。明確なビジョンの目安となるのが、以下の要素を含んでいるものです。
- 5分以内で他人にビジョンを説明できる
- 相手から理解と関心を示す反応が得られる
適切なビジョンが示されていない場合、変革に関するプロジェクトも矛盾したものが乱立する、組織が誤った方向へ進むリスクがあります。変革に必要となるのは、計画や方針、プログラムが乱立したマニュアルではなく、適切なビジョンです。
ビジョンが明確になれば、ビジョン実現のために戦略を立て、変革に向かって動き出していきます。
4.ビジョンの伝達
メンバー全員が変革へ同じ方向を向いて進むためには、組織全体へビジョンを周知、共有することが必須となります。あらゆる手段を活用し、ビジョンを伝達しなければいけません。ビジョンの周知や共有の方法の例として、以下のものが挙げられています。
- 社内報をビジョンに関する記事を多く掲載したものにリニューアルする
- 役員会議を変革について意見を交わす議論の場にする
- 管理者研修を廃止し、業務所の課題や新しいビジョンに関する研修に変更する
- 執行役員みずからがビジョンの歩く広告塔になる
上記の例は、いずれも既存の重要視されていなかったメディアや慣習を活性化させ、ビジョンの周知や共有へ活用したことが共通しています。
コミュニケーションに長けた執行役員がいれば、日常会話などでビジョンについて周知や共有をすることも可能です。適切な手法やコミュニケーションを取り、ビジョンを周知、共有させ組織全体の信頼を勝ち取ることが求められています。
5.社員のビジョン実現へのサポート
ビジョンが知れ渡り、組織全体が編値して信頼を得られるようになれば、少しずつ社員たちを巻き込んでいきます。社員たちのなかには、自発的な行動を行う人も出てくるでしょう。大勢の人が参加すれば参加するほど、変革プログラムの成果は大きくなります。ただし、自発的な行動がビジョンから大きく外れている場合には、軌道修正が必要になります。
社員たちが変革に向けて自発的な行動をしようとした場合、障害となるものがあります。障害を取り除かなければ、変革に向けての連携やエンパワーメントの実施は不可能です。障害となるものとは、以下のものがあります。
- 職務規定が細分化されているため、行動しにくい
- 成功報酬制や勤務査定制度のために、ビジョンよりも個人の利益を優先してしまう
- 変革を覆そうとする管理職
社員のやる気を起こして変革プログラムへの信頼を維持するためには、リーダーは自らが重大な処分と対峙し、取り除かなければいけません。リスクを恐れずに、伝統や慣例にとらわれない考え方や行動を奨励することも求められます。
6.短期的成果を上げるための計画策定・実行
変革の実現には、長い時間がかかります。ところが、せっかく加速化した社員の変革への行動スピードは、時間がたてばたつほど失速してしまいます。変革への行動スピードを維持するためには、短期的に達成できる目標の設定が重要です。1970年、ハウスによってメンバーのモチベーションを理論化した「パス・ゴール理論」では、状況に応じてメンバーやチームへ道筋をつけないと、徐々にモチベーションが低下していくと述べられています。

(引用:厚生労働省『リーダーシップを発揮しよう』7ページより)
目に見える短期的成果を上げるための計画策定や実行には、以下のプロセスを踏みます。
- 目に見える業績改善計画を策定する
- 改善を実現する
- 改善に貢献した社員を表彰、または報奨を支給する
短期的な成果を出すという責務を社員に課すことで、変革の緊急性は常に意識しつつも設定したビジョンにより磨きをかける努力が後押しされることになります。
7.改善成果の定着とさらなる変革の実現
数年間変革に向けての行動を数年間進めると、業績が改善したなどの大きな成果が出てきます。目に見える成果が出れば「変革に成功した」と判断しがちですが、ここで変革プロセスが終了したわけではありません。活動を加速化させ、さらに難しい課題へ取り組むための基礎作りの段階に入ります。改善の成果の定着と、さらなる変革の実現のために、以下の行動が求められます。
- 今までで勝ち得た信頼を利用して、ビジョンに沿わない制度や組織、政策、風土などを改革する
- ビジョンを実現できる社員を採用、昇進、育成する
- 新しいプロジェクト、テーマやメンバーによる改革プロセスを再活性化する
8.新しいアプローチを根付かせる
変革によって新しい行動様式が誕生すれば、企業の風土として制度的に根付かせるための行動が必要です。せっかく数年間かけて気付いた変革も、新しい行動様式として社内の規範や価値観として根付かなければ、すぐに廃れてしまいます。
新しいアプローチを根付かせるためのふたつの要素は、以下の通りです。
- 新しい行動様式と企業全体の成功の因果関係を明確にする
- 新しいリーダーシップの育成と引継ぎ方法を確立する
新しいアプローチや行動様式が、業務改善にどれくらい貢献したかを積極的にアピールしていきます。業務改善への関連性がどれくらいあるかを社員任せにしてしまうと、業務改善と変革との間違った因果関係が伝わってしまうリスクがあります。
次に、次世代の経営陣に新しいアプローチや行動様式、考え方が根付くように時間をかけて対策をします。トップの交代人事でも、誤った後継者を選ばないようにしましょう。
まとめ
リーダーシップは、一握りの特別な人だけのものではなく、誰もが現場で磨き続けられるスキルです。本記事で紹介した理論や行動例を、自社のOJTや日々の1on1、振り返りの場と組み合わせることで、「人を動かす力」は着実に育成できます。まずは身近な一場面から実践し、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。

