フローチャートについて「ばく然とは知っているけど、具体的にどういったものか・どんな意味を持つのかは知らない」という方が意外と多いのではないでしょうか。
そこで今回はフローチャートで使用する記号の紹介を中心に、フローチャートの概要および実際に作成する場合に必要となるフレームワークや使い方などを、具体例を交えながら詳しく解説してきます。
なお、この記事でご紹介する内容に加え実際のフローチャート作成例を記載した資料が、下記バナーより無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
フローチャートとは、作業や業務の手順(流れ)を、図で表したもので、長方形やひし形などのような「記号(図形)」と線や矢印などを組み合わせて作成されるものです。業務フロー図と呼ばれる場合もあります。
複雑な業務プロセスを可視化し分かりやすくすることを目的とし、業務効率化や業務改善に活用することができます。
下記の記事でフローチャートの基本について、詳しく解説していますので、こちらもぜひあわせて参考にしてください。
■参考記事はこちら
【2021年12月更新】フローチャートとは?書き方のポイント5つや作成手順などについて、わかりやすく解説!(無料テンプレート付き)
フローチャートの記述方式はいくつかありますが、今回は代表的な「日本工業規格(JIS)」にて定義されている記述方式をもとに解説していきます。
代表的な記号にしぼり、使用頻度の高いものから順にご紹介していきますので、主要なものを優先的に覚えてみてください。(参考:日本産業標準調査会『情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号』)
まずは、フローチャートを作成する上でもっとも使用頻度の高い4種類の記号からご紹介します。これら4つの記号を覚えておくだけで簡単なフローチャートの読み書きができるようになりますので、ぜひ覚えてください。
名称 |
記号 |
内容 |
開始/終了 |
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フローの開始・終了を示します。 |
処理 |
|
業務のうち「処理機能」を表します。1つの記号につき、1つの処理を記載するのが基本です。 |
判断 |
|
作業工程のなかで、フローが複数に分岐することを示します。記号のなかに条件を入れます。 |
線、矢印 |
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フローの流れを示すものです。 |
次に、使用頻度はそれほど多くはないものの「覚えておくと便利」な記号3つをご紹介します。ぜひこれらの記号を使いこなしてフローチャートをより分かりやすく作成してみてください。
名称 |
記号 |
内容 |
準備 |
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準備(その後の動作に影響を与えるための動作)を示します。 |
手作業 |
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機械などによる処理ではなく、人手による処理を示します。 |
書類 |
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書類(人間が読める媒体上のデータ)を示します。帳票や計算記録などの書類データは、長方形の一片を波線で表現します。 |
線/矢印と似たような使い方をする2種類の記号をご紹介しておきましょう。
名称 |
記号 |
内容 |
破線 |
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2つ以上の記号の間の択一的な関係を表します。 |
省略 |
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図中で記号の種類や個数を示す必要がない場合に、フローの一部を省略していることを示します。線記号に合わせて使用します。 |
今回ご紹介した記号のほかにもさまざまな種類の記号がありますので、気になる方は「日本工業規格(JIS)」発行の「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号」を参照ください。
フローチャートは、その目的によって多くの種類があります。ここでは一般的に活用しやすいフローチャートを5つご紹介いたします。
<例:申請受付の流れ>
(弊社で図を作成)
業務の手順や流れを図式化したものを「ワークフローチャート」と呼びます。
比較的単純な作業や複数部門をまたがない作業の流れを示すのに適しており、たとえば小売業においては「開店作業フロー」「レジ打ち(会計)作業フロー」「品出し作業フロー」などが挙げられます。
フローの仕上がりは上記画像のようになりますが、作成する場合はいきなり書き始めるのはなく、まずは「作業1つ1つの洗い出し」から始めるのがポイントです。
具体的な作成の流れ・ポイントについては下記の記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
【2021年12月更新】フローチャートとは?書き方のポイント5つや作成手順などについて、わかりやすく解説!(無料テンプレート付き)
また、ワークフローチャートが完成したら、ぜひ「無駄な手順はないか」「改善できる余地はないか」という視点で業務改善に取り組んでみてください。ワークフローを可視化することは、業務効率化のチャンスでもあります。
実際に日本能率協会マネジメントセンターが発行している書籍では、ワークフローによって見つけられる問題点として次のようなものが挙げられています。
①業務順序・手順から見出される問題・・・手順のダブり、部門間のやり取りの多さ、過剰なチェック、手作業の多さ(システム化余地)など
②情報の流れ上の問題点・・・システム化余地、情報のダブり収集、情報の未活用など
③帳票類の流れから見出される問題点・・・過剰な承認行為、ムダな回覧ルートなど
④システム画面推移から見出される問題点・・・システム操作の使い勝手の悪さなど
(引用:株式会社日本能率協会コンサルティング著(2010)はじめの1冊!オフィスの業務改善がすぐできる本)
なお、業務改善については下記の記事でくわしく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
■参考記事はこちら
業務改善とは?目標の立て方やアイデア出しのためのフレームワークなど、効果的に進めるポイントを解説!
<例:異常事態時の対応>
(弊社で図を作成)
意思決定のために用いられるのが「意思決定フローチャート」です。
たとえば緊急事態やクレーム対応、組織の利益に関わる重要な決断をする状況では、複数の要因に基づいてあらゆる結果が想定されるでしょう。
上記のような場合、組織にとって最善の方法をとることが目標になりますが、いちいち全員で話し合いの場を設けていては効率が悪いものです。判断にスピードが求められる場合はなおさらでしょう。
そのため、あらかじめ意思決定フローチャートを作成しておくことでより良い方法を迅速に判断できるようになるのです。
ただし、意思決定フローチャートは完璧な判断を促すものではなく、想定を図式化したものだということは覚えておいてください。想定の結果はあくまで想定であり、フローチャート通りの手段をとっても、その時の最善の方法が今までと異なる場合ももちろんあります。
意思決定フローチャートを使う場合は、そのフローチャートの使い方や注意点を理解した上で、適切に活用しましょう。
(弊社で図を作成)
誰がいつ、どの作業を、どのような流れで行うかを図式化したものを「スイムレーン図」と呼びます。長方形が並んだ図が、競泳プールのレーンに見えることからこのように呼ばれています。
スイムレーン図は、複数の人、組織が絡む業務の流れを可視化するのに適しており、業務が複数の部門をまたぐ場合や、取引先やお客様が関わる業務などを示す場合に使われることが多いフローチャートです。
複数の部門をまたぐ業務といえば、たとえば「商品開発~販売までの流れ」や「商品の製造~梱包までの流れ」が挙げられます。「商品開発の流れ」や「商品製造の流れ」などを示すのに適したワークフローチャートよりも、比較的視野を広くもったフローチャートといえるでしょう。
((Alan B. Sterneckert著 重大事象管理 (Critical Incident Management))を参考に弊社で図を作成)
複数の部門をまたがり、やり取りされる文書の流れを図式化したものを「文書フローチャート」と呼びます。
これはAlan B.Sterneckert氏の著書「Critical Incident Management」の中で紹介されており、業務上やり取りされる文書について、部署から部署へ、企業から企業へと渡る複雑な文書の流れを可視化するために用いられます。
フローチャートの中では流れだけでなく「送り先」まで明確に示すことで、送り漏れや送信ミスの予防にも効果的でしょう。
ただし、文書フローチャートは文書の流れが見えても、その「目的」や「処理の内容」まで把握することはできません。そのため、次に紹介する「BPMN」フローチャートと組み合わせるのがおすすめです。(参考:南山大学 平野一平『内部統制における業務プロセスの文書化方法の提案と評価 』)
(引用元:BPMN 超入門を参考に弊社で図を作成)
BPMN(Business Process Model and Notation)は、簡単にいえば「複雑な業務フローを可視化するためのフレームワーク」です。主に部署をまたぐような大きな業務に対して利用し、複雑な業務の流れや部門間の関係性を可視化するために用います。
BPMNは「描画法」とも言われ、書き手は絵を描くように制作できるのが特徴、読み手は絵のように直観的に理解できるのが特徴です。また、左から右に流れるのもBPMNならではのポイントです。
複雑な業務フローを整理したいときや、複数の部署をまたぐ業務を整理するときにぜひ使ってみてください。
ここまで5つのフローチャートをご紹介しました。最後に、実際の業務場面から想像し「どのフローチャートを使うとよいか」を考えていきましょう。
お客様が来店してから退店するまでに、どのような流れで接客をしていくかを示すには「ワークフローチャート」を用いるのがおすすめです。
理由は「接客は1対1が基本であること」「複数の部門が関わる業務ではないこと」「基本となる動きが明確で、複雑な流れになることが考えにくいこと」が挙げられます。
<まとめ:接客の流れを示したいとき>
適切なフローチャート |
ワークフローチャート |
その理由 |
・接客は1対1が基本であること ・複数の部門が関わる業務ではないこと ・基本となる動きが明確で、複雑な流れになることが考えにくいこと |
ルーティーン業務については、1つの部門内で業務が収まる場合は「ワークフローチャート」を、複数の部門間を業務がまたがる場合は「スイムレーン図」を用いるとよいでしょう。
<まとめ:ルーティーン業務の流れを示したいとき>
適切なフローチャート |
①ワークフローチャート ②スイムレーン図 |
その理由 |
①比較的単純な作業になることが想定できる →1つの部門内で業務が収まる場合は「ワークフローチャート」 ②複雑な業務が想定される →複数の部門間を業務がまたがる場合は「スイムレーン図」 |
緊急時の流れを示すには、「意思決定フローチャート」が有効です。
緊急時には、普段の業務に比べて迅速かつ正確な判断が求められます。状況に応じて多くの判断をしていく必要のある状況だからこそ、意思決定フローチャートで大きく枠を作っておくことで迅速な判断を促すことができるでしょう。
ただし前述したように、意思決定フローチャートは完璧な判断を促すものではありません。フローチャートによる結果はあくまで想定の結果です。過去と全く同じ状況が二度と来ないように、その時の最善の方法も過去と全く同じになることはありません。意思決定フローチャートを使う場合は、そのフローチャートの使い方や注意点を理解した上で、適切に活用することが大切です。
<まとめ:緊急時対応の流れを示したいとき>
適切なフローチャート |
意思決定フローチャート |
その理由 |
・緊急時は迅速かつ正しい判断が求められる |
上記ではフローチャートの記号や種類についてくわしく解説してきましたが、実際のところ
「フローチャートについては分かったけど、実際作るのは面倒そう…」
「フローチャートを作るときのマニュアルがほしい」
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、この記事でご紹介した内容に加え、実際のフローチャートが各段に作りやすくなる「フローチャートテンプレート」を含んだ資料をご用意いたしました。
エクセル形式で使いやすい上に「無料」でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
業務の流れを可視化する「フローチャート」。
今回はフローチャートについて、その概要をはじめ、作成に用いる記号の種類や意味・使い方などをくわしく解説いたしました。
フローチャートには、今回ご紹介した5つのフローチャート以外にも、多くの種類が存在しています。それぞれに特徴があり、適したフローチャートを選択するのが、フローチャート作成の第一歩でしょう。
「フローチャート、いろいろありすぎてどれを使えばいいか分からない…」
と困ったときは、ぜひこの記事をもう一度読み返してみてください。無料のテンプレートが貴社のフローチャート作成の助けになれば幸いです。