社内マニュアルを動画化するポイントとは?動画マニュアルのつくり方や活用事例を紹介
リモートワークを推進する企業が増えた現代。働き方の多様化および業務の効率化が実現されていく一方で、人材育成の適応に苦戦するケースが少なくありません。
そのようなときに有効なのが「動画マニュアル」です。本記事では、動画マニュアルの作り方や作成時に意識すべきポイント、活用事例などを具体的に解説していますので、社内マニュアルの改善に取り組んでいる方は、ぜひお役立てください。
業務マニュアルに関する企業の課題
業務を効率よく正確に行うため、多くの企業が業務マニュアルを導入しています。しかし、従業員がマニュアルの効果を十分に発揮できているケースは多くありません。
引用元:【2024年度実施】業務マニュアルの使用状況とイメージの調査レポート
「株式会社フィンテックス」が2024年に行った調査によると、現在使用しているマニュアルに対し50点をつけた人は全体の27.6%。多くの人々が、今あるマニュアルの実用性を実感できていないことがわかります。
引用元:【2024年度実施】業務マニュアルの使用状況とイメージの調査レポート
具体的な不満としては、マニュアルが最新の状態でないことや、わかりやすくする工夫が見られないことなどが挙げられました。
それらの問題を解消できるのが動画マニュアルです。動画化は、より従業員にとって利便性の高いマニュアルを作ることに繋がるといえるでしょう。
社内マニュアルを動画化するメリット
現在さまざまな情報の電子化が進められており、マニュアルも電子化、動画化する企業が増えています。
具体的にどのような良い効果がもたらされるのでしょうか。考えられる5つのメリットについて解説していきます。
メリット1.文章や図で伝わりにくい内容を説明できる
マニュアルで作業について解説する際は、読み手が理解できるように記載することが最も重要です。しかし、文章や図での説明には限界があります。
その点、動画の場合は表現の幅が広く、音声と映像を使って正確に情報を伝えることができます。
実際に作業を行う様子を映像にすれば、閲覧者は具体的なイメージを掴めますし、テロップを付けて解説を補足することも可能です。接客時の声のトーンや細かい表情の変化など、文章やイラストではわかりにくい情報も伝えられます。
動画マニュアルは、伝えたい人に、伝えたい情報を具体的かつ正確に伝達する手段として有効なのです。
メリット2.場所・時間に縛られずマニュアルを確認できる
社内マニュアルは、基本的に社外への持ち出しが禁止されています。紙に印刷されたマニュアルの場合、閲覧場所が細かく決められていることも多いです。
一方、動画マニュアルはどこでも閲覧することができます。セキュリティ対策は必要ですが、それでも従業員の都合の良いタイミングでマニュアルをチェックできるというのは、業務遂行における大きなメリットといえます。
トラブルが発生した際など、マニュアルがいつ必要になるかは予測できないものです。また、業務に取り組みながら、何度も見返したい場合もあります。
そのようなとき、場所や時間に縛られることなく閲覧できるマニュアルがあると非常に便利といえるでしょう。
メリット3.コストの削減
紙に印刷するマニュアルは、印刷代や郵送料がかかります。そして、マニュアルを更新するたびに、それらの費用がかさんでいきます。
動画マニュアルの場合は、システム整備や撮影機材などを揃える必要はありますが、配布・更新には、ほぼ費用がかかりません。ランニングコストを低く抑えることができるのです。
また、動画マニュアルを上手く活用すれば、従業員への教育を効率化できます。業務の取り組み方やルールをマニュアルで説明することで、結果的に人件費の削減にも繋がるでしょう。
メリット4.外国人従業員にも伝わりやすい
近年は、外国人従業員を雇用する企業が増えています。社内マニュアルの内容を理解できない従業員が出てくる可能性もあるでしょう。
動画マニュアルであれば、日本語の読み書きができない従業員でも、映像を観て学べます。作業を行う様子を映した映像やアニメーションを活用することで、言語の壁を越えて情報を伝えられるのです。
日本語を流暢に話せない外国人従業員が入社したばかりのときでも、統一したオペレーションを教育できるでしょう。
メリット5.スピーディーにマニュアルを更新・共有できる
社内マニュアルは、常に最新の状態に保つため、継続的に更新することが重要です。印刷形式のマニュアルの場合は、内容を更新するたびに印刷・郵送する必要があります。それに対し、動画マニュアルはオンラインで瞬時に共有できます。
専用のプラットフォームなどを用意しておけば、動画をアップロードするだけで更新が完了します。書類の送り漏れや、データの送信漏れが発生する心配もありません。
手軽に、かつスピーディーに更新でき、最善のマニュアルを従業員に提供できるでしょう。
動画マニュアルのデメリット・注意点
マニュアルの動画化で失敗しないためには、デメリットや注意点も把握することが大切です。どのようなリスクがあるか、どのような準備が必要になるか改めて確認しておきましょう。
デメリット1.撮影・編集に時間がかかる
動画マニュアルは、データを印刷・郵送する必要はないですが、撮影や編集に時間がかかります。特に、担当者に動画作成スキルがない場合は、多くの時間と労力を要するでしょう。
とはいえ、従業員1人1人に細かく指導するより、動画マニュアルを見せる方が効率的です。従業員が理解するまで何度も教え直す手間を考えれば、動画作成にコストをかける方が生産性が高いといえるでしょう。
デメリット2.撮影機材などの設備が必要
動画マニュアルを作成するには、動画撮影や録音を行うための機材が必要です。最近では、スマートフォンでも手軽に動画を撮影できますが、クオリティの高い動画を自由に作るためには、専用の機材とソフトフェアを用意する必要があります。
特に、実写撮影を行う場合や、ナレーションを録音する場合は音質の良いマイクが必要です。また、撮影データを管理するためのシステムや、動画マニュアルを配信するためのプラットフォームなどの導入にも費用がかかります。
もちろん安く済ませることも可能ですが、実用性が高いマニュアルを手軽に作成・更新できる環境へと整えるには、それなりにコストがかかるので注意が必要です。
デメリット3.情報の検索が難しい
動画マニュアルには、知りたい情報をピンポイントで探すのが困難という問題点があります。
紙のマニュアルであれば、目次にあるページ数を頼りに探せますが、動画の場合は「どこに」「どの情報があるか」がわかりにくいです。閲覧者が「不明点が浮上したので確認したい」「内容を忘れたので見返したい」というとき、動画を始めから再生し、右往左往してしまう恐れがあります。
しかし、動画をカテゴライズしたり、チャプターを作成したりなど、工夫次第でその問題は解決できます。デメリットを踏まえて、わかりやすく活用しやすい動画マニュアルを作成するよう意識しましょう。
社内動画マニュアルの作り方
動画マニュアルの作成は、外部の企業に委託することもできます。しかし、費用を抑えたい場合や、自由に作成・編集したい場合など、自社で作成したいこともあるでしょう。
そこで、ここからは動画マニュアルを作成する流れについて解説していきます。
①現状把握
マニュアルの目的と方向性を定めるため、まず現状調査を行います。
- 企業・組織が抱えている課題は何か
- どの業務でどのような問題が発生しているか
- 現在利用しているマニュアルの問題点
- 従業員がどのような悩み・不満・不安を抱えているか など
アンケートや関係者へのインタビューにて、上記のような項目を探り、問題点および原因の追究を行います。取り組むべき課題が複数挙げられた場合は、緊急度と重要度を基準に優先順位をつけましょう。
②企画
次に、調査をもとに動画マニュアル作成の企画を練ります。企画段階では、主に以下のような内容を決めます。
- 目的(何のために動画マニュアルを作成するか)
- 制作期間
- 運用開始時期
- 作成方法
- 内容・テーマ
- 目標(動画マニュアルで、どのようになることを目指すか) など
闇雲に取り組んでも、満足のいく動画マニュアルを作成することはできません。時間とコストを無駄にしないため、入念に計画を練ることが大切です。
③構想
マニュアルの方向性が定まったら、次に動画の構想を練ります。具体的には、以下のような項目を検討します。
- 具体的な内容、動画に組み込む情報
- 誰が何を/誰を撮影するか
- 撮影場所
- 動画の長さ
- どのような手法で伝えるか(アニメーション、実写、ナレーション、テロップ) など
これらを明らかにすることで、動画作成に必要な準備が明確になります。準備および作成は、基本的に複数人で行うものなので、決定した内容や手段は可視化することが重要です。
④台本の作成
次に、台本を作成します。テロップや図表、出演者のセリフと動き、ナレーションなどの内容を具体的に設定します。
台本は、撮影・編集の土台となるものです。台本を見ながらマニュアル制作を進めていくこととなるため、具体的かつ正確に作成する必要があります。
正しい情報を記載することを前提として、動画の内容が閲覧者にきちんと伝わるかどうかも重要です。シミュレーションを行い、第三者の意見を取り入れながら台本を作成しましょう。
⑤撮影準備
企画・構想をベースに、撮影の準備を行います。動画の内容と撮影・編集方法にもよりますが、例えば以下のような準備が必要です。
- 撮影機材
- 動画編集ソフト
- データ管理・発信・閲覧システム
- 撮影会場
- 台本の配布・共有
- 関係者のスケジュール調整 など
従業員の作業場で撮影する場合は、特にスケジュール管理が重要です。業務に支障が出ないよう調整しましょう。
また、屋外で撮影する場合は、天候にも注意が必要です。晴れた日の日中に撮影を完了させるため、天候と撮影スタッフのスケジュールに配慮しましょう。
⑥撮影・編集
準備が整ったら、いよいよ撮影です。
撮り直しを少なくするため、できれば同じシーンを何度か撮影・録音するのがおすすめです。撮影時に問題ないと思っても、後から見返した際に不十分と感じることがあるため、データは複数作成しておきましょう。
また、ナレーションを録音する際は、1分当たり400文字程度を目安にします。動画は一時停止できるとはいえ、閲覧者にとって聞き取りやすい・わかりやすい音声を意識することが大切です。
撮影・録音後は編集を行い、無駄な部分はカットします。エフェクトや図・イラスト、スライド、アニメーションなども活用することで、閲覧者の注意を引く動画を作成できます。
ただし、装飾しすぎると、伝えたい情報が伝わらなくなる恐れがあります。主張したい部分を引き立たせるため「やりすぎ」に注意しましょう。
⑦配布・振り返り
最後に、完成した動画マニュアルを配布します。メールでデータを送信するほか、専用のプラットフォームにアップロードする方法もあります。どの方法で配布するにしろ、従業員に閲覧方法と活用方法を説明することが大切です。
また、配布後はアンケートやインタビューを行い、マニュアルに対する意見や感想を調査します。実際にマニュアルを使用するのは従業員にとって、本当に実用的か、改善すべき点はないか確認しましょう。
実用性の高い動画マニュアルを作成するポイント
マニュアルを作成したものの、なかなか活用してもらえないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。実際に「株式会社フィンテックス」が行ったアンケート調査によると、マニュアルは「1年以内には見ない」と答えた人は全体の約2割にも上ります。
引用元:【2024年度実施】業務マニュアルの使用状況とイメージの調査レポート
内容や使用用途にもよりますが、閲覧頻度が低いマニュアルは実用性が高いとはいえません。
では、どうすれば効果的なマニュアルを作成できるのでしょうか。以下の5つのポイントについて見ていきましょう。
ポイント1.動画マニュアルに必要な4つの基本要素
動画マニュアル制作において重要なのは「構想」と「企画」です。とはいえ、どのように組み立てていけば良いか迷うこともあるでしょう。
そこで役立つのが、動画マニュアルの4つの基本要素です。
- 目的
- 達成基準
- 生産性基準
- 手順
「目的」とは、業務の目的のことです。お客さまや取引先、同僚にどのような影響を与える業務なのかを明確にすることで、動画マニュアルで「示すべきこと」が定まります。
「達成基準」は、業務の質を示す指標です。どこまでやれば良いのか、どうなることを「合格」とするのかを動画マニュアルにて示すことで、業務を標準化できます。
「生産性基準」は、作業を何分・何時間でこなすべきかを示す要素。マニュアルにルールを記載することで、生産性の高い業務遂行を実現できます。
最後に、業務の手順や注意点、ポイントに関する記述もマニュアルには必要です。
これら4つの要素は、形式問わずどのマニュアルにも求められるものです。基本要素をもとに作成することで、必要な情報が漏れなく記載されている、実用性の高い動画マニュアルを完成させることができます。
ポイント2.カテゴリー別に仕分けする
「知りたい情報を見つけるのが難しい」というデメリットをカバーするため、動画マニュアルはカテゴリー別に仕分けするのがおすすめです。
業務ごとに仕分けしたり、業務と業務以外で分けたりすることで、閲覧者が求める情報をピンポイントで見つけられるようになります。探し回る時間を短縮でき、効率的です。
またマニュアル更新時も、動画が細かく区切られているとスムーズに編集できます。一から作り直す必要がなく、マニュアルの一部のみを変更するだけで手軽に内容を更新できるのです。
閲覧者と作成担当者、両者の時間を無駄にしないため、細かく仕分けしてマニュアルを保管しましょう。
ポイント3.閲覧者の視点に立って作成する
動画マニュアルを実際に利用するのは、閲覧する側の従業員です。そのため、閲覧者の視点に立って作成する必要があります。
例えば、専門用語は閲覧者の混乱を招く恐れがあるため、マニュアルでは使わないようにします。業務に関する知識が全くない人でも理解できるよう、言葉遣いに配慮することが大切です。
実写撮影ではカメラワークにも注意が必要です。必要な情報が伝わるように被写体との距離、角度に気を付けて撮影しましょう。
また、長すぎる動画は閲覧者の集中力を欠くため、動画の尺は短めにするのがおすすめです。2〜5分以内に収まるよう工夫しましょう。
ポイント4.継続的にマニュアルを更新する
従業員は、マニュアルが常に最新の状態であることを望んでいます。よって、マニュアルは定期的にチェックを行い、必要に応じて更新し続ける必要があります。
例として、以下のような項目をチェックすると良いでしょう。
- 使用時に不便に感じることはないか
- マニュアルで紹介されている取り組み方は最善か
- 作業環境、人員配置に適した取り組み方か
- 情報は最新か など
「株式会社良品計画」を業績向上へと導いた松井忠三氏は、マニュアル更新の重要性について以下のように述べています。
一年に一回まとめて改善点を報告し、検討しているようでは対応が後手後手に回ってしまいます。目の前にある問題点には、今対処する。その意識を持ってもらうためにも、マニュアルは毎月更新していくのがよいのです。
引用元:松井忠三(2013)『無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい』
動画の撮影や編集には時間がかかるため、頻繁に更新するのが難しい場合もあります。しかし、数ヵ月、数年と、情報が古いまま放置されることのないよう、定期的にチェック・改善する仕組みを作りましょう。
ポイント5.作成メンバーへの教育を行う
マニュアル制作に向けてプロジェクトチームを立ち上げる際は、チームメンバーに教育を行うことで、より効率よく、実用性の高いマニュアルを作成できます。
教えるべき内容はさまざまですが、例えば以下のような項目が挙げられます。
- マニュアルの位置づけ
- マニュアルを作る目的
- 会社の基準や方針
- マニュアルに期待できる効果
- 作成方法
- 活用方法 など
事前に知識を身につけてもらうことで、マニュアル制作をスムーズに進めることができます。また、チームメンバーのモチベーションアップにも繋がるため、事前準備として研修を実施しましょう。
動画マニュアルの活用例
動画マニュアルは、人材育成の効率化、組織の団結力向上と、工夫次第でさまざまな効果が得られます。具体的にどのように活用できるのか、「shouin+」を利用した以下の3つの事例を見てみましょう。
活用例1.研修教材として活用し担当者の負担を軽減
動画マニュアルは、研修の教材として活用することも可能です。業務に関する知識を動画で学んでもらうことで、教育担当者・研修担当者の負担を軽減できます。
「株式会社松竹マルチプレックスシアターズ」は、専用プラットフォーム「shouin+」を利用して動画マニュアルを導入したところ、約4時間分の研修負担を軽減することに成功しました。
当社の取り組みで注目すべきは、チェックテスト機能やクイズ機能を活用し、内容の理解度を上げる工夫を行った点です。また、受講者が自らどの動画を見るべきか判断できるよう、コーストレーニングを導入し、研修担当者の負担を軽減しています。
動画マニュアルを人材育成の効率化に役立てるサポートを得られるのが、専用プラットフォームを使うメリットです。
■shouin+導入事例
マニュアル電子化で印刷コストと研修時間を大幅削減し、現場の業務効率化を実現!|株式会社松竹マルチプレックスシアターズ
活用例2.新人教育の標準化と効率化
飲食店や小売店など、本部と従業員の作業場が離れている場合は、現場の社員が教育を担当するのが一般的です。その際「教え方がバラつきやすい」という問題が発生しやすいですが、動画マニュアルであれば統一したオペレーションを教育できます。
21店舗の焼肉店を経営する「株式会社サング」は、新人教育に動画マニュアルを導入し、人材育成における生産性の向上を実現しました。動画を使って効率よく予習・復習できる点に、メリットを感じているそうです。
以前、当社が抱えていた「従業員が動画を視聴しない」という問題に対しては、「shouin+」の視聴管理機能を活用して解決。動画マニュアルを観たかどうかが明らかになったことで、OJTの効率が改善されたそうです。
■shouin+導入事例
動画マニュアルの一元管理でOJTの効率化とコストカットを実現|株式会社サング
活用例3.企業理念などの情報共有ツールとして活用
動画マニュアルは、業務に関する知識を学ぶためだけでなく、情報共有ツールとしても役立ちます。
「DCM株式会社」は、接客マナーや商品知識など、さまざまな情報を伝達するツールとして動画マニュアルを活用しています。業務に直接関係する内容だけでなく、経営理念や働くうえでの心構えなど、一社員として知っておいてもらいたい情報も動画で発信し、共通認識の浸透に取り組んでいます。
企業理念についての説明は、社長が自ら語ることで従業員にインパクトを与えることができます。そのようなことが実現できるのも、動画マニュアルのメリットといえるでしょう。
■shouin+導入事例
5社統合で従業員数が約2万人に。LMSを活用して、オペレーションの平準化と学習状況を可視化|DCM株式会社
まとめ
動画マニュアルは、定期的に更新し、改善し続けていくものです。そのため、初めから完璧に作ろうとする必要はありません。
まずは作成してみることが大切です。本記事で紹介した作り方やポイントを参考に、現状調査や企画を練るところから始めてみましょう。