近年、研修の新しい形として注目を集める「eラーニング」は、これまでの研修とは違った多くのメリットがあります。
ところが実際には、「eラーニングのメリットって具体的に何があるの?」「コスト面はどんなメリットがあるの?」「メリットだけじゃなくてデメリットはある?」と分からないことも多いと思います。
そこでこの記事では、eラーニングを導入するメリット・デメリットについてくわしく解説していきます。また、とくに流通小売業においてメリットを発揮する点についても、具体例を交えてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
eラーニング(e-Learning)とは、「デジタルデバイスやインターネットを利用した学習形態」のことをいいます。
たとえば、次のような学習はeラーニングといえるでしょう。
このように、パソコンやスマートフォンといったデジタルデバイスあるいはインターネットを活用しながら学習を行うことを、広くeラーニングと呼びます。
なお、eラーニングについては下記の記事で、実際の導入方法から運用方法までくわしく解説しています。ぜひ参考にしてください。
■参考記事
ラーニングとは?メリット・デメリットから企業研修での効果的な活用方法までわかりやすく解説!
eラーニングのメリットには、流通小売業の課題をカバーしてくれる部分が多くあります。
ここでは、eラーニングと流通小売業の相性の良さについて、次の5つの理由をもとに解説していきます。
<流通小売業でeラーニングが有効な5つの理由>
くわしく見ていきましょう。
流通小売業界には、百貨店、コンビニエンスストア、スーパー、ドラッグストアなど全国に多数の店舗を構える企業が少なくありません。
このように同じ企業内でも全国のあらゆる土地で勤務している社員が多いと、1つの場所に集まって研修をするのは困難でしょう。
とくにコロナウイルス感染拡大以降は集合研修の形がとりにくくなったと感じている企業が多く、実際にeラーニング戦略研究所が行った調査では、74.7%もの企業が「コロナで新入社員研修が実施できなくなった」と回答しています。
これに対し、eラーニングであれば場所に縛られることなく、コロナウイルス感染拡大を懸念する必要もなく研修を実施できるでしょう。
(参照元:eラーニング戦略研究所「《調査報告》6割以上の企業がコロナ後にオンライン研修を“緊急導入”~新入社員教育を中心にあらゆる研修がオンライン化。見えてきた課題と今後の展望とは~」)
流通小売業界では、慢性的な人手不足が課題となっています。
実際に帝国データバンクが2021年に行った調査によると、従業員が不足している上位10業種のうち、3位に総合スーパーや百貨店などの「各種商品小売(45.2%)」、5位に「飲食料品小売(38.8%)」、10位に「専門商品小売(30.3%)」が挙げられています。(参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」)
ところが、eラーニングであれば指導者(人手)を確保する必要がありませんので、慢性的な人材不足の環境下でも無理なく研修を行うことができるでしょう。
このように、人手不足によって「社員研修の指導者を確保する余裕がない…」といった業界においては、eラーニング活用がおすすめです。
店舗の多い流通小売業では、店舗ごとの研修・OJTでは「指導者によって教え方が変わる」「店舗によってやり方が変わる」といった事態が少なくありません。
しかし、これが当たり前になるのはとても危険なことです。店舗によって研修内容に差があることは、その企業のサービス(品質)をゆるがす要因となります。顧客の信頼や企業のブランド価値を失うことにもつながりかねません。
そのため、全員が同じ内容で研修を受けられるeラーニングが有効なのです。研修内容を統一できるeラーニングであれば、店舗間のサービス品質の平準化につながるでしょう。
全国に多くの店舗をもつ流通小売業では、研修の回数が多くなることもしばしば。「研修は複数回で実施するため、莫大なコストがかかる」と困っている企業が多いのではないでしょうか。
しかし、これをeラーニングを用いた研修に置き換えるとどうでしょう。
eラーニングは場所に縛られない方法ですので、これまでにかかっていた研修会場の会場費をはじめ、受講者分の交通費、宿泊費など研修に伴う莫大なコストを削減できるのです。
さらに、eラーニングは一度制作してしまえば少ない費用で継続的に活用できる学習方法です。これまでに研修に充てていた費用を一度eラーニングの導入に充てることで、継続的なコスト削減が実現できるでしょう。
なお、下記の記事では企業内のコスト削減について具体例を交えながら解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事
コスト削減とは?種類、メリット、削減方法、事例をわかりやすく解説!(テンプレート付き)
流通小売業は、人の入れ替わりが激しい業界です。実際に厚生労働省が2020年に公表したデータによると、業界別の新卒3年以内の離職率は小売業が第4位(39.3%)に挙がっています。
(参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成 29 年3月卒業者の状況)を公表します」)
そして、人の入れ替わりが激しい現場の声としては「新しい人が入ってきたら、また1から教育をしないと…」「新人教育に充てられる時間を多くは確保できない…」というのが本音ではありませんか?
そこで有効なのがeラーニングです。eラーニングであればOJTのように指導者を必要とすることなく、新人1人で研修が完結します。人の入れ替わりが激しい現場でも、今いるスタッフに無理をさせることなく新人教育を行えるでしょう。
ここからは、全体的な視点からeラーニングのメリット・デメリットについて解説していきます。受講者視点と管理者視点に分けて見ていきましょう。まずは受講者視点のメリットからご紹介いたします。
<【受講者視点】eラーニングのメリット>
NTTコムリサーチが2001年に行った調査では、eラーニング利用のメリットとして「時間や場所」をポイントに挙げた回答が1位~3位を独占しています。これだけを見ても、受講者がいかに「時間の使い方」を重視しているかが分かりますね。
eラーニングは、インターネット環境とデジタルデバイスさえあれば、いつでも・どこでも手軽に学習ができる、自由度の高い学習方法です。
むしろ、インターネット上のコンテンツを自ら拾って学習する「ソーシャルラーニング」が当たり前になった現代では、もはや時間と場所に縛られずに学習できることはごく当然のことかもしれません。
受講者にとってのeラーニング最大のメリットが「時間や場所にとらわれない」点であることは間違いないでしょう。
<eラーニング利用のメリット>
(参考:NTTコムリサーチ「ビジネスにおけるEラーニングの利用に関する調査」)
研修現場でよくあるパターンとして、「指者によって教え方が違うことがあり、どれを信じていいか分からない」「違う店舗に配属されたとき、前の店舗とは違うやり方で指導されて困惑した」「『これくらい』のような感覚的な言葉で指導され、感覚を掴むのに苦労した」このような経験を実際にしたり、現場の声を聞いたりした経験が、一度はあるのではないでしょうか?
OJTなどのオフライン研修で起こりがちなことではありますが、受講者の立場では指導内容が統一されていないと不安になるものですよね。
eラーニングはその点、受講者全員が同じ内容で学習できますので、そういった事態を回避できる学習方法ともいえるでしょう。
新人研修などではとくに、学習内容のほとんどが初めて学ぶことだと思います。研修では多くの方が「メモを取る」ものですが、正直、手元のメモだけでは教わったことのすべては書き留めきれていないことでしょう。
また、書きこぼしてしまった内容を思い出そうとしてもできなかったり、「何度も教わるのは気が引ける…」と再度教わることを申し訳なく感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
eラーニングはその点、同じ内容を何度も繰り返し学習できますので、学習内容を取りこぼす心配はありません。自宅に帰ってからこっそり学習内容を見返すことや、テスト形式で自分の習熟度を測ることもできますね。
前述したNTTコムリサーチによる調査では、eラーニング利用のメリットとして「進捗管理」に関するメリットも挙げられています。時間や場所に関するメリットとともに1位にランクインしており、学習を「自分で管理」できることにメリットを感じる方が多いようです。
企業研修などではとくに会社から言われるがまま「受けさせられる」ことも多いと思いますが、受講者の多くは「自分主体で学ぶ」姿勢を求めているのかもしれません。
<eラーニング利用のメリット>
(参考:NTTコムリサーチ「ビジネスにおけるEラーニングの利用に関する調査」)
続いて、管理者視点でのeラーニングのメリットを見ていきましょう。
<【管理者視点】eラーニングのメリット>
前述したように、OJTなどのオフラインの研修では「指導者によって教え方が変わる」「店舗によってやり方が変わる」といった問題が発生することが少なくありません。
これは、サービスの品質をゆるがし顧客の信頼や企業のブランド価値を失うことにもつながる可能性のある問題ですので、管理者側としてはなるべく避けたいポイントでしょう。
その点eラーニングであれば、全員が同じ学習内容で研修を受けられるため、これらの心配は要りません。研修の質を気にすることなく受講者全員に正しい学習内容を提供できるのは、管理者側としても大きな安心感が得られるでしょう。
オフラインで研修を行う場合、講師をはじめ、研修をセッティングするための人員や受講者の引率者など何かと人手が必要になります。
人手不足の現場ではとくに、「教育に人員を使う余裕なんてない…」という声も少なくないでしょう。
その点eラーニングでは、講師等の人員を確保する必要がありませんので、慢性的な人材不足の環境下でも無理なく研修を行うことができます。
eラーニングは、一度制作してしまえば継続的に繰り返し活用できるのが大きな魅力です。
オフライン研修では「同じ内容の研修を毎年行っている」といった企業が多いと思いますが、それでは少し効率が悪いと感じたことはありませんか?会場までの交通費、研修にかかる費用などを考えると莫大なコストがかかっているのが現実でしょう。
その点eラーニングであれば、繰り返し活用することで毎年かかっていた研修費用のコストを削減できます。実際に、eラーニング導入により研修費の大幅な削減に成功した事例があります。
総合ディスカウントストアを全国展開するミスターマックス・ホールディングスでは、コスト削減のためeラーニングを導入しました。導入前はオフライン研修費の約3~4割を交通費が占めていましたが、導入後は交通費の大幅な削減に成功。その分をさらなる教育投資へ充てることができたのです。
■参考記事
導入事例:ノウハウ動画で社員研修にかかるコストを効率化し、売上単価を向上!
オフライン研修の場合、受講者個人の学習状況や習熟度は、レポートを書かせたりテストを受けさせるなどをして管理するのが一般的でしょう。
ですが、一人ひとりのレポートの確認やテストの採点を行うにも限界があります。受講者の人数が増えるほど、時間的コストがかかるものです。
その点eラーニングは学習の進捗状況をはじめ、習熟度テストの採点から結果までもシステムで一括管理が可能です。余計な作業や管理に時間が取られることはありません。
続いて、受講者視点のデメリットをご紹介していきます。
<【受講者視点】eラーニングのデメリット>
eラーニングの受講にはインターネット環境が必要になります。
受講者によってはインターネット環境がない場合や、環境はあっても通信量に制限がある場合など、受講に適した環境でない可能性があります。
これらの場合、会社のオフィスにインターネット環境を整備したり、受講者に通信可能なデジタルデバイスを配布したりするなどの対策方法を検討するとよいでしょう。
前述したNTTコムリサーチによる調査では、eラーニングのデメリットの第1位に「一人でパソコン等に向かうため緊張感が保てない」が挙げられています。
<eラーニング利用のデメリット>
(参考:NTTコムリサーチ「ビジネスにおけるEラーニングの利用に関する調査」)
eラーニングのメリットには「時間や場所を選ばずに学習できる」点がありますが、これと同時に自己管理といった責任が生まれるのは仕方のないことかもしれません。
そのため、管理者側はチューターやメンターといった人員を用意し、受講者のサポートを行うとよいでしょう。具体的には、書籍「eラーニング導入ガイド」において次のように書かれています。
チューターやメンターは、主に、学習者への添削指導、質疑応答、学習修了のための学習促進などを行います。チューターやメンターの役割は、各社独自で決めている点もありますが、一般的には、チューターは学習内容に対する質問の回答や指導をする人になります。メンターは学習者の学習動機づけやキャリアパスを支援する人です。
(引用:日本イーラーニングコンソシアム編(2004)『eラーニング導入ガイド』東京電機大学出版局)
eラーニングは基本的に個人での受講となるため、社員同士のコミュニケーションが生まれにくい点が課題となります。
コミュニケーションの機会が減ることで受講者が孤独感を感じやすくなったり、学習等でつまづいた時に相談しにくくなったりするなどのリスクが考えられるでしょう。
対策方法としては、前述したように、チューターやメンターといった人員を用意する方法や、受講者1人ひとりに教育担当者を配置するなどの方法が有効です。
管理者視点からみたeラーニングのデメリットは、主に次の2つです。
<【管理者視点】eラーニングのデメリット>
eラーニングはオンライン上で学べるメリットがある反面、OJTのような「実践形式の研修」にならない点がデメリットです。机上で知識や方法を身につけても、実践の場でいきなり再現できる人はあまりいないでしょう。
そこで、このデメリットを補う方法として「eラーニングに遠隔式のロールプレイング機能を備える」やり方があります。受講者が動画を撮影し、その動画をもとに管理者がフィードバックを行えるといったシステムです。受講者と管理者の両者が時間や場所の縛りなく対応できるため、より気軽に行えるOJTといってもよいでしょう。
またこの形式は「反転授業」といって、eラーニングを受講(インプット)した後に実践形式の研修(アウトプット)を実施することで、より高い学習効果が得られることがあらゆる研究で明らかになっています。くわしくは下記の記事で解説していますので、ぜひ参考までにご覧ください。
■参考記事
反転授業とは?研修に導入するメリットや失敗しない実践方法について、事例からわかりやすく解説!
eラーニングは、導入からコンテンツ制作まで何かと手がかかるものです。2021年に実施されたNTTコムリサーチによる調査の中でも、オンライン研修に対する不安要素として「研修運営における担当の負担が大きい」点が挙げられています。
(参考:MON株式会社「コロナ禍における企業研修に関する調査」)
そしてこれらの負担を解消するには、eラーニングの「外部委託」がおすすめです。eラーニング導入からコンテンツ制作、継続運用まですべてのサポートを行ってくれますので、「導入の方法が分からない…」「うまくできなかったらどうしよう」という不安も解消してくれるでしょう。いざ問題が発生したときに相談できる人がいる点も安心ですね。
なお、eラーニングの導入からコンテンツ制作までの実施方法については、こちらの記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事
ラーニングとは?メリット・デメリットから企業研修での効果的な活用方法までわかりやすく解説!
それでは最後に、eラーニングの活用事例を4つご紹介しましょう。
内定者研修をeラーニングで実施。内定期間で基礎レベルの底上げに成功!
紳士服・婦人服および雑貨等の商品を販売するセレクトショップを展開する株式会社ユナイテッドアローズでは、内定者教育の効率化を課題に感じていました。対面での研修では時間に限界があり、十分な教育を行えていなかったのです。
そこでユナイテッドアローズでは、地方にいる社員でも学習ができるよう、eラーニングの導入を検討することに。なかでも、動画コンテンツが扱える「shouin+」が気になり、とくに使い勝手の良さとデザイン性の高さが決め手となり、導入を決めたそうです。
すると、導入後には具体的な業務内容や知識、接客スキルの学習までしっかりと行うことができるようになり、従来のやり方に比べて基礎レベルの底上げに成功。
とくに「動画レビュー機能」では、笑顔の作り方や服の畳み方といった課題に対して動画を投稿してもらうことで、内定者の成長を遠隔でも感じることができたといいます。
■詳しくはこちら
導入事例 株式会社ユナイテッドアローズ|クラウド型eラーニングはshouin+
eラーニング導入で、新人スタッフのモチベーションアップやメンタルフォローを実現!
美容脱毛サロンを全国に展開する株式会社ミュゼプラチナムでは、従来の新人研修体制に限界を感じていました。講師から新人に対する一方的な研修や座学では人材育成に限界があること、また新人研修の進捗管理の難しさにも課題を感じていたのです。
そこでミュゼプラチナムでは、クラウド型eラーニングサービスの導入を実施しました。すると、研修内容をはじめ、進捗管理がスムーズに行えるようになったのです。新人スタッフの様子が把握できるようになったことで、スタッフのモチベーションアップやメンタルフォローにもつながりました。
■詳しくはこちら
導入事例 株式会社ミュゼプラチナム|クラウド型eラーニングはshouin+
eラーニングによる動画コンテンツ導入でコストを削減。売上単価は向上!
総合ディスカウントストア「MrMax」を全国展開するミスターマックス・ホールディングスは、「教育訓練費の効率化」といった課題を抱えていました。研修費の約3~4割が交通費に充てられており、研修時間や内容に制限がかかっていたのです。
そこでミスターマックスでは、「クラウド型eラーニングサービス」を導入し、研修のオンライン化を図りました。すると、期待していたコスト面のみならず、次のようなあらゆる効果が得られたそうです。
<クラウド型eラーニングサービス「shouin+」導入によって得られた効果>
結果として、研修コストの削減は大成功。ある店舗では「家電の売り上げ増加に向けて、事前準備に取り組めた」という報告もあり、コスト削減のみならず売上にもつながる結果となりました。
■詳しくはこちら
導入事例 株式会社ミスターマックス・ホールディングス|クラウド型eラーニングはshouin+
eラーニング導入で育成担当者の残業時間を70%削減!
フィットネスクラブ「フィットネス&スパ ココカラ」を展開する人の森株式会社では、1人のジムトレーナー育成に80時間ほどかかっており、時間的コスト面での課題を抱えていました。スタッフの入れ替わりも激しく、スタッフ教育への限界を感じていたのです。
そこで、研修の効率化を目指し「クラウド型eラーニングサービス」を導入することに。トレーニングマシンの使い方やレッスンの進め方などのマニュアルを動画に置き換えることで、育成担当者の残業時間は、なんと当初の約80時間から約25時間へと減少したのです。
また、「何度も同じことを説明しないといけない」という教育者側のストレスも軽減され、育成担当者のメンタルケアにもつながったといいます。
■詳しくはこちら
導入事例 ココカラ本厚木店(人の森株式会社)|クラウド型eラーニングはshouin+
近年、研修の新しい形として注目を集める「eラーニング」。今回は、eラーニングを導入するメリットおよびデメリットについてくわしく解説いたしました。
本文でも解説したように、eラーニングには時間や場所に縛られない点や進捗管理がしやすいなどといった多くのメリットがありますが、一方でインターネット環境が必要になるなどといったデメリットもあります。eラーニング自体が良い・悪いではなく、大切なのはその「使い方」だと考えてください。ぜひ本記事を参考に、eラーニングを上手に活用して、貴社の未来の人材を育てていってください。