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エンゲージメントってどういう意味?似た言葉との違い、高めるために今できる取り組みについて解説!

ノウハウ ナレッジ
2022.11.22
『shouin+ブログ』マーケティング担当

日本企業は「やる気がない社員が7割」といいます。日本人の国民性は会社に従順で勤勉だと評価されていますが、従業員エンゲージメント調査の結果によると、日本人は大多数がやる気がない状態だといいます。

また、上司への信頼度についても日本は他の先進国に比べて低いという結果が出ています。若手を中心に離職者が増える要因の一つにも挙げられています。

社員はやる気もなく、採用した若手社員は上司を信頼できずに辞めてしまう状況が続けば、会社は足元から崩れてしまいます。

いま会社に求められているのは人がやりがいをもって働き、力を発揮できる、そして成果を上げられる組織を作ることです。そのカギになるのが「エンゲージメント」です。

今回はエンゲージメントとはどのような意味か、エンゲージメントを高めるためにできる取り組みについて解説します。

 

エンゲージメントとは

エンゲージメントは日本語で「契約」「約束」「婚約」「雇用」「雇用契約」「債務」「交戦」「(ギア、歯車などの)かみ合い」などと訳されます。

エンゲージメントの用例として、

make an engagement(約束する)、meet my engagement(債務を果たす)、engagement ring(婚約指輪)、break off an engagement(婚約を解消する)、a military engagement(武力衝突)などがあります。

状況や分野や領域によって、2者の間にある関係性を示すさまざまな意味合いとして使われています。

 

ビジネスにおけるエンゲージメントの意味

ビジネスにおけるエンゲージメントには、主にSNSなどのマーケティング領域で使われる「顧客エンゲージメント」や、人事領域での「従業員エンゲージメント」があります。ここではそれぞれの領域、分野におけるエンゲージメント」の意味や使われ方について解説します。

 

マーケティング領域における「顧客エンゲージメント」

マーケティング領域において「エンゲージメント」とはユーザーがその企業やその企業の商品やブランドに対して感じる愛着や信頼、あこがれのことを指しています。企業に対して好印象を持っていたり、品質に対して信頼をおいていると、他の商品もその企業から購入するという方も多いでしょう。このような場合に企業のマーケティング分野におけるエンゲージメント(愛着、信頼)の高さが見て取れます。

SNSなどが発達した昨今、マーケティング領域の中でも「WEBマーケティング」が重要視されています。マーケティングの領域では「顧客エンゲージメント」が重要だとされています。

WEBマーケティング分野におけるエンゲージメントにはSNSの活用などによって2つ効果が期待されています。

1つめは見込み客に対してアプローチし、つながりを深めていくことです。2つ目はユーザーと積極的に交流することで、より身近に感じてもらい、ファンになってもらうことです。

SNSにおけるエンゲージメントの指標は、それぞれのSNSが定めていますが、例えばFacebookなら「いいね!のコメント数」「シェアのクリック人数」「ページリンクや画像のチェック数」などが挙げられます。SNSのエンゲージメント指標は、情報に対する個々のユーザーの反応がわかるため、WEBマーケティング分野のエンゲージメントを高めていくために欠かすことのできないものとなっています。

この場合のエンゲージメントは、企業や企業の商品やサービスへの関心度を示しています。

 

人事領域における「従業員エンゲージメント」

そして人事領域で使われるのが「従業員エンゲージメント」です。従業員エンゲージメントとは、従業員の会社への愛着や貢献したいと思う気持ち、思い入れという意味で使われています。

エンゲージメントの定義をコンサルティング会社のウイルス・タワーズワトソンはニュースレターにおいて次のように示しています。

従業員一人ひとりが起業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲

エンゲージメントの訳は「約束」「契約」などがありますが、これは個人一人のような単体で用いるものではなく、2者以上の複数の存在があって成り立つ言葉です。上記の定義においても、複数の存在の関係性が書かれています。個々の従業員が組織の戦略を理解しているという従業員と戦略の関係性や自発的に組織に貢献するという従業員と組織の関係性です。組織が戦略を立案するだけでも、個人が自発的に力を発揮するだけでは相互の関係性が見えず、エンゲージメントは成り立たないと指摘しています。

「従業員エンゲージメント」は企業の生産性や業績だけではなく離職率に対しても大きく影響するとして注目されていますが、これは企業の取り巻く環境の変化が大きく、変化に対応して市場から選ばれる企業となるためには従業員エンゲージメントの向上が欠かせないからです。

マーケティング領域におけるエンゲージメントは企業や商品・サービスへの愛着や信頼を表しますが、人事領域におけるエンゲージメントは自社への愛着と貢献意欲です。このように両者の意味合いは異なっています。

今回取り上げるのは、人事領域におけるエンゲージメントです。人事分野のエンゲージメントについて、類似の言葉との違いやエンゲージメントと離職の関係性について、さらにエンゲージメントを向上させることで成果を出している企業の例を見ながら解説していきます。

 

エンゲージメントと似た意味を持つ言葉

エンゲージメントと似た言葉や混同しやすい言葉には「満足度」や「ロイヤリティ」などが挙げられます。ここではエンゲージメントとの意味の違いについて解説いたします。

エンゲージメントと似た意味を持つ言葉

 

従業員満足度との違い

従業員満足度とは「従業員が職場や会社に対してどれだけ満足しているかを定量化したものです。評価の対象は主に給与や福利厚生、職場環境、人間関係、残業時間などで、それぞれを評価します。従業員満足度は働くにあたっての働きやすさを測ることを目的としていて、意味のある指標といえます。

しかし社員が「職場に満足している」状況が「主体的に自発的に仕事にあたっている」状況とは一致するとは限りません。

これからの組織・チーム作りについて書かれた書籍『組織の未来はエンゲージメントで決まる新居修英 松林博文著(英治出版)』では、「従業員満足度が上がっても、企業の収益や個人の生産性が高まるわけではない」と指摘しています。従業員満足度を高めようとさらに条件を良くしても、思うような生産性の向上にはつながらず、経費が企業の収益を圧迫する要因になってしまうだけ、といいます。

従業員エンゲージメントは、熱意ややる気、活力など個人の意欲が組織や会社、そして仕事にどれだけ向かっているのかを測定したものです。

測定の対象になるのは「自己の成長につながるのか」「やりがいはあるか」「上司や職場の承認を得られているか」「組織、企業の方針に対して納得できているか」といったものです。これらは組織と仕事に対する従業員個人の感情や状態を示したもので、従業員満足度とは違い、仕事におけるパフォーマンスに大きく影響を与えます。

 

ロイヤリティとの違い

ロイヤリティとは、忠誠や忠義を示す言葉で、もともとは国家や主君への忠誠を表したものです。

ビジネスにおける「従業員ロイヤリティ」とは、従業員が持っている自社に対する愛社精神、忠誠心、帰属意識を指しています。会社への愛着という面では、エンゲージメントと似た印象を持ちますが、前述の書籍によると、ロイヤリティには上下関係、主従関係が結ばれている点がエンゲージメントとは異なると言及しています。

組織や経営者が従業員を従えているという構図がロイヤリティには見えますが、エンゲージメントにおける組織と従業員の関係性は対等なものだと前述した書籍では述べられています。

 

モチベーションとの違い

モチベーションとは動機づけを意味しています。行動を起こすきっかけになること、目標に向けてものごとに取り組む意欲を引き出すものを指します。

モチベーションには2種類の動機があります。内発的な動機づけ(ドライブ)と外発的な動機づけ(インセンティブ)です。

内発的動機づけは好奇心によって自発的にもたらされるもので、幼児期の子どもに良く見られるものです。一方で外発的動機づけは報酬や賞罰などによってもたらされたものです。これをすれば昇給するなどが当てはまります。モチベーションは一時期、多くの企業で取り入れられていました。

前述した書籍『組織の未来はエンゲージメントで決まる』によると、モチベーションと仕事の生産性に必ずしも影響を与える関係にはないと指摘しています。

書籍にはモチベーションの高さとエンゲージメントの高さは関連性がみられる場合があるが、モチベーションが従業員個人の「動機づけ」であるのに対してエンゲージメントは従業員個人と組織や仕事との「関係性」を示していて、両者は違うものだといいます。

モチベーションが高くとも、個人がそれぞればらばらに動き、協働することが出来なければ組織としての生産性は高まることはありません。モチベーションは、個人の主体的な行動を促すことができますが、組織の成果や成長につながるとは限らないといいます。

組織にとって本質的に大切なのは、エンゲージメントなのだと同書籍では言及しています。

 

従業員エンゲージメントと離職の関係

エンゲージメントと離職率の関係

(参照元:書籍『組織の未来はエンゲージメントで決まる』を参考に弊社で図を作成)

 

前述した書籍では、従業員エンゲージメントと離職率には相関関係があると指摘しています。

この数年、日本の大手企業において人材流出が問題になっています。帝国データバンクの調査結果によれば、人手が確保できず仕事がまわらなくなり収益が悪化した結果倒産に至った企業数は、調査開始の2013年度から2019年度の7年の間に3.1倍にも増加したといいます。

人手不足倒産 帝国データバンク

(参照元:帝国データバンク人手不足倒産件数

少子高齢化という日本が抱えている人口層の問題もあり、日本の総人口は2010年以降減少傾向に転じていますが、総務省の統計でによると、生産年齢人口(15~64歳)は2060年には2010年に比較すると約6割となり、大きく減少することが予想されています。

企業にとって、いかに人材を確保するか、採用し、定着させていくかが大きな課題となっています。その状況であるのに、日本企業の大多数の社員はやる気がなく、若手社員はどんどんと辞めてしまうということが起きています。

ここでは、離職してしまう原因となるポイントを3つ取り上げます。

離職してしまう原因

 

1:人材教育が行き届かない

人材教育と離職率には相関関係がみられ、人材育成が行き届いていない職場は離職率が高くなる傾向があるといいます。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構による報告書「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査 では、OJT教育を行っている企業は、取り入れていない企業に比較すると離職率が低いという結果が示されています。人材育成制度を作り、新入社員の評価基準を設定し、OJT教育担当を置き、業務の振り返りやフィードバックを適時に行うことで、新入社員は自分の課題が見えてきますし、どのように改善していけば良いのかがわかります。

この循環が回るようになっていくと、教育を受けている新入社員の業務への取り組み姿勢が変わってきます。できるようになると達成感を感じたり、自信を持ったりするようになり、やりがいや働きがいを持つようになります。

一方で人材育成制度が整っていない職場では、新入社員は誰に聞けば良いかわからない、期待されていないのではないか、目指すものが見つからないとモチベーションが下がってしまい、ひいては離職率が高くなるといわれています。

 

2:企業理念や目標が浸透していない

人事制度と会社の掲げるビジョンや目標、方向性が結びついていない会社では、業績向上への施策を打ち出したとしてもうまく進まない可能性があります。

「宮川淳也著:『中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで』総合法令出版」によると、人事評価制度を構築する目的のひとつは「人事評価制度によって、社員に求めるものを明確にする」と指摘しています。会社が目指す事業の方向性と社員が成果として見据える方向は同じであることが会社の成長につながるとあります。

企業理念や方向性が人事評価制度を通して社員に共有されていない状態ならば、社員は目指す目標を正しくとらえることができません。求められる成果や行動が明確になっていない状況では、社員はやる気を失ってしまい、離職率を高める結果となってしまいます。

 

3:働きやすさ、働きがいがない

厚生労働省の報告書 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」によると、 事業主の行う「業務管理・組織管理」「人間関係管理」に関する取組みの効果と「従業員の離職率」の関係 」に関する取組みと「従業員の離職率」には関係性が見られると言及しています。

事業主が従業員の働きやすい職場環境つくりに対して取り組みがある企業と無い企業では従業員の離職率に違いが見られました。働きやすさに関して取り組んだ効果があったと回答する企業に比べて効果がなかったという企業の方が、離職率が高くなるという結果が出ています。

働きやすさや働きがいが感じられない職場は、働き続けたいと思うことができずに離職につながってしまうと考えられます。

 

従業員エンゲージメント向上施策例

従業員エンゲージメントと離職率には相関性があり、従業員エンゲージメントが低いと離職率が高くなる傾向があります。では、どうすれば従業員エンゲージメントは向上するのでしょうか。

離職を防ぐために取り組んできた企業事例から、いまできるエンゲージメント向上施策を見ていきましょう。

エンゲージメント向上施策例

 

例1:教育制度を整える

教育制度を整えることで個々に合わせたフォローができるようになり、新入社員のやる気を引き起こすことにつながります。

オーダー紳士服を軸にビジネススーツの販売店を全国展開する株式会社オンリーでは、新人教育制度をシステム化することで効率よく効果的な教育制度を行っています。

これまではオーダーメイドの採寸ひとつにしても、教育は配属店舗に委ねることになっていました。教育のレベルが均一化できない、トレーナーが忙しいと教育が手薄になる、本部が新人一人ひとりのスキルを把握できないなどの課題がありました。

人材育成システムを導入したところ、以下のような改善策を実施したことで、課題解決に繋がっています。

1)全社共通の配属1カ月で習得する教育プログラムを決めて動画コンテンツにまとめた。

  • 教育の質が均一化された
  • 新人は不明点を何度でも見返して復習ができる
  • 店長やトレーナーにかかる教育の負担が軽減された

2)導入したシステムの機能を活用した。

  • アウトプット機能を活用することで本部が新人の個々の習得レベルが動画で確認できるため、適切なアドバイスをフィードバックできる
  • 検定機能を利用し、知識問題の習得レベルも本部で把握できる

人材育成が充実し、本部や店長・トレーナーとのコミュニケーションも活発になれば、上司との信頼関係も築いていくことができます。効果的な教育制度を儲けることで従業員エンゲージメントは向上するといえます。

参照:shouin+導入事例 | 株式会社オンリー

 

例2:企業のビジョンを社員が共有する

企業のビジョンや使命が社員に共有され、共感されている組織はエンゲージメントが高いといえます。

スターバックスの店員はだれもがフレンドリーで、愛想が良く、丁寧で気遣いがあるとして良い印象を受けます。

立ち仕事で客足も絶えず忙しいはずなのに、店員は楽しそうにいきいきと働いています。店員一人ひとりのエンゲージメントの高さが伺えます。

スターバックスのビジョンには「人々にとっての、第3の居心地の良い場所を作る」というものがあります。これを受けて店員たちは「お客様が日常に心豊かで活力を与える瞬間を与える」ように行動するのです。

書籍『組織の未来はエンゲージメントで決まる』には、わかりやすく共感できるビジョンによって、従業員は自分の仕事に意義を感じ、信念を持って取り組むことができると書かれています。

スターバックスでは、従事する人たち自身がスターバックスの在り方とそれぞれ仕事の意味を理解して、組織のビジョンのために自発的に貢献しようとする状態が保たれているといえます。

「わかりやすく共感されるビジョンが従業員たちに浸透すること」が従業員エンゲージメントを向上させる要因の一つだと同書籍では言及しています。

 

例3:従業員の目線で働きがいのある組織づくりを行う

ザッポスはラスベガスに本社がある靴の通販会社です。カスタマーサービスによる「神対応」が有名で、アマゾンが過去最高額を出資して買収したことで注目されました。

ザッポスのCEOであるトニー・シェイの著書『ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』には、ザッポスは従業員が業務を通して生きがいを見つけられるようにサポートしていると記述があります。

ザッポスでは、報酬とは別の「働きがい、働く意義」を従業員が見出すことができているといいます。顧客の幸せと従業員の幸せを重視した経営によって従業員エンゲージメントが高い標準にあり続けているといえます。

先述の書籍『組織の未来はエンゲージメントで決まる』の中でもザッポスの取り組みについて取り上げていて、従業員の自主性を重んじるザッポスにあるいくつかの特徴的な取り組みを紹介しています。

「職場に子どもを連れてきて勤務する」「従業員同士でボーナスを贈る制度」「ペットを職場に連れてくるイベント」「毎月の誕生日パーティ」などが挙げられますが、これらの取り組みのベースになっているのが、従業員エンゲージメントを重視する考え方です。

従業員の働きがい、働きやすさ、働く楽しさ、ワクワクする気持ちを実現する施策を実施することで職場への帰属意識が高まっているといえます。

 

まとめ

人事領域におけるエンゲージメントについて、エンゲージメントとは何か、離職率との関連性やエンゲージメントを向上させる施策について見てきました。

従業員エンゲージメントを向上させるには、教育制度を整えて従業員の成長のための道筋をつくること、ビジョンや目的や意義をしっかりと共有すること、ビジョンや目的を達成するために求められる成果を明記した評価制度の構築が挙げられます。

従業員のやる気を引き出し、会社への貢献意欲を引き出すことは離職率を抑えることに効果的です。従業員エンゲージメントを向上させて、働きがいのある、成果を上げ成長を続ける組織を作り上げていきましょう。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

shouin+は、本社や現場のOJT・研修に関するお悩みを丸ごと解決する人材育成クラウドサービスです。

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