可視化とは?業務可視化のメリット・方法・具体例をわかりやすく解説
「業務改善をしたいけれど、どこにムダがあるのか分からない」
「忙しくて現場を見に行けず、感覚でしか判断できていない」
そんなモヤモヤを抱えたまま、日々の業務に追われていないでしょうか。
組織の生産性を高めるには、勘や経験だけに頼らず、業務の実態を客観的に捉える視点が欠かせません。そしてその土台になるのが「業務の可視化」です。
本記事では、業務の可視化とは何か、なぜ行うべきなのかといった基本的なことから、「見える化」との違い、可視化のメリット、具体的な方法までくわしく解説いたします。どの業界の組織にも共通する内容になっておりますので、ぜひ自社の業務を思い浮かべながら読み進めてみてください。
可視化とは?
そもそも「可視化」とはどのような意味なのでしょうか? 辞書には以下のように記載されています。
人の目には見えない事物や現象を、映像やグラフ・表などにして分かりやすくすること。見える化。
(引用元:「デジタル大辞泉」小学館)
つまり業務の可視化とは、日々行う仕事を映像や画像、表、文章などで書き表し、理解しやすくすることを言います。
企業が日々行う業務は単純ではなく、さまざまな作業を複数の従業員で分担して取り組むことで成り立っています。故に、いつ・どのようなときに行うのか、誰が担当するのかなど、仕組みやフローが曖昧になってしまいがち。無意識に行っている細かい作業も含めると、業務の種類と量は膨大で、詳細を把握しにくいものです。
そこで活躍するのが業務の可視化です。目的や内容、手順、担当者などが明確になり、何が原因で効率が悪いのか、なぜ問題が発生しているのか、どこを改善すれば良いのかがわかりやすくなります。
可視化する内容に決まりはありません。また可視化方法も、その時の目的・対象者・業務の種類によって変わります。いつ、何をどのように可視化すべきなのか見極められるようにするため、目的やメリットについて知識を深めておくと良いでしょう。
可視化と見える化の違い
「可視化」と「見える化」は似た言葉ですが、ビジネスの場面では少し役割が異なります。
可視化は、データや現場の様子を集めて整理し、「分析できる形」に変換するプロセスそのものを指すことが多い概念です。一方で見える化は、その結果として「誰が見てもすぐに状況が分かる状態」を日常的に保つことに重きがあります。
たとえば、問い合わせ件数を集計してグラフにするのが可視化で、そのグラフをダッシュボードとして常に表示し、チーム全員が状況を共有できるようにするのが見える化というイメージです。この違いを理解しておくと、「分析のための可視化」と「現場運営のための見える化」を使い分けやすくなります。
<可視化と見える化の関係>
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可視化:情報を集めて整理し、構造的に理解できる形にするプロセス 見える化:可視化した情報を日常的に共有・活用できる状態を保つこと |
可視化の目的
業務を可視化する目的は、主に以下の3つ。詳しく見ていきましょう。
現状の把握と分析
企業では毎日数十人、数百人の従業員が、それぞれ数多くの業務をこなしています。よって、1人1人の仕事ぶりを把握するのは不可能です。部署ごとに管理者を設けたとしても常に監視できるわけではなく、従業員がいつ、どの業務をどのように行っているかを明確に把握するのは難しいでしょう。
特にテレワークでは、管理者と従業員が直接会うことができない分、業務の進行状況や取り組み方を管理するのが困難です。

(引用元:「令和2年通信利用動向調査の結果」総務省)
総務省の調査によると、2021年度時点でテレワークを実施している企業の割合は47.5%。「今後導入予定がある」と答えている企業も含めると約6割に及ぶため、今後もテレワークを行う企業がさらに増えていくでしょう。
テレワークが増えれば、業務状況を把握したり管理したりすることが、より一層難しくなると考えられます。改善すべき点がわかりにくく、業務効率が悪いまま経営していくこととなる恐れがあるので、早めに業務を可視化し、対策することが重要です。
組織の統率力アップ
経歴も年齢も、価値観も違う人々が集まる組織では、仕事の進め方や認識のズレが生じてしまうもの。特に、近年注目を浴びている人材の多様化は、働きやすい職場づくりに貢献するメリットがある一方で、統率が取りにくいリスクを抱えており、チームワーク力の向上に苦戦する企業が少なくありません。
そのような、組織の統率力をアップさせるためにも業務の可視化が活用されます。業務の取り組み方や考え方などを、改めて目に見える形にすることで、ズレや違いが浮き彫りになるためです。そして、ズレや違いを統一することにより、社員全員が同じ方向に向かって業務に取り組めるようになります。
どんなに優秀な人材が集まっていても、それぞれがバラバラに行動していては、十分な成果が得られません。組織が一丸となって取り組む方が、より効率よく、かつ安定して生産性を高められるので、業務を可視化して統率をとることが大切なのです。
教育・改善改革施策の準備
業務の可視化は、マニュアル作成や研修プログラムの見直し、新たな改善施策の計画といった、具体的なアクションを起こすための土台にもなります。
そもそも人材育成や業務改革は、思いつきや一回限りの施策では成果が出にくいものです。そのため、現状を丁寧に把握したうえで計画を立てる必要があるのです。
たとえば、新入社員の研修フローをフレームワークで整理すれば、「どの時期に、誰が、何を教えるのか」が明確になり、実際の習熟度や理解度も可視化しやすくなります。
また、マニュアル作成に着手する前に、現場のやり方や例外パターンを図やリストで洗い出しておけば、「マニュアルを作ってみたけれど実態と合っていない」というズレも防ぎやすくなるでしょう。
このように可視化は、それ自体がゴールではなく、教育や改革を成功させるための下準備という役割を担っているのです。
可視化を行うメリット
業務の可視化には、どのような手段であっても手間や時間がかかるもの。社員の貴重な時間、労力を少なからず削ることとなるのですが、コストをかけてでも行うべきなのはなぜなのでしょうか。
ここで、可視化を行うことで得られる主な4つのメリットをご紹介しましょう。

生産性の向上
企業が運営を続けていくため、成長し続けていくためには、生産性の向上が欠かせません。無駄にコストがかかっていたり、商品やサービスの質が低いと利益を増やすことが難しく、最悪の場合、倒産に追い込まれる恐れがあります。
そんな生産性の向上に必要なのが、業務の効率化です。
業務を可視化すると、何が原因で問題が発生しているのか、どのような改善策が適切なのか分析しやすくなります。その結果、より効率の良い業務の取り組み方を見つけることができ、そして生産性の向上へと導いてくれるのです。
生産性がアップすることで、小規模企業でも他社に負けない競争力がつく、コストを削減できるなど、さまざまなメリットが得られます。可視化するのに時間や労力、費用がかかるとはいえ、結果的に会社に利益をもたらすと考えると、コストを割く価値があると言えるでしょう。
属人化の防止
企業で度々問題視されている「属人化」。属人化は、ある業務について担当者のみが正しく理解していて、他の従業員では交代できないような状態のことです。
属人化が起きると、担当者が不在時に業務が滞り、業務完了までに時間がかかってしまいます。無理に進行を早めようとすると担当者に負担がかかってしまい、長時間労働を強いられるケースも少なくありません。また、担当者が退職した際、前任者と同レベルで業務をこなすことができる従業員がいなくなり、業務の質が下がるリスクがあります。
そこで役に立つのが、業務の可視化です。どのような手順で、どのようなノウハウで業務を行っているのかを可視化することにより、担当者以外の従業員にも知識を共有できるようになります。それを元に学んだり、教育したりすれば、誰でも同レベルの質で業務を行うことが可能になるのです。
例えば、社員Aの不在時は社員Bが、社員Bもいないときは社員Cが、というように多くの従業員が対応できれば、従業員1人1人にかかる負担と責任も軽減されます。業務が滞ることもないため、生産性も向上するでしょう。
労働環境の改善
業務に無駄や偏りが多いと、従業員にかかる負担は大きくなるもの。時間内に業務を終えることができず、長時間労働を強いられる可能性がある他、精神的なプレッシャーもかかります。

(厚生労働省「令和3年上半期雇用動向調査結果の概要」をもとに当社で作成)
厚生労働省による2021年のデータによると、「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」ことが離職の原因であると答えている人の割合は男性で6.6%、女性で10.3%とあります。労働時間が長い、休みが取りにくいといった環境は、従業員が離職する可能性を高めてしまうのです。
逆に言えば、効率よく業務を進めることができれば、従業員にかかる時間と労力の負担を減らすことができ、最終的に離職の防止へとつながると言えます。「業務の可視化さえ行えば離職が防げる」といった単純な対策法ではないのですが、労働環境を改善するきっかけになるので、取り入れて損はないでしょう。
従業員の成長促進
業務の可視化は、業務をきちんとこなせているかどうかの指標にもなります。「できている」「できていない」の判断が難しい業務でも、可視化された指標を基準に比較、判断することが可能になるのです。
例えば納品業務では、効率よくスピーディーに行うことが大切。しかし、早いか遅いかの判断は、個人の感覚によって違います。本人は「素早くできている」と思っていても、管理者からすると「遅い」といったズレが生じることが多々あります。
このような場合に、どのくらいの時間をかけて業務を行っているのかを可視化することで、客観視できるようになります。他の従業員が行った場合の作業時間も可視化すれば、平均値を算出することも可能です。そして平均値を基準とし、早い・遅いを正しく判断できるようになります。
事実を元にした指摘やアドバイスは、頭ごなしの注意よりも納得がいくもの。従業員が自覚することで行動は改善されやすく、より早く成長できるのです。
また、業務の可視化は従業員を評価する際にも役立ちます。曖昧に評価されるよりも、事実や基準を元に「優れている」と評価される方が、従業員のモチベーションがアップします。やる気がアップすれば、さらなる成長促進へとつながるでしょう。
研修・教育における可視化ポイント
従業員への研修、教育は、会社の利益に関わる大切な業務。常に、最適で効果的な手法で行う必要があり、改善のための可視化が欠かせません。
では、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。可視化する際の主な3つのポイントをご紹介します。

目標を設定する
業務改善を行う際、原因を追求するには、現状と理想を比較する必要があります。現在の業務の取り組み方を見るだけでは、何が問題なのか、どう改善すべきなのかがわからないからです。
そのため、研修・教育を可視化するときは、目標を設定することが大切です。
例えば、新入社員を教育する場合は、いつまでに、どのくらいのレベルまで成長すべきなのか目標を設定します。そうすることで、途中経過を可視化した際、目標と比較して何が足りないのか、どのように教育していけば良いのか方針を決めることが可能になるのです。
従業員の教育は大抵の場合、一筋縄では行きません。細かい軌道修正を繰り返しながら、従業員のペースに合わせて指導することが大切です。しかし、目標がないと間違った教育を行ってしまい、その分、成長が遅れてしまう恐れがあります。効率よく教育を行うため、可視化と共に目標設定も欠かさず行いましょう。
弱点だけでなく強みも可視化する
可視化は業務改善に役立てられるものですが、悪いところを直すことだけが教育ではありません。強みを伸ばすことも、従業員の成長を促すために必要です。
『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』という書籍の中でも、著者の松井順一氏、佐久間陽子氏が以下のように述べています。
人は自分の能力を思っている以上に認識できていません。強みが見えておらず、弱みの克服だけが能力を高めることだと思っていたり、弱みの中の強みに目が向けられていなかったりします。組織の中での個人の能力向上を考える時、それを把握することから始める必要があります。
引用元:「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」
つまり、従業員の育成進捗を可視化する際は、改善点だけでなく評価すべき点も発見し、共有することが大切と言えます。良いところを目に見える形で表すことで、従業員はより「評価されている」と実感でき、モチベーションアップにつながるでしょう。
また、可視化することで見つけた従業員の強みは、従業員の配属を決める際にも役立ちます。適切な場所に配属された従業員は、能力を十分に活かすことができ、さらなる成長が見込めます。人事異動や新入社員の配属を決める際は、短所だけでなく長所も可視化しましょう。
教育を受ける側にも協力してもらう
研修を行う際は、従業員自身の問題点を解決することももちろん大切ですが、研修自体を見直すことも同じく大切です。本当に適切な手法で研修を行っているのか、より無駄なく、効率よく教育できる方法はないのか探ることで、より効果的な研修へと改善できます。
そこで、研修フローを可視化する必要があるのですが、研修を受ける側の従業員にも協力してもらうと効率的です。内容がわかりやすいか、研修で身につけた知識を業務に活かすことができたかどうか、フィードバックを受けることで、着実に効果的な改善策を見つけられるでしょう。
教育者側が良い研修だと思っていても、受講する従業員が理解しにくく、業務に活かせないようでは意味がありません。しかし、それは教育される側の立場に立たないとわからないことなので、可視化に協力してもらうのが有効なのです。
業務可視化の注意点・ポイント
業務の可視化は、やり方を間違えると「資料作りだけで終わってしまった」「数字ばかりが独り歩きする」といった落とし穴にはまりかねません。では、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。ここでは、実務で押さえておきたい3つの注意点をご紹介します。
目標を設定する
可視化を始める前に必ず行いたいのが、「何のために可視化するのか」という目的と目標を明確に設定することです。目標が曖昧なまま情報を集め始めると、膨大なデータを前に、何が問題なのか、どう改善すべきなのかという方針を見失いやすくなってしまうでしょう。
具体的には、「問い合わせ対応の平均時間を30%短縮したい」「新入社員が半年で基本業務を自走できる状態にしたい」といったゴールを先に言語化し、そのうえで必要な指標やデータを選びます。
このように分析の軸を決めておくことで、分析の途中でも「これは今回の目的に必要な情報か?」という取捨選択がしやすくなり、データの収集もしやすくなるのです。また、具体的な目標があるからこそ途中の軌道修正もしやすくなり、可視化が「やって終わり」の状態に陥りにくくなるでしょう。
なお、下記記事では、目標設定で活用したい3種のフレームワークをご紹介しております。いずれもさまざまな場面で使えるフレームワークですので、ぜひご活用ください。
■参考記事はこちら
人材育成の目標設定を4つのステップで解説!職種別の目標設定例も
弱点だけでなく強みも可視化する
業務可視化は、つい非効率な部分や問題点といった「弱点」を見つけ出すことに焦点が当たりがちですが、一方で従業員や組織の「強み」を可視化することも同じように大切なことです。
トヨタ流の「見える化」を解説した書籍でも、人は自分の強みを過小評価しやすく、弱みの克服だけに意識が偏りがちだと指摘されています。しかし実際には、強みを効果的に伸ばすことも、成長につながるはず。だからこそ、成果が上がっているプロセスや、特定のメンバーが得意としているスキルも、同じように可視化して共有することが大切なのです。
人は自分の能力を思っている以上に認識できていません。強みが見えておらず、弱みの克服だけが能力を高めることだと思っていたり、弱みの中の強みに目が向けられていなかったりします。組織の中での個人の能力向上を考える時、それを把握することから始める必要があります。
引用元:「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」
たとえば、「顧客対応の満足度が常に高い社員の業務フロー」を可視化すれば、それが組織全体の強みになり得るでしょう。また、良いところを目に見える形で表すことで、従業員はより「評価されている」と実感でき、モチベーションアップにもつながっていきます。さらには、従業員それぞれの強みを可視化することで、人事異動などの人材配置でも効果的に活用できるでしょう。
教育側・被教育側の協力
可視化の質と効果を高めるには、教育する側だけでなく、教育を受ける側の協力も欠かせません。研修のフローや教材を可視化することはもちろん大事ですが、「受講した人がどこでつまずいたのか」「実務でどのくらい活かせているのか」といった視点もセットで見ていく必要があります。
具体的な方法としては、受講後アンケートや1on1、振り返りワークなどを通じて、受講者からのフィードバックを収集するとよいでしょう。あわせて、収集したデータやその結果考えられる改善策も日常的に活用できるよう、社内ポータルや掲示、朝礼での報告など、社内共有の仕組みを整えることも大切です。
このように、可視化後は「作って終わり」ではなく、「現場で使われ続ける可視化」を目指して、教育側・被教育側の双方で仕組みを育てていきましょう。
なお、アンケートの作り方については、下記記事でくわしく解説しております。無料テンプレートもご用意しておりますので、アンケートづくりにお悩みの方はぜひご活用ください。
■参考記事はこちら
【テンプレート付】研修アンケートの主な項目や作り方のコツをわかりやすくご紹介!
可視化すべき業務例
可視化はあらゆる業務に応用できますが、とくにその効果が発揮されやすい代表的な5つのカテゴリが存在します。そこでここでは、業種や規模を問わず、多くの組織で共通する5つの領域をご紹介します。ぜひ「自社だとどの情報が見えていないだろう?」と照らし合わせながら読んでみてください。
業績・KPIなどの数値管理
売上や利益、問い合わせ件数、顧客満足度といった定量的な数値は、組織の健康状態を示す重要な指標です。これらを可視化すると、感覚では分かりにくいトレンドや季節性、施策の効果が見えてきます。
たとえば、売上を部門別・チャネル別にグラフ化したり、KPIをダッシュボードに集約したりすれば、「どの施策が成果につながっているのか」「どこが伸び悩んでいるのか」を素早く把握できるでしょう。
<数値可視化でチェックしたいポイント>
- 主要KPI(売上、粗利、案件数など)の推移
- 予算・目標とのギャップ
- 部門・サービス・チャネル別の内訳
こうした数値を定期的に見られる環境を整えることで、会議や日々の意思決定が「何となく」の感覚的な議論から「データにもとづく議論」へと変わっていきます。
業務プロセス・進捗管理
プロジェクトや日々の業務の流れを可視化すると、作業の遅延やボトルネック(業務停滞の原因)を早期に発見することができます。「どの工程で待ち時間が発生しているか」「誰のタスクが詰まりやすいか」が見えやすくなるのです。
たとえば、ある業務の引き継ぎフローが可視化された結果、「承認待ち」の工程で常に数日間の遅延が発生していることが判明したとしましょう。これは承認権限者に負荷が集中している可能性を示すボトルネックであり、権限分散や担当者の増員など、具体的な改善策をすぐに講じることができます。
また、カンバンボードやガントチャートなどで進捗を管理すれば、「どのタスクが遅延しそうか」「今週中に支援が必要な人は誰か」といった判断もスムーズになるでしょう。
このように、業務プロセスの可視化は、全体の流れや担当範囲を明確にすることでムダ・ムリ・ムラを発見し、効率的な業務運営につなげていくための大切なポイントなのです。
なお、ムリ・ムダ・ムラ(3M)の概念については、下記記事でくわしく解説しています。具体的な改善手法やDXを活用した改善事例までご紹介しておりますので、ぜひ業務改善の参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
「ムリ・ムダ・ムラ」とは?原因と影響、改善の基本ステップと成功事例をわかりやすく解説
顧客対応・品質管理
問い合わせ対応やサポート、納品品質なども、可視化の効果が出やすい領域です。なぜなら、クレームの再発防止やサービス品質の安定・向上に直結するからです。
たとえば、問い合わせ対応の履歴やクレームの内容を分類・集計して可視化すれば、「どの製品・サービスに問い合わせが集中しているのか」「同じトラブルがどの程度繰り返されているのか」が分かります。あわせて、初回回答までの時間や解決までのリードタイム、顧客満足度などの指標を見える化すると、「どの指標を優先的に改善すべきか」といった優先度も明確になり、具体的なアクションにつながりやすくなります。
このように、可視化した情報をチーム全体で共有できれば、属人的な「ベテランの勘」に頼ることなく事実にもとづいた品質向上の打ち手を検討できるようになり、再発防止やサービスレベルの標準化にもつながっていくのです。
リモートワークや勤怠管理
リモートワークやフレックス制が広がるなかで、「誰がいつどのように働いているのか」を把握することは、以前より難しくなっています。管理者と従業員が直接顔を合わせることが少ない分、業務の進捗や業務負担を把握するのは容易ではないでしょう。でも、だからこそ「可視化」ができたらいいですよね。
たとえば、勤怠管理システムで出退勤時刻や休憩時間を正確に記録したり、プロジェクト管理ツールでタスクの進捗状況をリアルタイムで共有したりすることで、従業員がどこで、どのような業務に取り組んでいるかを把握できるようになります。
このように可視化をすることで「さぼっているのではないか」といった疑念を持つ(持たれる)こともなく、透明性と信頼性が確保できるでしょう。加えて、業務負荷の偏りも発見しやすくなり、健康的な労働環境の維持にも役立ちます。情報を共有しすぎて監視的にならないよう配慮しつつ、透明性と信頼性を高めるためのツールとして活用していくのがポイントです。
人材育成・スキルの可視化
従業員のスキルや育成状況も、可視化の効果が発揮されやすい領域です。なぜなら、個人に対して「どの領域に強みがあるのか」「どこに育成の余地があるのか」が分かると、適切な人材育成計画の策定や、適材適所の人材配置がしやすくなるからです。
たとえば、スキルマップ(従業員が持つスキルや習熟度を一覧にした表)を作成して習熟度を色分けすれば、チームとしての弱点や次に強化すべき分野を一目で把握できるようになります。
また、研修履歴や担当したプロジェクトの履歴などを可視化しておけば、「誰がどんな経験を積んできたのか」といった個々の従業員の“強み”が分かるのはもちろん、「課題」も一緒に把握できるでしょう。「トークスキルは高いが、提案書作成のスキルが不足している」などといった具体的な課題も明確になります。
このように、従業員のスキルや育成状況を可視化すると、個々の強みや課題を把握しやすくなり、適切な人材育成計画の策定や適材適所の人材配置に役立つのです。
業務を可視化する方法とは
業務を可視化する最適な方法は、目的や内容によって違います。誰でもわかりやすく、かつ活用しやすい形式をとることが重要とはいえ、一体どうすれば良いのかと悩むこともあるはず。
そこで、ここでは主な3つの方法をご紹介します。相性の良い業務の内容・目的も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
フレームワーク

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)
業務の流れや仕組みを可視化するのに最適な「フレームワーク」。四角などで囲われた要素を、線や矢印で繋いで表記する方法です。
業務プロセスに無駄がないかを分析するのに役立ちます。また、原因追求もしやすいため、業務フローにおける問題発生時に活用できるでしょう。
例えば、作業時間を短縮したい場合は、フレームワークに記入した業務の流れを見直し、どこに無駄があるのか分析します。そこから効率の良い方法を考え、新たな業務フローを作成することで、効率よくスピーディーに行う方法を見つけ出すことができます。
また、教育の流れを可視化するときにもフレームワークがおすすめです。どの順番で研修を行うのかが明確になるため、複数人が教育を担当する場合でも、スムーズに引き継ぐことができます。どの段階までの教育が完了しているのか、進捗もフレームワークを元に確認でき、教え漏れやダブりを解消できるでしょう。
タスク方式

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)
「タスク方式」は、業務をリスト化することで可視化する方法。本当に取り組む価値があるのか、省くべきではないか、他の方法に変更すべきではないかなどの見極めを行うときに役立ちます。
タスク方式の可視化では、目的を記入するのがポイント。目的に対して無駄か、必要かを判断するためです。ただ闇雲に「必要」「不必要」を決めようとすると、判断を誤ってしまう可能性があるので、同じシート内に目的を記入し、正しく決断できるようにしましょう。

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)
また、上図のようにタスク方式で可視化したものをボードや壁に掲示し、いつでも確認できるようにしておくと便利。実際に業務を行いながら可視化データを見て、無駄な作業かどうかを判断できますし、業務の目的も常にチェックできます。リストの記入漏れがあった場合でも、その場ですぐ書き込めるので、タスク方式を活用する際はぜひ掲示してみましょう。
ワークタイムシート

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)
「ワークタイムシート」は、作業にかかる時間をチェックしたり、時間配分が適切かどうか分析したりするのに便利です。スケジュール表のように時間軸を記入し、何時から何時まで、どの作業を行うのか記入することで可視化できます。
上記の図のように、円グラフも作成しておくと、時間配分を確認しやすいのでおすすめです。
特に、短時間で何度も繰り返す業務は、一度にかかる時間が短い分、作業時間に無駄がないように思えてしまうもの。しかし、合計すると想像以上に時間がかかっていることがあります。円グラフではそれが明瞭になるので、適切な改善策を講じることができるでしょう。
また、ワークタイムシートはテレワーク中の業務管理にも役立ちます。従業員に1日の業務の流れと、それぞれにかかった時間を可視化してもらうことで、取り組み方を指導しやすくなります。従業員自身も時間管理を意識できるようになるため、テレワークを導入する際は、ワークタイムシートを活用してみると良いでしょう。
画像・映像の活用
流通小売業の業務の可視化では、画像や映像の活用も有効です。特に、商品の陳列業務や、倉庫・バックヤード内での在庫管理業務などで役立ちます。
映像や画像であれば、口頭では説明しにくい情報でも、一目でわかりやすい形式で可視化できます。写真やムービーで概要を可視化し、文章や音声で足りない情報を補足すれば、詳細まで漏れなくデータ化できるでしょう。
なかでも商品の陳列業務を可視化する場合は、売上げデータや顧客ニーズも共に記載するのがおすすめ。映像・画像と、数字を比較することで、原因を分析しやすくなるのでぜひ意識してみてください。
可視化の具体例
業務の可視化を具体的にイメージするため、いくつか例をご紹介します。目的や内容、シチュエーションに合わせて適切な方法で可視化する必要がありますが、迷ったときはこちらを参考にしてみてください。
フレームワークを使った新入社員研修の可視化

上記の図は、店舗型ビジネスにおける新入社員に向けた研修の流れを、フレームワークを使って可視化したもの。入社から始まり、集合・オンライン研修やOJTで教育、そして面談までのプロセスを可視化することで、どのような順番で、誰が何を教えるのかをわかりやすくしています。
入社してからいつまでに何を教えるのか、時期を記入するのがポイント。
例えば、3ヶ月目に行う本社研修・オンライン研修で事務業務を教育し、その後店舗で改めてOJTを行う、という流れを記載しておくと、店舗の教育担当者への引継ぎがスムーズです。本社研修とOJTにズレが生じないよう内容を把握しておく、店舗と本社で連携を取る、などの対策が可能になります。
また、教育を担当する部署が複数ある場合は、色で仕分けするとわかりやすくなるのでおすすめです。ただし、カラーを使いすぎるとかえって見にくくなるため注意しましょう。
タスク方式で納品業務を可視化

上記の表は、作業時間の短縮を目的とし、タスク方式で納品業務を可視化したもの。業務の無駄な部分や、変更すべき点がないか判断しやすくするため、目的と目標を明記しています。
例えば、検品作業や品出し作業は省略できない作業なので、ここでは「◯」と評価しています。一方、仕分け作業やラベリング作業は、工夫次第で省略、短縮できると判断し「△」「×」と評価、および改善策を記入しています。
タスク方式で可視化する方法は、教育時にも活躍します。業務担当者に可視化シートを渡し、記入してもらうことで、本人が問題点・課題点・改善策を考えるきっかけになります。習慣づければ、効率よく取り組む考え方の癖が身につくので、ぜひ活用してみましょう。
ワークタイムシートを使って時間配分を可視化

上記のシートは、1日の業務の中で、どの業務にどれほどの時間をかけているのかを可視化したものです。円グラフも記入し、作業時間の配分を明確にしています。
この方法では、どの業務に時間をかけるべきで、どの業務は短縮すべきなのかがわかりやすくなるのがメリット。上記例では時間の使い方を見直し、何がネックとなっているのかを記入することで、具体的な改善策を導き出しています。
テレワーク中の業務管理を行う際や、残業削減を行う際にも役立つ方法です。
まとめ
数多くの従業員を教育しつつ管理し、効率よく業務をまわすのは決して簡単ではありません。日々の業務に追われて分析する時間がなかなか取れない…とつい放置してしまいがちです。
しかし少しでも無駄を省き、効率よく業務を行うことができれば、時間に余裕ができます。分析、原因追求により多く時間を割くことができ、さらなる業務改善へと良い循環が生まれるでしょう。
そして業務の可視化は、問題点を効率よくスピーディーに見つけるのに役立つ方法です。忙しい会社、店舗こそ、ぜひ積極的に可視化を活用していきましょう。

