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可視化とは?流通小売業の人事・教育担当者が行う際のポイントや具体的な方法についてわかりやすく解説!

ノウハウ ナレッジ
2022.05.09
『shouin+ブログ』マーケティング担当

生産性を上げるため、会社の利益を上げるためには業務改善を行う必要があります。しかし、日々の業務の種類が多く複雑で、なぜ効率化できていないのかいまいちわからない、と悩む企業も多いでしょう。

そこでぜひ活用していただきたいのが、今回解説する「業務の可視化」です。

業務の可視化とは何か、なぜ行うべきなのかといった基本的なことから、可視化する方法や具体例まで幅広くご紹介していきます。また、流通小売業が取り組むべき業務の種類、研修・教育を可視化する際のポイントなども解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

可視化とは?

そもそも「可視化」とはどのような意味なのでしょうか? 辞書には以下のように記載されています。

人の目には見えない事物や現象を、映像やグラフ・表などにして分かりやすくすること。見える化。

(引用元:「デジタル大辞泉」小学館)

つまり業務の可視化とは、日々行う仕事を映像や画像、表、文章などで書き表し、理解しやすくすることを言います。

企業が日々行う業務は単純ではなく、さまざまな作業を複数の従業員で分担して取り組むことで成り立っています。故に、いつ・どのようなときに行うのか、誰が担当するのかなど、仕組みやフローが曖昧になってしまいがち。無意識に行っている細かい作業も含めると、業務の種類と量は膨大で、詳細を把握しにくいものです。

そこで活躍するのが業務の可視化です。目的や内容、手順、担当者などが明確になり、何が原因で効率が悪いのか、なぜ問題が発生しているのか、どこを改善すれば良いのかがわかりやすくなります。

可視化する内容に決まりはありません。また可視化方法も、その時の目的・対象者・業務の種類によって変わります。いつ、何をどのように可視化すべきなのか見極められるようにするため、目的やメリットについて知識を深めておくと良いでしょう。

 

可視化の目的

業務の可視化の目的

業務を可視化する目的は、主に以下の3つ。詳しく見ていきましょう。

 

目的1:現状の把握と分析

企業では毎日数十人、数百人の従業員が、それぞれ数多くの業務をこなしています。よって、1人1人の仕事ぶりを把握するのは不可能です。部署ごとに管理者を設けたとしても常に監視できるわけではなく、従業員がいつ、どの業務をどのように行っているかを明確に把握するのは難しいでしょう。

特にテレワークでは、管理者と従業員が直接会うことができない分、業務の進行状況や取り組み方を管理するのが困難です。

 

テレワークの導入状況

(引用元:令和2年通信利用動向調査の結果総務省)

 

総務省の調査によると、2021年度時点でテレワークを実施している企業の割合は47.5%。「今後導入予定がある」と答えている企業も含めると約6割に及ぶため、今後もテレワークを行う企業がさらに増えていくでしょう。

テレワークが増えれば、業務状況を把握したり管理したりすることが、より一層難しくなると考えられます。改善すべき点がわかりにくく、業務効率が悪いまま経営していくこととなる恐れがあるので、早めに業務を可視化し、対策することが重要です。

 

目的2:組織の統率力アップ

経歴も年齢も、価値観も違う人々が集まる組織では、仕事の進め方や認識のズレが生じてしまうもの。特に、近年注目を浴びている人材の多様化は、働きやすい職場づくりに貢献するメリットがある一方で、統率が取りにくいリスクを抱えており、チームワーク力の向上に苦戦する企業が少なくありません。

そのような、組織の統率力をアップさせるためにも業務の可視化が活用されます。業務の取り組み方や考え方などを、改めて目に見える形にすることで、ズレや違いが浮き彫りになるためです。そして、ズレや違いを統一することにより、社員全員が同じ方向に向かって業務に取り組めるようになります。

どんなに優秀な人材が集まっていても、それぞれがバラバラに行動していては、十分な成果が得られません。組織が一丸となって取り組む方が、より効率よく、かつ安定して生産性を高められるので、業務を可視化して統率をとることが大切なのです。

 

目的3:マニュアル作成に向けた準備

業務を標準化し、効率よく行うために欠かせないマニュアル。業務の手順やノウハウを記し、従業員で共有するものです。

マニュアルは、誰がいつ、どのような業務を行っているのかを洗い出してから、作成に取り掛かります。そして、現在の取り組み方が本当に正しいのか、より効率の良い方法がないか検討するのですが、そのためには現在の状況を可視化しておく必要があります。

また、マニュアル作成は基本的に複数人で行うもの。従業員1人で作成してしまうと、やり方や判断基準が偏ってしまったり、最適ではない方法を記入してしまったりしてしまうからです。

しかし、複数人で作成しようとすると、情報共有にミスが起きてしまいがち。口頭のみの伝達では伝え漏れが起きたり、誤った認識で捉えられたりしてしまう恐れがあります。よって、誰もが正しく情報を理解できるよう、可視化する必要があるのです。

さらに、マニュアル作成時の可視化は、記録として残るメリットもあります。のちに不備が起きたときに、データが残っていなければ何が原因なのかわかりにくく、場合によっては、一から見直さなくてはなりません。ですが、可視化したデータがあればプロセスや情報が明確なので、効率よく問題点を発見できるでしょう。

 

可視化を行うメリット

業務の可視化には、どのような手段であっても手間や時間がかかるもの。社員の貴重な時間、労力を少なからず削ることとなるのですが、コストをかけてでも行うべきなのはなぜなのでしょうか。

ここで、可視化を行うことで得られる主な4つのメリットをご紹介しましょう。

可視化を行うメリット

 

メリット1:生産性の向上

企業が運営を続けていくため、成長し続けていくためには、生産性の向上が欠かせません。無駄にコストがかかっていたり、商品やサービスの質が低いと利益を増やすことが難しく、最悪の場合、倒産に追い込まれる恐れがあります。

そんな生産性の向上に必要なのが、業務の効率化です。

業務を可視化すると、何が原因で問題が発生しているのか、どのような改善策が適切なのか分析しやすくなります。その結果、より効率の良い業務の取り組み方を見つけることができ、そして生産性の向上へと導いてくれるのです。

生産性がアップすることで、小規模企業でも他社に負けない競争力がつく、コストを削減できるなど、さまざまなメリットが得られます。可視化するのに時間や労力、費用がかかるとはいえ、結果的に会社に利益をもたらすと考えると、コストを割く価値があると言えるでしょう。

 

メリット2:属人化の防止

企業で度々問題視されている「属人化」。属人化は、ある業務について担当者のみが正しく理解していて、他の従業員では交代できないような状態のことです。

属人化が起きると、担当者が不在時に業務が滞り、業務完了までに時間がかかってしまいます。無理に進行を早めようとすると担当者に負担がかかってしまい、長時間労働を強いられるケースも少なくありません。また、担当者が退職した際、前任者と同レベルで業務をこなすことができる従業員がいなくなり、業務の質が下がるリスクがあります。

そこで役に立つのが、業務の可視化です。どのような手順で、どのようなノウハウで業務を行っているのかを可視化することにより、担当者以外の従業員にも知識を共有できるようになります。それを元に学んだり、教育したりすれば、誰でも同レベルの質で業務を行うことが可能になるのです。

例えば、社員Aの不在時は社員Bが、社員Bもいないときは社員Cが、というように多くの従業員が対応できれば、従業員1人1人にかかる負担と責任も軽減されます。業務が滞ることもないため、生産性も向上するでしょう。

 

メリット3:労働環境の改善

業務に無駄や偏りが多いと、従業員にかかる負担は大きくなるもの。時間内に業務を終えることができず、長時間労働を強いられる可能性がある他、精神的なプレッシャーもかかります。

転職入職者が前職を辞めた理由

(厚生労働省令和3年上半期雇用動向調査結果の概要をもとに当社で作成)

 

厚生労働省による2021年のデータによると、「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」ことが離職の原因であると答えている人の割合は男性で6.6%、女性で10.3%とあります。労働時間が長い、休みが取りにくいといった環境は、従業員が離職する可能性を高めてしまうのです。

逆に言えば、効率よく業務を進めることができれば、従業員にかかる時間と労力の負担を減らすことができ、最終的に離職の防止へとつながると言えます。「業務の可視化さえ行えば離職が防げる」といった単純な対策法ではないのですが、労働環境を改善するきっかけになるので、取り入れて損はないでしょう。

 

メリット4:従業員の成長促進

業務の可視化は、業務をきちんとこなせているかどうかの指標にもなります。「できている」「できていない」の判断が難しい業務でも、可視化された指標を基準に比較、判断することが可能になるのです。

例えば納品業務では、効率よくスピーディーに行うことが大切。しかし、早いか遅いかの判断は、個人の感覚によって違います。本人は「素早くできている」と思っていても、管理者からすると「遅い」といったズレが生じることが多々あります。

このような場合に、どのくらいの時間をかけて業務を行っているのかを可視化することで、客観視できるようになります。他の従業員が行った場合の作業時間も可視化すれば、平均値を算出することも可能です。そして平均値を基準とし、早い・遅いを正しく判断できるようになります。

事実を元にした指摘やアドバイスは、頭ごなしの注意よりも納得がいくもの。従業員が自覚することで行動は改善されやすく、より早く成長できるのです。

また、業務の可視化は従業員を評価する際にも役立ちます。曖昧に評価されるよりも、事実や基準を元に「優れている」と評価される方が、従業員のモチベーションがアップします。やる気がアップすれば、さらなる成長促進へとつながるでしょう。

 

流通小売業が可視化するべき業務

商品を仕入れ、顧客に販売する流通小売業も、業務の可視化によって得られるメリットは多くあります。では、具体的にどのような業務を可視化すれば良いのでしょうか。

主な7つの業務をご紹介しましょう。

流通小売業が可視化するべき業務

 

1:売上管理

売上は基本的にすでに数値化されており、改めて可視化する必要はあまりないでしょう。しかし、売上分析に必要な詳細データは、可視化されていない場合が多いです。

特に、客層や顧客ニーズなど、店舗で顧客に接しないと得られないような情報は、可視化されず不明確なままになりがち。しかし、それらは商品開発や接客力の向上、および売上アップに役立つ貴重な情報です。知識を共有して分析したり、会議を行ったりするのに必要なので、可視化するべきと言えるでしょう。

また、売上管理を行う手順も可視化すると便利です。

新人や販売担当の社員は、売上管理に携わる機会が比較的少ないですが、店長や副店長などの役職に就くと、売上管理能力が求められます。とはいえ、今までそのような経験をしたことがない従業員はやり方がわからず、就任時に戸惑ってしまうものです。

そこで管理プロセスを可視化しておくことで、売上を管理する業務をスムーズに行うことができるようになります。就任する前の段階にある従業員にも、取り組み方を可視化して共有することで、管理候補を育てることへとつながります。

売上管理は、企業や店舗の運営に関わる重要な業務なので、効率の良いやり方を早く習得することが大切です。そのためにも可視化が有効であると言えるでしょう。

 

2:在庫管理

商品を、メーカーや卸売業者から仕入れて販売するまでには、倉庫から店舗への配送、倉庫内・店舗内での管理と、さまざまなプロセスが含まれます。複雑な業務フローをたどって行われるもので、きちんとした管理体制を整えておかないと、ロスが発生する恐れがあります。

そのため、どの部署からどの部署へ、どのようなフローで商品を運ぶのか、どこでどのような方法で管理するのかを可視化することが重要。プロセスに無駄があれば、改善することで効率化でき、生産性をアップさせることができます。また、無駄を省くことでコスト削減にもつながるでしょう。

また流通小売業では、どのくらいの在庫量を抱えるべきなのかを適切に判断することも、重要な仕事のひとつ。売れ残りが多いとコストが無駄になり、在庫不足だと売上げを十分に伸ばせないためです。

しかし見極めが難しく、個人の感覚のみに頼ると、間違った判断を下してしまう可能性があります。

そのため、何を判断基準として在庫量を決めれば良いのか、可視化することが大切です。先ほどご紹介した売上げの可視化も同時に行っておくと、売上げと在庫量を比較しながら、適切に判断できるでしょう。

 

3:商品陳列・ディスプレイ

商品の陳列やディスプレイは、店舗型ビジネスにおいて特に重要な業務。効果的な商品陳列は購入のきっかけを作り、売上げアップへと貢献するため、精度を上げることが大切です。

しかし、この業務は経験者が独自のノウハウを持っていることが多く、人によって差が出る傾向にあります。経験が少ない従業員でも成果を出すためには、経験豊富な従業員の取り組み方を可視化し、共有する方法が有効です。

また、商品陳列・ディスプレイのデータを共有することで、従業員は学びを得ることができます。自分が行った業務を可視化したものと比較することで、何が問題なのか、どのように改善すべきなのかが発見しやすくなるでしょう。

業務の可視化は表やグラフを活用する方法もありますが、商品陳列やディスプレイ業務では、写真や映像を利用した可視化が有効です。口頭では説明しにくいこともわかりやすくなるので、後の解説を参考にぜひ取り入れてみてください。

 

4:催事

流通小売業では、セールや販売促進イベント、展示会などさまざまな催事が開かれます。催事を成功させ、利益につなげるためには段取りが重要です。

どのような手順で何を行うのか、誰が担当するのか、必要な物をどう手配するのかなどのフローを可視化しておくと、催事に携わる従業員が段取りを把握しやすくなり、スムーズに実行できます。催事終了後の分析、および次回開催時の改善へと役立てることも可能になるでしょう。

また何度も繰り返し行う催事は、毎回同じ社員が担当するとは限りません。そのため、前任者が後任者に引き継ぎを行う必要がありますが、口頭のみでは全てを理解してもらえない可能性が高いです。伝え漏れが発生する恐れもあるので、可視化しておくことが大切です。

 

5:クレーム対応

クレームは、要件や顧客の要望がその都度違うため、パターン化しにくく、可視化も難しいでしょう。しかし、「心情を理解してよく話を聞く」「謝罪する」「対応しきれない場合は〇〇に引き継ぐ」など、基本的な行動はどのような場合でも変わりません。そのため可視化し、従業員全員に周知しておくことができます。

基本的な対応方法を共有しておけば、歴が浅い社員でも慌てずにクレーム対応ができるようになります。冷静かつスムーズに対応できれば、二次クレームの発生防止にもなるでしょう。

また、どのように対応したかを可視化しておくと、改善策が見つかりやすくなるメリットも。クレーム対応の質を高めることができ、結果的に従業員のスキルアップ、そして顧客満足度の向上へとつながります。

 

6:テレワーク中の勤務管理

産業別テレワークの導入状況

(引用元:令和2年通信利用動向調査の結果総務省)

 

新型コロナウィルス感染症の影響もあり、テレワークを行う企業が増えてきていますが、流通小売業も例外ではありません。総務省が行った調査によると、卸売・小売業のテレワーク導入状況は、2020年時点で47.8%。他業界と比べるとやや低めではあるものの、2019年の2倍以上に増えています。

テレワークでは、仕事の状況を直接確認できないので、より管理が難しくなります。効率の悪い方法で業務を行っている従業員がいたとしても、発見しにくく指摘もできません。

そこで、業務の取り組み方を可視化することで、状況を明確に把握できるようになります。問題点があれば改善策を講じるなど、管理側としてもサポートしやすくなり、効率アップが期待できるのです。

また、テレワークでは直接会話できないため、話の行き違いが起きてしまいがち。しかし業務を可視化しておけば、互いに内容を理解した上でコミュニケーションが取れるため、スムーズな報告、連絡、相談が可能になります。

話し合いのズレが少なくなれば、双方の作業効率もアップし、生産性の向上へとつながるでしょう。

 

7:従業員の研修や育成の進捗

店舗型ビジネスが多い流通小売業では、本社と店舗で研修を分担しながら、教育を行う場合がほとんど。新入社員研修や定期的なスキルアップ研修は本社が行い、通常業務は店舗でOJTで教える、といった具合にです。

その際、情報の共有が不十分だと、漏れやダブりが発生する恐れがあります。「教えた」「教わっていない」といったトラブルになりかねません。

そのため、誰が、どこからどこまでの教育を完了させているのか、進捗を可視化する必要があります。そうすることで、漏れなくスムーズに業務を行うことが可能になるのです。

また、教育には正解がなく常に改善し続けることが大切。研修手法に問題があり、社員の成長が遅いといったケースも少なくありません。そのため、研修の取り組み方を可視化し、課題点・改善策が見つかりやすい体制を整えておくことが重要です。

 

研修・教育における可視化ポイント

従業員への研修、教育は、会社の利益に関わる大切な業務。常に、最適で効果的な手法で行う必要があり、改善のための可視化が欠かせません。

では、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。可視化する際の主な3つのポイントをご紹介します。

研修・教育における可視化ポイント

 

1:目標を設定する

業務改善を行う際、原因を追求するには、現状と理想を比較する必要があります。現在の業務の取り組み方を見るだけでは、何が問題なのか、どう改善すべきなのかがわからないからです。

そのため、研修・教育を可視化するときは、目標を設定することが大切です。

例えば、新入社員を教育する場合は、いつまでに、どのくらいのレベルまで成長すべきなのか目標を設定します。そうすることで、途中経過を可視化した際、目標と比較して何が足りないのか、どのように教育していけば良いのか方針を決めることが可能になるのです。

従業員の教育は大抵の場合、一筋縄では行きません。細かい軌道修正を繰り返しながら、従業員のペースに合わせて指導することが大切です。しかし、目標がないと間違った教育を行ってしまい、その分、成長が遅れてしまう恐れがあります。効率よく教育を行うため、可視化と共に目標設定も欠かさず行いましょう。

 

2:弱点だけでなく強みも可視化する

可視化は業務改善に役立てられるものですが、悪いところを直すことだけが教育ではありません。強みを伸ばすことも、従業員の成長を促すために必要です。

『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』という書籍の中でも、著者の松井順一氏、佐久間陽子氏が以下のように述べています。

人は自分の能力を思っている以上に認識できていません。強みが見えておらず、弱みの克服だけが能力を高めることだと思っていたり、弱みの中の強みに目が向けられていなかったりします。組織の中での個人の能力向上を考える時、それを把握することから始める必要があります。

(引用元:「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」)

つまり、従業員の育成進捗を可視化する際は、改善点だけでなく評価すべき点も発見し、共有することが大切と言えます。良いところを目に見える形で表すことで、従業員はより「評価されている」と実感でき、モチベーションアップにつながるでしょう。

また、可視化することで見つけた従業員の強みは、従業員の配属を決める際にも役立ちます。適切な場所に配属された従業員は、能力を十分に活かすことができ、さらなる成長が見込めます。人事異動や新入社員の配属を決める際は、短所だけでなく長所も可視化しましょう。

 

3:教育を受ける側にも協力してもらう

研修を行う際は、従業員自身の問題点を解決することももちろん大切ですが、研修自体を見直すことも同じく大切です。本当に適切な手法で研修を行っているのか、より無駄なく、効率よく教育できる方法はないのか探ることで、より効果的な研修へと改善できます。

そこで、研修フローを可視化する必要があるのですが、研修を受ける側の従業員にも協力してもらうと効率的です。内容がわかりやすいか、研修で身につけた知識を業務に活かすことができたかどうか、フィードバックを受けることで、着実に効果的な改善策を見つけられるでしょう。

教育者側が良い研修だと思っていても、受講する従業員が理解しにくく、業務に活かせないようでは意味がありません。しかし、それは教育される側の立場に立たないとわからないことなので、可視化に協力してもらうのが有効なのです。

 

可視化する際の注意点

可視化する際の注意点

時間と費用、労力をかけて業務の可視化を行っても、業務改善に活用できなければそれらが無駄になってしまいます。きちんと成果につなげるため、可視化する際の注意点についても見ておきましょう。

 

注意点1:可視化を”目的”としない

業務の可視化でありがちなのが、可視化することをゴールとしてしまうこと。データ作成を終えた段階で満足してしまい、活用できずに終えてしまうパターンです。しかし、それでは業務が改善されないため、コストが無駄になってしまいます。

業務を可視化した後は分析し、改善策を実行することが大切です。そして、実際に効果があったかどうかチェックし、目標に満たなければ再度分析して改善する…といった、いわゆる「PDCAサイクル」を回してこそ、可視化する意味があります。

特に、売上げ管理や研修・教育は、最適解が常に変化する業務。可視化して瞬間的に改善されても、再び問題が発生する恐れがあります。可視化はあくまで手段であり、目的ではないことを忘れないようにしましょう。

 

注意点2:注目すべき箇所を絞る

業務を可視化する際は、現状を明確に把握するため、できるだけ詳細に書き記します。ただし情報量が多すぎて、重要箇所がどこかわからなくなる恐れがあるので、注意が必要です。

優先順位をつけず、手当たり次第に改善策を講じても、求めている結果が得られる可能性は低いです。解決できずに何度も試行錯誤を繰り返すこととなり、時間も労力も、費用も無駄になるでしょう。

よって、最も重要かつ早く解決すべき問題点と、その原因をはじめに見つけることが大切。分析や改善策を考える前に、注目すべき箇所を絞っておきましょう。

 

注意点3:活用のための工夫を行う

業務を可視化し、最適な改善策を導き出したとしても、活用しやすい体制が整っていなければ実行できません。

例えば、以下のような環境では、せっかく有効な解決策が見つかっても、実行されずに忘れられてしまう可能性があります。そのため、誰が見てもわかりやすいような形式で可視化すること、誰でも手軽に確認できる工夫を凝らすことが大切です。

  • 可視化したデータが整理されておらず、内容が理解しにくい
  • データの保管場所が複雑で、確認するのに手間がかかる
  • 可視化によって見つけ出した改善策が、日常業務に組み込まれていない

また可視化したデータと改善策を、日々自然と意識できるような工夫も有効です。可視化したデータをバックヤードに掲示する、朝礼・終礼ノートに記入するなど、忘れられずに実行してもらえる体制を作りましょう。

 

業務を可視化する方法とは

業務を可視化する最適な方法は、目的や内容によって違います。誰でもわかりやすく、かつ活用しやすい形式をとることが重要とはいえ、一体どうすれば良いのかと悩むこともあるはず。

そこで、ここでは主な3つの方法をご紹介します。相性の良い業務の内容・目的も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

方法1:フレームワーク

プロセスマップの作成例(セミナー企画の場合)

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)

 

業務の流れや仕組みを可視化するのに最適な「フレームワーク」。四角などで囲われた要素を、線や矢印で繋いで表記する方法です。

業務プロセスに無駄がないかを分析するのに役立ちます。また、原因追求もしやすいため、業務フローにおける問題発生時に活用できるでしょう。

例えば、作業時間を短縮したい場合は、フレームワークに記入した業務の流れを見直し、どこに無駄があるのか分析します。そこから効率の良い方法を考え、新たな業務フローを作成することで、効率よくスピーディーに行う方法を見つけ出すことができます。

また、教育の流れを可視化するときにもフレームワークがおすすめです。どの順番で研修を行うのかが明確になるため、複数人が教育を担当する場合でも、スムーズに引き継ぐことができます。どの段階までの教育が完了しているのか、進捗もフレームワークを元に確認でき、教え漏れやダブりを解消できるでしょう。

 

方法2:タスク方式

顧客への価値の提供状況を洗い出すシートの例

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)

 

「タスク方式」は、業務をリスト化することで可視化する方法。本当に取り組む価値があるのか、省くべきではないか、他の方法に変更すべきではないかなどの見極めを行うときに役立ちます。

タスク方式の可視化では、目的を記入するのがポイント。目的に対して無駄か、必要かを判断するためです。ただ闇雲に「必要」「不必要」を決めようとすると、判断を誤ってしまう可能性があるので、同じシート内に目的を記入し、正しく決断できるようにしましょう。

 

改善ボードのイメージ

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)

また、上図のようにタスク方式で可視化したものをボードや壁に掲示し、いつでも確認できるようにしておくと便利。実際に業務を行いながら可視化データを見て、無駄な作業かどうかを判断できますし、業務の目的も常にチェックできます。リストの記入漏れがあった場合でも、その場ですぐ書き込めるので、タスク方式を活用する際はぜひ掲示してみましょう。

 

方法3:ワークタイムシート

ワークタイムシートの例

(「松井順一・佐久間陽子(2021)『トヨタ流 仕事の「見える化」大全』株式会社アスコム」を参考に弊社で作成)

 

「ワークタイムシート」は、作業にかかる時間をチェックしたり、時間配分が適切かどうか分析したりするのに便利です。スケジュール表のように時間軸を記入し、何時から何時まで、どの作業を行うのか記入することで可視化できます。

上記の図のように、円グラフも作成しておくと、時間配分を確認しやすいのでおすすめです。

特に、短時間で何度も繰り返す業務は、一度にかかる時間が短い分、作業時間に無駄がないように思えてしまうもの。しかし、合計すると想像以上に時間がかかっていることがあります。円グラフではそれが明瞭になるので、適切な改善策を講じることができるでしょう。

また、ワークタイムシートはテレワーク中の業務管理にも役立ちます。従業員に1日の業務の流れと、それぞれにかかった時間を可視化してもらうことで、取り組み方を指導しやすくなります。従業員自身も時間管理を意識できるようになるため、テレワークを導入する際は、ワークタイムシートを活用してみると良いでしょう。

 

方法4:画像・映像の活用

流通小売業の業務の可視化では、画像や映像の活用も有効です。特に、商品の陳列業務や、倉庫・バックヤード内での在庫管理業務などで役立ちます。

映像や画像であれば、口頭では説明しにくい情報でも、一目でわかりやすい形式で可視化できます。写真やムービーで概要を可視化し、文章や音声で足りない情報を補足すれば、詳細まで漏れなくデータ化できるでしょう。

なかでも商品の陳列業務を可視化する場合は、売上げデータや顧客ニーズも共に記載するのがおすすめ。映像・画像と、数字を比較することで、原因を分析しやすくなるのでぜひ意識してみてください。

 

可視化の具体例

業務の可視化を具体的にイメージするため、いくつか例をご紹介します。目的や内容、シチュエーションに合わせて適切な方法で可視化する必要がありますが、迷ったときはこちらを参考にしてみてください。

 

具体例1:フレームワークを使った新入社員研修の可視化

フレームワーを活用した新入社員研修内容の可視化例

上記の図は、店舗型ビジネスにおける新入社員に向けた研修の流れを、フレームワークを使って可視化したもの。入社から始まり、集合・オンライン研修やOJTで教育、そして面談までのプロセスを可視化することで、どのような順番で、誰が何を教えるのかをわかりやすくしています。

入社してからいつまでに何を教えるのか、時期を記入するのがポイント。

例えば、3ヶ月目に行う本社研修・オンライン研修で事務業務を教育し、その後店舗で改めてOJTを行う、という流れを記載しておくと、店舗の教育担当者への引継ぎがスムーズです。本社研修とOJTにズレが生じないよう内容を把握しておく、店舗と本社で連携を取る、などの対策が可能になります。

また、教育を担当する部署が複数ある場合は、色で仕分けするとわかりやすくなるのでおすすめです。ただし、カラーを使いすぎるとかえって見にくくなるため注意しましょう。

 

具体例2:タスク方式で納品業務を可視化

タスク方式の例

上記の表は、作業時間の短縮を目的とし、タスク方式で納品業務を可視化したもの。業務の無駄な部分や、変更すべき点がないか判断しやすくするため、目的と目標を明記しています。

例えば、検品作業や品出し作業は省略できない作業なので、ここでは「◯」と評価しています。一方、仕分け作業やラベリング作業は、工夫次第で省略、短縮できると判断し「△」「×」と評価、および改善策を記入しています。

タスク方式で可視化する方法は、教育時にも活躍します。業務担当者に可視化シートを渡し、記入してもらうことで、本人が問題点・課題点・改善策を考えるきっかけになります。習慣づければ、効率よく取り組む考え方の癖が身につくので、ぜひ活用してみましょう。

 

具体例3:ワークタイムシートを使って時間配分を可視化

ワークタイムシートを活用した時間配分の可視化例

上記のシートは、1日の業務の中で、どの業務にどれほどの時間をかけているのかを可視化したものです。円グラフも記入し、作業時間の配分を明確にしています。

この方法では、どの業務に時間をかけるべきで、どの業務は短縮すべきなのかがわかりやすくなるのがメリット。上記例では時間の使い方を見直し、何がネックとなっているのかを記入することで、具体的な改善策を導き出しています。

テレワーク中の業務管理を行う際や、残業削減を行う際にも役立つ方法です。

 

まとめ

数多くの従業員を教育しつつ管理し、効率よく業務をまわすのは決して簡単ではありません。日々の業務に追われて分析する時間がなかなか取れない…とつい放置してしまいがちです。

しかし少しでも無駄を省き、効率よく業務を行うことができれば、時間に余裕ができます。分析、原因追求により多く時間を割くことができ、さらなる業務改善へと良い循環が生まれるでしょう。

そして業務の可視化は、問題点を効率よくスピーディーに見つけるのに役立つ方法です。忙しい会社、店舗こそ、ぜひ積極的に可視化を活用していきましょう。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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