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不足しがちなIT人材とは?言葉の定義、デジタル人材との違いや育成方法までわかりやすく解説!

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2022.07.05
『shouin+ブログ』マーケティング担当

ITやICT、IoTといったテクノロジーが急速に進化を続ける世の中で、企業はこの流れに「IT化」をもって対応していく必要があります。

しかし、IT化に必要な人材を採用・育成することは決して簡単なことではありません。実際にIT人材が不足していてお悩みの方もいるのではないでしょうか。

また、実際のところ、「IT人材はなぜ確保しないといけないの?」、「IT人材は採用した方がいいか、育成した方がいいか分からない…」などと分からないことが多いことと思います。

そこでこの記事では、IT人材についてその重要性から求められる役割などをくわしく解説していきます。IT人材の採用や育成についてもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

 

IT人材とは

IT人材とは、経済産業省による『IT人材の需給に関する調査』において、次のような人が対象となっています。

我が国の IT 人材としては、図3-1に示したように情報サービス・ソフトウェア企業(Web企業等を含む)においてITサービスやソフトウェア等の提供を担う人材に加えて、IT を活用するユーザー企業の情報システム部門の人材、ユーザー企業の情報システム部門以外の事業部門においてITを高度に活用する人材、さらにはITを利用する一般ユーザー等が存在する。

(引用:みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査 調査報告書

 

IT人材とデジタル人材はどう違う?

IT人材と似たような言葉として「デジタル人材」がありますが、両者の意味合いは少しずつ異なります。上記で紹介した経済産業省による調査内では、デジタル人材を「ユーザー企業のデジタル化を推進するための組織(例えばデジタルビジネス事業部など)に所属する人材」と明記されています。

簡潔に言えば、下図のようにIT人材のうち「企業のデジタル化(DX:デジタルトランスフォーメーション)を推進するための人材」がデジタル人材と言えるでしょう。

2030年までの試算対象とするIT人材

なお、DX(デジタルトランスフォーメーション)については、こちらの記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?どこよりも詳しく&わかりやすく解説!

 

IT人材が必要とされる背景

IT人材が必要とされる背景には、企業の「IT化」といった課題が深く関わっています。

今の時代、スマートフォンは1人1台持っているのが当たり前、生まれた時からインターネットと当たり前に触れ合ってきたデジタルネイティブなZ世代が社会人として活躍し始めるなど、企業はIT技術の導入と活用を無視できない時代になりました。

また最近では、コロナ禍により働き方の多様化が急速に進んだことから、リモートワーク環境の整備をはじめ、オンライン会議ツールの活用、通勤管理のデジタル化、ネットワーキングスペースの確保など、IT化の必要性を感じた企業も少なくないでしょう。

しかし、ITに関する知識や技術を持っている社員が会社にいなければ、適切なIT化は望めません。今、時代の変化に対応していくためにはIT人材が必要不可欠なのです。

 

流通小売業界でも求められている

百貨店やスーパーマーケットなどといった流通小売業界においては、今までITリテラシーの高さを求められることはありませんでしたが、近年は電子マネーやECサイトの普及から必要とされる場面が増えてきました。

なかでもECサイトは、コロナ禍の影響もありその需要は急速に増加しています。実際に経済産業省が2021年7月に発表した「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野のEC市場規模(BtoC)は2019年から2020年にかけて大幅に増加してることが分かります。

 

物販系分野の BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移(市場規模の単位:億円)

物販系分野の BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移

(参照:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査

 

IT人材はどれくらい不足している?

IT人材の必要性が理解いただけたところで、実際のIT人材の需要と供給について見ていきましょう。

下表をご覧ください。これは、前述した経済産業省による同調査の結果です。なんと、2030年にはIT人材が約16万~79万人も不足すると報告されています。需要の伸び率によって3パターンのシミュレーションが行われましたが、どのパターンにおいてもIT人材不足は確実な結果となりました。

IT人材の需要と供給

また、次に示す表はヒューマンリソシア株式会社が2020年に実施した調査の結果です。「人口に占めるIT技術者の割合」を国別にまとめています。

表を見ると、IT技術者の割合が最も高い国はスウェーデン(2.30%)、次いでフィンランド(2.11%)、アイルランド(2.01%)の順になっています。日本は35位(0.97%)と、ヨーロッパ諸国に比べると低い結果に。

 

国別:人口に占めるIT技術者の割合

国別:人口に占めるIT技術者の割合

(参照:ヒューマンリソシア株式会社:「【ヒューマンリソシア調査】 [独自推計]世界93カ国のIT技術者は約2,257万人『2021版:データで見る世界のITエンジニアレポートvol.4』を発表」)

 

これらのことから、日本国内においてはIT人材の需要増に対し、世界各国と比較した際のIT人材の割合が少ないことおよび国内における少子化も相まって、IT人材不足が加速していると考えられます。

 

IT人材の内訳

さてここからは、IT人材の3つの内訳についてご紹介していきましょう。経済産業省による同調査内では、IT人材を次の3つに分けて考えられています。

IT人材の内訳

それぞれについて簡単に見ていきましょう。

 

従来型IT人材

従来型IT人材とは「従来型ITシステムの受託開発、保守・運用サービス等に関する市場に従事する人材」を指します。

実は、IT人材は総合的にみて供給不足が課題とされていますが、この従来型IT人材については供給が需要を上回る可能性が指摘されています。ひとまとまりで「IT人材不足」と言われていますが、この従来型IT人材に限っては需要が縮小していくと予想されているからです。

 

先端IT人材

先端IT人材とは「AIやビッグデータ、IoT等、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できるIT人材」を指します。

この先端IT人材は従来型IT人材とは対照的で、将来的に需要が大幅に伸びると言われており、2030年には最大で55万人が不足すると報告されているほどです。

 

AI人材

AI人材とは「AI を実現する数理モデルについての研究者(ただし、学術・研究機関を除く) やAI機能を搭載したソフトウェアやシステムの開発者、AIを活用した製品・サー ビスの企画・販売者」を指します。

AI人材の需要は先端IT人材と同様に拡大していくと予想されており、供給不足は2030年には2018年比で約3~6倍と報告されています。

 

IT人材に求められる役割

IT人材に求められる役割

IT人材と呼ばれる方々は、具体的にどのような役割を担うのでしょうか。ここでは主に次の3つについて解説していきます。

 

IT人材に求められる役割

  • DX推進
  • ビッグデータの活用
  • AI・IoTの開発

くわしく見ていきましょう。

 

DX推進

まず、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)とは、簡単に言えば「デジタル技術を活用して、生活やビジネスを変革していくこと」です。

経済産業省による「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、DXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

企業におけるIT化の重要性はこれまでに解説しましたが、DX推進についても企業にとって重要な課題です。DX推進は、コスト削減や生産性の向上といった面から企業にメリットをもたらしますので、IT人材の重要な役割と言えるでしょう。

 

ビッグデータの活用

顧客情報や購買履歴といったビッグデータは、生産性の向上やマーケティングなどといった観点から企業成長に貢献できる分野です。

ビッグデータを扱うスキルを持った職種としては「データアナリスト」や「データサイエンティスト」があります。いずれもビッグデータの解析から今後の動向を予測したり、分析結果を業務改善に活用したりすることで企業へ貢献する役割を担っています。

 

AI・IoTの開発

AIyIoTといった技術は、そのシステム面から企業成長に貢献できる分野です。

たとえばAIであれば、これまでは目視で実施していた「規格外の製品を区別するための検査」をAIに置き換えることで、目視よりも精度高く実施できるようになることもあります。最近では受付や接客をAIが対応する場面も見かけるようになりました。

一方IoTでは、スマートフォンによる機械の稼働・操作や、ICタグを活用した倉庫管理の効率化などができる時代になっています。

AI・IoTの開発者としては、それぞれ「AIエンジニア」「IoTエンジニア」といった職種が当てはまりますが、システム開発の面から企業成長を図るといった意味で両者は同様の役割を担っていると言えるでしょう。

またAIやIoTの開発は、DXを実現するための重要な要素でもあります。くわしくは下記の記事で解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?どこよりも詳しく&わかりやすく解説!

 

IT人材は採用する?育成する?

これまでにIT人材が必要とされる背景やその人材不足についてお話ししましたが、ここからはIT人材の「採用」や「育成」に焦点をあてていきます。

IT人材を確保するためには「採用」がいいのか「育成」がいいのか。IT人材を求める多くの企業で議題にあがるポイントでしょう。採用と育成、それぞれのメリットとデメリットをご紹介しますので、ぜひ貴社の人材戦略の参考にしてください。

 

採用のメリット

IT人材を採用で確保するメリットは、やはり「即戦力になる点」です。新卒採用ではそうもいきませんが、企業で一定の経験を積んだ人材の中途採用であれば、入社時点から前線で力を発揮してくれるでしょう。

また新卒採用の場合は、自社の色に染められる点がメリットとなります。ただし、中途人材と違って即戦力にはならないこと、また育成が同時に必要になる点には注意が必要です。

 

採用のデメリット

IT人材を採用で確保するデメリットは、その「採用の難しさ」にあります。

前述したように、IT人材は人手不足が続いており、これは今後より深刻化していくと予想されているからです。

また経済産業省が実施した調査によると、日本のIT人材は諸外国と比べて「転職に消極的」であると報告されています。下図から分かるように、「転職経験がない」と答えた人の割合は諸外国平均で18.4%であるのに対し、日本では47.0%と大きな差があるのです。

日本と諸外国におけるIT人材の転職経験

(参:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」)

 

これらのことから分かるように、日本のIT人材はそもそもの数が少ない上に、転職を希望する人自体も少ないため、採用活動は困難を極めます。難易度の高い採用になる上に採用コストもかかりますので、効率的な方法とは言い難いでしょう。

とくに採用の競争力が低いとされる流通小売業界では、IT人材を採用により確保するのは至難の業です。流通小売業界においては、採用よりも育成に注力したいところです。

 

育成のメリット

IT人材を育成で確保するメリットとしては、次の点があげられます。                                                                                                                                                                                                  

  • 社員の質を高められる
  • 人材戦略が立てやすい
  • 定着率の向上が期待できる

自社でIT人材を育成することは、社員の質を高められるだけでなく、将来を見据えた人材戦略の設計にも役立ちます。採用における「いつ人材を確保できるか分からない」といった見通しの悪さをカバーできるでしょう。

また、社員の質が高まることで「定着率の向上」も期待できます。実際に2017年に実施された「人材育成および能力開発に関する調査」によると、約70%の企業が定着率の向上に効果を感じていました。

 

人材育成・能力開発はどういうことに効果があると考えているか

(参照:労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果」)

 

育成のデメリット

一方、IT人材を育成で確保するデメリットは、次の点です。

  • 時間がかかる
  • 教育コストがかかる

IT人材の中途採用者と比べると、当然ながら戦力となるまでには多くの時間と教育的コストがかかります。いかにコストパフォーマンスの良い方法で教育体制を整備できるかがポイントとなるでしょう。

また、教育者となる人材が足りない、受講者が多忙で教育を受けている時間がない、といった課題もあります。人材育成には多くのメリットがある一方、これを実現できないいくつかのデメリットもあるのです。

そこで次の章ではこのIT人材の育成に焦点をあて、育成における効率的な人材育成方法を2つご紹介します。

 

IT人材を効果的に育成するには?

IT人材の育成をしたいとは思っていても、「教育者としての人手を確保できない…」、「受講者が多忙で学習時間が確保できない…」などのような課題があることと思います。

そこで最後に、上記のような課題を解消しつつ人材育成を実施できる方法を2つご紹介いたしましょう。

 

マナビDXを活用する

マナビDXは、IT人材育成を推進するために経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が共同で制作したポータルサイトです。

サイト内では、デジタルスキルを学べる学習コンテンツが多数提供されているとともに、すべての社会人が身につけるべきデジタルスキルを示した「DXリテラシー標準」も掲載されています。

登録やログインが不要で利用できるほか、無償コンテンツも多数用意されておりますので、IT人材育成のスタートアップとして活用するとよいでしょう。

一部受講料がかかる講座もありますが、国の補助を受けての受講も可能ですので、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

マナビDX - あなたの学びに変革を!学んで身につくデジタルスキル​

 

eラーニングを活用する

eラーニング(e-Learning)は、デジタルデバイスやインターネットを利用した学習方法を指します。

たとえば「スマートフォンのアプリを使って学習する」「YouTubeの動画を視聴して学習する」といった形もeラーニングと言えます。

近年では「クラウド型eラーニングサービス」と呼ばれる、インターネットを活用したeラーニングサービスも増えており、多くの企業で活用されるようになってきました。

クラウド型eラーニングサービスには次のようなメリットがあり、とくに流通小売業界など「人の入れ替わりの激しい業界」や「人手不足が課題となっている業界」において効果的に活用いただける方法です。

クラウド型eラーニングサービス5つのメリット

  1. 場所に縛られずに研修を実施できる
  2. 現場の人手を必要としない
  3. 研修内容を平準化できる
  4. コスト削減につながる
  5. スタッフの入れ替わりに対応できる

くわしくはこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

eラーニングのメリット・デメリットとは?教育・研修を効率化するクラウドサービス事例をもとにわかりやすく解説!

 

まとめ

慢性的な人材不足が懸念されているIT人材。今回は、IT人材についてその重要性から求められる役割などをくわしく解説しました。

IT人材は、2030年までに最大79万人も不足すると報告されているため、その育成や人材確保が日本の大きな課題となっています。

本文中では、IT人材に求められる役割から人材確保の方法までくわしく解説しましたので、貴社の人材育成にお役立ていただけますと幸いです。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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