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MBO(目標管理制度)とは?意味・メリットから手順、失敗しない運用ポイントまでわかりやすく解説

用語解説 人事労務
2025.09.05
『shouin+ブログ』マーケティング担当

環境の変化が加速する今、企業に必要なのは「組織を動かす力」です。人材の多様化を受け入れた上で、全員で目標に向かって突き進むことがなければ、企業は生き残れません。

その対策として挙げられるのが「MBO」です。人事評価への活用で知られている目標管理手法のひとつです。

本記事では、「MBOとは何なのか」「どうやって取り組めば良いかわからない」という方に向けて、わかりやすく解説しています。具体的な手順や注意点、企業事例などもご紹介していますので、ぜひご参考にしてみてください。

 

 MBO(目標管理制度)とは? 

組織をマネジメントする方法には、さまざまな種類があります。MBOもそのうちのひとつです。

では、MBOとはどういった制度なのでしょうか。まずは基礎知識として、言葉の意味と類義語との違いを確認しておきましょう。

MBOの意味

MBOとは目標管理や目標管理制度のこと。わかりやすく一言で表すと、MBOとは「組織の目標達成を目指して行われる個人の目標管理」を意味します。ピーター・F・ドラッカー氏によって提唱された「Management by Objectives」の略称です。

MBOの目的は、組織の目標達成です。「組織の目標を達成するために個人は何をすべきか」を考え、目標を設定します。MBOには主な2つの特徴があります。

1つ目は、従業員が自ら目標を設定するという点。自分で目標を設定してもらうことにより、意欲や主体性の向上を図ることです。

2つ目は、目標の難易度です。MBOでは、ギリギリ達成できる「チャレンジ目標」を設定します。少し背伸びすれば達成できる”やや高め”の目標を掲げることで、成長をうながし、やりがいを持たせる狙いです。

つまり、MBOとは「従業員の主体性・積極性に焦点を当てた目標管理制度」なのです。

 

 人事評価制度・OKR・KPIとの違い 

MBOと人材評価制度・OKR・KPIとの違い

人事評価制度との違い

MBOはマネジメント手法のひとつであり、人事評価制度ではありません。目標を達成できたか、できなかったか判断するために評価は行いますが、あくまでそれは「手段」です。評価することが目的ではありません。

とはいえ、人事評価に反映されることが多いのも事実。個人の目標達成度に応じて適切に評価できる、という点においてMBOは優秀です。

 

OKRとの違い

それに対し、OKRは人事評価に反映しにくいという特徴があります。「OKR(Objectives and Key Result)」とは「目標と主要な結果」という意味の言葉です。目標と成果指標を設定・共有し、チームの飛躍的な成長を図る目標管理制度です。

企業の目標達成という最終ゴールは、MBOと同じです。しかし、OKRでは「あえて難易度の高い目標」を設定します。目標達成度よりも、過程や成長を重要視します。

また、MBOは個人の主体性を高めるための目標管理制度であるのに対し、OKRの目的は組織の成長です。目的や役割が異なるので、取り組み方にも違いが出てきます。

以下の記事では、OKRとMBOの違いについてわかりやすく解説しています。より詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

■参考記事はこちら

意外とわかりづらいMBOとOKRの違いとは?目標設定の仕方や共通課題についてもわかりやすく解説!

 

KPIとの違い

KPI(Key Performance Indicator)は日本語で「重要業績評価指標」の意味。目標の達成度を把握するための具体的な指標のことです。

MBOは「手法」であり、KPIは「指標」です。そもそも役割が異なります。

また、KPIには、測定可能な目標を設定するという特徴があります。一方、MBOには目標の定性化・定量化のルールはありません。測定基準にも違いがあるのです。

以上、評価制度・OKR・KPIと、MBOの違いを簡単にまとめると、このようになります。

  • MBOとは人事評価制度ではなく、マネジメント制度のひとつ
  • MBOとOKRでは、目的や目標の難易度などが異なる
  • MBOは人事評価に反映されることが多いが、OKRは反映されないことが多い
  • MBOは「制度」、KPIは「指標」
  • MBOには定量的・定性的な目標を設定可能、KPIは定量化が絶対

 

導入前に知っておくべきMBOのメリット

 MBO導入のメリットは、大きく分けて次の5つです。

MBOのメリット

メリット1.セルフマネジメント能力が向上する

MBOは、設定した目標に基づき、自身で管理をしていきます。

進捗管理をはじめ、目標達成のためにどう動くべきか、どんな工夫をすべきかなどを考えることにより、自然とPDCAサイクルを実行するようになります。結果、目標管理によってセルフマネジメント能力の向上につながるのです。

 

メリット2.モチベーションを上げるきっかけになる

P.F.ドラッカーが自身の著書で「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに置き換えることにあり、自己管理によって最善を尽くしたという強い動機がもたらされる」と解説しているように、セルフマネジメント自体が「最善を尽くそう」とする動機になります。

MBOによってやらされる環境ではなく「自分でやる環境」を整えることで、モチベーション維持に役立つでしょう。

 

メリット3.チームで同じ目標に向かって力を発揮できる

MBOでは、会社の目標に基づいて部門および個人の目標設定を行います。

会社の方針や目標を全員が理解し進めていく必要があるため、自然とチーム全員が同じ目標を共有し、同じベクトルで力を発揮しやすくなります。

 

メリット4.人材育成につながる

MBOは、その管理者が部下の目標状況を見ながら、適切な指導をしていく必要があります。

この、部下を育成する機会が自然に与えられることが、部下育成スキルの向上につながるMBOのメリットといえます。

 

メリット5.振り返りを行う機会づくりになる

MBOでは、3ヶ月毎、6ヶ月毎など定期的に達成度を確認するタイミングを設けます。振り返りを行う機会をあらかじめ設定しておくことで、自身の反省点や改善点を見出せるきっかけとなるでしょう。

なお、MBOでは設定した目標の達成度に応じて評価をつけますが、この点も客観的に評価が分かりやすく振り返りがしやすいといったメリットがあります。

 

MBOを導入する上で無視できないデメリット

MBO導入のデメリットは、大きく分けて次の3つです。

MBOのデメリット

デメリット1.公平な対応や評価が難しい

MBOでは部門および個人ごとに目標が異なること、また評価者が複数人から構成される場合はバラつきも生じることから、公平な評価を行うことが困難です。難易度の異なる目標設定および完全に平等とはいかない評価制度に対して適切な説明ができなければ、その不公平感から不満を持つ従業員がでてきてしまうでしょう。

実際にアデコ株式会社が実施した「人事評価制度の意識調査」では、評価制度に不満を持っている人は全体の約62%、なかでも評価制度に不公平感に不満を感じている人は約45%と報告されています。

「人事評価制度」に関する意識調査

参考:Adecco Group「人事評価に関する意識調査」

 

デメリット2.課題達成がノルマ化する恐れがある

MBOは、目標達成に向けた課題を設け自己管理をさせることで、課題達成に向けたモチベーションの向上などメリットが大きいものです。しかし、時には本来の目的を忘れてしまい、課題達成自体が目的になってしまうことや単に課題をこなすだけのノルマ感覚に陥ってしまう恐れがあります。

「課題達成に執着し、周りが見えなくなる」といった行動や、「ただ課題をこなしていればいいや」といった思考にならないよう、上司は適切な指導とアドバイスを行う必要があるでしょう。

デメリット3.上司次第ではチーム力が下がる恐れがある

MBOのメリットとしてチーム力向上をあげましたが、一方で上司の指導能力によっては、かえってチーム力が低下する恐れもあります。

評価制度における評価のバラつきや、指導者としてのスキルや部下育成力が不十分な場合など、上司が部下のストレスになる場面は少なくありません。

 

MBOの目標設定手順とポイント

MBOの目標設定手順

ここからは、MBOの目標設定の手順とそのポイントについてご紹介いたします。

 

手順1.会社の経営情報を明確にする

MBOとは、会社の目標達成という最終ゴールに向かって行われる制度。会社の目標をベースに、チームおよび個人の目標を設計します。

そのための土台づくりとして、まずは経営情報を明確にします。各部署・チームのリーダーは、会社の中長期の経営ビジョン、経営計画を確認し、メンバーに共有します。入社歴の浅い従業員も含め、全員が内容を理解できるよう、噛み砕いて簡単に伝えるのがポイントです。

また、MBOに関する知識の共有も必要です。自分がこれから何をするのか、何のためにやるのかがわからないと、意欲的に取り組めないからです。

MBOについて全く知らない人がいることも考え「MBOとは目標評価制度のことである」といった基本知識から、わかりやすく伝えましょう。

 

手順2.経営目標に合わせ、組織や個人の目標を設定する

経営情報の共有ができたら、次に部門目標およびチーム目標、個人の目標を設定していきましょう。

ここでは、必ず最終的には経営目標へたどり着くように、それぞれの目標設計を行うことが重要なポイントになります。目標設計がしっかりしていないと、全員が同じ目標に向かって動くことができずにチーム力が発揮できなくなる恐れがあるためです。

 

手順3.目標の達成要件を設定する

目標の達成要件は、客観的に分かりやすい方法で設定しましょう。明確な文言・数字で要件をまとめるのがポイントです。

また、要件は次の3つの視点から設定してください。3つの視点をクリアにすることで、課題内容と期限が明確に把握でき、セルフマネジメントも無理なく実行できるようになるでしょう。

<目標の達成要件における3つの視点>

  • 内容(求める成果や結果は何か)
  • 基準(内容に対する、量などの水準)
  • 期限(いつまでに達成すべきか)


 手順4.進捗確認や評価 

MBOは「目標設定」「進捗確認」「評価・振り返り」「次の目標設定」というPDCAサイクルをまわすことで機能します。目標設定がゴールではなく、定期的なチェック・改善を繰り返すことが大切です。

具体的には、以下のような流れで実施します。

  1. 目標設定
  2. 進捗確認:目標達成度を確認し、課題点・改善策を考える
  3. 振り返り:面談を実施し、結果を確認・評価する
  4. 次の目標設定:結果を踏まえて次の目標を立てる

次の目標を設定した後は、また「進捗確認」「評価・振り返り」を行い、そして次の目標を設定へ…このようにサイクルをまわすことで、個人および組織の成長を促します。

進捗確認や振り返りは、基本的に1対1の面談で行います。目標達成・未達成の要因を分析し、新しい目標を設定すべきか、難易度を上下させるべきか話し合います。なお、面談を実施する頻度は、目標設定から3カ月、6カ月後が一般的です。

 

 MBOの導入時によくある失敗や注意点 

MBOの導入には、トラブルがつきもの。むしろ、スムーズにいくケースの方が少ないでしょう。

とはいえ、コストは可能な限り無駄にしたくないところ。よくある失敗や注意点と対策をチェックし、リスクを減らしましょう。

 1.自分の目標ではなく「上司の目標」を設定してしまう 

MBOの目標は、基本的に上司と本人で相談しながら設定します。その際、よくあるのが「上司が目標を決めてしまう」という失敗です。

上司の立場にある人は、たいていスキルも経験も豊富。会社の状況をよく理解しているからこそ、部下に意見を押し付けてしまうのです。命令とはいかないまでも「この目標の方が良いのでは?」と無意識に誘導してしまうことがあります。

MBOとは、従業員が自ら目標を立てることで主体性を引き出す制度。サポートが必要とはいえ、あくまで主役は部下、本人です。

よって、目標設定の面談では「部下の意見を引き出す姿勢」が重要だと言えます。上司には、相手の意見を聞き出すスキル、コミュニケーションスキルが求められるでしょう。

また、上司と部下の信頼関係も影響します。信頼している相手には、本音を言いやすいからです。部下が自分の意見を素直に言えるよう、日頃から関係を築くことが大切です。

 

 2.チェック・アクションが先延ばしになる 

MBOにおいて重要なのは、目標設定・進捗確認・振り返り・次の目標設定のサイクルをまわすことです。

ところが、進捗確認や振り返りを疎かにしてしまうケースがよくあります。その原因の多くは、スケジュールにあります。上司と部下の予定が合わず「わかってはいるけれど時間がない……」と、面談が先送りになってしまうのです。

PDCAの「チェック」「アクション」が疎かになると、当然、次の目標を立てることができません。従業員のモチベーションも下がります。

そのため、スケジュールは予め決めておくことを推奨します。MBOを企画するとき、あるいは目標設定の時点で「進捗確認面談をいつ行うのか」「振り返り面談をいつ行うのか」「誰と誰が行うのか」を決めておきましょう。

 

 3.設定した目標が不適切 

目標は、その先の成長を左右する重要な要素です。目標が不適切だと、企業が求める人材へと育成できません。従業員本人も、思うような成果が得られずモチベーションが下がる恐れがあります。

不適切な目標とは、例えば以下のような特徴が挙げられます。

  • 内容が抽象的
  • 難易度が難しすぎる/簡単すぎる
  • 個人の目標と組織の目標が連携していない など

簡単に解説します。

内容が抽象的

内容が抽象的だと、目標達成に必要な「やるべきこと」がわかりません。行動基準を明確にするため、具体的にわかりやすく設定することが大切です。定量化できる場合は定量化を、できない場合は「何を、いつまでに、どのような状態にする」と、細かく明確に決めましょう。

難易度が難しすぎる/簡単すぎる

目標の難易度は、従業員のモチベーションに影響します。難しすぎるとやる気が損なわれるのはもちろんのこと、簡単すぎても「やりがい」を感じられません。少し背伸びしたら届く難易度を意識して設定しましょう。

個人目標と組織目標が連携していない

MBOとは、そもそも「組織に必要な人材を育てるため」の制度です。個人の目標を達成しても、組織の目標が果たされないのであれば、それは目標管理制度として失敗と言えます。

よって、組織目標との連携は重要です。事前に企業ビジョン・戦略を共有したうえで、個人目標の延長線上に組織目標があるか、随時チェックしながら設定しましょう。

なお、これら3つの特徴を持つ「不適切な目標設定」を回避するには、客観的な視点が必要です。1人で決めると主観的になりやすいため、上司のサポートが必須と言えるでしょう。

 

4.管理者のスキル不足

ここまでの解説にあるとおり、従業員を管理する者のサポートは、MBOにおいて非常に重要です。管理者のスキル不足が原因で制度が機能しない…なんてことも珍しくありません。

そのため、導入時は管理者のスキルアップが必要不可欠です。必要なスキルは多岐に渡りますが、例として以下が挙げられます。

  • コミュニケーションスキル
  • コーチングスキル
  • 目標管理スキル
  • マネジメントスキル
  • 人事評価スキル など

これらは、MBO運用のプロセスすべてにおいて重要なスキルです。習得しておくことで、効果的かつ効率的に取り組めるでしょう。

そのために組織側がやるべきこととして、スキルアップ研修の実施が挙げられます。MBOの運用開始前に、管理者がスキルを高められる機会を設けましょう。

 

 MBOを取り入れている企業事例 

目標設定の手順をご紹介したところで、実際の具体例を見ていきましょう。

グリー株式会社の事例

MBOの有名な成功事例として、グリー株式会社があります。

グリー株式会社では「事業の成長に貢献する組織・人材・カルチャーの創造」というミッションのもと、2007年にMBOによる目標管理を導入しました。MBOの運用を1on1(1対1のミーティング)によって支え、その体制を維持しています。

目標設定においては、会社目標に合わせた部門目標および達成要件を作成し、個別の目標に関しては1on1面談を行いながら調整を行い、個人のプライベートや希望キャリアなどを考慮した上で決定しているといいます。

また評価段階では、達成要件に合わせて5段階の基準を設けているそうです。たとえば「今月は○○と○○のアクションを実行する」といった目標ならば、それを実行できたかどうかを5段階の達成度で測定するといいます。

社内のアンケート調査では、「1on1に満足している」と回答した社員が全体の7割と好評だそうで、グリー株式会社の1on1を活用した目標設定はまさにMBOの成功事例といえるでしょう。

 

ヤフー株式会社の事例

大手IT企業であるヤフー株式会社の事例では、失敗事例からMBOの目標設定・管理について考えます。

ヤフー株式会社では2012年の人事制度改革によりMBOが導入され、社員にとってよりよい就労環境になるよう整備を進めました。

ところが実際は、課題達成を意識しすぎてしまったり(ノルマ化)、チャレンジなら何でも許されるだろうという雰囲気ができてしまったりなど、MBOが事業戦略につながらないという問題が生まれてしまったのです。

そこでヤフーでは、ヤフーが目指す4つの方針をもとに「バリュー評価」といったヤフー独自の評価制度を取り入れることで、この問題を解決しました。社員に経営方針を示すとともに、会社の事業戦略に貢献できたかどうかを、新しい評価の基準としたのです。

MBOはその運用次第でデメリットが生まれる場合もありますが、それをどのように乗り越えるか、いかに会社の経営目標に結びつけながら目標設定および管理ができるかが重要なカギとなることを、ヤフーの事例から理解いただけたかと思います。

 

まとめ

MBOとは、従業員の主体性を高め、成長を促す目標管理手法。口で説明するのは簡単ですが、実際はそう上手くはいきません。経歴もスキルも、性格も一人ひとり違う「人」を相手にするのですから、当然です。

しかし、部下と上司が、組織と個人の目標について話し合う……そのプロセスに価値があります。

MBO運用を成功させることも、目標に到達することも、もちろん重要です。ですが、従業員同士のコミュニケーションを増やし、信頼関係を築くことこそ、組織を強くするのに欠かせないものです。

まずは、企業と従業員がそれぞれ何を目指しているのか「話し合う時間を作る」ところから始めてみましょう。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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