eラーニングとLMSの違いとは?LMSの役割や導入メリットをわかりやすく解説!
利益率アップや社員の定着率向上など、人材育成は企業に大きな利益をもたらすもの。しかし、社員の育成状況を管理しきれない、研修を行っても効果がない.......と悩む企業が少なくありません。
そこでぜひ活用していただきたいのが「LMS」です。主に、eラーニングを行う際に取り入れられているシステムですが、「eラーニングとの違いがわからない」「どのようなものなのかよくわからない」という方も多いでしょう。
今回は、eラーニングとの違いや役割、機能、導入するメリットなどLMSについて詳しく解説していきます。また、具体的な活用事例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそもeラーニングとは?
eラーニングの「e」は「electoric」を指し、「電子的な」という意味です。直訳すると「電子的な学習」になりますが、具体的にどのような意味なのでしょうか。
『オンデマンド・ラーニング』という書籍の中で、著者のティム・スレイド氏はeラーニングを以下のように定義しています。
eラーニング=コンピューター、タブレット、スマートフォン、その他のデジタルデバイスで行われるあらゆる学習
(引用元:「ティム・スレイド(2021)『オンデマンド・ラーニング』日本能率マネジメントセンター」
ビジネスにおいては「業務を行う上で必要な知識・技術を、デジタルデバイスを使って習得すること」を指します。
(引用元:「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」パーソル総合研究所)
eラーニングの内容は、業務の手順や効率よく行うためのノウハウ、注意点など多岐に渡ります。
パーソル総合研究所が行った調査の結果を見てもわかる通り、eラーニングはさまざまな種類の研修に取り入れられています。従来の研修手法「オンライン集合形式」「対面集合形式」よりも多く行われている研修もあるほど、eラーニングは今、導入される機会が増えてきている研修スタイルなのです。
では、本記事で解説する「LMS」とは一体どのようなものなのか見ていきましょう。
LMSとは?
LMSは「Learning Management System」の略語。日本語では「学習管理システム」と訳されます。辞書を引いてみると、以下のように記載されています。
《learning management system》eラーニングなどで、学習者の成績や学習教材などを教師が統合的に管理するためのシステム。
(引用元:「デジタル大辞泉」小学館)
LMSとは、学習を管理するシステムのこと。ビジネスに限らず、教育機関などでも導入されています。
ビジネスでは主に、人材育成や研修の管理に活用されており、従業員と教育担当者もしくは講師、管理者が利用します。使い方は、LMSに備わっている機能や種類によって違いはありますが、大まかな流れは以下の通りです。
- システムの構築
- 教育担当者・講師がコンテンツをアップロード
- 受講者がアクセスして学習
- 学習データの可視化
- データの管理、運用
このようにLMSは、教育担当者・講師が研修コンテンツをデータベースにアップロードし、そのデータベースに受講者がアクセスして学びを得る、というもの。そのデータベース内にあるコンテンツの管理や、「どこまで学んだか」「どれほど理解できたか」などの受講者の学習データの管理などを管理者が行う、という仕組みです。
LMSは、受講者と教育担当者・講師、管理者が1つのサーバーを利用し、互いに情報を共有するという、いわば「橋渡し」のような役割を担っています。
eラーニングとLMSの違い
LMSは主に、eラーニングを行う際に導入されるプラットフォーム。セットで語られることが多いため、同じ意味と捉えてしまいがちですが、この2つは異なるものです。
eラーニングは、インターネットやデジタルデバイスを使った学び方のこと。LMSは、それを管理するためのシステムを指します。どちらもコンピューターやインターネットを活用して実施するものではありますが、「方法・手段」なのか「道具」なのかという違いがあるのです。
また、eラーニングを実施する際に使われるシステム・サービスを指す「eラーニングシステム」という言葉もあります。LMSは、eラーニングシステムに含まれる種類のひとつなので、LMSとeラーニングは同意義と捉えられることが多いです。
eラーニングにおけるLMSの役割
「eラーニングにLMSを導入すると便利」とは聞くものの、具体的にどのようなことが実現できるのでしょうか。eラーニングにおけるLMSの主な役割は以下の4つです。ひとつずつ見ていきましょう。
1:従業員の学習管理
従業員の能力を効率よく高めるには、現状の把握と分析、改善策の見極めが重要。しかし、社員1人1人の課題や成長を、人力で管理するのはほぼ不可能です。企業の規模が大きければ大きいほどより難しくなるでしょう。
特にeラーニングは、対面で行う集合研修やOJTよりも、管理者や教育担当者の監視が行き届きにくく社員への教育が大雑把になりがち。受講者は教材を提供されるだけで、「何から学び始めるべきなのかわからない」「自分に必要な研修はどれなのかわからない」というケースが少なくありません。
そこで活用されるのがLMSです。LMSを使うことで、どのような知識・スキルを習得しているのか、どのような能力を伸ばすべきなのかなど、従業員の学習状況を把握できます。
そして現状を把握した上で、従業員にとって必要な学習の提供が可能に。このようにLMSは、人材育成の効率化を手助けする役割を担っているのです。
2:研修に関するデータの可視化
効果的な研修を行うためには、分析と改善を繰り返すことが大切。しかし、データがなければ問題点や評価点、改善策は見つけにくいものです。見つけ出すことができても根拠がなく、「良かった」「悪かった」の評価が曖昧になってしまう場合もあります。
LMSは、このような研修に関するデータの可視化にも役立ちます。学習の進捗や理解度が、明確な記録としてLMS内に残り、それを根拠として「効果的だった」「効果的ではなかった」と研修を正しく評価できるのです。手法を変えるべきなのか、内容に問題があるのかといった課題点も、的確に見つかることでしょう。
3:eラーニングで使う教材を配信
eラーニングは、講師が作成したコンテンツを受講者が閲覧して学ぶスタイル。コンテンツを発信・受信するツールが必要となりますが、LMSはその役割も担っています。
従来のeラーニングでは、「動画ファイルやスライド資料をメールで送信する」「動画サイトにアップロードし、サイトのURLをメールで送信する」などの手法が取られていました。しかしこれらの方法には、メールの送信漏れが発生するという問題点があります。一斉送信する方法もありますが、それでは個人に合わせた研修を行うことができません。
一方LMSは、講師がコンテンツを登録するだけ、受講者がシステムにアクセスするだけで、研修を実施することが可能です。動画サイトのURLを、いちいち送信する必要もなく、送信漏れも防ぐことができます。
また受講者は、自分に必要な研修をLMS内にあるコンテンツから選び、知識・スキルを習得できます。個々に合わせた教育を効率よく行えるLMSは、人材の多様化が進んでいる今、特に適した配信ツールであると言えるでしょう。
4:学習スケジュールの設計
人材育成では、社員が何をどの順番で学ぶべきなのか、きちんと順序立てて教育することが大切。しかし、従業員が自分自身の能力を客観視し、計画を立てるのは簡単ではありません。教育担当者がサポートできれば良いのですが、人員不足や多忙などで難しい場合もあるでしょう。
LMSは、そのような学習スケジュールの設計にも活用されています。
学習進捗・理解度の可視化によって現状を正確に把握することができ、次に身につけるべき知識やスキルを見極められるようになります。使い方によっては、昇格や昇進などのステップアップに必要な学習について知ることも可能で、キャリア形成に役立つでしょう。
教育担当者とともに学習スケジュールを立てる場合も、集計済みのデータをもとに分析することができます。観察する、見極める、検証するといった工程が省略されるため、教育係の負担軽減にもつながるでしょう。
LMS(eラーニングシステム)の機能
幅広い役割を持つLMSですが、具体的にどのような機能が備わっており、どのように活用されているでしょうか。ここでは代表的な3つの機能をご紹介していきます。
学習コンテンツの一元管理
企業が取り扱う研修の種類が多いと、保管場所に困ってしまうもの。「誰のため」「何のため」の研修なのかがわかりにくく、いざというときに探す手間がかかります。
LMSでは、研修コンテンツをまとめておくことができます。必要なときに、必要な人に向けた研修をいつでもすぐに見つけられるのです。受講者も、自身が学習すべき教育内容をまとめて把握、そして整理できます。
一元管理に役立つ機能は、例として以下のような機能が挙げられます。
- チェックリスト機能
- ジャンル分け機能
チェックリスト機能
「チェックリスト機能」を搭載しているLMSは、1人の従業員が受講すべき研修が一覧で表示されます。その場合、従業員がチェックリストに従って研修を受講する、教育担当者がチェックリストに従って研修を促す、といった使い方ができます。
従業員が自主的に研修を行う場合は、何から学び始めれば良いか迷ってしまうものですが、チェックリストに従って効率よく学ぶことができるのです。
また、教育担当者がLMSを使って指導する場合は、人によって教え方や教える順序がばらつきがち。教育経験が少ないと、十分できないことも多々あります。しかし、LMSにあるチェックリストを活用することで、漏れなく、かつ効率よく教育を行えるのです。人材育成が統一化され、社員全体の能力をアップさせる効果が期待できます。
ジャンル分け機能
「ジャンル分け機能」は多種多様な研修コンテンツを見やすく、見つけやすくするためのもの。コンテンツを種類別に分けたり、従業員の階層ごとに分けたりすることで、受講すべき項目をまとめて発見する手助けができます。
なかでも階層ごとにコンテンツを分ける方法は、今所属する階層で学ぶべきこと、キャリアアップする際に学ぶべきことを把握できるので便利。社員の段階的な成長を促すのはもちろん、キャリアデザインにも貢献できるでしょう。
学習状況の管理
学習状況の管理は、LMSの要と言っても過言ではない重要な機能です。具体的には、以下のような機能が搭載されています。
- 日報機能
- クイズ機能
- テスト機能
- チェックリスト機能
日報機能
受講した研修や、学んだ内容を報告してもらうのに有効な「日報機能」。この機能を使うことで、従業員が何をどこまで習得したのかを確認することができます。
受講者と管理者が接する機会が少ない場合でも、日報で報告してもらえば、状況を把握することが可能です。本社と店舗が離れているような店舗型ビジネスでの研修や、リモートワーク中の研修実施に役立つでしょう。
クイズ/テスト機能
「クイズ機能」や「テスト機能」は、学習の理解度を把握するのに便利です。
研修後にアンケートやヒアリングを行うこともありますが、口頭では「理解できていた」と言っていたとしても、本当に理解できているかどうかわかりません。理解できている”つもり”で本当は身についていない、会社からの評価を気にして本音を言わない、などの可能性もあります。
「クイズ/テスト機能」を利用すれば、明確な数値として理解度を表すことができます。実力が明確になり、評価すべき点や課題点を適切に判断することができるのです。
またクイズやテストの評価は、従業員の自信につながります。実績が良ければ強みを自覚することができ、実績が上がれば成長を実感できるため、学びへのモチベーションアップへとつながるでしょう。
チェックリスト機能
学習の一元管理に役立つ「チェックリスト機能」は、進捗の把握にも活躍します。チェックが入っている研修・スキルは「習得済み」、入っていないものは「未収得」であることが明示されるので”教え忘れ”を防ぐことができます。受講者自身も、今後受講すべき研修が何かわかり、学習スケジュールの設計に役立ちます。
コミュニケーション
最近では、「コミュニケーション機能」を備えたLMSが注目を浴びています。受講者と教育担当者、そして管理者が報告・連絡・相談できる機能です。
具体的には、以下のような機能と使い方が挙げられます。
- コメント機能による質疑応答
- 動画レビュー機能で報告、フィードバック
- Web会議ツールでディスカッション
日報機能
「日報機能」などにコメント機能が搭載されていると、質疑応答を行うことができます。研修で学んだことに対し、受講者と教育担当者・講師が互いにコメントを残すことで、不安や悩みの解消につながるのです。また受講者のコメントを参考に、次に実施する研修の改善へと役立てることもできます。
動画レビュー機能
「動画デビュー機能」では、従業員が研修後、どのように取り組んでいるのかをわかりやすく伝えることができます。それに対し、教育担当者・講師がフィードバックを行うことで、さらに改善するにはどうすれば良いのかアドバイスもできるでしょう。
遠方で働く従業員やリモートワーク中の従業員に対しても、動画レビュー機能を使えば遠隔でのロールプレイング、OJTといった形の指導が可能になります。
Web会議ツール
「Web会議ツール」を利用すると、文字だけでは説明しにくいことの伝達が可能に。ディスカッションを導入した研修など、本来対面式でないと実施できない研修を実行できるようになります。管理者側および講師陣も、従業員の反応をリアルタイムで確認でき、研修内容の改善へと役立てることができるでしょう。
管理者側がLMS(eラーニングシステム)を導入するメリット
LMSの導入は、管理者側にも受講者側にもメリットがあります。それぞれどのようなメリットが得られるのでしょうか。
まずは、管理者側にとってのメリットについて解説していきます。
メリット1:労力と時間の削減
従業員の学習を管理するには、時間も労力も必要です。社員1人に対しても多くの時間と労力を割くこととなり、社員数が多ければ管理しきれない場合もあります。
LMSを活用すれば、「研修後の実施状況をヒアリングする」「理解度を確かめてデータとしてまとめる」「学習状況を共有する」などの工程を省くことができます。労力と時間を節約できるのは、管理者側にとって大きなメリットです。無駄を省くことで余裕ができた時間と労力は、研修コンテンツの改善や受講者とのコミュニケーション増加など、他の有意義なことに回すことができるでしょう。
メリット2:研修改善のためのデータ集計
学習の進捗、理解度の把握は、研修が効果的だったかどうかの分析に役立ちます。受講者の学ぶペースが早い、もしくは理解度が高ければ「わかりやすく効果的な研修だった」と言えますし、反対にペースが遅い、理解度が低い場合は改善が必要であると判断できます。
研修の評価と言えば、受講者へのアンケート実施が一般的ですが、受講者の人数が多いと手間がかかります。アンケートを集計するのに時間がかかり、分析が厳かになることも珍しくありません。
LMSは、それらの作業をシステムが行ってくれるので、管理者側のデータ集計に割いていた労力、時間を省くことができます。「クイズ機能」や「テスト機能」を使えば、より正確な理解度の把握も可能です。
研修の評価データを効率よく収集できれば、より早く改善策を導き出すことができます。さらに効果的な研修の実施へとつながるでしょう。
メリット3:人事異動時の労力削減
人事異動を行う際は、移動先の部署に、従業員のデータを引き継ぐ必要があります。今まで受講した研修内容、習得済みのスキルをまとめて、正確に伝えなければなりません。その際、文章を作成したり、口頭で伝えたりするのには時間も手間もかかります。ヒューマンエラーによる伝え漏れが発生する恐れもあるでしょう。
LMSには、所属する部署に関係なく従業員個人の能力・学習データが残っているため、わざわざ手作業で引き継ぐ必要がありません。部署、部門を異動したとしても、LMSにアクセスするだけで、簡単かつ正確に状況を把握することができるのです。そして、記録をもとに仕事を割り振りする、新たに学ぶべきスキルは何かを見極めるなど、異動後の業務・教育がスムーズになるでしょう。
受講者側がLMS(eラーニングシステム)を導入するメリット
それでは次に、受講者側が得られるLMSのメリットについて見ていきましょう。
メリット1:自分の強み・課題の把握
自分の能力を客観視するのは、誰にとっても難しいこと。新人社員に限らず、自己評価が低く自信を失っている、自己評価が高く向上心がない、といった従業員が少なくありません。
そこでLMSを活用することで、従業員は自身の能力を正確に把握することができます。どのようなスキルを、どれほどのレベルで身につけているのかが明示されるので、自分の強みや課題を発見するのに役立つのです。「理解度テスト」は特に正確な自己評価に貢献してくれるでしょう。
自分の強みを把握できれば自信になり、課題がハッキリすれば「改善しよう」という意欲につながります。モチベーションの向上という、従業員にとって重要なメリットをもたらすのです。
メリット2:自分のペースに合った教育が受けられる
従業員はそれぞれ持っている能力が異なり、成長スピードにも差があるもの。しかし、1人1人のペースに合わせた教育を行うのは容易ではありません。研修で学ぶスキルのレベルに物足りなさを感じる人もいるでしょうし、反対に、理解が追い付かず「自分は仕事ができない」と自信喪失になる人もいるでしょう。
LMSでは、さまざまな研修コンテンツをアップロードしておくことができ、従業員は自分に必要なものを選んで学習できます。現在所属している階層よりも、ハイレベルな学びを得ることもできるのです。
成長スピードが速い人にとっては、より早いキャリアアップにつながります。また、成長スピードが遅い従業員は、LMSにアップロードされているコンテンツを繰り返し見返すことで、理解を深めることができます。結果、個人の能力発揮へとつながるでしょう。
会社から与えられるだけでなく、従業員にも選ぶ権利が与えられる、という点でLMSは受講者側にも大きなメリットがあると言えます。
メリット3:能力アップへの道筋が立つ
従業員がeラーニングで研修を受ける際、何から学び始めれば良いのか迷ってしまうのはよくあること。ですが、LMSを活用することで、学習のステップを把握することが可能になります。
例えば、研修コンテンツを一覧で表示し、順番を割り振ることで、受講者は自分がいま学ぶべきことは何かを把握することができます。そして、次に学ぶべき内容が明確になり、能力アップへの道筋が立つのです。
どのようなステップで、どのように成長できるのかという見通しが立つと、安心感が得られます。特に、新入社員は何から学び始めれば良いのか、右も左もわからない状態です。「この会社でやっていけるのだろうか」という不安を抱えてしまいがちなので、学習の道筋を立てるサポートとして、LMSが活躍するでしょう。
メリット4:キャリア形成
どのようなキャリアを積むのか計画を立てることは、社員にとって非常に大切。将来設計が不明確だとモチベーションが下がりますし、最悪の場合、離職の原因となる恐れもあります。
LMSは、そういったキャリアのデザインにも役立つもの。何を学べば、どのような役職・職種へとレベルアップできるのかがわかるのです。
店舗型ビジネスを例に挙げると、一般社員が店長になるには、リーダーシップスキルやコミュニケーションスキルが必要です。企画職に就くには、業務で利用する専用システムの使い方などを学ぶ必要があると考えられます。
階層別の研修コンテンツをLMSにて提供すれば、どのようにキャリアアップしていけば良いのか具体的にイメージできます。「この会社で成長していくことができる」という安心感が、モチベーションの向上につながるでしょう。
LMSの種類
LMSは大きく分けて「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。この2つはサーバーの設置場所が異なり、実現可能なこと、得られるメリットもそれぞれ違います。
LMSを導入する際は、どちらのタイプが自社に合うのか見極めることが重要です。2つの特徴について確認しておきましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、社内に設置したサーバーにLMSをインストールするタイプ。サーバーの準備やLMSの構築を自社で行い、社内ネットワークを通じて利用するものです。
主に、以下のようなメリットがあります。
- トラブル発生時やシステム変更時、外部とやりとりをする必要がなくスムーズ
- LMSのカスタマイズの自由度が高い
- セキュリティを強化しやすい
オンプレミス型は自社でシステムを構築するため、トラブル発生時やシステム変更時も、自社で対応します。LMSを提供するベンダーに連絡を取り、対応を待つといったやりとりがなく、自社のペースに合わせてスムーズに対処できるのがメリットです。
システムを一から構築するので、細部まで自社のニーズに合わせたLMSを実現できます。運営開始後、従業員からの要望があった場合も、自由にカスタマイズすることが可能です。
また、社内ネットワークを使うため、LMSにあるデータが外部に漏れる心配が少ないのもメリット。システム構築時の工夫次第で、セキュリティを高く設定することもできるでしょう。
ここまで聞くとかなり魅力的ですが、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。
- 構築から運用まで時間がかかる
- システム構築/管理に詳しい技術者が必要
- 初期費用が高い
- トラブル対応への労力がかかる
LMSを一から構築しなくてはならないので、運用開始までに時間がかかります。自社にシステム構築に詳しい人がいなければ、新たに技術者を雇ったり、外部に発注したりする必要もあります。そのため、LMSを利用してみようと思っても、なかなか実行に移せないのがデメリット。採用や発注のための費用がかかるのも、企業にとって痛手となるでしょう。
またトラブル発生時、外部とのやり取りが要らない一方で、自社ですべて対処しなくてはならないという制約も。スムーズに解決できれば良いですが、うまく進まなければかなりの労力を消費することとなります。ここでも、トラブルに対応できる技術者の雇用、もしくは育成が必要です。
このように、オンプレミス型は自社で完結できるという点では優れていますが、従業員の労力や時間、コストがかかるというリスクが潜んでいます。
では「クラウド型」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
クラウド型
「クラウド型」は、LMSのサービスやソフトウェアを販売・管理している企業のサーバー、ネットワークを利用するタイプ。既に完成されたLMSに登録し、コンテンツをアップロードする形式です。
クラウド型には、主に以下のようなメリットがあります。
- 構築/トラブル対応/セキュリティ対策の手間がかからない
- サーバー準備やシステム構築の必要がなく、利用開始までの時間が比較的短い
- 初期費用が少ない場合が多い
- 場所を限定されずどこでもアクセスできる
「オンプレミス型」とは違って、クラウド型はシステム構築を行う必要がありません。トラブルへの対処やセキュリティ対策なども、ベンダー側が行ってくれます。そのため、技術者の採用や育成が必要なく、比較的早く利用を開始することができるのです。
多くのクラウド型LMSは、従量課金制を採用しており、初期費用が少なく済むのもメリット。月額料金を支払えば利用できるため、導入のハードルが低いでしょう。
またクラウド型は、サーバーがインターネット上にあるため、いつでもどこでも利用できるメリットがあります。従業員の自宅や、離れた場所からのアクセスも可能です。特に、全国に従業員がいる店舗型ビジネスは、場所が限定されないクラウド型が適していると言えます。
しかし、クラウド型にも以下のようなデメリットがあります。
- システムのカスタマイズに限度がある
- セキュリティ対策は提供側に委ねられる
一からプラットフォームを構築するのではなく、作られたものを使用するため、機能や表示形式などをすべて希望通りにするのは難しいと考えられます。ただし最近では、さまざまな機能を搭載した利便性の高いLMSが提供されているので、特別なこだわりがない限り問題ないでしょう。
セキュリティに関しては、自社ではなく提供する企業の匙加減によるもの。そのため、きちんと対策を強化しているLMSを見極めることが大切です。
LMS(eラーニングシステム)の活用事例
LMSの導入によって具体的にどのようなことができるのか、どのような効果が得られるのかをイメージするため、活用事例をいくつかご紹介します。導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
事例1:株式会社オンリー
全国に約60店舗展開しているビジネスウェアショップ「ONLY」を経営する、「株式会社オンリー」は、LMS「shouin+」を活用して以下のようなことを行っています。
- 従業員が1ヵ月で学ぶ知識・スキルの項目を提示
- 動画レビューでスキルの習得状況を把握
- 検定機能で知識の習得状況をチェック
- 動画化したマニュアルの提供
「株式会社オンリー」では、動画レビュー機能や検定機能を使い、知識やスキルの習得状況を把握。そして、従業員1人1人に合わせた教育を実現しました。今まで問題となっていた、社員の能力の差が縮まり、平準化されつつあるそうです。
また、LMSにアップされた動画マニュアルは、OJTの負担軽減につながっているとのこと。クラウド型の「shouin+」は、コロナ禍でも自宅での学習を可能にし、従業員からも「動画を見て何回も確認できた」といったポジティブな声が上がっているそうです。
事例2:株式会社ユナイテッドアローズ
株式会社ユナイテッドアローズは、紳士服・婦人服・雑貨など幅広いファッションアイテムを取り扱うセレクトショップを、全国に展開している企業。LMS「shouin+」を活用して以下のようなことを実施しました。
- 動画コンテンツ配信による業務知識のインプット
- クイズ・チェックリスト・検定で理解度の確認
- 動画レビューと日報機能を活用したアウトプット
同社では、新入社員が目指すべき入社1年後のゴールから逆算し、月ごとに区切った学ぶべき業務の知識を、動画にしてLMSにアップ。計画的に育成できるようなシステムを作っています。
研修の内容を理解できているかどうかの確認には、クイズやチェックリスト、検定機能を活用。さらに、動画レビュー機能と日報機能を使うことで、受講者がアウトプットする機会を設けました。その結果、従業員と教育担当者は遠隔でもコミュニケーションをとることができ、フィードバックや悩み相談に役立っているそうです。
これらの取り組みにより、同社は以前抱えていた「遠隔で新人研修を実施しなくてはならない」「早期育成を強化しなくてはならない」「受講者がアウトプットする機会を増やしたい」という3つの課題をクリア。接客レベル目標値に対する達成率は、例年と比べて約2.5倍にも向上したとのことです。
期末に行うアンケートでは、新入社員が働く店舗の店長の97.6%が、LMSは新卒社員の成長に効果的だったと答えてくれたのだそう。また、NPS(ネットプロモータースコア:顧客満足度を測る指標の1つ)やオンラインハンドブックなど、他サイトと連携が取れるという点でも、LMSの評価ポイントとして挙げられています。
事例3:株式会社ミュゼプラチナム
美容脱毛事業を展開するミュゼプラチナム、化粧品開発やまつ毛エクステなどの事業を展開するミュゼコスメを経営している株式会社ミュゼプラチナムは、LMS「shouin+」を以下のように活用しています。
- 日報機能を使ってスキル習得の状況把握
- コメント機能によるフィードバック
- コメント記入による、新人スタッフへのメンタルケア
「株式会社ミュゼプラチナム」が特に高く評価しているLMSの機能は、日報機能と、それに付随するコメント機能です。
日報機能は、研修中の従業員が本社にいる「トレーナー」に向けて報告する際に活用。業務の取り組み方について報告を受けることで、スキルの習得状況をリアルタイムで把握することが可能になりました。そして、受け取った日報にトレーナーがコメントし、細やかなフィードバックを行っているそうです。
これらの活動は、研修の事前準備の効率化や、従業員のモチベーションアップにつながっているとのこと。また、従業員からのコメントにトレーナーが答えることで、不安や悩みの解消に役立っているそうです。新人スタッフへの、適切なタイミングでのメンタルケアが可能になった、との声もあります。
また「ミュゼコスメ」には、動画研修コンテンツや、学習状況を把握するためのクイズ機能を活用しています。そこでのスタッフの回答状況、動画の視聴者数を集計し、内容の改善に役立てているのだそうです。
まとめ
従業員を育成する際は、社員同士のコミュニケーション、観察、適切な指導が欠かせません。直接接することでモチベーションが上がったり、愛社精神が湧いたりと、やはり人との関わりは欠かせないものです。
しかし、データ管理や分析、情報共有などは機械が得意とする分野であり、頼ってみるのもひとつの手です。軽減された社員への負担・時間・労力は、より会社の利益につながることに投資することができます。
少しでも人材育成の効率化を図りたいという方は、ぜひLMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。