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職務等級制度(ジョブグレード)とは?職能資格・役割等級との違いや人事評価に活用するメリット、導入手順を紹介!

ノウハウ ナレッジ
2023.09.15
『shouin+ブログ』マーケティング担当

近年、よく耳にする「等級制度」というワード。なかでも「職務等級制度」は、海外では、もはやスタンダードとも言われる人事制度で、日本でも大手企業を中心に導入を開始しています。

今回は、そんな職務等級制度について解説。導入するメリット・デメリットや導入方法、企業事例などもご紹介していますので、職務等級制度について知りたい方、導入を検討している方はぜひお役立てください。

 

職務等級制度(ジョブグレード)とは

職務等級制度における「職務」とは、そもそもどういう意味なのでしょうか。厚生労働省が紹介する資料によると、以下のように定義されています。

職務=概ね1人の従業員が、責任をもって遂行すべき精神的、肉体的活動を要する仕事の集まりを指す。

引用:「職業能力評価基準[活用事例集」中央職業能力開発協会

つまり「職務」とは、社員それぞれが担う仕事、責任を任されている仕事すべてのこと。その職務を等級で区分し、人事評価に適用する制度を「職務等級制度」と言います。

同資料では以下のように定義しています。

職務等級制度=職務等級制度とは、従業員一人ひとりが担当している職務(役割)の重要度や困難度、つまりその「職務の大きさ」を共通の物差しで測り「等級」という区分で表したもので、達成された成果に応じて公正な報酬を実現するために基礎となる制度です。

引用:「職業能力評価基準[活用事例集]」中央職業能力開発協会

職務等級制度では、職務内容の重要度や困難度が高いほど、成果の達成度が高いほど、報酬が増えます。従業員の能力や成長幅に応じて報酬を決める従来のやり方とは違い、職務の価値と成果にフォーカスするものです。

 

職務等級制度が注目されている背景

職務等級制度が注目されている背景には、ジョブ型雇用の推進と浸透があります。

「ジョブ型雇用」とは、企業が求める人材の職務内容・スキル・待遇などを明確に定義したうえで、募集・採用する雇用形態のこと。総合的な能力を求めてポテンシャル重視で雇用する、従来の「メンバーシップ型」とは対照的に、知識豊富で高スキルなスペシャリストをピンポイントで雇用するものです。

経済環境が急速に変化する現代、多くの企業が大幅な経営改革を迫られています。そして変革には、知識が豊富で高いスキルを持つ人材のスピーディーな確保が必要です。

そのため、ジョブ型雇用を推進する企業が増えているのです。海外企業に比べると、やや遅れ気味ではあるものの日本でも増加傾向にあります。

「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果」パーソル総合研究所

引用:「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果」パーソル総合研究所

 

パーソル総合研究所」が2020~2021年に行った調査によると、ジョブ型人事制度導入済み企業は全体の18.0%。導入を検討している企業を含めると全体の約6割と、ジョブ型雇用に対し前向きな企業が多いことがわかります。

働き方、雇い方が変われば”適切な人事評価”も変わるもの。ジョブ型雇用には、従来の勤続年数や年功序列で報酬を決める方法は適していません。したがって、職務の価値と成果を基準に評価する、職務等級制度の注目度が高まっているのです。

また、近年多くの企業が取り組む「デジタルトランスフォーメーション」通称「DX」には、デジタルスキルの高い人材が必須。そのような人材は年齢が若い場合も多く、若年社員に重要な職務を任せるケースも珍しくありません。

その際、年功序列の人事制度では適切に評価できません。職務に見合う対価が得られない、といった状況になりかねないのです。その結果、貴重な人材を逃す恐れがあります。

このような世の中の変化、企業が置かれる環境の変化が影響し、人事評価制度の在り方を見直す動きが生まれていると考えられます。

 

等級制度の種類

等級制度には、職務等級制度のほかに「職能資格制度」と「役割等級制度」があります。下記のグラフを見るとわかるように、今のところは3つの制度の間に有意差はありません。自社に適した制度を採用することが大切です。

「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果」パーソル総合研究所

引用:「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果」パーソル総合研究所

では、それぞれの特徴について見ていきましょう。

 

職能資格制度

職能資格制度とは、従業員の能力に応じた資格、いわゆる「職能資格」を設けて評価する人事制度のこと。能力を基準に報酬や待遇を決定する、従来の日本で行われてきた評価制度です。

職能資格制度では、職業経験と訓練を積むことで能力が上がるという考えのもと、勤続年数が長いほど能力が高いと判断します。そのため、勤続年数が長い社員ほど賃金が上がりやすく、年功序列で組織が構成される傾向にあります。

 

職務等級制度

職務等級制度は、職務を基準とする人事評価制度。社員1人ひとりに、職務の重要度や難易度に応じた等級を与え、その等級で”どれほど成果を上げたか”により報酬が決まります。

報酬を決める際は、勤続年数や年齢は基準に含まれません。また、同じ職務を行う従業員は、雇用形態に関係なく等しく評価します。

 

役割等級制度

役割等級制度は、役割を基準に評価する制度。会社から与えられた役割の重要度によってグレードがつきます。そして「役割をまっとうできているか」「役割を果たす成果を出せているか」で評価します。

役割等級制度でも、年齢や入社歴は評価に響きません。そのため、若い社員や入社して短い社員が、勤務歴の長い社員よりも高い等級に配分されることもあります。

 

職能資格制度との違い

職務等級制度と職能資格制度は、具体的にどう違うのでしょうか。主な3つの違いをピックアップします。

職務等級制度と職能資格制度との違い

違い1:報酬の決め方と変更するタイミング

従業員の能力を基準に評価する職能資格制度は、勤続年数によって報酬が決まることが多いです。年度替わり、昇給のタイミングで給与を見直します。

一方、職能資格制度では、職務が変わらない限り給与は変わりません。社員が賃金を上げるには、より価値の高い職務を担うか、より大きな成果を出す必要があります。

 

違い2:育成する従業員のタイプ

職能資格制度は、幅広い知識・スキルを持つ「ジェネラリスト」の育成に向いている制度。職務が変わっても評価基準が変わらないので、人事異動を実施しやすく、幅広い経験を積んで能力を伸ばすことができます。

対する職務等級制度は、「スペシャリスト」の育成に適している等級制度。決められた職務で成果を上げることに注力してもらうことにより、専門的な知識・スキルの向上が見込めます。

 

違い3:人事異動の有無

ジェネラリストが育成されると、人事異動を実施しやすくなります。幅広い知識・能力があるので、異動で職務が変わっても能力を発揮できるからです。

よって職能資格制度は、人事異動を頻繁に行う組織、定期的に組織変更を行う組織に適していると言えます。従業員の能力で区分するため、職務が変わってもグレードが下がらないというのもメリットです。

それに対し職務等級制度は、職務が変わるとグレードが変わります。人事異動を行うと給与額が変動してしまうので、基本的に組織変更は行いません。組織体制が完成しており、今後も変更する予定のない企業に向いていると言えます。

 

役割等級制度との違い

職能資格制度と職務等級制度のハイブリッドとも言われる、役割等級制度。職務等級制度と共通する部分もありますが、内容も特性も違います。

違い1:職務内容の柔軟性

職務等級制度と同様、役割等級制度も年齢や勤続年数などは人事評価に影響しません。「与えられた役割をまっとうできているか」を基準とする成果主義な制度です。

ですが、職務内容は変更することがあります。あくまで役割を果たしたかどうかが重要なのであり、”何をしたのか”は評価対象にならないからです。

職務内容に柔軟性がある、という点で職務等級制度と違います。

 

違い2:人事異動・組織変更への対応

役割等級制度は、職務内容が変わっても、役割の重要度が同じであればグレードは変わりません。職務変更による賃金増減が発生しにくく、人事異動や組織変更に対応しやすいと言えます。

一方、職務等級制度では職務内容が変わると等級が変わります。人事異動や組織変更を行いにくい制度です。

役割等級制度は、職能資格制度よりも成果主義・実力主義でありながら、職務等級制度よりも人事異動・組織変更に対応しやすい、まさに中間の制度であると言えます。

 

違い3:従業員に求められる行動

職務等級制度では、従業員に成果を出すことが求められます。それぞれの等級で設けられた基準をクリアし、大きな成果を上げた社員ほど高く評価されるシステムです。

一方、役割等級制度で重視するのは、会社から与えられた役割を果たすこと。職務内容を限定せず、役割をまっとうするためのあらゆる行動が求められます。自主的に考えて行動したり、新しい取り組みを始めたりといったことも、評価に含まれます。

そのため職務等級制度と比較すると、やや「ジェネラリスト育成向き」と言えるでしょう。

 

人事評価に活用する上でのメリット

多くの企業が注目する職務等級制度ですが、具体的にどのような利益を得られるのでしょうか。主な4つのメリットについて見てみましょう。

人事評価に活用する上でのメリット

メリット1:「同一労働同一賃金」実現による人材の多様化

近年、働き方改革の一環で注目されている「同一労働同一賃金」。雇用形態の異なる労働者への、不合理な待遇を改善する働きのことです。

厚生労働省では、同一労働同一賃金を以下のように定義しています。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

引用:「同一労働同一賃金特集ページ」厚生労働省

同じ職務を行っているにも関わらず、雇用形態の違いが原因で賃金に格差が生じている場合、その待遇は公平とは言えません。ですが、職務等級制度にて、同じ職務を行う従業員全員を同じ等級に区分することで、合理的な待遇を実現できるのです。

高い専門スキルを持っていても、事情があってフルタイムで働けない労働者、非正規雇用で働きたい労働者は数多くいます。職務等級制度の導入により、同一労働同一賃金が実現された場合、そういった優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

職務等級制度は、働き方の多様化が進む現代に適した制度なのです。

 

メリット2:専門知識の高い従業員を育成できる

職務等級制度では、社員に職務内容を明確に提示します。自分がどのような仕事をするのか、何で成果を出せば賃金を上げられるのかを、社員が把握している状態です。

すると、社員はその職務に専念するようになります。広く浅くではなく、決められた職務について深く学び、経験することにより、専門知識・スキルの高い人材へと成長するのです。

特に最近は、ITの専門知識が豊富な人材の需要が高まっています。そのような環境下において、ITのスペシャリストを育てられることは、企業の強みとなるでしょう。

 

メリット3:職務内容と賃金基準の透明化

テレワークなど、社員を常に監視できない状況も、今では珍しくありません。そのような環境でも、社員1人ひとりの職務内容とその成果が明確になるのは、職務等級制度のメリットです。

また、職務内容と賃金が連動していることから、賃金基準の透明化にもつながります。「なぜこのような給与額なのか」がハッキリと示されるため、従業員が納得しやすいのです。

このような職務内容と賃金基準の透明化は、企業に対する従業員のエンゲージメント向上に役立ちます。

 

メリット4:評価者の主観に頼らない公平な評価

職務等級制度における評価基準は「職務」と「成果」。基準が明確かつ定量化しやすい制度なので、評価者の主観が入りにくく、客観的に人事評価できます。

人事評価において、客観的な視点を持つことは非常に重要。誰が行っても同じ結果になる評価を行うことで、従業員に納得してもらいやすくなります。たとえ低い評価がついても、理由がハッキリしていれば、事実を受け止めることができます。

また、公平に評価を与えることによる、会社への信頼度アップも期待できます。最終的には、従業員のモチベーション向上、定着率向上とさまざまなメリットが得られるでしょう。

 

メリット5:人件費の無駄を削減しやすい

勤続年数に応じて賃金が上がるシステムは、将来、膨大な人件費を抱えるリスクがあります。役職が外れ、重要度の低い職務を担っているにも関わらず、賃金は高いまま……というような人件費の無駄が生じる可能性があるのです。

一方、職務等級制度は職務の価値に応じて賃金が決まるため、そのような不合理な待遇の防止になります。会社に大きな利益をもたらす職務の社員には高い賃金を、と効率よく人件費をコントロールできます。

人件費が利益を圧迫し、経営が厳しくなるケースも少なくありません。将来、無駄な人件費に苦しまないためには、早いうちに人事システムを見直すことが大切です。職務等級制度は、その対策の第一歩となるでしょう。

 

人事評価に活用する上でのデメリット

多くのメリットをもたらす職務等級制度ですが、リスクもあります。導入後に後悔しないよう、デメリットも確認しておきましょう。

人事評価に活用する上でのデメリット

デメリット1:離職者が増加するリスクがある

勤続年数が評価に影響しない職務等級制度では、長く務めるメリットがありません。そのため、離職者が増える可能性があります。

また制度を変えた際、一部の従業員の賃金が下がることがあります。例えば、勤続年数が長く高い給与を得ていた社員が、グレードの低い職務に区分され、給与が下がるというようなケースです。その場合、減給された従業員は退職する可能性が高いです。

離職者を増やさないためには、社員に「どうすれば賃金が上がるのか」を明確に説明することが大切。グレードが低い職務でも成果を出せば高い評価を得られる、と道筋を示すことで不安が解消されやすくなります。

 

デメリット2:従業員の主体性が失われる恐れがある

職務等級制度では、従業員1人ひとりの職務内容を予め決めておきます。そして従業員はそれぞれ、評価対象の職務に専念することとなります。

専門的なスキルが磨かれるという点においてはメリットですが、その反面、評価対象の職務以外の仕事をしなくなる恐れがあります。「評価されないのなら、やらなくても良い」と判断し、必要最低限のことしかしなくなる可能性があるのです。

その結果、従業員の主体性が失われてしまいます。自ら考えて動く社員を必要とする職場にとっては大きな痛手です。

そうならないためには、職務等級制度の導入が自社にとって本当に良いことなのか、きちんと見極める必要があります。決められた職務に専念してほしいのか、主体性を持って行動してほしいのか、自社が社員に求めることを明確にしましょう。

 

デメリット3:運用に高度なスキルが必要

企業が新しい取り組みを始める際、少なからず人事に変化が起きます。新しく職務が増えたり、社員の職務を変える必要が出てきたりすることもあるでしょう。

職務等級制度を導入すると、そのような変化が起きたときの対応が困難になります。新たに誕生した職務を適切な等級に区分し、社員の適性に合わせて職務内容を組み替えるのには、高度なスキルが必要です。

スキルが不足していると、従業員への待遇が不合理になる恐れがあります。かといって、新しい取り組みにチャレンジするのを躊躇っていては、企業は成長できません。よって、豊富な知識と高い人事スキルが必要となるのです。

 

デメリット4:新制度を受け入れられない社員が不満を抱く

人事評価は、従業員のモチベーションに関わる重要な要素。制度の変更を受け入れられない従業員は、モチベーションが大きく下がる恐れがあります。

特に、職能資格制度を長く採用してきた企業では、ベテラン社員が抵抗を示す可能性が高いです。新制度に不満を持ち、離職してしまった場合、企業は長年培ってきたノウハウを持つ人材を失うことになります。

そのため、職務等級制度を導入する際は、制度の実態と導入する理由、目的についてきちんと社員に説明することが大切です。職務価値が低いグレードに区分されても、成果を出せば高い報酬が得られるなど、賃金に関する不安を解消するよう説明することで、離職を防止できるでしょう。

 

職務等級制度の導入手順

ここからは、導入手順について解説します。状況や手段によって順番が前後する場合もありますが、主な手順は以下の通りです。内容を詳しく見ていきましょう。

職務等級制度の導入手順

手順1:目的と方針の設定

職務等級制度を導入すると、人事体制が大きく変わります。人事評価だけでなく、社員の育成や採用の方針、そして経営にも影響が及びます。

そのため、企業として人材をどのように動かしていきたいのか、はじめに目的と方針を明確にすることが大切です。軸がブレると導入が難しくなるだけでなく、従業員が企業の意図を理解できず、信用を失う可能性もあります。

経営陣と連携を取りながら、ゴールを見定めましょう。

 

手順2:職務等級制度が自社に適しているか見極める

職務等級制度の導入が、企業に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。よって、職務等級制度が自社に適しているのか、それとも他の等級制度が適しているのか、改めて見極めることが大切です。

社員の賃金に関わることなので、簡単に変更・廃止できないことを踏まえて慎重に決めましょう。

 

手順3:職務分析と職務記述書の作成

職務等級制度の導入と方針が決まったら、次に行うのは職務分析です。どのような職務があるのか、それぞれの職務にどのような知識・技術が必要なのかなど、職務について細かく分析します。

職務分析の項目に縛りはないですが、調べておくと良いとされる項目は以下の4つです。

【主な分析項目】
  • 日常的に行っている主な実務的業務/課業
  • 日常的に行っている主な管理業務/課業
  • 非日常的、イレギュラー発生時の主な業務/課業
  • それぞれの業務に必要な知識・技術・技能

    参考:「三菱UFJリサーチ&コンサルティング、堀田達也(2010)『等級制度の教科書』株式会社労務行政」

分析後は「職務記述書」を作成します。これは、従業員1人ひとりの職務内容と責任を表すものです。職務を評価して等級に分ける際、そして従業員に職務と等級を言い渡す際に使用する重要な書類なので、丁寧かつわかりやすく書くことが大切です。

下記の図は、書籍『等級制度の教科書』で紹介されている職務記述書の例です。作成に迷った際は参考にしてみましょう。

 

職務記述書例

引用:「三菱UFJリサーチ&コンサルティング、堀田達也(2010)『等級制度の教科書』株式会社労務行政」

 

手順4:等級の設計

職務分析完了後は、等級を何段階に分けるのかを決めます。段階数に正解はありません。細かく分けても大まかに分けてもメリット・デメリットがあります。

例えば、30~35段階程度に細かく分けると、職務内容が少し変わるだけでグレードがアップダウンします。適切な等級に区分できるというメリットがある一方で、賃金の増減が激しくなるデメリットがあるため注意が必要です。

10~15段階程度と大きく分ければ、賃金の変動が少なく安定します。ただし「職務が違うのに同じ等級に分けられ、同じ賃金が支払われる」などのように、待遇が不公平になる恐れがあります。

リスクを考慮しつつ、自社に合った等級の数を設定しましょう。

 

手順5:職務等級基準を設ける

等級の数を決めたら、次に「何を基準に職務価値をつけるのか」を決めます。

職務等級基準を決める際は、社員が納得できるように定義することが大切。なぜ自分の職務にその価値がつけられたのか理解できないと、不信感が募るからです。

特に、職務を低く評価された社員は、「もっと高い価値をつけるべきだ」と反発する可能性が高いです。何を基準に職務価値をつけるのか、その職務が企業にとってどれほどの価値があるのかをきちんと説明できるよう、明確に定義しましょう。

 

手順6:職務評価を行う

次に行うのは職務評価です。職務等級基準をもとに、職務の重要度および困難度に応じて序列をつけます。

職務評価を行う方法にも正解はありません。さまざまな手段が挙げられますが、書籍『等級制度の教科書』で紹介されている主な手段は以下の4つです。

主な職務評価の方法

参考:「三菱UFJリサーチ&コンサルティング、堀田達也(2010)『等級制度の教科書』株式会社労務行政」

職務評価は、評価要素を数値化できればできるほど、客観的に判別できます。しかし、数値化して論理的に評価する方法は、多大な時間と高度なスキルが必要です。自社の状況に合わせて選びましょう。

 

手順7:シミュレーションと確認・改善

職務等級制度を、いきなり導入するのはリスクが高いです。その上、賃金に関わることなので、導入後は簡単に変更・修正できません。

そのため、導入前にシミュレーションしてみるのがおすすめです。模擬運用を行い、改善することで導入後の問題発生を防止できます。いくつかパターンを変えながら、問題点がないか入念に確認しましょう。

 

職務等級制度を導入している企業事例

日本でも職務等級制度を導入する企業が増えてきています。3つの企業事例をご紹介するので、具体的にイメージできず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

事例1:株式会社資生堂

化粧品を中心とした事業を展開する「株式会社資生堂」。当社は「グローバルで勝てる組織」を目指し、管理職・総合職の国内社員を対象に、2021年からジョブ型人事制度を採用しています。

人事制度の変更に伴い、これまで行っていた職能資格制度から職務等級制度へとチェンジ。具体的には、当社ウェブサイトに掲載されている以下の4ステップを行いました。

  1. 社員が目指すべき専門性の領域をジョブファミリー(JF)としてグローバルで明確化。
  2. それぞれのジョブファミリーに必要な専門性とスキルを、ファンクショナル・コンピテンシー(FC)として明示。
  3. 管理職だけでなく一般職も含めた全階層にジョブグレード(JG)を導入。
  4. グレード判定の基準となるジョブ・ディスクリプション(JD)を明示(部署ごとにジョブ・ディスクリプションを作成することで日本の労働慣行に沿って組織変更やアサインメント変更に対しても対応できるよう考慮)。

引用:「人材育成と公正な評価」SHISEIDO

グローバルスタンダードの評価制度を導入することで、海外企業に負けない企業を作るのが当社の狙い。また、社員に自身の職務を把握させることにより、自らキャリアアップを目指す、自律性の高い社員の育成に役立てています。

 

事例2:ユナイテッド株式会社

教育事業、人材マッチング事業を主に展開する「ユナイテッド株式会社」。

当社には「総合職」「エンジニア職」「デザイナー職」の3つの職種があり、それぞれ「L(Leadership)職」と「P(Personal)職」の2種類に分かれています。そして、各職務を4つのグレードに区分し、グレードと給与を紐づけしています。

ユナイテッド株式会社の事例

引用:「自ら手を挙げて「昇格」宣言!自律的な成長を全力サポートする「グレードアップ宣言」」SELECKのインタビュー記事より

当社の人事制度は、リーダーシップを発揮する「L職」か、専門スキルを発揮できる「P職」かを従業員が自ら選択できるシステム。加えて、自身のジョブグレードを上げる宣言をする「グレードアップ宣言」を取り入れるなど、自主性向上に向けた取り組みを積極的に行っています。

社員にグレードアップの道筋を示す当社の取り組みは、職務等級制度における「職務が変わらないと賃金が上がらない」というマイナスイメージの払拭にもつながるでしょう。

 

事例3:従業員約1900名の中堅卸・小売業企業

正社員約400名、パートタイム労働者約1500名の従業員を抱える、卸・小売業のA社。当社には、以前行っていた勤続年数に応じた人事評価制度の影響で、「成果を出しても評価されない」という閉鎖的な考えが広まっていました。

そこで、職務等級制度を導入。職務価値を明確にし、成果を上げれば給与が上がるシステムに変更することで、社員の向上心アップに成功したのだそうです。

制度導入の際は、専門のプロジェクトチームを発足。そのチームを中心に、社員に情報を開示しつつ制度を構築することで、人事制度の透明化を実現しました。

不透明な人事制度は、社員の不信感につながります。新制度に納得してもらうためにも、情報共有の徹底が重要と言えるでしょう。

参考:職務(役割)評価の導入事例」厚生労働省

 

まとめ

今回解説した職務等級制度は、まさに現代の人々の働き方に合った制度。特に、テレワークを行っている企業、グローバル展開を視野に入れている企業は注目すべきと言えます。

時代の変化に取り残されないためには、新しい取り組みにも目を向けてみることが大切。実際に導入するかわからない場合でも、まずは理解することから始めてみましょう。

 

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著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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