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OKRの最適な目標設定とは?注意点、企業目標から個人目標までの具体例をご紹介!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Nov 23, 2022 11:00:00 PM

新型コロナウイルス感染症の拡大など、大きな変革のときを迎え、長期目線で先を見通しにくくなっている現在。Googleやメルカリといった大手企業が採用している目標管理手法「OKR」への注目が集まっています。OKRは目標と成果指標で構成され、短いスパンで改善を行うのが特徴です。

今回の記事ではOKRの中でも、特に「目標設定」に焦点を当て解説をしました。「OKRって何?」という方にもご理解いただきやすいように、OKRとは何かも含めて触れています。OKRについて具体的に検討している方だけでなく、全社一体となって組織を動かすマネジメント手法を検討中の方などもぜひ参考にされてください。

 

OKRとは

OKR(Objectives and Key Results)とは、「目標(Objectives)」と、成果指標「主要な結果(Key Results)」を設定することで、企業内のあらゆる部門やチーム、個人が、同じ方向を向き、重要な課題に全力で取り組むための目標管理手法です。

目標と成果指標は、企業、部門、チーム、個人ごとに設定し、それぞれの目標をリンクさせます。OKRの基本形は、1つの目標に対して3つ程度の成果指標を用意するのが一般的です。

OKRの最大の特徴は、立てた目標に対して短いスパンで頻繁にフィードバックを行い、必要に応じて改善を行う点です。1年や半年の単位ではなく、四半期(3カ月)での見直しが推奨されています。

現在は、働き方改革が行われたり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されたり、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及したり、事業形態の見直しを迫られたり……。大きな変革のときを迎えています。つまり、状況に合わせてスピード感を持ち変わっていくことが求められているのです。

そして、そんな時代にマッチしているのが、目標設定、振り返り、改善までのスパンが短いOKRなのです。

OKRについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。

■参考記事

OKRとは?言葉の意味から具体的な導入ステップまで簡単にわかりやすく解説!

 

OKRにおける目標

OKRは、「目標(Objectives)」と「成果指標(Key Results)」を決めることから始まります。それぞれについて見ていきましょう。

 

Objectives(目標)

OKRにおける目標(Objectives)は、業務の延長線上にある達成できそうな目標ではなく、「達成するのが非常に難しい高い目標」を設定します。とはいえ行き過ぎた目標は逆効果。目標達成率が60〜70%になりそうなものがいいでしょう。

組織が目指す姿を言語化し、「関わる人を鼓舞する」ような内容を「定性的」な表現でまとめます。働く人を「ワクワク」させ、やる気を引き出せる目標に仕上げましょう。

目標設定の流れや注意点についての詳細は、後述します。

 

Key Results(成果指標)

「目標を達成するためには、何が必要か?」を考えて成果指標(Key Results)を設定します。つまり成果指標は、目標達成のための仮説だと言え、「成果指標を全て達成すれば、目標が実現する」内容を考えないといけません。

成果指標を設定する際は、目標の達成度と基準を客観的指標で定量的に示します。「会員数を○○人にする」など、第三者が見ても分かるような測定できる具体的な数値を設定するのがポイントです。1つの目標に対して成果指標は3つほど設定しましょう。

(例)

  • 目標(Objectives)
    • 売上10億円突破
  • 成果指標(Key Results)
    • リピート率を○○%まで上げる
    • 新規会員登録数を月に○○人獲得
    • 年末までに店舗数を○○店舗増やす

 

KPIやMBOとの違い

目標管理手法にはOKR以外にもさまざまなものがあります。その中から多くの日本企業で採用されている「KPI」「MBO」とOKRとの違いを見ていきましょう。

 

KPIとOKRとの違い

KPI(Key Performance Indicator)は、「重要業績評価指標」などと呼ばれ、日本でも重要な指標として広く使われています。業務プロセスが問題なく機能しているかを確認するための指標で、いわばビジネスのヘルスチェック指標と言えるでしょう。

KPIもOKRと同様に定量的に達成度を見ていきますので、その点は似ています。実際、OKRの成果指標にKPIを当てはめるケースもあります。

このようにKPIとOKRは親和性のあるものですが、目標を誰が設定するかと目指す目標達成率の面で大きく違います。

KPIは管理するのが目的なので経営陣など管理する側に決定権がある「トップダウン型」です。それに対してOKRは自主性を促すのが目的なので、組織の目標に対して、チームや個人が何をすべきか考えて目標を立てる「ボトムアップ型」の目標管理手法になります。

またOKRは達成率が60〜70%となる目標を立てますが、KPIは達成すべき目標を立て、達成できない場合は業務の見直しが必要とみなします。

 

MBOとOKRとの違い

MBO(Management by Objective)は、一般的に「目標管理制度」と呼ばれ、1954年に経営哲学者のP.F.ドラッカーが提唱したマネジメント手法です。

半年から1年ごとに目標を設定し、その達成状況で従業員を評価します。MBOは従業員の自主性を引き出すことを目的の一つにしており、人事評価と密につなげて運用されるケースが多いのが特徴です。

このため従業員は達成できそうな目標を設定する傾向になり、挑戦を評価しにくいという側面もあります。つまり、企業として達成したい事業目標に対して従業員を巻き込むという部分で限界があるのです。

MBOでは目標の達成状況が人事評価に影響するケースが大きいことから、目標の達成状況は基本非公開で、目標そのものを従業員同士で意識することもほとんどありません。一方で、OKRは組織・チームの成長を目的にしていますので、達成状況も含めて全てオープンに共有されるのが基本です。

<MBOとOKRの主な違い>

MBO

  • 個人の自主性を引き出すのが目的
  • 目標の達成状況と人事評価が密に連動し、基本は非公開
  • 目標は達成できそうなものを設定しがち
  • 目標の設定期間は、6カ月~1年

OKR

  • 組織やチームの成長が目的で、目標も達成状況も全てオープン
  • 目標の達成状況と人事評価を密に連動させない
  • 達成するのが非常に難しい高い目標(達成度60~70%が目安)を設定
  • 目標の設定期間は、1カ月~3カ月

MBOとOKRの違いについて、より詳しく知りたい方は以下の記事をあわせてお読みください。

■参考記事

意外とわかりづらいMBOとOKRの違いとは?目標設定の仕方や共通課題についてもわかりやすく解説!

 

目標設定をする上での注意点

OKRでは、「達成するのが非常に難しい高い目標」を設定すると説明しましたね。このような難易度の高い目標のことを、月に到達するほど難しいという意味で「ムーンショット」と例えられます。

ただし、闇雲に高すぎる目標を設定すれば良いというわけではなく、適切な目標にしないとOKRの効果が十分に発揮されません。むしろ従業員を戸惑わせてしまう可能性すらあります。

ここでは、目標設定をするうえでの注意点を書籍「図解入門ビジネス 最新 目標管理フレームワークOKRの基本と実践がよ~くわかる本(Resily株式会社・著)」をもとに解説します。

 

注意点1:一番大事な目標は経営陣が意思を持って決める

企業としての目標は、当然のことながら経営方針と合っていなければいけません。つまり、一番大事な目標は、経営陣が意思を持って決めることが重要です。

もし企業として「ミッション(誰に対して、どのような価値を届けるか)」や「ビジョン(中長期の目標)」「バリュー(会社の姿勢や行動様式、特徴など)」が明確になっていない場合は、まずは明確にすることから始めましょう。そして経営者から発信します。

経営陣が意思を持って目標を決め、率先して行動することは、大きな組織を動かす力となります。

OKRにおける目標は達成するのが非常に難しい高いものですから、「それ大丈夫?」という空気が漂っても不思議ではありません。目標を受け入れるだけのマインドが醸成されていない場合もありますし、一部のメンバーの気持ちが「もやもや」することもよくあります。こうしたときに経営陣の意思を持った発信が重要になってきます。

ただし、全てを経営陣が決めトップダウンにならないようにご注意ください。現場から自発的な提言が上がりやすい企業文化をつくることも大事でしょう。

 

注意点2:成長を前提とした目標を立てる

目標をたてる場合は、「今、何ができるのか」ではなく、「これから、何ができるようになりたいか」という未来を見据え、成長を前提とした目標を考えることが重要です。

現時点での悩みや、想像できる懸念や漠然とした不安に引っ張られないよう注意してください。理想が実現することを信じましょう。

「達成するのが非常に難しい高い目標」というのは、単に高い数値目標を掲げるという意味合いではありません。現状を打破して、「変革」を起こさせるような目標です。そして「変革」に向かう中での多くの工夫により、通常以上の成長を目指すことに意味があります。

 

注意点3:目標は具体的かつ簡潔に

目標は具体的な数値ではなく「定性的な表現」で記載しますが、あまりにも曖昧だと誤解が生じたり、正しい理解が広まらなかったりします。目指す姿のイメージを掴みやすいよう、目標を構成する要素は「○○の領域で、○○によって、○○を実現する」などとし、具体的かつ簡潔に表現することを意識するといいでしょう。

同じ内容であっても表現の仕方により、関係者が鼓舞されるかどうかは変わっていきます。言語化するポイントは「have to」(やらなくてはいけない)ではなく「want to」(やりたい)という、関係者が持つ価値観とのつながりを意識した表現にすることです。

 

【具体的例付】目標設定の流れ

OKRにおける目標設定は、組織全体、部門、チーム、個人の順に階層ごとに行います。

以下の図は、階層ごとの運用テーマの例です。各階層でOKRの目的や期間、運用テーマ、扱う課題、推奨頻度などが、異なることがお分かりいただけるかと思います。この階層ごとの質の違いに留意しつつ、組織としての目的(成果)をはっきりさせるために、上の階層(全社)から目標を定めていきます。当然、全体として一貫性を持つことが大事です。

(参照元:「図解入門ビジネス 最新 目標管理フレームワークOKRの基本と実践がよ~くわかる本」より)

ここでは上記の例を参考に、目標設定の流れを書籍「図解入門ビジネス 最新 目標管理フレームワークOKRの基本と実践がよ~くわかる本(Resily株式会社・著)」をもとに解説します。

 

1.企業目標の設定とその具体例

注意点1の項目でも解説した通り、OKRを導入する際は、目標が企業の経営方針と合致している必要があります。もし自社の目標がなかったり、売上目標のみだったりする場合は、「誰に対して、どのような価値を届けるのか」というミッションやビジョンを明確にすることから始めます。

企業としてのOKRの目標は、組織全体の活動の方向性や境界線を決める重要な情報になります。ビジネス成果の視点(財務の視点)で作成すると明確になりやすく、決めやすいでしょう。

「範囲:飛躍をさせたい市場や顧客領域」「優位性:目標を達成するための組織能力」「目標:1年後に外部からどう見られたいか」を決めると、『○○の領域で、○○によって、○○を実現する」といったように、具体的な表現に整えられます。

範囲とは、ターゲット、製品ライン、採用技術、地域などです。優位性とは、顧客を惹きつけるための価値や自社の特異さ、差別化をもたらすものになります。

例えば、「アパレル業界で、社員が業界最高水準のホスピタリティを身に付けることで、顧客満足度の高い企業になる」といったものが上げられます。

 

2.部門目標の設定とその具体例

部門目標は、顧客視点で作成すると明確になりやすく、決めやすいでしょう。

「顧客とどういう関係を築きたいのか」を考えます。例えば、「どんな問題も誠実に対応してくれるという誠実さのある関係」「会社の顧客であることを顧客自身が誇りに感じてくれる関係」など、関係性にも段階があります。

そのうえで、「自分たちは、どれくらいの質で仕事をすべきなのか」考えて、部門目標を設定します。

例えば、カスタマーサポートの部門であれば「業界最高水準の顧客体験を提供する」、人事部門であれば「カスタマーサクセスのチームを拡大する」といったものがあります。

 

3.チーム目標の設定とその具体例

企業規模が大きい場合は、部門のほかにチーム目標も作成します。企業目標、部門目標に貢献するためには、どのような変化や成長が必要か考えて、チーム目標を設定するといいでしょう。「業務プロセスの視点」および「学習と成長の視点」で考えます。「今、何ができるのか」ではなく、成長の視点で考えることが大事です。

チームの目標の例としては、「新人向けの教育プログラムを作成し、実施する」「カスタマーサクセス経験者の採用を強化する」などがあります。

 

4.個人目標の設定とその具体例

個人目標は、チーム内全員に共通する目標と各人の目標の2パターンがあります。自分だけで決めるのではなく、所属する部門やチームの責任者と話し合って決めるのが一般的です。場合によっては、メンターも含めることがあります。

個人目標は、チーム内の全員が達成できれば、チーム目標の「達成指標」に到達できるような内容にしましょう。

例えば「カスタマーサクセス全体を包括してみれる人材を増やす」「顧客のニーズを吸い上げ商品企画につなげられる人材を増やす」などがあります。

 

OKRを最適に運用するためのポイント

OKRは各指標を決めたら終わりではなく、効果を最大化させるためには、どう運用するかが大事です。特に注意したいポイントを書籍「本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR(奥田和広・著)」を参考に3つ紹介します。

 

ポイント1:目標を管理し、改善するためのマネジメント体制

OKRの運用が始まると同時に、設定したOKRの進捗の管理が始まりますが、単なる進捗管理にとどまってしまうと、目標の達成も、成長も見込めません。自分で振り返る「内省」、上司が支援する「フィードバック」、「チームでの振り返り」という3つをうまく機能させることが重要です。

これらをうまく機能させるには、個人任せにせず仕組み化するのがコツ。例えば、フィードバックが適切に行われるかは、上司の忙しさなどにも大きく影響されますね。そのため週初めのミーティングの中に組み込むなど、定期的に確実に振り返りやフィードバックが行われる仕組みを作るのがポイントです。

ミーティングの中で、OKRの進捗を共有し、今週のOKRに直結するToDoを確認すると、メンバー全員の認識を統一できる良さもあります。改善が必要な場合は、できない理由を個人を相手に責めるのではなく、チームで解決策を話し合うのがいいでしょう。

ミーティングを実施するにあたって、リーダー層は、高い目標に挑戦していることを承認・称賛し、今週も頑張っていきたいとメンバーが思えるようポジティブな雰囲気で締めることが大切です。

またチームでのフィードバックとあわせて、個人へのフィードバックの時間も作りましょう。1対1で行う「1on1ミーティング」を定期的に行うのがいいでしょう。

OKRでの1on1ミーティングは、部下に主体性を持たせるのがポイントです。部下が自ら1on1をセッティングする、部下が議題を考えるなど、部下が中心となって行えると理想的ですね。

 

ポイント2:働き手の「ワクワク」を常に意識する

OKRで大切なのは、「ワクワク」を全員で追いかけることであり、そのためにメンバーを「巻き込み」「振り返り」を最速で行うことです。OKRの運用方法は、さまざまな書籍やWebサイトで紹介され、インターネット上に多くの事例も公開されています。

それらには少しずつ違いがあり、最適解は自社で探すしかありません。最初は自社に合いそうな方法をマネすることから始めるといいですが、常に働き手が「ワクワク」しているか意識するようにしましょう。

 

ポイント3:OKRでコミュニケーションを活発化させる

組織力を高めるのに必要なのが、メンバーの「協力」と「調整」であり、それらを築く基本になるのがコミュニケーションですね。とはいえ、組織の中にはコミュニケーション能力が高い人もいれば、そうでない人もいます。

そこで効果を発揮するのがOKRを共通言語としたコミュニケーションです。OKRの達成状況を日常的に話すのもいいですし、今取り組もうとしている企画がOKRの中でどう位置づけられるのか話し合うのもいいですね。

OKRを日常的に上手く活用することで、OKRの共有と振り返りに加えてコミュニケーションの活発化にもつなげられるというわけです。仕事におけるコミュニケーションでは「成果」について話し合う機会が欠かせませんから、一石二鳥と言ってもいいでしょう。

 

まとめ

OKRにおける目標(Objectives)は、業務の延長線上にある達成できそうな目標ではなく、「達成するのが非常に難しい高い目標」「成長を前提とした目標」とし、達成率が60〜70%になりそうなものが目安です。働く人を「ワクワク」させ、やる気を引き出せる目標に仕上げましょう。

そして目標を設定する際は、経営陣が意思を持って決めることが大事です。まずは一部の部門からでもOKRを取り入れてみてはいかがでしょうか。