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人事評価制度とは?目標設定するための項目や基準の作り方を事例を交えてわかりやすく解説!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Aug 16, 2022 7:00:00 AM

人事評価は、その活用によって組織の活性化や従業員のモチベーション向上などをもたらし、企業の業績向上や目標達成につなげるための制度です。

人事評価制度の導入や運用には、成功のポイントがあります。

これから人事制度を取り入れたい企業や、人事評価制度を導入しているけれど評価のブラッシュアップを図りたい、制度を改善したいがどうすればよいかと悩んでいる企業もあるのではないでしょうか。

この記事では、人事評価制度の目的やメリット、制度導入率の現状、導入へのステップについて解説し、流通小売業における人事評価制度の活用事例をご紹介します。

なお、人事評価について網羅的に知りたい方は以下のebookも参考にしてください。

 

人事評価とは

国家公務員の人事管理に関する業務を担っている人事院の「人事評価」によると、人事評価とは「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」(国家公務員法第18条の2第1項)とあります。

人事評価制度は、従業員の職務遂行についてその成果や実績、職務遂行行動を基準に従って評価し、その評価に基づいて社員を育成し生産性の向上を図り、企業の目標達成や業績のアップに繋げるためのシステムです。

 

人事評価と人事考課の違い

人事考課とは従業員の貢献度や業績、また個人の能力を査定する人事制度のことです。人事考課の評定は、給与や賞与、昇格・昇進・役職などに反映されます。人事考課は人事評価制度の中にに含まれているといえます。

人事評価とは、企業の目標と従業員のパフォーマンス、労働生産性を比較し、具体的な手順をもって評価を行うことです。また、各従業員の行動や成果、将来の成長可能性、得意、不得意の把握にも活用できます。

人事評価制度の目的は、社員の評価を決定し、評価をベースに社員を育成することです。社員の給料を決定するためだけに評価制度が存在するわけではありません。

社員の育成を行い、従業員のパフォーマンスを向上させ、企業の生産性を高め、企業目標を達成するために人事評価制度は活用されています。



人事評価制度を導入する目的

日本では、これまで年功序列型賃金体系や終身雇用制度が採用されてきており、それが戦後の日本の復興期を支えてきました。しかしこの制度は現在の長引く景気低迷や企業のグローバル化など、社会や労働環境の変化に伴い変容し、崩壊しつつあります。現在は企業がそれぞれ人事評価制度を定めて、賃金を決めるようになりました。

「宮川 淳哉 著『「中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで 』総合法令出版」によると、人事評価は「目標管理・評価制度というマネージメントツールを活用してマネジメント活動を推進し、社員の成長を後押しし、経営成果と業績向上につなげること」とあります。

詳細な目的は、次の3点にまとめられます。

 

目的1:従業員に期待する成果・行動の明確化

人事制度が企業のビジョンや方向性と結びついておらず、形骸化してしまっていては業績向上への施策が効果的に働かない可能性があります。

前述した宮川氏の著書によると、目的のひとつは「人事評価制度によって、社員に求めるものを明確にする」とあります。企業が目指す方向性と社員のパフォーマンスや成長が目指す方向は同じであることが企業の成長につながります。

企業によって評価基準や項目は違いますが、人事評価制度には企業のビジョンや経営方針、目標を明示し、そこから従業員に求める成果や行動を明確にすることが大切です。

 

目的2:人材の最適な配置や待遇の決定

従来の年功序列型ではなく、現在は各社が定めた人事評価制度をもとに賃金を決定するようになりました。人事評価制度では年功序列型にあったように年齢給と職能給の合算で給料を決めるのではなく、客観的に社員の能力や業績、貢献度などを判断し、設定された目標への進捗状況や達成度、また担当業務への適性などを見定めます。この評価を昇給・昇進などの待遇に結び付け、組織内の最適な人材配置の判断材料にも利用します。

 

目的3:人材の育成・成長を促す

前述した宮川氏の著書によると「会社が社員に求めるものができるようになると、社員が成長する」とあります。

従業員それぞれに、あるべき姿・求めるレベルを提示することで、現状の実力との差が明らかになります。適切なフィードバックを行うことで従業員の気づきを与え、どのように差を埋めていくか方向性を決めて、アクションを策定し、次年度の目標に設定することで、従業員は意識的に業務に取り組むようになり、あるべき姿に近づきます。

公平で透明性のある人事評価制度を導入し運用することで、従業員の会社へのエンゲージメント(貢献度)が高まります。評価の項目や基準が明文化されていて、成果が適切に昇給や昇進に結び付くことが分かれば、社員は納得してやりがいをもって目標や業務の達成を目指して行動に移します。

このように人事評価制度は、社員の育成・成長を促すという重要な役割を担っているのです。

 

人事評価制度の実態とは?

それでは、人事評価制度はどれほどの企業で利用されているのでしょうか。大企業と中小企業に分けて、人事評価制度の導入率をみていきます。

 

人事評価制度の導入率

大企業とは、中小企業の定義を超える企業を指します。おおよそ従業員300名以上を大企業と捉えます。

パーソル総合研究所が2021年に行った「人事評価制度と目標管理の実態調査」によると、「MBO(Management by Objectives)」「OKR(Objectives and Key Results)」「その他フレーム」のいずれかの目標管理制度実施率は53.8%という結果でした。企業規模別で見てみると、大企業の方が評価関連の諸制度を広く活用していることがわかり、特に360度評価に関しては、企業規模によるギャップが大きく出ていました。

(参照:パーソル総合研究所「人事評価制度と目標管理の実態調査」)



中小企業の人事評価制度の導入が低いことが、上記調査から明らかになりましたが、「山元浩二著:『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』あさ出版」によると、日本の中小企業の生産性は大企業に対して0.41倍(2019年版 中小企業白書より)しかなく、その原因は2つあると指摘しています。「1つ目に組織マネジメントのしくみがないこと。2つ目は人材育成を計画的かつ継続的に行っていないこと」。

つまり中小企業において人事評価制度が十分に導入されていないことに起因して、大企業に比べて生産性が低くなっていると指摘しています。

10名程度の会社であれば、社長と顔を合わせてコミュニケーションが取れる中で納得のいく評価や報酬を得られるケースが多いのですが、従業員が30名、50名を超えると、1人1人の従業員を細かく評価することができなくなります。

人事評価制度を用いることによって、従業員全員が自分の評価に納得できるようになれば、業績の拡大・会社の成長につながる可能性があります。

    

厚生労働省の「平成14年雇用管理調査結果の概要」



従業員の離職との関連性

厚生労働省の報告書 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」によると、 事業主の行う「評価・処遇」に関する取組みと「従業員の離職率」には関係性が見られると指摘しています。報告書には、離職率と評価制度の関連性について以下の2点について記述されています。

① 「評価・処遇」に関する取組みの有無と従業員の離職率の関係

事業主が評価・処遇に対して取り組みがある企業と無い企業では従業員の離職率に違いが見られました。評価・処遇に関して「取り組んでいる」企業のほうが、従業員の離職率が低いことが分かりました。前述したパーソル総合研究所の調査でも、自社の人事評価制度に対して、不満を感じている人の割合は38.3%いることがわかっています。特に評価のプロセスに不満を感じている人は36.3%、評価結果に不満を感じている人は33.2%となっており、これらが離職の原因になっている可能性も少なくありません。

② 「評価・処遇」に関する取組みの効果と従業員の離職率の関係

事業主が、評価・処遇に対して取り組んだ効果があったと回答する企業のほうが、効果がなかったという企業よりも、離職率が低いことが分かりました。


従業員の前向きな行動との関連性

前述した厚生労働省の報告書では、  事業主の行う「評価・処遇に対しての取り組み」と「従業員の前向きな行動」の関係には関係性が見られることにも言及しています。報告書には、前向きな行動と評価制度の関連性について以下の2点について記述されています。

① 「評価・処遇」の取組みの有無と「従業員の前向きな行動」の関係

全体的として、「取り組んでいる」企業のほうが、従業員の前向きな行動に係る各項目について「よくみられる」又は「みられる」と回答した割合が高いことが分かりました。 

 

② 「評価・処遇」の取組みの効果と「従業員の前向きな行動」の関係 

全体的として、制度実施に「効果がみられる」企業のほうが、従業員の前向きな行動に係る各項目について「よくみられる」又は「みられる」と回答した割合が高いという結果でした。 評価制度に効果が見られることで、前向きな発言をする、自発的に仕事を進めるなど、従業員の行動が変わっていると指摘しています。

人事評価制度を整えるメリット

ここまで人事評価制度の目的や導入の現状を見てきました。それでは、人事評価制度を整えるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

メリット1:企業理念・ビジョンの浸透

企業の理念やビジョン、そして事業の方向性を示して目標を掲げることで従業員が共有し、経営と現場が同じ目的に向けて行動することができます。

メリット2:従業員のモチベーション向上

人事評価制度において、より公正で透明性のある評価基準を設定することで、評価に対する従業員の納得度を高めることができます。評価を前向きに捉えるようになり、自ら課題を改善する行動を進めるようになります。

メリット3:人材のスキル管理

従業員の持っているスキルや技術について情報を管理できるので、適材適所への配置や、人材開発、教育に役立てていくことができます。

 

人事評価項目の種類とは

人事評価の項目には大きく3つの種類があります。厚生労働省の報告書「人事考課制度」を参考に解説します。

 

業績評価

業績評価とは、対象期間における仕事の成果について評価するもので、その評価にあたっては等級相応の業務内容について判断します。具体的には以下のポイントを評価します。 

1

仕事の量

仕事の出来栄えとして、特にその即効性やこなした量の面から見た評価

2

仕事の質

仕事の出来栄えとして、特にその正確性や品質面から見た評価

3

創意工夫

仕事の手順や作業方法に関しての改善工夫を行ったかの評価

4

指導育成

正しい指示を与えて、効率よく仕事を進められたかの評価

5

経費削減

コストを意識して経費を削減したかの評価

6

目標管理

正しい目標を設定し、その目標に対して管理、運用が行えたかの評価

7

目標達成度

目標を把握し、仕事の成果として目標達成がなされたかの評価

 

 

情意評価

情意評価とは「対象期間における仕事に対するやる気や努力の精神、すなわち取り組みの姿勢を評価するもの」です。また、その評価にあたっては等級相応の立場を考慮したそれぞれの取り組みの姿勢を判断していきます。評価のポイントは以下のとおりです。

1

勤務態度

勤務時間や勤務態度などの実績や、それに対する意識の度合

2

責任感

担当職務を責任をもって最後までやり遂げる態度、性質

3

積極性

自発的に自己の職責を果たそうとする努力、発展的、意欲的に仕事に取り組む態度

4

協調性

社内外関係者との円滑なコミュニケーションをとり、折り合いよく仕事を進める態度、性質

5

規律度

指示命令や、定められた諸規則通知に従い、職場秩序の維持に努める度合

6

企業意識

管理者として作業を遂行するすべての面で企業意識を持ってなされているかの度合

 

 

能力評価

能力評価とは 「現時点での、仕事を行っていく上での知識や技能の程度や、その他基本的習熟的な各種能力について評価すること」です。その 評価にあたっては等級相応の能力を基準に判断します。

評価のポイントは以下のとおりです。

1

知識力

一般教養的なものを含めた仕事を遂行する上での知識力の評価

2

技術力

仕事を遂行する上での技術力やその応用力の評価

3

理解・判断力

仕事を遂行する上での各局面で理解し的確に判断する力の評価

4

表現力

各種文書をや提案書、または対話伝達などにおける表現能力

5

創造・企画力

新しい発想を持って物事を構築していく創造力や、的確な企画適応能力の評価

6

折衝・調整力

社内外関係者との折衝能力や調整能力の評価

7

指導・統率力

下位等級者に対する考課的な指導感化力の評価

 

社員一人ひとりの職務行動と成果を、上記3つの評価軸で評価を行って、賞与額や昇級額、昇格・降格、役職への割り当てなどの処遇に反映していきます。

 

人事評価制度を設計するステップ

人事評価制度を設計する手順を6つのステップに分けて解説します。

 

ステップ1:現状の課題を分析する

経営側、また従業員にヒアリングやアンケート調査を行って、現状の人事制度における不満や意見、課題を吸い上げます。集まった意見を分析し、改善点を抽出します。

 

ステップ2:人事評価制度の導入目的を明確にする

人事評価制度を導入する場合には、その意義と目的を明確にしておく必要性があります。なぜ人事評価制度を用いるのか、そして企業はどんな人材を評価するのか、どんな考え方で仕事を評価するのかを従業員に対して示します。

評価される側が不平や不信感を持たないように、人事評価制度を導入する意義と目的は出来るだけ明文化しましょう。

 

ステップ3:具体的な評価項目を設定する

人事評価制度の目的に合わせて、評価項目を作りこみます。

現状を把握するために、現場の従業員とコミュニケーションを取りながら策定を進めましょう。現場の課題や意見を吸い上げることで、適正な評価制度に近づけることができますし、評価制度に対する納得性が高まります。

評価項目については、企業の特性や企業風土に合ったもので「生産要件」や「仕事への意欲」などを盛り込んだ評価項目を設定するようにします。

 

ステップ4:評価項目ごとに基準を設定する

評価項目が決まったら、項目ごとに人材評価の基準を策定します。

部門、役職や職種などによって期待される能力や成果のテーブルは異なります。また、部門をまたいで同じ役職を横軸で比べたときに、評価基準の難易度に差が生じないように調整することが大切です。

基準を設けるには、厚生労働省が示している職業能力評価基準導入マニュアルや他社事例を参考にするのも効果的です。

 

ステップ5:評価をどのように処遇に反映させるか決定

新しく策定する人事評価結果を何に反映させるかを決定します。業績連動などの成果主義の評価制度を用いるのなら給与や賞与に直結させる、人材育成を重要視したい場合には社内表彰を行うなど金銭以外でモチベーションを上げる方法もあります。

良い行動により良い評価を受けた場合に、何かしら社員に対するリターンの方法を考えることが重要です。

 

ステップ6:評価シミュレーションを実施する

完成した人事評価制度は、全社で実施する前に部門を絞る、あるいは役職を絞ってテストを行います。評価分布が偏っていないかなどの確認や、評価者、被評価者の意見を聞き、基準の調整を行います。

 

人事評価制度における評価手法とは

人事評価制度をうまく活用するための評価手法として、コンピテンシー評価、目標管理、360度評価、OKRの4つの手法があります。それぞれについて説明します。

 

コンピテンシー評価

コンピテンシー(competency)とは、高い成果をもたらす人に共通して見られる行動特性のことで、高い成果につながる行動を集約したものです。

前述の厚生労働省の「職業能力評価基準導入マニュアル」によると、コンピテンシーは「高い業績を上げる能力・特性を実際の具体的な行動としてモデル化したもの、潜在的能力ではなく、具体的な行動レベルで発揮される能力のこと」だとしています。

コンピテンシー評価とは、高い業績を残している従業員をベースにした、もしくは理想とする行動特性を評価基準を作成する評価制度のことを指します。コンピテンシー評価によって、成果には見えにくい、率先して動くなどの行動志向や課題に向かう性格や考え方などの分析志向など行動特性を可視化させることができます。

コンピテンシー評価の評価基準となる項目は、全社的に共通の「共通項目」、職種・職階ごとの「個別項目」に分けて設定します。各項目を数段階の指標を用いて評価します。

厚生労働省の「職業能力評価基準導入マニュアル」では、企業が自社用としてコンピテンシー評価を作成する場合は、独自のコンピテンシーをプラスすることを勧めています。独創性、自立性など経営トップが自社に求めるコンピテンシーを加えることがその会社らしさを出すポイントになると言及しています。

目標管理制度(MBO)

MBOとはManagement by Objectives(目標による管理)の略称で、目標管理制度を指します。

MBOは目標に対する業績に連動して社員を評価する成果型の人事評価制度です。業績に連動して評価が行われる関係上、成果を出せない社員に関しては評価が低下する傾向にあります。

また営業職のように成果が数字の出る職種にはマッチしますが、事務職などの評価に関しては適用が非常に難しいという側面があります。

前述した宮川氏の書籍によると、2022年に労務行政研究所が発行した「人事労務制度の実施状況調査」によると、目標管理制度は78.4%と約8割の企業が導入しています。

宮川氏は書籍のなかで、本来のMBOとは、目標に対して全社員がセルフコントロール(自己管理で)、目標到達のためのイメージを持ちながら確実に目標を達成できるようになることが求められると言及しています。また、自己管理によるMBOという本来の意味合いとは違った扱われ方をしているため、効果的に活用されている企業は少ないと指摘しています。MBOに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事はこちら

MBOとは?言葉の意味、目標設定の方法、効果的な運用管理のポイントなどわかりやすく解説!



360度評価

360度評価とは、評価対象者にとって実務に関わる同僚、部下、関連部署のメンバーなどからの多角的な視点から評価するものです。上司の評価に部下が関わるという、新しい人事評価制度です。

仕事上で関わるさまざまな関係性における多面的な評価も得られることから、本人の特性を深く捉えることができます。

上司には気づけなかった側面も補完することができるため、本人にとって納得度が高まります。また多面的に上司と部下が相互に評価しあう点で一方的な評価になりにくく、公平性を確保できる評価制度といえます。



OKR

OKRとは「Objectives and Key Results」の略称です。目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)を設定し、企業が定める目標と、その企業で働く社員の目標を紐付け、明確にする目標管理方法のことを指します。OKRに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事はこちら

OKRとは?言葉の意味から具体的な導入ステップまで簡単にわかりやすく解説!



流通小売業における人事評価の事例

多くの企業が注目している人事評価制度ですが、実際に人事評価を取り入れた流通小売業の企業における事例をご紹介します。

 

事例1:株式会社リンガーハット

■導入背景

日本有数の外食チェーンである当社は「人と企業の永続的成長・発展を目指して」と新たな人事ビジョンを制定したことを機に、新たな人事評価制度を導入することにした。ビジョンの実現には、「会社業績への高い貢献を目指し、常にチャレンジし続ける人財」を評価、処遇、育成することが必要で、これまでの職能資格制度に基づく人事評価制度を大幅に改定することになった。

■課題

同一の職務において賃金のばらつきがあった。年功序列運用が残っていて、チャレンジした若手の評価が不十分だった。扶養手当・転勤手当・遠地への転勤手当など属人的な手当てが多く分かりにくかった。

■新人事制度

これまでの職能資格制度から職務給をベースとした制度へと改定した。改定作業には、初期の段階から労働組合員にも入ってもらい社員の意見を取り入れた。

  • 職能資格等級を廃止し、人事考課を職務グループごとに実施。業績を上げた人が評価されるようにした
  • 人事考課・賃金・教育訓練の諸制度を相互に関連付けて運用する
  •  能力考課は、「実際に発揮され高い業績に結び付いている行動特性」を評価することにより、社員の納得性の高い公正な考課制度への転換を行った
  • 社員個々の人財育成と能力開発により継続的な高業績達成を実現できるような考課制度を導入した。考課制度には目標管理制度を用いている

 

■カスタマイズのポイント

新たな人事評価制度では、能力開発施策つまり「教育」との連動を計った。当社ではMDP(マネジメント・デベロップメント・プログラム)という研修カリキュラムが用意されている。新人が店長になるまで、あるいはマネージャーになるまでのカリキュラムがあり、カリキュラムを終えただけではなく、店舗で実施できているかで評価される。人事評価制度と連動した教育制度の仕組みを作った。

■まとめ

職能資格制度を廃止し職務給に変更したことで同一職務同一賃金が実現し、以前の不公平感が緩和された。

時代が変化して環境が変わってきている。今後の事業展開では、今までにない業務を創造したり、業務範囲を拡大していくことが従業員に求められるようになる。人事評価制度もこれに合わせてさらに改正していく。

(参照元:職業能力評価基準 活用事例集



事例2:株式会社バイク王&カンパニー

■導入背景

約200名の管理職において、部門を横断した共通の評価指標がなかった、管理職が果たすべき仕事の役割定義が明確ではなかったため、全社での評価にばらつきが生じていた。

■目的

管理職としての業務内容で評価し、賃金に反映する仕組みをつくる。新しい人事評価基準によって、管理職の管理体制、管理能力の向上を図ることが目的。その後、下の階層にも新たな人事評価制度を導入していく。

■カスタマイズのポイント

  • 管理職の評価を職能資格から職務等級へと変更。役職者の「あるべき仕事」について役員からヒアリングし、項目を洗い出し、職業能力評価基準を選定した
  • 複線型人事制度を導入した。管理職になるよりも、買取営業といった現場第一線で活躍し、やりがいのある仕事をしたい人への「エキスパート職」を新設し、コース別に職業能力評価基準を用いて評価する

 

■まとめ

  • 能力の有無ではなく、どんな仕事をしたのかで評価することで、管理職の能力向上につなげることができた
  • 制度策定に際しては、ヒアリングを行うこと、トライアルを行うことで制度の浸透が高まった
  • 今後、予定している新人事評価制度への改定に対して、従業員アンケート調査を実施し、現状に適した内容につなげていく

(参照元:職業能力評価基準 活用事例集



事例3:株式会社フレスタ


■導入背景

魚をさばく、寿司を作るなど技術・スキルは評価しやすいが、「人を育てる」「マネジメントする」「どう頑張った結果にどう成果を上げたのか」という部分を評価できていなかった。

いかにして働くモチベーションを上げる評価をするかが課題だった。職場風土に合った公平性のある評価制度が必要だった。

 

■特性

スーパーマーケットであり、全社員のうち8割は地域・時間限定従業員であるスマイル社員である。職務能力評価制度の対象は、スマイル社員に対して導入した。

 

■目的を設定

スマイル社員のモチベーションアップ、全社的な業務レベルアップ、マネジメントする現場の実現を目的とした。

■カスタマイズのポイント

(1)職種に応じた点数配分を行った

評価で得られる点数の配分は、職種に合わせてウエイト付けを変えている。評価項目は次の3つの面に渡っている。

  1. 社会人としての基礎項目 
  2. スーパーマーケット従業員として必要な技術・スキル 
  3. 職種特有の技術・スキル

たとえば、水産や寿司の現場では03に比重を高くして評価している。

 

(2)評価基準は3段階で分かりやすくした

評価は「手本になっている、周りに教えている」「できている」「できていない」の3段階で判断する。自己評価を紙ベースで行った後に1次評価、2次評価される。

教えるひとの評価が高いことで「教える教わる」という関係性が構築され、現場のマネジメントが実現されている。

 

(3)評価と教育はセットで運用する

フレスタは評価と教育はセットと考えている。フレスタでは社内福利厚生として「オープン研修」を設けており、研修が必要なひとには無料で学べる制度がある。出来ていない項目に対しては「この研修を受けてください」と努力が必要な人に対して学習を勧めている。

 

■まとめ

  •  職業能力評価基準は、自社の強みを示す評価項目に重点をおいてカスタマイズすることで現場も会社も納得する内容にできる。
  • 評価制度は すべてを本部基準で決めるのではなく、制度策定のプロセスにおいて現場の人たちに意思決定をさせることで、評価への取り組みが主体的になる。
  •  仲間や後輩、部下に「教えること」を重視する評価軸をつくることで、学び合い、スキルアップを目指す企業風土ができる。

(参照元:職業能力評価基準 活用事例集

 

まとめ

人事評価制度は「給与を決めるための基準」ではなく、「企業と従業員の目標を同じ方向を向いて成果に繋げる仕組み」です。その実現のためには公平性・透明感が高く、従業員すべてに分かりやすく納得感があるものでなければなりません。

また一度作った制度も、経済や社会状況の変化にも対応できるように柔軟性をもって見直し・ブラッシュアップを重ねて、現状に合うシステムを構築していくことが重要です。

 

人事評価に関するお役立ち資料

人事評価の手順や書き方を小冊子で詳しく解説しています。業種別の人事評価シート例もございますので、ぜひ参考にしてください。