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定着率とは?業種別の平均や目安、上げる方法や重要ポイントまでわかりやすく解説!

ノウハウ ナレッジ
2022.01.25
松木 謙介

数多くの企業がある中で、自社を選んで働き続けてくれる人を定着させるのは、難しいこと。「せっかく採用してもすぐに離職してしまい、常に人手不足」と悩む経営者、人事・教育の担当者も少なくないでしょう。

そこで注目していただきたいのが、働きやすさの指標となる「定着率」です。今回は、定着率とは何なのか、その意味や計算方法について解説します。

業界ごとの定着率の目安、向上させるメリット、ポイントなどもご紹介しますので、従業員の離職に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

 

定着率の意味とは

定着率とは「入社した従業員がある一定期間を経て、どれくらい離職せず残ったか」を表す割合のことです。企業の働きやすさを示す指標となるため、自社の労働環境の見直し・改善を行う際や、労働環境の良さを求職者にアピールする際などに活用されています。

定着率が高いということは、つまり従業員が長く働きたいと思える環境、制度が整っているということ。反対に定着率が低い会社は、「離職したい」「ここで働き続けたくない」と思わせてしまう状況にあると言えるでしょう。

働きやすい環境かどうかは、捉え方によって差が出やすく曖昧になりがち。そこで定着率を調べることで、働きやすさが数値化され、主観に頼ることなく見極められるようになるのです。

定着率における”ある一定期間”に、明確な定義はありません。半年、1年、5年と自由に決めることができます。「入社してから何年後の定着率が下がるのかを調べたい」「入社1年後の離職を防止するため、定着率を調べたい」というように、目的に合わせて期間は変動します。

また、定着率を調べる対象も、企業や目的によってさまざま。新卒社員、中途採用社員、正社員、パート・アルバイトというように、対象となる従業員を限定して定着率を求める場合もあります。

 

定着率と離職率の違い

離職率は「入社した従業員が、ある一定期間を経てどれくらい離職したか」を示す割合のことで、定着率とは反対の意味を持ちます。

例えば、とある企業が10人の新卒採用を行ったとします。そして、入社から1年後までに4人が離職し、6人が離職せず残ったとしましょう。その場合、離職した人の割合は40%。これが離職率です。対する残った人の割合は60%で、これが定着率です。

離職率が高い時は定着率が低くなり、離職率が低い時は定着率が高くなるもの。2つの数値は相互関係にあります。

また、離職率がわかっていれば定着率を求めることも可能です。100%から離職率を差し引けば、定着率が算出されます。反対に、100%から定着率を差し引くことで、離職率を求めることもできます。定着率と離職率、どちらかしかわかっていない場合に役立つ計算方法なので、ぜひ覚えておくと良いでしょう。

 

雇用形態別の定着率とは?

勤務時間や給与制度が違う、正社員とアルバイト・パートですが、定着率にも違いがあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

厚生労働省が2021年に発行した「令和2年雇用動向調査結果の概要」に記載されている「離職率」を参考に、雇用形態別の定着率について見ていきましょう。

 

就業形態別入職率・離職率の推移

(引用元:厚生労働省(2021)『令和2年雇用動向調査結果の概要』)

 

正社員の定着率

正社員の定着率は、アルバイトやパートを含めず正社員のみを対象とし、入社してからどれくらい残ったかを表す数値。

先ほどのデータによると、2020年時点で正社員の離職率は10.7%。つまり、定着率は89.3%です。2006年の正社員離職率13.1%、定着率86.3%からアップダウンを繰り返しつつも、定着する正社員雇用の従業員は増加傾向にあるようです。

正社員はフルタイムで働く、会社運営に欠かせない存在。アルバイト・パートよりも任される仕事の量が多く、求められるレベルも高いので、その分教育コストがかかります。離職が増えてしまうと、かなりのロスになるため、企業は正社員の定着率を積極的にあげる必要があります。

 

アルバイト・パートの定着率

アルバイト・パートの定着率は、正社員を含めずアルバイト・パートのみを対象とし、どれくらい残ったかを表す数値です。

令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、2020年のアルバイト・パートの離職率は23.3%。つまり、定着率は76.7%ということになります。最も高いときで76.9%、一番低いときで73.3%と、正社員よりも定着しにくいのが特徴です。

人件費削減のためや、人員不足改善のために導入されることの多い、アルバイト・パート雇用。しかし定着率が低いと、離職するたびに採用し、教育しなくてはなりません。結局、時間も費用もかかりますし、採用が成功しなければ再び人員不足となるでしょう。

アルバイト・パートは正社員よりも定着率が低いとはいえ、離職による不利益を回避するため、定着に力をいれることが大切です。

 

業界・業界ごとの定着率の目安とは?

雇用形態によって定着率に違いがあると解説しましたが、業界によっても差があります。

自分の会社の定着率が、業界の平均と比べて高いのか、低いのかを知っておくことで、定着率の目標が立てやすくなります。また、改善すべきかどうか適切に判断しやすくなるので、定着率が高い・低い業界と、業界ごとの目安を確認しておきましょう。

業界別の離職率が記載されている「令和2年雇用動向調査結果の概要」をもとに、定着率を算出し、グラフ化しましたので、こちらを参考に解説していきます。

 

業態別定着率と離職率

(「令和2年雇用動向調査結果の概要」(厚生労働省)を元に弊社で図を作成)

 

定着率が高い業界

定着率が高い業界

厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、2017年時点で定着率が高かった業界は、高い順に「電気・ガス・熱供給・水道業」「複合サービス事業」「建設業」「製造業」「情報通信業」でした。

ライフライン関連の会社や、郵便局、建設工事を行う業者、製造工場、ソフトウェア会社などが、比較的定着しやすい傾向にあるようです。なぜ定着率が高いのかについては、さまざまな要因が挙げられますが、主に「給与」が関係していると考えられます。

 

業態別の常用労働者1人あたりの平均月間給与額

(「産業別常用労働者1人平均月間現金給与額」(統計省統計局)と元に弊社で図を作成)

 

統計省統計局調査によると、1人あたりの平均現金給与額が多い業界として「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」が上位にランクインしています。「建設業」や「製造業」も含め、先ほどのデータで定着率が高いと記載されていた業界は、全体的に平均現金給与額が高い傾向にあるようです。

給与は、従業員にとって生活の基盤となる重要なもの。適切な報酬が得られることで、仕事に対するモチベーションもアップします。規則正しい労働時間、休暇の取りやすさなど、定着率向上の要因は他にもありますが、やはり給与が高いと従業員が離職しにくいと考えられるでしょう。

 

定着率が低い業界

定着率が低い業界

一方、当データによると「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「サービス業」「不動産業、物品賃貸業」などの業界が、人材の定着に苦戦している模様。なかでも、接客を要する仕事、接客が会社の利益に影響する仕事が含まれる業界は、定着率が比較的低いようです。

定着率低迷の原因は、高い場合と同様、給与が関係していると考えられます。

産業別常用労働者1人平均月間現金給与額」では、「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「サービス業」の1人平均月間現金給与額が、他の業界と比べて低い結果に。最も給与額が低い「宿泊業、飲食サービス業」と、最も高い「電気・ガス・熱供給・水道業」とでは、約43万円もの差があります。

給与が低いと、生活していくのが困難に。家族を養っていく必要のある従業員であれば、給与が原因で転職を考えることも少なくないでしょう。そのため定着率を上げたい企業は、給与の見直しを行う必要があります。すぐに給与が上げられない場合でも、福利厚生の充実やインセンティブの導入など、別の方法で報酬を増やす努力をすることが大切です。

 

定着率の計算方法

定着率の計算方法を知らなければ、自社の定着率を調べることができません。ここで、定着率の計算式をチェックしておきましょう。

定着率は以下の計算式で求めることができます。

(入社した人数 - 離職した人数)÷ 入社した人数 × 100 = 定着率

定着率は、入社した人数から離職した人数を引き、それを入社した人数で割って100をかけることで求めることができます。

例えば、入社した人数が100人で、1年後までに30人離職したとします。その場合、「(100ー30)÷100×100」の式で計算することで、定着率「70%」を算出できます。

また、離職率がわかっている場合は、「100(%)ー離職率」で定着率を求めることも可能です。離職率のみ記載されている資料を読む際などに、ぜひ活用してみましょう。

 

定着率が低いと発生するデメリット

定着率の低迷、低下は企業にとって良くないこととわかっていても、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。

定着率が低いと発生するデメリット

定着率が低いと発生するデメリットは、主に「教育コストがかかる」「生産性が下がる」「入社数減少・人員不足」の3点が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

 

デメリット1:教育コストがかかる

従業員が離職した場合、空いてしまった穴を埋めるため、新たに人材を採用しなくてはなりません。そして従業員を教育し、育成する必要があります。

離職者数が多いと、その分、教育する人数も頻度も増えます。時間も費用も消費することとなり、企業への負担が大きくなるのです。

特に、正社員の場合は教育コストが高くつくもの。産労総合研究所が2020年に行った調査では、正社員に行う入社後の教育研修費は、1人あたり約3万5000円にも及びます。採用と教育を何度も繰り返すとかなりのコストがかかり、かつ定着率が低ければ、さらに無駄が増えてしまうでしょう。

とはいえ、人材育成をおざなりにしてしまうと、社員は十分に仕事をこなすことができず生産性が下がります。結果的に「会社の業績が悪く、満足のいく給与が得られない」「自分の成長が感じられない」と離職し、さらに教育コストがかかる恐れがあるので、定着率アップを優先させる方がコストパフォーマンスが良いのです。

 

デメリット2:生産性が下がる

定着率が低いと、今まで育ててきた従業員が持つノウハウやスキルが失われます。優秀な人材が離職する可能性もあり、業務の生産性が落ちてしまうでしょう。

再度、離職者が出る前の状態へと戻すには、新たに人材を採用し、教育する必要があります。しかし、育ちきるまでには時間がかかるため、その間の生産性はどうしても落ちてしまうもの。教育を行うための時間・労力も必要となり、通常業務が十分にこなせないこともあります。

また離職者が多いと、残された従業員への負担が大きくなります。業務量が増え、労働時間が長くなれば、ストレスを抱えてしまうことに。仕事に対するモチベーションが失われ、生産性が落ちるだけでなく、ストレスで離職する人が出てさらに生産性が落ちる、という負のループに陥りかねません。

 

デメリット3:入社希望者数の減少

誰しも、労働環境の悪い会社には入社したくないものです。しかし、定着率が悪い会社は、周りから「魅力がない会社だ」「働きにくい会社だ」というイメージを持たれてしまいがち。そのため、入社を希望する人が減る恐れがあります。

採用に苦戦すると人員不足になり、労働環境が劣悪に。優秀な人材を確保できず生産性が落ちる、従業員の作業負担が増えるなど、さまざまな問題を抱えることとなります。また、採用を何度も行わなくてはならないため、ロスが増えてしまうでしょう。

明確な定着率が外部に漏れていなくとも、インターネットに書き込まれた口コミなどで、「あそこの会社は人が辞めやすい」と噂されれば、入社応募をためらう求職者が増えてしまいます。このように、定着率の低下は会社外部にも影響を与える、ということを覚えておきましょう。

 

定着率を向上させるメリット

では反対に、定着率がアップするとどのような良い効果が得られるのでしょうか。

定着率を向上させるメリット

定着率を向上させるメリットはたくさんありますが、特に「顧客満足度が上がる」、「社員のモチベーションが上がる」、「会社のイメージアップに繋がる」の3つが挙げられます。具体的にどのような影響があるのか、詳しく見ていきましょう。

 

メリット1:顧客満足度が上がる

定着率が高い状態というのは、企業に長く勤める従業員が多いということ。ノウハウもスキルも知識もある優秀な人材が揃っており、業務の成果、質の高さが向上されます。

質の高い商品、サービスが提供できれば、顧客満足度が上がります。その結果リピーターが増える、新規顧客が増えるなど、業績向上へと繋がるでしょう。

特に接客業では、顧客満足度アップのため、従業員の接客スキルを上げることが大切。教育や指導でスキルを磨くことも可能ですが、経験によって得られるノウハウ・知識にはかないません。そのため、定着率を上げて経験豊富な従業員を増やすことが重要なのです。

また、顧客満足度を上げるため、新たに有能な人材を採用する方法もありますが、必ずしも求めている人材が見つかるとは限りません。もしうまく採用できた場合でも、自社のやり方に馴染むまでに時間がかかるため、定着率を上げる方が、より効率が良く顧客満足度を向上できると言えるでしょう。

 

メリット2:社員のモチベーションが上がる

企業に長く勤める従業員が増えれば、安定して人員を確保できます。そうすることにより、社員は無理なく働くことが可能に。仕事に対するストレスが軽減され、モチベーションの向上へと繋がるでしょう。

通常業務を行う従業員はもちろん、教育担当者や採用担当者のやる気もアップします。せっかく教育したり、採用したりしても、すぐに離職してしまうようでは「どうせまた辞めてしまうし…。」と意欲を喪失してしまうからです。ですが、従業員が定着するようになれば、採用・教育へのやりがいを感じられるでしょう。

社員のモチベーションは、生産性、及び業績に関わるものなので非常に大切。評価制度の見直しや、労働環境の改善などでモチベーションアップを図ることもできますが、定着率に注目してみるのも一つの手です。

 

メリット3:会社のイメージアップに繋がる

定着率が低いと会社の印象が悪くなると解説しましたが、反対に定着率が高ければ、周囲から「働きやすそうな会社だ」という良い印象を持たれます。魅力的な会社に見え、入社希望者が増加する、優秀な人材が集まるなど、スムーズな採用へのチャンスが増えるでしょう。

また、人が定着している会社は、内部統制が取れているイメージがつき、クライアントから良い印象を持たれることも。取引先と良好な関係を築くことができるなど、業績アップの手助けとなるはずです。

 

正社員の定着率が下がってしまう原因

定着率が下がってしまう原因には、正社員とアルバイト・パートとでやや違いがあります。それぞれ、どのようなことが原因で定着率がダウンするのでしょうか。

正社員の定着率が下がってしまう原因

正社員の定着率が下がってしまう原因は、主に「給与が低い」「従業員同士での人間関係」「長時間労働」の3つが考えられます。詳しく見ていきましょう。

 

原因1:給与が低い

産業別常用労働者1人平均月間現金給与額」にある通り、給与の低さは、定着率低下に大きく関係しています。やりがいのある仕事、人間関係が良好な職場は魅力的ですが、給与が低く生活が苦しいようでは、離職せざるを得ないからです。

給与だけでなく、手当や特別報酬が不十分な場合も、定着率低下に繋がる恐れがあります。「労力に見合う報酬が得られない」「評価してもらえない」と会社への不満・不信感が募り、従業員が離れていってしまうのです。

会社の業績によっては、すぐに給与を引き上げるのが難しい場合もあるでしょう。しかし、給与の低さによって定着率が下がってしまうと、採用や教育にコストがかかったり、生産性が落ちたりと結局ロスになるため、一度見直してみることが大切です。

 

原因2:従業員同士の人間関係

給与や福利厚生に問題がなくとも、職場の人間関係の良し悪しで、離職が増える可能性があります。上司と部下、部署内の従業員同士、取引先や顧客との人間関係が悪いと、ストレスを抱えて離職してしまいます。特に上司と部下の間柄では、パワハラが原因で会社を去るケースも少なくありません。

初職の離職理由

(引用元:内閣府「特集 就労等に関する若者の意識」)

 

2017年に内閣府が行った調査では、初職の離職理由として「人間関係が良くなかったため」と答えている人が、2番目に多いという結果に。職場での対人関係が原因で、会社を辞めたいと考える人は少なくないようです。

そのため企業は、社員が良好な人間関係を構築できるよう、体制を整えておく必要があります。そして、定期的にヒアリングを行い、コミュニケーションに問題がないかチェックすることが大切です。

 

原因3:長時間労働

長時間労働も、正社員の定着率が下がる原因のひとつ。労働時間が長いと、肉体的にも精神的にも負担がかかり、従業員はストレスを抱えてしまいます。過労で体調を崩し、止むを得ず離職してしまうケースも少なくありません。

先ほどの内閣府の調査においても、労働時間や休暇の条件が原因で離職したという回答は23.4%と多く、人間関係問題に次ぐ第3位にランクインしています。

決められた時間内で働くアルバイト・パートと違い、正社員は残業することが多々あります。特に、人員不足問題を抱える企業では、就業時間内に業務を終えられず、多くの従業員が長時間労働を強いられることも。その状態が続くと、疲弊した従業員が次々に離職し、定着率が下がっていってしまうのです。

そのため企業は、社員の離職を防ぐため、法律で決められた労働時間を厳守しなくてはなりません。法律で決められた労働時間とは、以下の通りです。

  • 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
  • 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
  • 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

(引用元:厚生労働省「労働時間・休日に関する主な制度」)

 

止むを得ず、時間外労働や休日労働を行う場合も、「時間外労働協定(36協定)」を守らなくてはなりません。定着率が下がると人員不足となり、さらなる離職を招く恐れがあるので、就業時間が長くなってしまっている会社は即座に手を打つ必要があるでしょう。36協定に関しては以下の記事を参考になさってください。

■参考記事

36協定とは?新様式の変更点や違反時の罰則などについてわかりやすく解説!

 

アルバイト・パートの定着率が下がってしまう原因

一方、アルバイト・パートの定着率低下には、どのような原因があるのでしょうか。

アルバイト・パートの定着率が下がってしまう原因

アルバイト・パートの定着率が下がってしまう主な原因としては、「人間関係や職場の雰囲気」、「求められる仕事量が多い・レベルが高い」、「精度が要望に合わない」の3点が挙げられます。詳しく解説しますので、アルバイト・パート雇用を積極的に行っている方は、ぜひ参考にしてください。

 

原因1:人間関係や職場の雰囲気

正社員の定着率低下の原因である、人間関係問題。これは、アルバイト・パートの離職理由としても挙げられています。

離職理由

(引用元:ディップ総合研究所「アルバイト・パートスタッフの離職事情〜早期退職防止・長期定着に必要な対策とは〜」)

 

ディップ総合研究所が2018年に行ったインターネット調査によると、離職理由として「上司・同僚などの職場の人間関係や雰囲気が良くなかった・自分に合わなかった」と答えた人が、37.5%を占めています。

アルバイト・パートは、希望通りのシフトで働くことさえできれば、給与や労働時間は基本的に自由に調整できます。しかし、人間関係や職場の雰囲気は自分で変えることができず、かつ働き始めるまでわからないため、離職する原因になりやすいのです。

そのため経営者・管理者は、従業員同士の人間関係が良好であるか、心地よく働ける職場であるか配慮し、マネジメントする必要があるでしょう。

 

原因2:求められる仕事量・レベルが多い/高い

アルバイト・パート雇用の従業員は、仕事内容を詳しく調べずに入社することもあります。「近所で通勤しやすいから」「時給が良かったから」など、単純な志望動機で応募する人も多いでしょう。

そのため、正社員と同じ仕事量を割り振ったり、レベルが高い業務を任せたりしてしまうと、入社前のイメージとのギャップを感じ、離職してしまいます。例えば、求人募集に記載した仕事以外の業務も任せる、きついノルマを課すなど、ハイレベルな仕事を指示すると「想像していたよりも辛いから辞めたい」と思わせてしまうでしょう。

正社員とアルバイト・パートの仕事内容を、等しくする戦略もあります。しかし、定着率が下がるようであれば会社にとって不利益になるため、任せる仕事や求めるレベルが適切かどうか、きちんと見極めることが大切です。

 

原因3:制度が要望に合わない

アルバイト・パートは、働きたい時間帯や日数を面接時にヒアリングし、合致した場合に雇用します。しかし、「いざ入社後してみたらシフトの希望が通せない」といった事態が発生すると、従業員は不満に思い、離職してしまうのです。

希望のシフトが通らないだけでなく、融通が利かない状態も「働きにくい」と感じさせてしまう原因。急遽仕事を休まなくてはならない時に、断られてしまうようでは、勤続が難しくなるでしょう。アルバイト・パートは、学業や育児をしながら働く人も多いので、融通が利くかどうかが定着率に大きく影響します。

そのため、急なシフト変更でも業務に支障が出ないよう、あらかじめ体制を整えておく必要があります。

 

定着率を向上させるためのポイントとは?

定着率を向上させるためのポイント

それでは、定着率を向上させるためのポイントを7つご紹介します。見直すべき点はないか、強化すべきことはないか、ぜひ自社の状況と比較しながらご覧ください。

 

ポイント1:人材育成に力をいれる

定着率を向上させるためには、まず人材育成に注力することが大切。優秀な人材が増えれば、業務効率がアップし、従業員ひとりにかかる負担を軽減できるからです。長時間労働を防止したり、有給休暇が取りやすくなったりなど、労働環境問題の改善も見込めるでしょう。

生産性が上がると、会社の業績向上、そして給与額の増加が期待できます。給与の増加に成功すれば、従業員に対し「この会社は働き続ける価値がある」と示すことができ、さらなる定着率アップへと繋がるでしょう。

また、人材育成に力をいれると、従業員は自分自身の成長を感じ、モチベーションが上がります。やりがいを持って仕事することができれば、多少のストレスや不満があっても「頑張って乗り越えよう」と思うもの。つまり離職を防止し、定着するよう促すことができるのです。

入社直後の社員はもちろん、勤続年数の長い従業員に対しても、教育を厳かにしないことが大切。より効率よく業務に取り組めるよう教育する、スキルアップや昇格のための研修を行うなど、成長を促す体制を整えましょう。

教育する時間が十分に取れない場合や、遠方で研修を開催できない場合は、オンライン研修などを活用するのもひとつの手です。下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

■参考記事

接遇研修とは?オンラインでの実施方法やロールプレイングなどの具体的な手法を詳しく解説!

 

ポイント2:福利厚生・給与を充実させる

福利厚生や給与の充実は、定着率向上の重要なポイント。労働や能力に見合った報酬をきちんと与えることで、従業員の不満が軽減され、定着しやすくなります。

給与額の増加だけでなく、業績に応じたインセンティブの付与も戦略のひとつ。報酬を受け取ることがひとつの目標となり、従業員のモチベーションがアップするでしょう。ただし、インセンティブ付与のハードルが高すぎると、かえって社員のやる気が失われる可能性もあるので、注意が必要です。

また、以下のようなものを導入し、福利厚生を充実させる方法もあります。

  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 育児手当
  • 社員食堂の設置
  • レジャー施設・宿泊施設の割引制度

生活の手助けとなる手当の付与や、仕事のストレスを発散できる環境の整備によって、従業員が定着する可能性が高まります。「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるよう、独自の福利厚生を導入してみましょう。

 

ポイント3:ワークライフバランスの向上

最近、よく耳にする”ワークライフバランス”という言葉。ワークライフバランスとは「年齢や性別に関係なくすべての人が、仕事と私生活の両方を充実させられる働き方」のこと。

内閣府のサイト『「仕事と生活の調和」推進サイト』では、ワークライフバランスが実現した社会の定義について、以下のように記載されています。

国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」

(引用元:内閣府男女共同参画局 「仕事と生活の調和とは(定義)」)

社員が労働時間を自ら決められる「フレックス制」は、ワークライフバランスを改善する施策のひとつ。これを活用することで、従業員は私生活と仕事のバランスが取りやすくなります。

例えば、保育園に子供を預けている人は、送り迎えの時間が出社・退社時間と被ってしまうことも。しかし、フレックス制を活用すれば時間の融通が利くようになります。仕事と子育ての両立が可能になるため、出産を理由に離職しにくくなるでしょう。

 

出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況

(引用元:内閣府男女共同参画局(2019)「共同参画」)

 

また、内閣府発行の「共同参画」によると、第1子出産前後の女性の継続就業率は、1985〜1989年時点で24.1%でしたが、2010〜2014年では38.3%にまでアップ。これは、育児休業制度の利用者が増えていることが理由と考えられます。

「働き方がライフスタイルに合わないから」と、優秀な人材が離職するのは、もったいないこと。そのため企業は、働きやすくするための制度を導入し、定着率の向上を目指すことが大切です。

 

ポイント4:環境に合わせた働き方

年々変わりゆく環境の変化。2019年に発生した新型コロナウイルスのように、人の力ではどうにもならない環境に置かれることもあります。どのような状況でも定着率が下がらない企業になるには、環境に合わせて働き方を変え、体制を整えることが大切です。

テレワークの導入状況

(引用元:総務省「令和2年通信利用動向調査の結果」)

 

例えばコロナ禍では、リモートワークを導入する企業が増えました。

総務省発行の「​​令和2年通信利用動向調査の結果」によると、2018年度のテレワーク導入率は19.1%でしたが、2020年には47.5%と、約2年間で2.5倍増加しています。「仕事をしないと生活できないけれど、感染が怖いから職を変えよう」と思う従業員の離職防止対策として、自宅からの勤務を許可した企業が多かったと考えられます。

その時の状況に合わせて、臨機応変に働き方を変化させる。日々変化する環境の中、定着率を向上させるには、このような柔軟性が必要です。

ただし、制度を変更した場合、新たな問題が発生する場合もあります。例えばリモートワークでは、「うまくコミュニケーションが取れない」「勤務状況が把握しづらい」などのような問題点を抱えてしまいがち。この場合は、オンライン会議用ツールの導入や、勤務状況管理ツールの導入など、対策する必要があるでしょう。

 

ポイント5:評価制度を整える

定着率アップには、従業員の仕事に対するモチベーションの向上が欠かせません。そしてモチベーションをあげるためには、きちんと評価することが大切。どのような点で評価されていて、どのような課題があるのかがわからないと、やる気が削がれ、離職してしまう恐れがあるからです。

評価のひとつとなる給与や賞与を決める際は、なぜこの金額になったのかを説明することがポイント。社員が給与・賞与に納得できれば、福利厚生への不満が解消され、定着率アップが見込めるでしょう。

また、評価する前に目標を設定し、どの項目においてどれだけ達成しているかを明確にすることも大切。そうすることで、従業員は自身の成長を実感することができ、モチベーションになるのです。

さらに、定期的に面談を行い、小まめにフィードバックすることで「自分のことを気にかけてくれている」「ないがしろにされていない」という好印象を与えることができます。企業への信頼度が上がり、長く働いてくれる従業員を増やせるでしょう。

 

ポイント6:経営理念の提示・浸透

経営理念は、企業に所属する人全員の行動基準となるもの。どのようなときに、どのように動けば良いのかを明確に提示しておくことで、従業員の自発的な行動を促進できます。

自分で物事を考え、行動できるようになれば、やりがいを持って仕事に取り組めるものです。”やらされている感”がなくなり、離職を防止、そして定着率の向上へと繋がります。

企業理念を浸透させるには、社員と共に作るのが効果的。会社のトップから言い渡されるだけだと、他人事のように思えてしまうからです。どのような基準にするのか、何を目指すのかを一緒に考え、従業員を巻き込むことがポイントです。

また、小冊子にまとめたり社員証の裏に印刷したりなど、「見える化」することも大切。企業理念を業務に落とし込むため、いつでも目に入るよう工夫してみましょう。

従業員全員が同じ理念を共有することにより、団結力も高まります。仕事に対する不安・不満が多少あったとしても、仲間がいれば「もう少し踏ん張ってみよう」と定着しやすくなるはずです。

 

ポイント7:採用時の見極め

人材育成や福利厚生の強化、充実に努めても、そもそも企業と従業員との相性が悪ければ、長く続きません。反対に、企業との相性が良く、同じ目標に向かって進むことのできる人なら、高い意欲で長く勤続してくれるでしょう。

そのため、採用する時点できちんと見極めることが重要。企業が求める能力、技術があるかどうかはもちろん、経営理念に共感できるかどうかを確認します。

能力や技術は、入社後に鍛えることも可能です。しかし、価値観は簡単に変えられないものなので、面接時に経営理念に共感できるか確認し、その上で判断することが大切です。

また、適性検査ツールの活用も有効。企業と相性の良い人を見極めるための判断材料として、活躍してくれます。料金がかかる場合もありますが、すぐに離職する人を雇ってしまうと結局費用が無駄になるため、コストパフォーマンスを考えて試してみるのも良いでしょう。(参考元:千葉理恵子著(2018)『離職率ゼロ経営』)

 

まとめ

最近では、転職に抵抗がない人も増えてきているため、定着率を向上させるのは容易ではありません。福利厚生、労働時間、職場の環境などに気を配っても、なかなか定着しないこともあるでしょう。

しかし、少しでも定着率がアップすれば、業績が上がったり会社に良いイメージがついたりと、企業にとってさまざまなメリットがあります。人材育成や評価制度、採用時の見極めなども見直し、定着率が向上するよう工夫してみましょう。

著者
松木 謙介
2017年にピーシーフェーズ株式会社に新卒で入社。大手飲食チェーン店のマニュアルデジタル化プロジェクトに携わり、2年目から人材育成クラウドサービス「shouin」の立ち上げ、現在までプロダクト開発に携わる。「研修をもっとラクラクに」できるよう、試行錯誤を続ける日々。趣味はサッカー観戦、ゲーム、読書、他多数。

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