採用活動をはじめ、給与の支払いや退職の手続きなど、従業員の入社から退職までをサポートする「人事労務」。
作業内容が細かく多岐にわたるため、
「人事労務って結局何をする仕事なの?」
「人事と労務はどう違うの?」
「私に人事労務の仕事はできる?向いているのかな?」
などと分からないことも多いことでしょう。
そこでこの記事では、書籍『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき7の基本。8つの主な役割。(労務行政)』を参考に「人事労務とは」といった説明から「その役割と仕事内容」「人事労務に向いている人の特徴」までくわしくご紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。
人事労務とは
人事労務とは、会社の目標を達成するための、一連の人材活用に関わる業務を指します。経営資源である人材を確保することから、配置・育成まで幅広い業務を担います。
人事と労務の違い
人事と労務には大きく「フォーカスする人材の規模」といった点で違いがあります。人事では「社員一人ひとり」に対して実施する業務が多いのに対し、労務では「社員全体」に対して実施する業務が多くあるのです。
たとえば人事では「入社・退職の手続き」や「新入社員研修」などが、個人または限定的な社員に対する業務になり、労務では「給与の支払い」や「福利厚生の管理」などが社員全体に対する業務になります。
人事と労務の関係性
人事と労務の仕事は同じ「人材」を対象としますが、人事はいわば人材を育成する「コーチ」のような役割を担い、時には人事戦略を考える「コンサルタント」のような役割を担うこともあります。
一方で労務は、給与の支払いや労働環境の整備から経営をサポートする、いわば「マネージャー」のような役割を担います。
なお、人事労務の概要や年間のスケジュール等については、こちらの記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事
人事労務とは?業務内容や役割、注意点と改善ポイントなどわかりやすく解説!
人事の役割と仕事内容
ここからは、人事における役割を大きく3つに分解し、ご紹介していきましょう。人事の役割を果たすためのポイントや注意点などを交えながら解説していきます。
<人事の主な役割3つ>
- 人材の確保
- 人材の活用
- 人材の育成
くわしく見ていきましょう。
役割1:人材の確保
人事の役割としては、第一に「人材の確保」があります。しかし、これは単に「人材不足にならなければいい」という簡単なことではありません。
人材不足になればサービスの供給不足に陥り、反対に、人材過多になれば人件費が大きくなり経営に負担をかけます。ゆえに人材確保のポイントは、社内の人材を過不足なく適度に補っていくところにあるのです。
また、人材の確保は「現状」だけで必要数を算出するのではなく、今後の経営戦略などを考慮しながら「長期的視点」で算出するよう注意が必要です。採用戦略を誤ったがゆえに、「今年は例年の2倍の人材を確保しなければならない!」なんて事態に陥らないようにしたいですね。
なお、人材確保にまつわる主な仕事内容は、下記のとおりになります。
主な仕事内容
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採用活動
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・要員計画の策定
・インターンシップの実施
・企業説明会の実施
・面接スケジュール調整
・面接
・内定者への通知
・内定者研修の実施
・新卒入社式の企画、実施
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入社、退社手続き
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<入社時>
・労働条件通知書の作成
・雇用契約書の作成
・労働保険、社会保険の加入手続き
・健康診断実施の管理
・各種書類の回収(源泉徴収票、年金手帳、マイナンバーカードのコピーなど)
<退職時>
・給与、退職金の計算
・所得税、住民税の計算
・雇用保険、社会保険の資格喪失手続き
・貸与物の回収
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仕事内容の詳細は下記の記事で解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
■参考記事
人事労務とは?業務内容や役割、注意点と改善ポイントなどわかりやすく解説!
役割2:人材の活用
人事では「人材の活用」も重要な役割の一つです。人材を適切に活用することで、業務の効率化や組織全体の活性化、モチベーションアップを狙います。
そして人材の活用は、主に「人材の配置・異動」と「評価制度の運用」の2つの仕事に分けられます。人材の配置や異動では、社員を適材適所に配置することで、業務の効率化につなげられるでしょう。一人ひとりの適性を見極め、配置するのがポイントです。
また評価制度では、社員のモチベーションアップや能力開発を狙います。しかし、評価制度の運用はとくに慎重にならなければなりません。なぜなら、「公平性」が保たれていないと、逆にマイナスな制度と化してしまうからです。社員にとって無益な制度とならないよう、制度づくりには十分注意する必要があります。
なお、人材活用にまつわる主な仕事内容は、下記のとおりになります。
主な仕事内容
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配置、異動
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・人事異動のニーズ調査
・異動候補者の検討
・候補者への内示、面談
・人事異動の社内通知
・関連部署へのアフターフォロー
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人事制度の運用
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・等級制度(社員の能力などに応じて社内での位置を定める制度)
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・評価制度(社員の能力や貢献度を評価する制度)
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・報酬制度(等級制度や評価制度の結果を報酬に反映する制度)
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役割3:人材の育成
「人材の育成」も、人事の重要な役割になります。人材育成は、一見「会社の利益のため」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
人材育成によって社員の能力が向上すれば、当然ながら会社の業績につながりますが、一方で社員自身のモチベーションアップや報酬アップにもつながるのです。人材育成が、会社と社員の双方に大きなメリットをもたらすことが理解いただけると思います。
そして人材育成を行う上では、下記3つの視点(キャリア開発・能力開発・組織開発)を意識し、総合的に取り組むと良いでしょう。また、いずれの取り組みにおいても、長期的な教育計画のもと実施すると効果が得られやすくなります。
「人材の育成」の主な仕事内容
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能力開発
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・OJT(実践研修)
・内定者フォローアップ研修
・新入社員(中堅、管理職)研修
・ビジネスマナー研修
・リーダーシップ研修 など
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キャリア開発
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・自己申告制度
・ヒューマンアセスメント
・キャリアカウンセリング
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組織開発
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・従業員満足度調査
・マネジャー研修
・上司と部下の1on1ミーティング
・職場ぐるみ訓練 など
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なお社員研修については、下記の記事で、その目的から効果的な研修方法までくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事
社員研修とは?目的、教えるべき内容、eラーニングを交えた効果的な研修方法についてわかりやすく解説!
労務の役割と仕事内容
続いて、労務の役割と仕事内容について見ていきましょう。労務の役割は主に次の4つです。
<労務の主な役割4つ>
- 働き方のマネジメント
- 報酬の支払い
- 労働環境の整備
- 社内コミュニケーションの円滑化
くわしく解説していきます。
役割1:働き方のマネジメント
労務の役割の1つ目は「働き方のマネジメント」です。労働条件の管理や休暇・休業制度の管理によって、社員の働き方をサポートします。社員の健康維持や生産性の効率化を目的としています。
もう少しくわしく説明しましょう。たとえば「労働条件の管理」では、労働組合との協議の上で条件を決定するなど、社員が働く上での基礎となる部分を検討していきます。また、労働基準法などの労働法令を遵守しながら進めなければならないため、その辺りの知識も必要となるでしょう。
さらに「休暇・休業の管理」においても、労働基準法や育児・介護休業法などのルールに則った運用が基本となります。適切な管理に加えて、社員が休暇を取りやすくなるような工夫(計画年休の実施、職場の雰囲気づくりなど)ができると良いですね。
主な仕事内容
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労働条件の管理
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・労働条件の検討
・労働組合との協議
・就業規則の作成、改定
・36協定の締結
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休暇・休業の管理
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・年休付与日数の算定
・年休カード作成、配布
・育休、産休、介護休業の管理
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役割2:報酬の管理
労務の役割2つ目は「報酬の管理」です。給与・賞与の計算から支払い、所得税等の税の管理までを担います。
また、報酬の計算および税の管理を行う上で、計算違いや納税ミスはなるべく避けるよう、細心の注意を払う必要があります。さらには支払い期限および税金の納期限までに作業が完了するよう、作業スケジュールの管理も重要となるでしょう。
主な仕事内容
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給与・賞与
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・給与改定、昇給
・賞与計算、支給
・賞与支払届総括表の提出
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税の管理
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・個人住民税の税額通知
(年末調整)
・従業員の扶養親族数の確認
・源泉徴収票の配布、作成
・所得税の計算
・給与支払報告書の作成、提出
・法定調書提出
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役割3:労働環境の整備
労務の役割3つ目は「労働環境の整備」です。労働保険や社会保険の整備から福利厚生の管理、安全衛生対策などの取り組みを通して、社員が安心して働ける職場づくりを担います。
とくに労働保険・社会保険に関しては少々複雑な仕組みになっており、これらを理解しながら管理をしていくのは簡単なことではありません。日々の業務を通して、少しずつ学んでいくと良いでしょう。
主な仕事内容
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労働保険、社会保険
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・労働保険の年度更新
・社会保険賞与支払届の提出
・社会保険の定時決定
・高年齢者雇用状況報告
・障害者雇用状況報告
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福利厚生の管理
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・従業員の健康管理
・住宅手当の管理
・育児、介護支援の対応
・財形形成関連の管理
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安全衛生対策
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・労働環境の調査
・安全衛生教育
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役割4:社内コミュニケーションの円滑化
労務の役割4つ目は「社内コミュニケーションの円滑化」です。会社という組織は一人ひとりの社員で成り立っているからこそ、組織を運用する上でコミュニケーションはとくに重要な要素です。
労働組合における団体交渉や社内報の発行、懇親会の実施などを通して社内コミュニケーションの機会を創出するとともに、組織力の向上を図ります。
主な仕事内容
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労働関係
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・団体交渉
・労働協約、労使協定の締結
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コミュニケーションの活性化
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・社内報の発行
・懇親会の実施 など
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人事・労務管理に向いている人の特徴
ここまでの説明で、人事・労務には実に幅広い役割と業務があることが理解いただけたかと思います。また、実際のところ
「人事労務の仕事は難しそう…」
「誰にでもできる仕事ではなさそう…」
こんな風に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで最後に、人事労務に向いている人の特徴を簡単にご紹介しておきます。決して「この特徴に当てはまらないと務まらない」ということはありませんので、参考までにご覧ください。
「人事・労務管理に向いている人」の特徴
- 対人コミュニケーションが得意な人
- 問題解決が得意な人
- 法令に関する知識のある人
それぞれ見ていきましょう。
対人コミュニケーションが得意な人
人事労務のお仕事の対象は「社員一人ひとり」であることが大前提です。そのため、人として、また同じ組織の人間としての思いやりや気遣いが欠かせません。
また、人事異動の場面などでは、部署間の調整を行う上で板ばさみになることもしばしばあります。双方の意見に耳を傾けながら課題を解決する、といったコミュニケーション能力も必要でしょう。
問題解決が得意な人
人事労務は、問題解決能力が活きる仕事です。とくに採用活動では要因計画から実際の会社説明会の実施においても、「人材の確保という課題をどう解決するか」「どのような計画を練るか」「実際にどう動いていくか」といった大きな問題解決であることに変わりありません。
また、近年ではパワハラやセクハラといった社員同士の難しい問題も多く、これらを解決することも、また問題解決力が求められます。
法令に関する知識のある人
人事労務の役割で解説したように、実際の業務では労働基準法や育児・介護休業法などといったあらゆる法律と向き合うことになります。
実際には働きながら学ぶ方が多いことと思いますが、それでは「気付かぬうちに法律違反になっていた」なんてことも起こりうるものです。そのため、法令に関する知識を持ち合わせていることは、これらのリスクを回避できる大きなメリットと言えるでしょう。
まとめ
採用活動から退職の手続きまで、実に幅広い役割を担う「人事労務」。今回は、「人事労務とは」といった初歩的な解説から「人事と労務の違い」「その役割と仕事内容」「人事労務に向いている人の特徴」までくわしく解説いたしました。以下で簡単に人事、労務の役割をまとめましたので、記事本文とあわせて参考になさってください。
人事の役割
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労務の役割
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1:人材の確保
2:人材の活用
3:人材の育成
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1:働き方のマネジメント
2:報酬の支払い
3:労働環境の整備
4:社内コミュニケーションの円滑化
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