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ウェルビーイングとは?意味・構成要素・高める方法をやさしく解説

企業経営 用語解説
2025.09.05
『shouin+ブログ』マーケティング担当

近年、ビジネスの現場で「ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が増えています。

「社員のモチベーションが上がらない」「離職率が高い」「生産性を改善したい」。このような課題を抱える企業が今、注目しているのが「ウェルビーイング」という考え方です。

ウェルビーイングは、単なる健康管理や福利厚生とは異なります。従業員一人ひとりが仕事や生活全体において充実感を持ち、心身ともに良好な状態であることを目指す概念です。

本記事では、ウェルビーイングの基本的な意味から、企業が取り組むメリット、具体的な施策例まで分かりやすく解説します。従業員の定着率向上や組織の活性化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

 

ウェルビーイングとは、意味や定義

ウェルビーイングは従業員の健康経営や働き方改革、人材育成の分野でも注目を集める概念です。ウェルビーイングは表面的なブームではなく、組織の持続的成長と個人のパフォーマンス向上の両立を実現する鍵となる考え方です。

世界保健機関(WHO)は、健康を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。この定義はウェルビーイングの考え方と深く結びついています。

ウェルビーイングには、次の3つの側面があります。

身体的側面

体が健康で、日常生活を支障なく送れる状態です。十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事などが含まれます。仕事で言えば、過度な疲労やストレスなく働ける環境が整っていることが該当します。

精神的側面

心が安定し、前向きな気持ちで過ごせる状態です。不安や抑うつ感が少なく、自分の感情をコントロールできることが含まれます。職場では、やりがいを感じられたり、達成感を得られたりする状態が当てはまります。

社会的側面

家族や友人、同僚など、周囲との良好な関係が築けている状態です。孤立感がなく、支え合える人間関係があることを指します。仕事においては、チーム内でのコミュニケーションが円滑で、信頼関係が構築されていることが重要です。

これらの3側面がバランス良く満たされることで、人は充実した生活を送ることができます。ウェルビーイングは、仕事だけでなく、家庭、趣味、地域活動など、生活のあらゆる場面に関わる包括的な概念なのです。

 

「健康」や「幸福」との違い

ウェルビーイングは「健康」や「幸福」と似ていますが、より広い概念です。それぞれの違いを整理しましょう。

「健康」は身体中心

健康は主に身体の状態を指します。病気やケガがなく、体が正常に機能している状態です。もちろんメンタルヘルスも含まれますが、中心は身体的な側面にあります。

「幸福」は感情中心

幸福は主観的な感情や満足感を指します。「うれしい」「楽しい」「満足している」といった、その瞬間の心理状態が中心です。個人の価値観や状況によって大きく変わる概念です。

「ウェルビーイング」は生活全体

ウェルビーイングは、身体と心の健康だけでなく、人間関係、経済的安定、社会とのつながり、仕事の充実度など、生活全体を包括します。一時的な感情ではなく、持続的な充実感を重視する点が特徴です。

例えば、高収入で健康でも、人間関係が希薄で孤独を感じていれば、ウェルビーイングは高いとは言えません。反対に、収入は平均的でも、やりがいのある仕事に就き、良好な人間関係に囲まれていれば、ウェルビーイングは高まります。

このように、ウェルビーイングは「幸福」や「健康」を含みつつ、より広い視野で人生の質を捉える概念です。似ているように見えますが、同義ではないことを理解しておきましょう。

 

注目される背景

近年、企業や社会でウェルビーイングが注目される背景には、働き方や価値観の変化、そして企業経営との関係性の深まりがあります。

背景1.人的資本経営の広がり

ウェルビーイングが重視される大きな理由の一つが、人的資本経営の考え方が広まっていることです。従来、多くの企業は従業員を「コスト」として捉えていました。人件費を削減し、効率を高めることが優先されてきたのです。しかし近年、この考え方は大きく変わりつつあります。

人的資本経営とは、従業員を「価値創出の源泉」と位置づけ、人材への投資を通じて企業価値を高める経営手法です。従業員のスキルや知識、経験、モチベーションなどを「資本」として捉え、その価値を最大化することを目指します。

この視点において、ウェルビーイングは極めて重要な要素となります。従業員が心身ともに健康で、充実感を持って働ける環境を整えることが、創造性や生産性の向上につながるからです。

また、2023年3月期から上場企業に対して人的資本の情報開示が義務化されたことも、ウェルビーイングへの関心を高める要因となっています。企業は従業員の健康やエンゲージメント、成長支援などの取り組みを公表することが求められるようになり、ウェルビーイング施策が経営戦略の一部として位置づけられるようになったのです。

 

背景2.働き方・価値観の変化

働く人々の価値観も大きく変化しています。かつては、高い給与や安定した地位が仕事選びの主な基準でした。しかし現在は、「働きがい」や「納得感」を重視する人が増えています。特に若い世代では、仕事を通じた自己実現や、社会への貢献を求める傾向が強まっています。

リモートワークやフレックスタイム制度の普及により、働き方の選択肢も広がりました。これにより、仕事とプライベートのバランスや、自分らしい働き方への関心が高まっています。

また、キャリアに対する考え方も多様化しています。一つの会社で定年まで勤め上げることが当たり前だった時代から、複数の会社を経験したり、副業や起業にチャレンジしたりすることが珍しくなくなりました。こうした変化の中で、「どう働くか」だけでなく「どう生きるか」という視点が重要になっているのです。

こうした価値観の変化により、企業は給与や福利厚生だけでなく、従業員が充実感を持って働ける環境を提供することが求められるようになりました。

 

企業経営との関係性(離職・生産性・採用)

ウェルビーイングは、企業の経営成果に直接影響する要素として認識されつつあります。

離職率への影響

従業員のウェルビーイングが低い職場では、離職率が高まる傾向があります。やりがいを感じられない、人間関係が悪い、心身の健康を損なうといった状況が続くと、優秀な人材が他社に流出してしまいます。採用や育成にかけたコストが無駄になるだけでなく、組織の知識やノウハウも失われます。

反対に、ウェルビーイングが高い職場では、従業員が長く働き続ける傾向があります。定着率の向上は、安定した組織運営や、蓄積された経験・スキルの活用につながります。

生産性への影響

ウェルビーイングと生産性には相関関係があることが、様々な調査で示されています。心身ともに健康で、仕事に意味や目的を見出している従業員は、主体的に業務に取り組み、創造的なアイデアを生み出しやすくなります。

逆に、過度なストレスや疲労を抱えている状態では、集中力が低下し、ミスが増え、パフォーマンスが落ちてしまいます。欠勤や休職が増えれば、組織全体の業務にも支障をきたす恐れがあります。

採用力への影響

求職者が企業を選ぶ際、給与や知名度だけでなく、職場環境や働きやすさを重視する傾向が強まっています。ウェルビーイングに配慮した取り組みを行っている企業は、求職者にとって魅力的に映ります。

このように、ウェルビーイングは単なる福利厚生施策ではなく、企業の持続的成長を左右する重要な経営課題となっているのです。

 

ウェルビーイングを構成する5つの要素(Gallupのモデル)

米国Gallup社は、ウェルビーイングを次の5つの要素で捉えています。

ウェルビーイングを構成する5つの要素

仕事の充実(Career Well-Being) 

まず1つ目の要素は、キャリアや働き方における満足度。「仕事が好きか」「働き方に満足しているか」といった内容です。

仕事は生活の基盤であり、人生に対する幸福度に大きく関わります。近年は、稼ぎや役職だけを重視するのではなく、どのような仕事をして、どのように働き、仕事を通して社会にどのように貢献するかなども大切にされる傾向にあります。

また、仕事以外の時間を十分に確保できているかどうかも、ウェルビーイングを実感するうえで重要です。これらが満たされることで、社員の幸福度が高まります。

 

②人間関係の充実(Social Well-Being) 

2つ目は「社会的な幸福度」です。社会との関わり方、人間関係などを指します。

例えば、職場で良い人間関係を築けている社員は、そうでない社員と比べてウェルビーイングを実感しやすいです。また、プライベートの時間を十分に確保できていると、仕事以外での人間関係を構築しやすく、社会的な幸福度が高まります。

新型コロナウイルス発生によりリモートワークを強いられた際、多くの人々が人間関係の構築に苦戦しました。職場の人とコミュニケーションをとる機会が減り、社会から切り離された感覚に陥った人もいるでしょう。

そのような環境では、精神的な健康を保つことが難しくなります。社員のウェルビーイングを高めるには、人とのつながりを実感できる職場づくりが重要と考えられます。

 

③お金・生活基盤の充実(Financial Well-Being) 

3つ目の要素は、経済的な満足度です。働き方や仕事内容に満足していても、収入に満足できていなければ、ウェルビーイングが高いとはいえないでしょう。

生活するのに十分な報酬、仕事の責任・難易度に適した報酬を得ることで、経済的な満足度が高まります。また、「自分の心を満たすお金の使い方ができているか」「将来に金銭的な不安はないか」なども指標になります。

 

④心と体の健康(Physical Well-Being) 

4つ目は「肉体的・精神的な健康」です。日常生活および仕事に必要なエネルギーが十分にあることを意味します。

具体的には、十分な睡眠・運動がとれていること、病気や怪我がないこと、ストレスを発散できていることなどです。企業は、従業員がこのような状態を維持できるよう、環境を整えることが求められます。

なお、フィジカルウェルビーイングは、先の「経済面でのウェルビーイング」「社会的なウェルビーイング」がベースにあります。経済的な幸福度、社会的な幸福度を実感することが、肉体的・精神的な健康につながるのです。

 

 ⑤地域や社会とのつながり(Community Well-Being) 

最後に、5つ目の要素は「コミュニティウェルビーイング」です。地域の人と関わったり、地域行事に参加したりすることで得られる幸福感・安心感を指します。

Gallup社は、本人や家族が地域社会とつながり、良い関係を築くこともウェルビーイングに必要だと説いてます。仕事以外の時間を確保できていないと実現できないため、コミュニティウェルビーイングはキャリアウェルビーイングに関係しているといえるでしょう。

■参考:The Five Essential Elements of Well-Being」Gallup

 

ウェルビーイングを高める5つの視点(PERMAモデル)

ウェルビーイングを高めるためのもう一つの重要な枠組みが、ポジティブ心理学者マーティン・セリグマンが提唱した「PERMAモデル」です。PERMAは以下の5つの要素の頭文字を取った言葉です。要素を一つずつ見ていきましょう。

P:前向きな感情(Positive Emotion)

前向きな感情とは、喜び、感謝、希望、楽しさといったポジティブな感情を日常的に経験することです。人は前向きな感情を持つと、視野が広がり、創造的になり、新しいことにチャレンジする意欲が高まります。反対に、常にネガティブな感情に支配されていると、思考が狭まり、消極的になってしまいます。

職場での具体例としては、会議で自分の意見が採用されたとき、同僚から感謝の言葉をもらったとき、新しいプロジェクトへの期待感を持てたときなどが挙げられます。こうした小さなポジティブ体験を積み重ねることが、ウェルビーイングを高めます。

ただし、無理にポジティブであろうとする必要はありません。ネガティブな感情を抑圧するのではなく、ポジティブな感情を感じる機会を意図的に増やすことが大切です。

 

E:没頭・集中(Engagement)

没頭・集中とは、目の前のことに完全に集中し、時間を忘れるほど夢中になっている状態を指します。心理学では「フロー状態」とも呼ばれます。このとき、人は自分の能力を最大限に発揮し、充実感を得られます。難しすぎて挫折することもなく、簡単すぎて退屈することもない、ちょうど良い難易度の課題に取り組んでいるときに、この状態が生まれやすくなります。

職場では、自分のスキルにマッチした業務を任されたり、興味のある分野のプロジェクトに参加したりすることで、没頭状態を経験できます。単調な作業の繰り返しではなく、適度な挑戦がある仕事が、エンゲージメントを高めるのです。

なぜウェルビーイングが高まるのかと言えば、没頭しているときは不安や心配事から解放され、純粋に活動そのものを楽しめるからです。この経験が積み重なることで、仕事や生活への満足度が向上します。

 

R:良好な人間関係(Relationships)

良好な人間関係とは、信頼でき、支え合える関係を持つことです。PERMAにおける人間関係は、Gallupの「Social Well-Being」と近い概念ですが、より関係の質に焦点を当てています。人間関係の質は、ウェルビーイングを左右する最も重要な要素の一つです。どんなに仕事で成功していても、孤独で誰とも深いつながりがなければ、充実感は得にくいでしょう。

職場では、同僚と気軽に話せる雰囲気、困ったときに助け合える関係、成功を一緒に喜べるチームなどが、良好な人間関係の例です。信頼関係が築かれていると、心理的安全性が高まり、自分の意見を率直に言えたり、失敗を恐れずにチャレンジできたりします。

人間関係は一方的なものではありません。自分が支えられるだけでなく、誰かを支えて役に立っていると感じることもウェルビーイングを高めます。感謝を伝え合い、互いに尊重し合える関係が理想です。

 

M:意味・目的(Meaning)

意味・目的とは、自分の行動や人生に意味があると感じられることです。「何のために働いているのか」「自分の存在に価値があるのか」といった問いに対して、納得できる答えを持っている状態を指します。人は意味や目的を感じられないと、たとえ成功していても空虚さを感じてしまいます。反対に、たとえ困難な状況でも、そこに意味を見出せれば、前向きに取り組むことができます。

職場では、自分の仕事が社会にどう貢献しているかを理解できたり、会社のビジョンに共感できたりすることが重要です。単なる作業として仕事をこなすのではなく、その先にある価値や影響を実感できると、やりがいが生まれます。

また、自分の強みや価値観に合った仕事をしていると感じられることも、意味・目的の実感につながります。自分らしく働けている、自分の人生を生きていると思えることが、ウェルビーイング向上をサポートします。

 

A:達成感(Accomplishment)

達成感とは、目標を達成したり、成長を実感したりすることです。自分が進歩している、何かを成し遂げたという実感が、ウェルビーイングを高めます。達成感は、大きな成功だけでなく、小さな成果の積み重ねからも得られます。日々の業務で一つひとつのタスクを完了させたり、新しいスキルを習得したりすることも、達成感につながります。

職場では、明確な目標設定と適切なフィードバックが重要です。何を達成すべきかが曖昧だと、努力しても成果を実感しにくくなります。また、成果を認められ、評価されることも、達成感を強化します。

達成感は自己効力感(自分にはできるという感覚)を高め、新たな挑戦への意欲を生み出します。成功体験を重ねることで、困難に直面しても「自分なら乗り越えられる」と思えるようになるのです。

PERMAとGallupの違いをまとめると、Gallupは仕事・人間関係・経済・健康・地域という「生活領域」に着目し、PERMAは感情・没頭・人間関係・意味・達成という「心理的要素と行動習慣」に着目しています。両者を組み合わせることで、ウェルビーイングを多角的に理解し、実践することができます。

 

ウェルビーイングが企業の経営にもたらすメリット

従業員の幸福度が高まると、企業にはどのような影響があるのでしょうか。ウェルビーイングが企業経営にもたらすメリットについて見ていきましょう。

メリット1.生産性・利益向上

心も身体も健康的な社員は、自分の能力を最大限に発揮することができます。持っている知識・技術をフルに活用して取り組めるため、業務の効率が上がり、生産性が高まります。

また、社員が能力を発揮し、仕事にやりがいを感じることで、商品・サービスのクオリティアップも期待できます。その結果、顧客満足度が上がり、売上げアップにつながります。

引用:株式会社PHONE APPLI出版プロジェクトチーム(2022)『ウェルビーイング経営!社員の笑顔が会社を成長に導く

上記は、ウェルビーイング経営に役立つアプリ・サービスを提供する株式会社PHONE APPLIの変化を表した図。高ストレス率・社員の平均健康年齢が下がるにつれて、売上高が上がっていることがわかります。

これは一例ではありますが、従業員がいきいきと働ける職場をつくることは、最終的に企業の利益につながります。従業員への投資が利益としてかえり、その利益をまた投資にまわすというポジティブな循環を生み出すことができるのです。

 

メリット2.従業員の定着率アップ

心身の健康を害する職場・働き方は、従業員の離職を招きます。

従業員の定着率アップ

引用:人事のミカタ「退職理由のホンネと建前[2022年版]

人事のミカタ」が行った調査の結果からも、「人間関係が悪い」「給与の低い」などといった労働環境は離職の原因になることがわかります。

逆にいえば、ウェルビーイングを高めることは離職防止対策になるのです。定着率が高まり、人手不足・人材不足などの問題解消につながるでしょう。

 

メリット3.企業価値が高まる

インターネットを通じて、あらゆる情報が広く拡散される現代。企業の取り組み・姿勢は、社会からの評価に大きな影響を与えます。

ウェルビーイングを目指して取り組む企業は、従業員を大切にする会社として、世間から良い印象を持たれます。顧客や取引先だけでなく、求職者、投資家からの評価アップにもつながるでしょう。

企業価値が高まると、資金確保、新規顧客獲得、入社希望者増加による人材確保など、さまざまな良い効果を得られます。従業員のために環境を整えることは、巡り巡って企業に多くのメリットをもたらすのです。

 

メリット4.組織が変化に強くなる

心身ともに健康で、幸福を実感している社員は、心の余裕から柔軟な思考回路を持つことができます。予想外のことが起きても、クリエイティブな発想でアイデアを生み出し、切り抜けることができるのです。

そのうえ、心理的安全性が確保されているため、自分のアイデアを抵抗なく発言できます。その結果、チーム・企業全体のクリエイティブ性が高まり、変化に強い組織へと成長できるでしょう。

予測不可能なことが頻繁に発生する現代。過去の事例がまったく役に立たない、なんてことも珍しくありません。

そのような環境で企業が生き残り続けるには、社員の「発想力」が必要です。ウェルビーイングの向上は、イノベーションを行う際の支えとなるでしょう。

 

企業でできるウェルビーイング施策

ここでは、Gallupの5要素に沿って、企業が実践できる具体的な施策を紹介します。それぞれの要素について、考え方と方向性を中心に解説します。

仕事の充実を高める施策

仕事の充実を高めるには、従業員が成長を実感でき、自分の仕事に意味や価値を見出せる環境を整えることが重要です。

【キャリア開発支援】

従業員が自分のキャリアパスを描き、成長できる機会を提供します。定期的なキャリア面談を実施し、本人の希望や適性を踏まえた育成計画を立てることが効果的です。社内公募制度やジョブローテーションを導入することで、多様な経験を積める環境を作ることもできます。

【適切な裁量と責任】

従業員に適度な裁量を与えることで、仕事への主体性が高まります。すべてを細かく指示するのではなく、目標や期待値を明確にした上で、どのように達成するかは本人に任せる姿勢が大切です。自分で考え、決定する機会が増えることで、仕事へのやりがいが生まれます。

【定期的なフィードバック】

成長を実感するには、自分の仕事がどのように評価されているかを知ることが重要です。年1回の評価だけでなく、日常的にポジティブなフィードバックを伝えることで、従業員は自分の貢献を認識できます。改善点を伝える際も、批判ではなく成長のための助言として伝えることが大切です。

【仕事の意義の共有】

自分の仕事が組織や社会にどう貢献しているかを理解できると、やりがいが高まります。経営層が会社のビジョンや目標を分かりやすく伝え、各部署や個人の仕事がどうつながっているかを示すことが重要です。顧客の声や成功事例を共有することも、仕事の意義を実感する助けになります。

 

人間関係の充実を高める施策

人間関係の充実には、信頼関係を築き、心理的安全性を高めるコミュニケーション環境を整えることが重要です。

【オープンなコミュニケーション文化】

上司と部下、同僚同士が気軽に話せる雰囲気を作ります。定期的な1on1ミーティングを実施し、業務の話だけでなく、個人的な悩みや希望も話せる場を設けることが効果的です。

【チームビルディング活動】

チーム内の結束を高める取り組みを行います。プロジェクトの成功を祝う機会を設けたり、チームでの食事会やレクリエーション活動を企画したりすることで、仕事以外のつながりも生まれます。ただし、参加を強制するのではなく、自然な形で関係性が深まるような工夫が必要です。

【心理的安全性の醸成】

失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉える文化を育てます。新しいアイデアや意見を歓迎し、異なる視点を尊重する姿勢を示すことが重要です。特に管理職が率先して自分の失敗を共有したり、質問や提案を積極的に求めたりすることで、心理的安全性が高まります。

【感謝と承認の文化】

日頃から「ありがとう」を伝え合う文化を作ります。大きな成果だけでなく、小さな協力や気遣いにも感謝を示すことで、互いに支え合う関係が育まれます。社内表彰制度やピアボーナス(同僚同士⦅ピア=同僚⦆で感謝を伝え合う仕組み)を導入することも効果的です。

 

お金・生活基盤の安心につながる施策

経済的な安心感を高めるには、金銭的な額面だけでなく、公平性や透明性、将来への見通しを提供することが重要です。

【公正な報酬制度】

評価基準を明確にし、公平な報酬を提供します。同じ成果に対して同じ評価がなされる仕組みを整えることで、従業員は納得感を持って働けます。また、市場水準を定期的に確認し、適正な給与レベルを維持することも大切です。

【福利厚生の充実】

住宅手当、家族手当、通勤手当など、生活を支える基本的な福利厚生を整えます。また、財形貯蓄制度や企業年金など、将来に備える仕組みを提供することで、長期的な安心感を高めることができます。

【ライフプランニング支援】

従業員が自分のライフプランを考え、実現できるよう支援します。ファイナンシャルプランナーによる相談会を開催したり、資産形成に関するセミナーを実施したりすることで、従業員の金融リテラシーを高めることができます。

【柔軟な働き方の選択肢】

ライフステージに応じて働き方を選べる環境を整えます。育児や介護と仕事を両立できる制度、副業を認める制度などを設けることで、従業員は経済的な選択肢を広げることができます。

 

心と体の健康を支える施策

心と体の健康を支えるには、従業員の自己管理を支援し、健康的な働き方を促すことが重要です。

【労働時間の適正管理】

過重労働を防ぎ、十分な休息が取れる環境を整えます。労働時間を適切に管理し、長時間労働が常態化しないよう注意します。また、有給休暇の取得を推奨し、休むことへの罪悪感を減らす文化を作ることも大切です。

【健康管理サポート】

定期健康診断を実施するだけでなく、その後のフォローアップも行います。健康リスクが見つかった従業員には、産業医や保健師による面談を提供し、改善に向けた支援を行います。また、健康に関する情報提供や啓発活動も効果的です。

【運動機会の提供】

例えばスポーツクラブの利用補助を提供したりすることで、運動習慣の定着を支援します。また、ウォーキングイベントやヨガ教室など、気軽に参加できる活動を企画することも有効です。

【メンタルヘルスケア】

ストレスチェックを定期的に実施し、メンタルヘルスの状態を把握します。また、カウンセリングサービスを提供し、悩みを相談できる環境を整えます。管理職向けにメンタルヘルス研修を実施し、部下の変化に気づき、適切に対応できるスキルを育てることも重要です。

 

地域・社会とのつながりを育む施策

地域や社会とのつながりを育むには、企業活動と社会との接点を作り、従業員が社会貢献を実感できる機会を提供することが重要です。

【社会貢献活動の推進】

企業として取り組む社会貢献活動に、従業員が参加できる機会を作ります。環境保全活動、地域清掃、教育支援など、様々な分野での活動が考えられます。従業員が自分の時間や能力を社会のために使えることで、充実感や誇りが生まれます。

【ボランティア休暇の提供】

従業員が個人的にボランティア活動に参加できるよう、ボランティア休暇を設ける企業も増えています。年に数日、ボランティア活動のための有給休暇を認めることで、社会貢献への参加を後押しできます。

【地域との協働】

地域のイベントへの協賛や参加、地元企業との連携など、地域社会との関係を深める取り組みを行います。従業員が地域の一員として活動することで、帰属意識や社会とのつながりを実感できます。

【企業理念の浸透】

自社の事業が社会にどう貢献しているかを明確に示し、従業員に伝えます。企業のミッションやビジョンに社会的意義が込められていれば、日々の業務を通じて社会貢献を実感できます。自分の仕事が社会の役に立っているという実感が、ウェルビーイングを高めます。

 

企業の取り組み事例

現在、多くの企業が労働環境の改善に取り組み、ウェルビーイングの向上を目指しています。具体的にどのような施策を行っているのか、3つの企業事例を見ていきましょう。

イオン株式会社

総合スーパー「イオン」の経営など、多くの事業を営むイオン株式会社。同社は、ウェルビーイングの実現に向けて、独自の取り組みである「イオン健康経営」を行っています。

「イオン健康経営宣言」を掲げ、以下のような項目を重点課題として取り組んでいます。

  • ヘルスリテラシーの向上
  • 生活習慣の改善促進
  • 心身ともに健康に働ける職場づくり
  • 長時間労働の抑制

健康チェックに役立つツールの提供や、生活習慣改善キャンペーンを行うなど、セルフケアの促進にも積極的。その結果、従業員の”やりがい”を示す「ワークエンゲイジメント」が、2017年時点で5点満点中3.56点だったのが、2022年時点で3.66点に向上しています。

■参考:イオンの健康経営 従業員のためにウエルネス経営の推進

健康関連指標(イオン・イオンリテール)

 

株式会社スープストックトーキョー

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」を全国に展開する株式会社スープストックトーキョー

当社は、従業員のウェルビーイングを高めるため、休暇を充実させる施策を実施。2018年より「生活価値拡充休暇」を導入し、季節休暇を年6日から12日に増やしました。

店舗型ビジネスでは、休日を増やすと人手不足になることが多いです。その対策として、同社は店長経験者を集めて「拡充隊」を編成し、人員不足の店舗にヘルプを入れる仕組みをつくりました。その結果、休暇の増加に成功したのだそうです。

そのほか、働き方が選べる「セレクト勤務制度」や、副業を認める「ピボットワーク制度」なども、従業員から好評とのこと。「勤務できる時間帯に制限があって罪悪感を感じる」「ほかの仕事も経験したい」など、社員のリアルな声を拾い、着実にニーズに応える施策を講じたのが高評価につながったと考えられるでしょう。

■参考:『社員の声を聞き進めた「働き方開拓厚生労働省

 

飲食店「よこづな」

沖縄県宜野湾市にある飲食店「よこづな」は、新人の時給がベテランアルバイトの時給を超えるという自体が発生したことをきっかけに、賃金の見直しを行いました。

こちらの店舗では以前、賃金の基準を明確に決めていませんでした。そのような状態で、新しく雇ったアルバイトの時給を相場に合わせたところ、不合理な待遇差が発生してしまったのです。

そこで、厚生労働省発行の「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」や「同一労働同一賃金ガイドライン」を活用し、賃金の見直しを実施。職務の質と量を基準に方針を決め、待遇の差をなくしました。結果、ほぼすべての従業員の待遇を改善することに成功しました。

注目すべきは、方針や基準を従業員にきちんと説明した点です。待遇の公平性を明確に示すことで、従業員の納得感を高めました。実際に、「待遇に納得でき、モチベーションが上がった」という従業員の声も上がっているようです。

ウェルビーイングの施策を実施する際は、従業員にきちんと納得してもらうことが大切。企業側の”独りよがり”にならないよう注意が必要です。

■参考:企業も働く人も成長できる公正・公平な待遇の実現」厚生労働省

 

まとめ

ウェルビーイングは、従業員の幸福や健康にとどまらず、企業の成長や競争力を左右する重要な経営概念です。単なる健康や幸福よりも広い視野で、人生の質を捉えたものです。

仕事への充実感や良好な人間関係、将来への安心感が整うことで、個人の力は最大限に発揮され、組織全体の生産性や定着率の向上につながります。

重要なのは、特別な施策を一気に導入することではなく、自社の課題を見極め、小さな一歩から取り組むことです。ウェルビーイングを意識した人材育成や組織づくりは、従業員と企業の双方にとって価値ある投資となります。まずは「できること」から、自社なりのウェルビーイング向上を始めてみてはいかがでしょうか。

 

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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