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職場におけるメンタルヘルスの具体例と対策

ノウハウ 経営
2025.06.07
『shouin+ブログ』マーケティング担当

厚生労働省の「令和4年労働衛生安全調査(実態調査)」によると、労働者の約8割が仕事で強いストレスや不安を感じているといわれており、従業員のメンタルヘルス対策は、多くの企業で重要な経営課題となっています。

厚生労働省の労働衛生安全調査によると、一年間でメンタルヘルス上の理由で連続1カ月以上休業または退職した方のいる事業所は13.3%(令和3年調査で10.11%)で、前年より上昇傾向にあります。

過度のストレスは働く人のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすだけでなく、企業にとっても生産性を低下させたり事故を引き起こしたりする危険性があり、職場におけるメンタルヘルス対策は重要性を増しています。

従業員が健康的に働ける環境を作り、会社全体の生産性を向上させるため、職場におけるメンタルヘルス対策が重要視されています。

しかし、適切なメンタルヘルス対策を講じるには、ストレスやメンタルヘルスに関する知識が必要で、社内でメンタルヘルスケアを進めたくとも具体的に何をどのように進めれば良いか、わからないという人事・管理職の方も多いのではないでしょうか。

今回は、職場におけるメンタルヘルス対策について、取り組む必要性や具体例、進め方を解説します。すでにメンタルヘルスケアに取り組む企業事例もご紹介します。これからメンタルヘルスケアに注力したい方のお役に立てればと思います。

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引用:職場におけるメンタルヘルス対策の現状等 |厚生労働省

 

メンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは体の健康ではなく、こころの健康状態を指しています。人は心が健康であれば、心が軽く、ポジティブな気持ちで過ごすことができます。心が健康であれば、仕事に対してもモチベーション高くやる気を持って臨むことができ、プライベートでも穏やかな気持ちで、いきいきとした生活を送ることができるでしょう。

しかしこのところ、働く環境は多様化やDXが推進されて、大きく変化しています。同じ職場にいても業務の進め方やチームメンバーの構成、人間関係、組織風土などに大きな変化がみられていて、職場におけるとまどいやストレスとなる要因がこれまでよりも増えています。

仕事の変化や人間関係への不安や悩みが残ったままさらに大きくなると、ストレスを抱え続けることになります。

メンタルヘルスは「うつ病」や「パニック障害」といった特別な病気になっている状態だけでなく、これまで普通に働いていた人が何らかのストレスや悩みを抱えて気分が落ち込んでいる状態も、メンタルヘルス不調に当てはまります。誰もがメンタルヘルス不調に該当する可能性があるのです。

心の健康が損なわれ、ストレスがたまると、遅刻や欠勤が増加する傾向がみられています。また、過度なストレスがかかった状態では作業効率が低下し、業務上のミスや遅延が起きたり、ケガや事故へとつながるケースもあります。さらに、やむを得ず、長期療養による休職や離職となってしまうことは少なくありません。

従業員のメンタルヘルスケアは企業の責務の一つで、社会的にも企業のメンタルヘルス対策への注目が高まっています。このため、企業にとってメンタルヘルス対策は大きな課題となっています。

 

従業員のメンタルヘルスが職場にもたらす影響

従業員がメンタルヘルスを崩した場合、職場にはどのような影響が及ぶのでしょうか。

従業員のメンタルヘルスが職場にもたらす3つの影響

 

影響①:組織活力の停滞

メンタルヘルス不調の従業員が増えることで、職場にはさまざまな悪影響があらわれると想定されます。

従業員のメンタルヘルス不調はモチベーションの低下を招きます。また、過度なストレスは判断力や集中力の維持にも影響するため、業務効率の低下にもつながります。働きやすい職場環境を整備することは、従業員のモチベーションを維持し、会社全体の業務効率を向上させることに欠かすことができません。

また、メンタルヘルス不調が重度化すれば、休職や退職にまで発展してしまうこともあります。人材の欠員は生産性も低下をもたらし、組織活力を停滞させてしまうでしょう。さらに、組織全体の生産性が低下すれば、企業収益にも影響を及ぼすことになります。

 

影響②:さまざまなコスト負担の増加

メンタルヘルスが原因で休職者が出た場合、医療費の負担をはじめ、傷病手当見舞金や代替となる人件費などが必要になります。退職となった場合は、人材補充のための募集・採用に関わる費用など、さまざまなコストもかかります。さらに、労働災害が適用されると次年度から労災の保険金が増加することになります。

社内外の関係者から損害賠償を請求されたり、民事訴訟を起こされたりする可能性もあるでしょう。労災から民事訴訟に発展すれば損害賠償が請求されます。当然、裁判に関わる費用や弁護士費用なども膨大なものとなると予想されます。

従業員はもちろんのこと、企業を守るためリスクマネジメントの観点からも、企業による従業員のメンタルヘルス対策は必須です。

 

影響③:企業イメージの低下

従業員のメンタルヘルスの不調は、重大な事故を引き起こすこともあります。事故の原因が企業のメンタルヘルス対策不足ならば、企業イメージを大きく損なう可能性が高いでしょう。例えば過重労働、長時間労働による自殺者が出た場合、企業体質やモラルが疑われ、イメージダウンは避けられません。

これによって取引先や株主からの信頼を失うだけでなく、従業員の意欲低下や人材採用活動へも悪影響を与えるでしょう。この企業イメージの低下や信頼失墜は企業存続の危機につながるのです。

このように、従業員のメンタルヘルス不調によるさまざまな影響を考慮してみると、企業にとってメンタルヘルスへの対策を進めることは優先度の高い課題だと言えるでしょう。

メンタルヘルス対策の実施は、会社全体で取り組むべき「リスクマネジメント」として不可欠であり、企業戦略としても重要です。

メンタルヘルスの4つケア

メンタルヘルスケアは企業にとっても従業員にとっても重要な施策です。メンタルヘルスケアについて厚生労働省が、「4つのケア」として記述しています。ここでは厚生労働省の定めるメンタルヘルスの4つのケアについて解説します。

メンタルヘルスの4つのケア

        引用:「職場に置ける心の健康づくり」| 厚生労働省



①セルフケア

セルフケアは、従業員自らが行うストレスへの気づきと対応のことです。セルフケアは従業員だけではなく、管理監督者も含めて企業で働く人全員が対象になります。

従業員全員がメンタルヘルスの管理方法について正しい知識を身につければ、自分で日頃からストレス予防やストレスを感じたときに対処しやすくなります。

セルフケアを従業員それぞれが行えるように、企業はメンタルヘルスを管理するための情報の提供やセミナーを開催するなど、従業員のセルフケア実施をサポートするようにしましょう。

 

②ラインケア

「ラインによるケア」とは、職場の管理監督者(主に部長や課長など)が日常的に行うメンタルヘルス対策のことです。管理監督者は、従業員のストレスに関与している職場の原因を特定して、働きやすい環境になるように改善していく役割があります。また立場上、部下からの相談に対応したり、職場復帰をサポートしたりするのも管理監督者の仕事になります。企業としては、管理監督者向けにメンタルヘルス管理に関する研修を実施するなどして、管理監督者が正しく対応できるようにしておく必要があります。

主な取組み内容は「遅刻や欠勤の増えている従業員がいないか?」「暗い表情をしていたり、言動や行動がこれまでとは印象が変わってはないか?」といった『いつもと違う』ことにいち早く気付くことをはじめ、部下からの相談に対応することや、職場環境の改善を行うことです。

 

③内部EAP

内部EAPとは、社内の産業医や産業保健師といった医療専門職からの支援を受けることです。

「セルフケア」と「ラインによるケア」の効果をしっかり発揮するためには、産業医・産業保健師との連携が欠かせません。

産業保健スタッフ等によるメンタルヘルスケア支援例としては、以下のようなものがあります。

  • 職場巡視を行った際、気付いた変化などを管理監督者と情報共有する
  • 職場の環境改善に必要な助言をする
  • メンタルヘルスケアに関する社内研修を企画、実施する
  • 従業員の個別相談に対応。従業員との面談結果をもとに、課題の解決に向けた取組みを行う
  • 外部EAPへの窓口になり、情報共有を行う
  • 復職プログラムを見直し、再休職を予防する体制を整える

 

④外部EAP

外部EAPとは従業員支援プログラムのことで、企業が従業員やその家族のメンタルヘルスや健康管理をサポートする福利厚生制度のことです。社外にある都道府県産業保健総合支援センターや医療機関、各種相談機関などを活用したケアのことを指します。メンタルヘルスケアを社内で対応するのに加えて、メンタルヘルス対策に関するサービスを提供する会社と契約を結んで、外部EAPを利用するという方法もあります。

会社の外部に相談窓口を設ければ、社内では話しにくいことも相談しやすくなるでしょう。また外部EAPであれば、対面だけでなく、電話やメール・チャットなどの方法で相談できるケースも多いです。

こころの耳

厚生労働省が主体となり、インターネット上で展開しているメンタルヘルスの総合的なポータルサイト。

産業保健総合支援センター

全国各地に所在する産業保健活動の専門機関。

【外部EAP機関や産業保健サービスを提供する民間企業】

企業によっては産業医の紹介だけでなく、メンタルヘルス対応を行う。

 

職場におけるメンタルヘルス対策の具体例

企業がメンタルヘルスケアに取り組む必要性が高いことが分かりましたが、一体どのような対策をすれば良いのでしょうか。ここでは企業が実施すべきメンタルヘルスケアの具体的な施策について解説します。

職場におけるメンタルヘルス対策の4つの具体例

具体例①:ストレスチェックの実施・活用

ストレスチェックの実施は、メンタルヘルスケア施策の1つです。2015年12月1日から従業員が50名以上の事業所についてはストレスチェックの実施が義務化されています。

ストレスチェックは、従業員のストレスの程度を把握するための調査です。従業員はストレスを測る質問に回答し、結果が共有されることで、自らが抱えるストレスを認識できます。ストレスチェックの結果、ストレスの程度が高いと判断された従業員には、産業医による面接指導が実施されるようになり、メンタルヘルス不調の予防や早期解決につながります。

企業は組織全体、あるいは特定の集団のストレス傾向を分析でき、職場環境をどのように改善すればよいか、具体的な施策も立てやすくなります。

 

厚生労働省の「令和4年労働安全衛生調査(実態調査」によると、規模50人以上の事業所の約70%が集団ごとの分析を行っています。そのうちの約80%は分析結果を活用して、業務配分の見直しや残業時間の削減などの対応を取っています。企業主体でメンタルヘルス対策を推進するためには、ストレスチェックを促すだけでなく、検査結果を適切に活用することも重要になります。

 

具体例②:相談窓口や専門部署の設置

従業員が自身のメンタルヘルス不調に気づいたときに、相談できる窓口や専門の部署を設置するのも有効です。ストレスチェックなどによって自身の不調に気づいたとしても、どこで相談すればよいのかわからない人もいます。あらかじめメンタルヘルスなどについて、従業員が相談できる体制を整えておけば、未然防止の一次予防から悪化させないための二次予防へスムーズにつながります。窓口は設置したら、社内で周知するようにしましょう。

またメンタルヘルス対策の専門部署を設置することで、従業員の部下の体調やこころの問題に関する相談を任せることができるため、上長、管理職にかかる負担も軽減されます。さらに休職者が復職する際にも専門部署がサポートすることもできます。

 

具体例③:メンタルヘルスに関するセミナーや研修の実施

メンタルヘルスケアにおけるセルフケアやラインケアのためには、メンタルヘルス研修の実施が有効です。だれもが自身の仕事で精一杯で、自身のメンタルヘルスケアまで気が回らない人も多い中で、独学でメンタルヘルスケアに関する正しい知識を身に着けるのは、なかなか難しいものです。とくに部下の相談に乗り、職場全体の環境を改善していく立場にある管理職にとっては、部下の異変に気づく方法や声のかけ方、効果的な1on1のやり方などを学ぶことで、適切なラインケアの方法がわかり、実行しやすくなるでしょう。

このため企業主体で、メンタルヘルスに関するセミナーや研修を実施することが重要です。全従業員に対してストレスマネジメントの研修を実施してメンタルヘルスのセルフケアを学ぶようにし、管理監督者についてはラインケアに関する研修も行いましょう。

メンタルヘルスの研修は専門的な内容となるため、社内に適した人材がいない場合はセミナーや研修を専門の企業にアウトソーシングすることも検討してみましょう。

 

具体例④:パワーハラスメント対策のチェック

職場におけるメンタルヘルス対策のなかでも、パワーハラスメント対策は重要な1つです。職場のパワーハラスメントが原因で、うつ病や適応障害といった重大なメンタルヘルス不調に陥るケースが多く存在します。

また、職場のパワーハラスメントが原因で精神障害を発病した場合は、労災保険の対象になるため、企業にもリスクがあります。

人事院「管理監督者のためのガイドブック 国家公務員とメンタルヘルス」によると、パワーハラスメントとは「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、それを受けた就業者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用についての不安を与えること」を指すといわれています。

パワーハラスメントは長時間労働や人間関係などと共にメンタルヘルスを生じる原因となっております。厚生労働省労働基準局の労災補償状況の報告書によると、精神障害などによる労災請求は増加傾向にあり、令和5年度では3,575件と前年度の2,683件を大きく上回っています。

現在、職場のハラスメント行為に対して防止措置を講じることを企業に義務付ける、パワハラ防止法が施行されています。2022年4月からは大企業に加えて中小企業にまで適用範囲が拡大されました。パワハラ防止法では、違反が発覚し、厚生労働省から勧告を受けても対策や改善が見られなかった場合、該当企業名やパワハラの事実が公表される可能性があります。

パワーハラスメント対策について自社をチェックするためには、厚生労働省の自主点検票ハラスメント防止対策チェックシートなどを活用しましょう。就業規則に取り入れるべき事項や、パワーハラスメントの行動を取った従業員への適切な措置を行うための体制が整っているか、再発防止策を講じているか、など自社のパワーハラスメント対策が十分に行われているか、現状を確認することができます。

 

メンタルヘルスケアの具体的進め方

4つのケアを念頭に置いてメンタルヘルスケアを適切に実施するためには、従業員と管理監督者、産業医などを含めた専門部署が連携して、必要に応じて外部の機関や専門家などと協力しながら進めます。

メンタルヘルスケアの実施の流れは次の四つのフェーズに分かれています。

メンタルヘルスケアの実施の4つのフェーズ

         引用:「職場に置ける心の健康づくり」| 厚生労働省

 

進め方①:全社でメンタルヘルスを学ぶ環境を作る

まずはじめに、従業員がメンタルヘルスに関するノウハウを身につけることで、メンタルヘルス不調者をなるべく出さない環境づくりを行います。

従業員がメンタルヘルスに関する知識を身につけることで、メンタルヘルスケアの重要性を理解してもらいやすくなります。従業員が専門知識を学べば、仮に自身がメンタルヘルス不調に陥りそうな時に異変に気付きやすくなるでしょう。

まずは経営層や人事部・総務部などの担当者が、メンタルヘルスに関するノウハウを学び、全社にむけて発信し、情報共有を進めます。 

次に組織全体でメンタルヘルスケアに取り組む風土を構築していきます。メンタルヘルスセミナーの開催や相談窓口の設置など、メンタルヘルスを予防する施策を実施しましょう。このようにメンタルヘルスケアを行うためには、組織全体がメンタルヘルスに関する知識・ノウハウを学ぶための教育環境づくりが大切です。

 

進め方②:メンタルヘルス不調を未然に防ぐ

職場に置けるメンタルヘルスケアの環境づくりができたら、次におこなう1次予防として挙げられるのが「メンタルヘルスに不調が起こることを未然に防ぐ」取り組みです。このメンタルヘルスの予防は、根本的なメンタルヘルス対策であり、即効性はないものの、従業員のモチベーションアップや生産性向上、企業の活性化などにつながる重要な対策と言えます。

また、ストレスチェックを行うことは従業員一人ひとりののストレス状況が把握できるようになり、早急に対策が打てるようになるため、メンタルヘルスケアに効果的です。

さらに上長や総務・人事担当者が従業員の顔色や言動などを気にかけて、細かい変化や不調の兆しをキャッチすることも、メンタルヘルス不調を防ぐうえで重要です。

 

進め方③:メンタルヘルス不調の早期発見

2次予防として「メンタルヘルスに不調を抱えている従業員を早期に発見し、適切な措置を講じる」ことが求められます。異変に気づきやすい体制を整え、早期発見・対処により、症状が重くなってしまう前に適切な措置を講じられます。

上司や社内の相談窓口、産業保健スタッフなどが相談に乗る、産業医や医療機関の受診を勧める、休職を提案するなど、適切な対応をしましょう。

また、外部EAPサービス(従業員支援プログラム:企業が従業員やその家族のメンタルヘルスや健康管理をサポートする福利厚生制度)を用いてカウンセリングを利用してもらうこともひとつの対策です。特に職場に対する不満や人間関係の悩みに関しては社内の人間には話しづらいものです。社外の第三者が話を聴くことで、本当の悩みを話してくれるという効果も期待できます。

 

進め方④:休職者への職場復帰支援

3次予防は「メンタルヘルス不調で休職した従業員がスムーズに復帰できるよう、サポートする」ことです。休職者がほかの疾患を患ったり、重症化したりすることを防止する取り組みも含まれます。

メンタルヘルス不調が生じた従業員が休職した場合、人事部門や管理職は当該従業員の職場復帰にむけて体制を整えるよう動く必要があります。例えば、職場復帰支援の計画を立て実施する、職場の環境を改善して再発を防止するなどが挙げられます。

職場復帰についても、外部EAPの力を借りることも有効です。第三者としてメンタルヘルス不調をきたした従業員が本音を話すことができるため、適切なサポートができる、外部からの視点で職場環境の改善に関するアドバイスが受けられるなどのメリットを得られるでしょう。

 

メンタルヘルスケアの企業事例

他の企業ではどのようにメンタルヘルス対策を講じているのでしょうか。ここではメンタルヘルスケアの企業事例を3社ご紹介します。

事例①:株式会社湯元舘

株式会社湯元舘は、1929年(昭和4年)創業、1964年(昭和39年)設立し、滋賀県で旅館事業を営んでいます。

メンタルヘルス不調を未然に防ぐため、次のような対策を取っています。

【対策1:ストレスチェックの実施方法や産業医の選定の適時見直し】

年に一度、実施しているストレスチェックは、紙媒体かデジタル運用か運用方法を見直している。紙媒体は回収率もよいが手間がかかり、デジタルは集計が早いが、ありがたみが感じられないなど一長一短がある。ストレスチェックの結果分析を近隣の産業医に解説してもらい、同業他社との比較などをコメントしてもらっていて、ストレスチェック後の医師による面接指導もスムーズに進んでいる。

【対策2:社内のコミュニケーション活性化の対策を実施】

シフト制のため、従業員が全員集まることが難しい勤務環境の中で、1on1ミーティングを実施したり、グループごとのミーティングの内容を工夫したり、様々な取組みを実施して社内コミュニケ―ションを支えている

■参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例 株式会社湯元舘(滋賀県大津市)

 

事例②:三井不動産株式会社

三井不動産株式会社は1941年(昭和16年)設立。東京都でオフィスビル、商業施設、ホテル・リゾート、ロジスティクス、住宅など、幅広いソリューションとサービスの提供を行っています。

メンタルヘルス不調の2次予防として、早期発見・早期対応を実現するため、以下のような対策を講じています。

【対策1:内部EAPの設置】

人事部と内部EAPである健康管理センターは独立の組織として設置され、情報を厳密に分けて管理しながらも必要な連携は密に行うというメリハリある体制が構築されている。

健康管理センターに相談する人たちの個人情報は、健康管理センター内で守られ、守秘義務に配慮した上で、必要な連携を行っている。

【対策2:全従業員との人事面談の実施】

年に1回人事部による全従業員との面談を実施している。その中で把握された働きづらさなどを改善するための施策をスピード感をもって検討・実行している。従業員の安心して働ける環境づくりにつながっている。

■参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例 三井不動産株式会社(東京都中央区)

 

事例③:株式会社友伸エンジニアリング

株式会社友伸エンジニアリングは、1971年に設立。配電盤を中心としたハイテクシステムの開発および産業用のソフトウェア開発を行っています。

同社は以前よりメンタルヘルス不調への対策に取り組んでおり、3次予防としての休職者の職場復帰支援を次のように進めています。

【対策1:メンタルヘルスケアの重要性を全社に浸透】

メンタルヘルス不調に対して早期対応を行う重要性を従業員全員が感じるようになったことで、産業医や外部カウンセラーとの早めの相談ができており、メンタルヘルス不調者の早期回復につながっている。

【対策2:産業医の見直しや産業員との面談の実施】

産業医を精神科の先生に変更し、外部カウンセラーの面談日以外に面談日を設けているほか、職場復帰時や長時間労働時などに面談をお願いし、医師による意見を聞いている。

【対策3:従業員ごとに復職支援プランを準備する】

メンタルヘルス不調による休職は取りやすくしている。また、職場復帰支援は、当社の“職場復帰支援プログラム”に基づいて、従業員の状態に合わせて職場復帰支援プランを準備し、通勤訓練、時短勤務、定時退社など、段階を踏んで復帰できるように進めている。

■参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例 株式会社友伸エンジニアリング(東京都府中市)

 

まとめ

今回は、メンタルヘルスケアとは何かやなぜ重要視されているのか、メンタルヘルスが及ぼす職場への悪影響、企業が実施すべきメンタルヘルス対策の具体的な施策、進め方などを解説しました。

従業員が心身ともに健康に働ける環境を作ることで、生産性の向上や組織の活性化につながり、企業の発展が期待できます。メンタルヘルス対策のためには、メンタルヘルスケアの内容や進め方を理解し、できる取り組みから着実に進めることが大切です。また、人事や産業医など、一部の担当者が実施するのではなく、従業員、管理監督者、経営層まで、全社的にメンタルヘルス対策の重要性を理解した上で、企業一丸となって取り組むことが求められます。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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