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就業形態・業界別の平均離職率を解説!社員が離職する理由、離職率を下げる方法とは

ノウハウ ナレッジ
2023.05.17
『shouin+ブログ』マーケティング担当

転職に対するハードルが低くなった現代。ライフスタイルやキャリアプランに合わせて、職を転々とすることも、今や珍しくありません。その影響を受けて、多くの企業が従業員の離職による人手不足・人材不足に苦戦しています。

そこで気になるのが「平均離職率」。離職防止に取り組む際、他社と比べて自社の離職率はどれほどなのか、離職率何パーセントを目指すべきなのかと悩むものです。

本記事は、厚生労働省の資料をもとに、平均離職率の推移や就業形態別・業界別の離職率について解説しています。離職率の算出方法はもちろん、離職の主な原因や対策などもご紹介しますので、従業員の定着にお悩みの管理職の方、人事部の方はぜひお役立てください。

そもそも離職率とは

そもそも離職率とは何の割合を示しているのでしょうか。辞書を引いてみると以下のように記載されています。

労働人口のうち、ある一定の期間に新たに離職した人の割合。企業などの労働者在籍数に対する新たな離職者の割合。

引用元:「デジタル大辞泉」小学館

離職率とは「既存の社員数に対し、どれほどの人数が離職したのか」を表す数値のこと。企業の働きやすさを表す指標として、労働環境や人材マネジメントなどの改善に活用されています。

離職率が高い企業・職場は、離職者が多いことを意味します。反対に、離職率が低い企業・職場は、離職者数が少ないことを意味します。

対義語は「入職率」です。ある一定期間に新たに入社した社員が、既存社員数に対しどれほどの割合かを表します。

入職率が離職率よりも高い場合、人材が定着していると判断できます。一方、入職率が離職率よりも低い、もしくは同じである場合、社員の退職に採用が追いついていないと判断されます。

■参考記事はこちら

離職率とは?離職原因と対策方法について改善事例からわかりやすく解説!

 

離職率の計算方法

厚生労働省によると、離職率は一般的に以下のように求められます。

離職率の計算方法

例えば、社員数100人のうち25人が離職した場合、「25÷100×100%」で離職率は25%と求めることができます。

既存社員数とは、対象期間の初日の時点で所属していた社員数のこと。例えば2023年中の離職率を算出する場合、2023年1月1日の社員数が「既存社員数」に該当します。

ちなみに、入職率も「入職者数÷既存社員数×100%」と、同様の計算式で求めることができます。

 

【就業形態・業界別】平均離職率の現状

現在、日本の企業における平均離職率はどのような状況にあるのでしょうか。厚生労働省発行の資料をもとに、過去14年間の推移、および就業形態別・業界別の平均離職率を見ていきましょう。

平均離職率の推移

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引用元:「令和3年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省

厚生労働省の調査によると、2021年の平均離職率は13.9%。2007~2021年までの間で、最も低い数値です。

過去14年間で最も離職率が高かったのは、2009年の16.4%。2008年に発生したリーマン・ショックの影響を受け、失業者が増えたと推測されます。

2019年に再び15.6%まで上昇しましたが、新型コロナウィルスが発生した2020年からは低下傾向にあります。さまざまな要因が考えられますが、政府から助成金などの支援を受けた企業が、休業手当などを活用して雇用を維持したため、離職率が下がったと考えられています。

離職率は、いずれの時期も10%台と、パーセンテージで見ると低いように思えます。しかし、2021年の離職者数は約717万人。決して少ない数値ではありません。

そして、新型コロナウィルスに対する働き方も現在変わりつつあり、人々の動きが再び活発になる可能性があります。今後離職率が高くなる可能性を考え、対策しておいて損ないでしょう。

 

就業形態別の平均離職率

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引用元:「令和3年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省

次に、就業形態別の平均離職率を見てみましょう。

2021年の一般社員の離職率は11.1%。一方、パート社員の離職率は約2倍の21.3%です。2021年に限らず、パート社員の離職率は一般社員の離職率よりも高くなる傾向にあります。

また、パート社員の平均離職率においてはアップダウンが激しいのも特徴。

そもそもパートは、「労働時間・日数の融通が利く」「契約期間がない」など、転職に対するハードルが低い働き方。正社員よりも離職者が多くなりやすいのも当然です。

とはいえ、あまりに離職者が多いと、採用・育成コストが無駄になってしまいます。ロスを少しでも減らすため、企業は離職防止対策を講じなければならないでしょう。

各業界の平均離職率

各業界の平均離職率

引用元:「令和3年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省

業界別に見てみると、2021年の平均離職率が最も高かったのは、25.6%の「宿泊業、飲食サービス業」。入職率よりも離職率の方が高いことから、人材の定着に苦戦しやすい業界であることがわかります。

2番目に高かったのは、エステや美容院などを含む「生活関連サービス業、娯楽業」。入職率も他業界と比べて高いことから、離職を見越して多く人材を採用し、人員不足を防止していると推測できます。

最後に小売業ですが、最低値とはいかないものの、先の2つの業界と比べると離職率は落ち着いています。ただし、入職率と離職率がほぼ等しく、採用しても同じくらい退職してしまうことを考えれば、こちらも離職防止対策が必要と考えられるでしょう。

■参考記事はこちら

小売業の離職率は?業界別比較や高い理由、防止対策の事例までわかりやすく解説!

 

主な離職理由

離職率を下げるためには、原因を知る必要があります。しかし「エン転職」が行った調査で「会社に伝えていない本当の退職理由がある」と答えた人は、全体の約70%を占めました。会社に本音を告げて退職する人は少ないのです。

このことから、社内調査で発覚した離職理由は信憑性に欠けると言えます。では、実際にどのようなことが原因で離職するのでしょうか。先の調査結果を参考に見ていきましょう。

主な離職理由

引用元:「退職理由のホンネと建前[2022年版]」エン転職

職場の人間関係

本当の離職理由として、第1位に挙げられたのは「人間関係」。全体の約3割を占めており、多くの人が人間関係が原因で退職していることがわかります。

パワハラやセクハラ、嫌がらせなどは、当然離職者が増える重大な問題。管理職者の目の届かないところで起きている可能性もあるので、目を配らせ、ケアする必要があります。

また、大きなトラブルが発生していない場合でも、ちょっとしたすれ違いや、部下が意見を述べにくい職場の雰囲気など、些細なことで人間関係がこじれることも珍しくありません。「うちは大丈夫」とたかをくくらず、調査・観察・対処を怠らないことが大切です。

給与が低い

従業員のほとんどが、生活のために働いています。給与が低くてもずっと働き続けたい、と思う人は稀です。

アンケート調査の結果にもあるように、不適切な給与は離職率の上昇を招きます。労働時間はもちろん、肉体的な負担や役職、責任などに見合った対価を得られていないと感じた従業員は、離職してしまうのです。

また、極端に給与が低くなくとも、同業界の他企業と比べて低い場合、転職者が増える恐れがあります。市場の相場と、社員の働きを総合的に見て、正しく判断することが重要です。

 

社風・風土の不一致

企業にはそれぞれ”色”があります。しかし、入社前に社風・風土を知ることができず、いざ入ってみたら「想像と違った」と離職するケースも少なくありません。

特に、部下が積極的に発言・提案しにくいトップダウン型の企業、生産性のない古い習慣が色濃く残っている企業は、離職につながりやすいもの。早期退職が増える可能性があるため、改善が必要と言えます。

また、社風・風土が「良い/悪い」ではなく、単純に社員の価値観と合わないことも。不一致を防ぐためには、入社前、採用時点で対策する必要があります。

 

人事評価制度に対する不満

社員のモチベーション、成長につながる人事評価。ですが不適切な評価は、かえって離職を引き起こす原因になります。

例えば、以下のような評価のやり方は部下の不満を募らせるでしょう。

  • 自分もプロジェクトに参加したが、チームリーダーのみ評価された
  • 上司の気分によって評価されるため不平等
  • 上司・人事の評価と、自己評価が大幅にズレている

人事制度が整っていないと、このような不適切な評価をしてしまいます。また、評価者の知識・スキル不足が原因で、社員が不満を抱いている可能性も高いです。そのため、評価制度の整備に加え、評価者への教育も必要と考えられます。

不適切な福利厚生

福利厚生は、その企業で働くメリットがあるかを見極める際、判断材料になる要素のひとつ。似たような労働条件の企業を比較した際、福利厚生に惹かれて転職、勤務継続を決めることもよくあります。逆に言えば、福利厚生が充実していない会社は、他社へ人材が流れてしまうリスクがあるのです。

例えば、育児手当がない企業は、長く働きたいと思う社員を逃してしまいます。最近では、資格取得補助などのようなキャリアに役立つ制度も注目されているため、提供していない企業は離職率が高まる可能性があります。

また福利厚生は、社員のニーズに合っていなければ意味がありません。いくら制度が充実していても、社員は不十分さを感じて離職する恐れがあるため、需要を把握して整備することが大切です。

離職率が高いとどうなる?リスクとデメリット

離職率は下げるべきと言いますが、そもそも何故なのでしょうか。離職率上昇の危険性について理解するため、リスクとデメリットを確認しておきましょう。

離職率が高いことによるリスクとデメリット

人材・人員不足

離職者が多いと、職場・企業の人員が不足してしまいます。残された社員の負担が増えるのはもちろん、業務が滞ることもあるでしょう。

また、時間と労力をかけて採用・育成した優秀な人材も失うことに。業務を効率よく行う能力が失われるだけでなく、コストも無駄になります。

特に、スキルが高い人材、知識豊富な人材は市場での需要も高いもの。より好待遇な企業へと転職する可能性が高いため、逃さないための対策が必須です。

 

生産性の低下

人材・人員が不足すると、職場の生産性は下がります。

離職者が持っていたスキルが失われれば、その分、職場全体のパフォーマンスが落ちます。引継ぎを行っても前任者ほどの成果を出すことができず、失敗によるロスも増えるでしょう。

また人手不足により、社員の疲労・ストレスも増加。離職者が出た際、引き継ぎや再教育も必要になるため、大きな負担を抱えることになります。

このように生産性が低下すると、自ずと業績が下がるもの。最終的には、企業にとって最も重要である利益低下へとつながってしまうのです。

人材採用・育成のコスト増加

企業経営を続けるためには、利益低下および生産性の低下を防ぐ必要があります。そして、離職によって失われた戦力を補う人材が必要です。

つまり、離職率が高ければ高いほど、採用・育成の費用がかさむことになります。

新卒採用及び中途採用1人あたりの平均採用コスト

引用元:「就職白書2019」就職みらい研究所

就職みらい研究所」発行の資料によると、2018年度の中途採用1人当たりにかかった平均採用コストは84.8万円。空いた席を埋めるため、新たに数人採用するだけでも膨大なコストがかかるのです。

採用・育成コストが増えれば、企業の利益は減る一方。よって、離職率の低下が重要と言えます。

 

入社希望者の減少

近年は、離職率を含めたさまざまなデータが、一般公開されることも珍しくありません。そして、離職率が高い企業は「離職者が多い=働きにくい会社」と判断されてしまいます。最悪の場合、口コミで「ブラック企業」と広まってしまうことも。

働きにくい会社にすすんで入社する人はいません。つまり、入社希望者が減ってしまうのです。

入社希望者が減ると、人員・人材を確保するのがより難しくなってしまいます。その分、採用コストも増加するなど、多くの問題が発生してしまうでしょう。

離職率を低下させる方法

では、離職率を下げるにはどうすれば良いのでしょうか。さまざまな対策が挙げられますが、主な6つの方法をご紹介します。

離職率を低下させる方法

経営理念の確立と浸透

従業員の定着には、従業員エンゲージメントが高い職場づくりが欠かせません。会社のために、自ら意欲的に発言・行動する社員は、離職したいと考えにくいからです。

『離職率ゼロ経営』という書籍にて、著者の千葉理恵子氏も以下のように述べています。

社員が長く働きたいと思う組織は、従業員エンゲージメントが高い組織ということ。「従業員エンゲージメントが高い組織」とは、経営者と社員が理念を共有し、日々の業務のなかで理念を意欲的に体現しようとする組織です。

引用元:「千葉理恵子(2018)『離職率ゼロ経営』DNAパブリッシング」

従業員エンゲージメントを高めるには、明確な経営理念とその浸透が必要です。会社が目指す方向を明確に示すことで、社員の自主性・主体性が促されます。

また、全社員が経営理念という同じ目標に向かって行動すれば、チームワーク力も高まります。人間関係の構築による、離職防止も期待できるでしょう。

 

経営理念に共感する人材の採用

経営理念の浸透は、従業員エンゲージメントの向上、および離職率の低下につながると解説しました。しかし、そもそも「価値観が違うから会社の理念に共感できない」という人もなかにはいます。

そのような事態を防ぐためには、採用時に経営理念を示すことが大切です。

「どのような会社なのか」「何を目指している会社なのか」を事前に提示しておくことで、社員は理念に納得した上で入社することができます。社風・風土が合わない、と離職するのを防げるでしょう。

会社の雰囲気など、細かいところは実際に入社し、働いてみないとわかりません。しかし、経営理念は会社の軸。理念に沿って企業が動いている限りは、社員と会社の根本的な考え方のズレは防止できます。

 

福利厚生・評価制度の見直し

「エン転職」の調査からもわかるとおり、福利厚生や評価が原因で離職する人が多いため、これらの見直しは必須です。制度が適切か、従業員満足度が高まる制度かどうか改めて確認しましょう。

福利厚生を見直す際は、従業員へのリサーチが必要。求められていないものを提供しても、従業員の満足度は高まることはなく、無駄になってしまうからです。

また、評価制度は制度の見直しに加え、適切に評価できる評価者の育成が必要になります。平等、かつ従業員が納得する評価を与えられることが、不満解消につながるでしょう。

エンゲージメントを高める人材マネジメント

従業員の定着を促すには、適切な給与・福利厚生だけでは不十分なことも。給与が良くても、「仕事にやりがいを感じられない」「成長を認めてもらえない」と離職する人が多いからです。

よって、人材マネジメントの改善も必要です。従業員が主体性を持って意欲的に働けるよう、管理職者が行動することが求められます。

具体的には、管理職者による以下のような行動が社員エンゲージメントの向上に貢献します。

  • 目標の管理とサポート
  • 社員に挑戦の機会を与える
  • 評価制度、賞与以外でも評価する
  • 自主性・主体性を持たせるコーチング指導

社員が安心して働くことできる職場、自身の成長を実感できる機会の提供により、社員エンゲージメントが高まります。よって、人材マネジメントに長けた管理者の配置・育成が必要なのです。

 

コミュニケーション方法の見直し

人間関係のこじれの多くは、コミュニケーションが原因。そのため、離職率を低下させるにはコミュニケーションの改善も重要です。

とはいえ、会話を増やそうと意識するだけでは、大きな変化は見込めません。より着実に改善するためには、「環境」「手段」「方法」の3要素にアプローチする必要があります。

 

コミュニケーションが習慣化する「環境」

コミュニケーションを活性化させるためには「習慣化」が重要です。定期的に発言、意見交換する機会を設けることで、会話に対するハードルを下げます。

朝礼・終礼での情報共有が一般的。そのほか、定期的なチームミーティング、1on1ミーティングをスケジュールに組み込むことで、社員に”話す”習慣が身につくでしょう。

 

手軽にコミュニケーションが取れる「手段」

コミュニケーション手段に問題がある場合は、ツールの見直しを。些細なことでも気軽に情報共有できるツールは、社内のコミュニケーションを活性化させます。

例えばオンライン通話は、対面のようにその場で質疑応答が可能です。そのほか、チャットツールや社内専用システムツールなど、従業員にとって使いやすいツールの選択を心掛けましょう。

社員が話しやすくなるコミュニケーション「方法」

信頼関係を築くためには、従業員が安心して発言・行動できる環境、いわゆる「心理的安全性が確保された職場づくり」が必要です。

心理的安全性を確保するにはさまざまな取り組みが必要ですが、なかでも重要なのは、上司やチームリーダーからの積極的な会話。安心感を与える声掛けを行うことで、部下・チームメンバーからの自主的な発言を促し、コミュニケーションの活発化を図ります。

このように、「環境」「手段」「方法」の3つの観点からコミュニケーションを改善することが大切。特にリモートワークを導入している企業は、社内コミュニケーションに苦戦しやすいため、重点的に取り組みましょう。

 

管理職社員の育成

離職率低下に取り組む際は、基本的に人事が中心となって行います。しかし、実際に人材マネジメントを行ったり、従業員と日々コミュニケーションを取ったりするのは、管理職者です。

よって、管理職者の育成も必要になります。従業員エンゲージメントを高めるマネジメントスキル、心理的安全性を確保するコミュニケーションスキルなどを学べる研修を実施しましょう。

離職者の増加は、企業体制が問題である場合もありますが、管理職者の取り組み方が原因の可能性も高いです。しかし、管理職経験歴の長い人ほど、なかなか間違いに気づけないもの。改めて自身の行動を振り返ってもらうためにも、研修を行うのがおすすめです。

 

まとめ

平均離職率は、あくまで”平均”。同じ業界でも、企業の規模や事業形態によって差があります。

そのため、平均よりも離職率が低いからといって油断はできません。自社の人手不足、人材不足を感じているのであれば、対策する必要があります。また、経済の変化によって突然離職者が増えることもあるため、事前に備えておくことが大切です。

平均離職率を参考にして目標を立てつつ、従業員が働き続けたいと思えるような職場づくりを目指しましょう。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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