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ベストプラクティスとは?意味やビジネスでの正しい使い方まで実践的に解説

人材育成・研修 用語解説
2026.01.06
『shouin+ブログ』マーケティング担当

「業務改善のためにベストプラクティスを取り入れよう」
「業界のベストプラクティスを調査してほしい」

ビジネスの現場で、このような言葉を耳にしたことはありませんか?文脈からなんとなく「良い方法」のことだと理解していても、具体的にどう定義されているのか、どのように実践すればよいのか、自信を持って答えられる人は意外と少ないかもしれません。

本記事では、ベストプラクティスの正しい意味から、ビジネスでの具体的な使い方、そして実際に企業が取り組んだ成功事例まで、くわしく解説します。自社の業務改善や人材育成などのヒントとして、ぜひご覧ください。

 

ベストプラクティスとは?

ベストプラクティスとは、ある結果を得るために「最も効率的で効果的な手法」や「過去の成功事例に基づいた最良の方法」を指す言葉です。ビジネスの世界では、業務プロセスを改善したり、新しいシステムを導入したりする際に、ゼロから方法を考えるのではなく、すでに実績のある優れたやり方を模倣・参照する際によく使われます。

まずは、この言葉の成り立ちやビジネスでの使い方、日本語での言い換え表現を簡単に見ていきましょう。

 

「ベストプラクティス」の語源

ベストプラクティスは、英語の「Best(最も良い)」と「Practice(実践・慣行・手法)」を組み合わせた言葉です。直訳すれば「最良のやり方」といった意味になります。

もともとは経営学や公共政策の分野で、成功した取り組みを他の組織にも広げるためのキーワードとして使われてきました。しかし最近では、企業の経営戦略や人事制度、マーケティング、DX推進など、幅広い場面で使われる一般的なビジネス用語になっています。

またベストプラクティスは、特定の課題に対して、理論上の正解を探すのではなく、「実際に現場で行われている活動の中で、最も優れた成果を生み出しているもの」を標準化しようという考え方がベースにあります。つまり、机上の空論ではなく、実績に裏打ちされた方法論であることが重要なのです。

 

ビジネス用語としての使い方

ビジネスの現場において、ベストプラクティスは主に「目指すべき基準」や「解決策のひな型」として使われます。

たとえば、業務効率が悪化している部署に対して「他部署のベストプラクティスを横展開しよう」と提案したり、新しいITツールを導入する際に「メーカーが推奨するベストプラクティス設定を採用しよう」と判断したりするケースです。

また、競合他社や業界全体のトップランナーのやり方を分析し、自社の目標設定にすることを「ベストプラクティスをベンチマークする」と表現することもあります。

とくに​資料や提案書では、「〇〇社のベストプラクティスを参考にした提案です」などと書くことで、単なるアイデアではなく、実績に裏付けられた方法だという印象を相手に伝えられるでしょう。ポイントは、「現場で検証されていること」「他の部署や組織に水平展開できること」の2つを意識して使うことです。

 

ベストプラクティスを日本語に言い換えるなら?

カタカナ語を避けたい場合や、より直感的に相手に伝えたい場合は、文脈に合わせて以下のような言葉に言い換えるとよいでしょう。

<ベストプラクティスを変換する場合>

  • 成功事例
  • 最善の方法/最適な方法
  • 模範事例/模範的な取り組み
  • 標準的技法
  • お手本となる取り組み

一般的には「成功事例」や「最善の方法」がよく使われますが、文脈に応じて「模範事例」や「標準的技法」といった言い方もできます。また、相手の年齢層や業界の慣習に合わせて、「お手本となる取り組み」などと噛み砕いて伝えるのもいいですね。カタカナ語に不慣れな相手にもイメージが伝わりやすく、会議や提案書でも受け入れられやすい表現でしょう。

 

ベストプラクティスと似ている・混同しやすい用語

ベストプラクティスは便利な言葉ですが、「グッドプラクティス」「バッドプラクティス」「ベストフィット」「ベンチマーキング」「セオリー・ノウハウ」など近い意味で使われる言葉が多くあります。

響きが似ているため、何となく同じ意味のように感じてしまいますが、実は指している範囲やニュアンスが少しずつ異なります。場面に応じて使い分けられるように、ここではそれぞれの言葉の違いを整理しておきましょう。

ベストプラクティスと似ている・混同しやすい用語

 

グッドプラクティスとの違い

「グッドプラクティス(Good Practice)」は、「良い実践」や「好事例」といった意味で使われます。ベストプラクティスが「(現時点で)最も優れたやり方」というニュアンスを持つのに対し、グッドプラクティスは「成果が出ている優れた方法の一つ」という控えめな表現になります。

環境や条件が異なれば「ベスト」は変わり得るため、絶対的な正解が存在しない教育や福祉の現場、あるいは発展途上のプロジェクトなどでは、あえて「グッドプラクティス」という言葉を選び、柔軟性を持たせることが多いのです。

整理の仕方としては、ベストプラクティスはグッドプラクティスの“チャンピオン”のような位置づけだと考えると分かりやすいでしょう。

 

バッドプラクティスとの違い

「バッドプラクティス(Bad Practice)」は、文字通りベストプラクティスの対義語にあたる言葉です。これは「悪手」や「推奨されないやり方」を指します。単に効果がないだけでなく、将来的にトラブルの原因になったり、修正に多大なコストがかかったりするような、避けるべき手法のことです。

たとえば、顧客対応で属人化したやり方に頼り、引き継ぎ資料もなく担当者が変わるたびにトラブルが起きているとしたら、それは典型的なバッドプラクティスといえます。そしてこれを、「やってはいけない例」として共有することで、同じ失敗を繰り返さない仕組みづくりに役立つのです。

つまり、ベストプラクティスが「積極的に真似したい成功パターン」なのに対し、バッドプラクティスは「繰り返さないように注意したい失敗パターン」と整理できるでしょう。

 

ベストフィットとの違い

「ベストフィット(Best Fit)」は、「最もフィットするもの」「自社に最適な選択肢」という意味を持つ言葉です。

ベストプラクティスが「多くの組織で効果を発揮しやすい模範的なやり方」を指すのに対し、ベストフィットは「自社の文化や規模、業種に合わせてチューニングされたやり方」に焦点を当てています。

たとえば、グローバル企業のベストプラクティスをそのまま中小企業に持ち込んでも、組織規模や人員構成が違えば、かえって現場が混乱するかもしれません。そのため、「他社のベストプラクティスを参考にしつつ、自社のベストフィットを目指してアレンジする」という意識が重要になります。

外部の正解よりも、内部との整合性を重視する考え方と言えるでしょう。

 

ベンチマーキングとの違い

「ベンチマーキング(Benchmarking)」は、自社の製品やサービス、プロセスを、業界で最も優れている企業と比較・分析する「プロセスそのもの」を指します。一方、ベストプラクティスは、その分析の結果として見つけ出された「優れた手法そのもの」を指します。

たとえば、競合他社の業務プロセスや指標を調査し、自社のKPIと比較する分析活動がベンチマーキングです。その結果として、「この企業のこのやり方は自社にも取り入れたい」と判断された取り組みが、ベストプラクティスです。

つまり、「ベンチマーキングを行った結果、競合A社の物流システムがベストプラクティスだと判明した」というように、プロセス(ベンチマーキング)と成果物(ベストプラクティス)として区別して考えると整理しやすいでしょう。

 

セオリー・ノウハウとの違い

「セオリー(Theory)」は理論や定石、「ノウハウ(Know-how)」は個人の中に蓄積された知識やコツを指す言葉です。対してベストプラクティスは、「セオリーやノウハウを踏まえつつ、一定の条件下で高い成果が確認された具体的な実践例」といえます。

たとえば、一般的に営業活動では「信頼関係を築くことが重要」というセオリーや、「初回訪問では名刺交換の際に一言雑談を添えるとよい」といったノウハウがありますね。これらを組み合わせて「この順番でヒアリングし、こういう資料を提示すると受注率が上がる」などと検証された具体的な手法にすると、これは「ベストプラクティス」といえるのです。

つまり、セオリーやノウハウを、誰もが再現可能な「成功の型」として体系化したものがベストプラクティスである、と整理するとよいでしょう。

 

ベストプラクティスの使用例(例文)

言葉の意味を理解しても、実際の会話や資料作成でどのように使えばいいのか迷うこともあるでしょう。そこでここからは、シチュエーション別に具体的な使用例(例文)を紹介していきます。​ベストプラクティスの使用例

会議・プレゼン・資料での使用例

社内の会議やプレゼン、提案資料では、提案の根拠を強化するためにベストプラクティスがよく使われます。例文としては、次のような言い回しを参考にしてください。

<例文>

「今回の業務フロー見直しにあたっては、業界のベストプラクティスを採用し、工数の20%削減を目指します」

「このマニュアルは、営業成績トップのAさんの手法をベストプラクティスとして標準化したものです」

このように、「単なる思いつき」ではなく、「実績のある確かな方法」に基づいていることをアピールする際に非常に効果的です。説得力を高めたい場面で活用してみましょう。​

 

IT分野での使用例

IT分野では、システム設計や運用、セキュリティ対策の「推奨されるやり方」を示す言葉としてベストプラクティスが多用されます。

実際にクラウドサービスのマニュアルでも、「セキュリティ設定のベストプラクティス」「バックアップ運用のベストプラクティス」といった表現がよく見られます。また、会話としては次のように用いられることも。

<例文>

「ベストプラクティスに沿って、セキュリティ設定を見直しましょう」

「ログの保管期間はベストプラクティスに合わせて1年間にしましょう」

ちなみに、専門用語が多くなりがちなIT分野では、ベストプラクティスという言葉を使うときも「どのガイドラインに基づくのか」を一緒に示すと、チーム内の理解が揃いやすくなるでしょう。

 

医療・教育・行政での使用例

医療や教育、行政の分野では、効果が検証された取り組みを他の地域や組織にも広げるために、ベストプラクティスがガイドラインやモデル事業として共有されることが多くあります。

たとえば、医療では「感染対策のベストプラクティス集」、教育では「いじめ防止に関するベストプラクティス集」、行政では「子育て支援のベストプラクティス」といった形です。

エビデンス(根拠)を重視する領域だからこそ、「単なるアイデアではなく、効果が確認された取り組みである」というニュアンスを込めてベストプラクティスという言葉が用いられているのです。

<例文>

「他自治体のベストプラクティスを調査し、わが市の少子化対策に活かします」

「この研修プログラムは、複数の学校で成果が出ているベストプラクティスとして文部科学省が紹介しています」

 

グローバル企業における使用例

グローバル企業では、国や地域をまたいだ「標準のやり方」を整えるために、ベストプラクティスという言葉が用いられます。本社が定めた人事制度やコンプライアンスのベストプラクティスを、各国拠点にロールアウトしていくイメージです。

<例文>

「欧州拠点のベストプラクティスをアジアにも展開し、ガバナンスを統一します」

「グローバルで合意されたベストプラクティスに沿って、評価制度を見直しましょう」

この場合、ベストプラクティスは文化や習慣の違いを超えて、組織全体の共通言語として機能します。「世界標準」に近いニュアンスが含まれることもあります。

 

ベストプラクティスを導入するメリット

ベストプラクティスを取り入れることは、企業にとってどのような利益をもたらすのでしょうか。単に「他社の真似をする」だけではない、戦略的な意義がそこには存在します。そこでここからは、ベストプラクティスの導入によって得られる主な3つのメリットについて解説します。ベストプラクティスを導入するメリット

業務効率化につながる

ベストプラクティスを取り入れる最大のメリットは、業務のムダを減らし、効率化を進めやすくなることです。誰かがすでに膨大な時間とコストをかけて見つけ出した「正解」を利用するため、ゼロから方法を模索する必要がなく、無駄な試行錯誤を省略できるのです。

たとえば、業務プロセスの改善において、自己流で進めると何度も失敗する可能性がありますが、ベストプラクティスに沿えば、最短距離でゴールにたどり着くことができます。これにより、試行錯誤の時間を節約できるだけでなく、節約できたリソースを他の業務に振り分けることもできるようになるでしょう。

 

成功事例を即実践に活かせる

成功事例を素早く自分たちの業務に活かせるのも、ベストプラクティスを活用する大きなメリットです。

実際、新しい施策を始めるとなると、いきなりオリジナルの方法を考えるのは負担が大きく、失敗のリスクも高くなるでしょう。しかしそんなとき、すでに他部署や他社で成果が出ているベストプラクティスがあれば、その骨組みを借りてスタートできます。

たとえば、オンボーディング研修で高い定着率を出している部署があれば、そのカリキュラムや運営方法をベストプラクティスとして横展開します。そのうえで、自社仕様に細部を調整すれば、ゼロからの挑戦よりも成功確率を高めやすくなるでしょう。

とくに「やってみないとわからない」という不確実な状態から脱却し、「こうすれば、これくらいの成果が出るはずだ」という見通しを持ってプロジェクトを進められるのは大きな強みといえます。

 

新しいアイデアを取り入れられる

自社や自分のチームだけで考えていると、どうしても発想が偏り、現状維持のバイアスがかかりがちです。しかし、外部のベストプラクティスに目を向けることで、「そんなやり方があったのか」という新しい視点や気づきを得ることができます。

たとえば、建設業がIT企業のDXのベストプラクティスから学ぶこともあれば、逆に製造業が介護業界の人材定着のベストプラクティスを参考にすることもあるでしょう。また、単に真似をするだけでなく、「自社ならどう応用できるか?」と考えることで、アイデアの種も見つけやすくなるはずです。

このように、他社や他業種のベストプラクティスを取り入れることは、新しいアイデアやイノベーションを生むきっかけにもなり得るのです。

 

ベストプラクティスを導入するデメリット

一方で、ベストプラクティスには注意すべき点もあります。他社でうまくいった方法でも、自社にそのまま当てはまるとは限りません。また、ベストプラクティスに頼りすぎると、人材育成の観点で弊害が出てしまうことも。そこでここからは、ベストプラクティスを取り入れるうえで注意したい2つのポイントについて見ていきましょう。ベストプラクティスを導入するデメリット

自社環境に合わない可能性がある

他社で成功した方法が、必ずしも自社で成功するとは限りません。ベストプラクティスは、特定の組織や条件のもとで最適だった方法であるため、そのまま(自社に合わないまま)持ち込むと、期待した成果が出ないだけでなく、むしろ非効率になってしまうことも。

たとえば、大企業向けに設計されたプロジェクト管理のベストプラクティスを、人数の少ないスタートアップ企業がそのまま取り入れるとどうなるでしょうか。実際のところ、ルールばかりが増えて身動きがとれなくなったり、人員や予算の確保が厳しく、継続的な運用ができなくなったりするリスクは非常に高いでしょう。また、日本と海外では法制度や文化が異なるため、グローバル企業のベストプラクティスを国内に持ち込む際には、この点にも注意が必要です。

このように、ベストプラクティスには「誰にとっての最適解なのか」という前提が必ずつきまといます。そのため導入の際は、自社の規模・業種・組織文化・メンバーのスキルなどのあらゆる視点から、「どこまでそのまま使えるか」「どこから自社用にアレンジすべきか」を適切に見極めることが大切です。

 

人材育成には当てはまらない

業務プロセスやシステム設定にはベストプラクティスが存在しますが、人を育てる方法に「唯一の正解」はありません。個人の性格、強み、キャリア観は千差万別だからです。そのため、「このやり方が絶対に正しい」と決めて全員に適用しようとすると、個々の特性を見落としたり、かえってモチベーションを下げてしまったりするリスクがあるのです。

たとえば、同じ新人研修のカリキュラムを「ベストプラクティスだから」と全員に一律で適用したとしましょう。対人コミュニケーションが得意な人にとってはロールプレイや発表の機会は力を発揮する場になる一方、人前で話すことが苦手な人にとっては大きなストレスになりかねません。上司がそのギャップに気づかないまま進めてしまうと、「この仕事は自分に向いていない」と感じてしまう若手が出てくることは容易に想像できます。

このように、人材育成の領域では、他社の成功事例を「全員に当てはまる万能なやり方」として扱うのはナンセンスです。あくまで基本となる考え方や枠組みとして参考にしながら、自社に合わせて柔軟に調整していく必要があるでしょう。

なお、以下の記事では、「人材育成がうまくいかない…」とお悩みの方に向けた、具体的なアイデアや成功事例を紹介しています。ぜひ参考にご覧ください。

 

■参考記事はこちら

人材育成がうまくいかない…よくある課題と解決策をわかりやすく紹介!成功企業の取り組みも解説

 

ベストプラクティスの見つけ方・作り方

では、実際にベストプラクティスをどのように見つけ、自社に取り入れればよいのでしょうか。あるいは、自社の中から独自のベストプラクティスを生み出すにはどうすればよいのでしょうか。ここからは、具体的なアプローチ方法を4つの観点から紹介します。

他社事例・行政発表資料から学ぶコツ

他社のベストプラクティスを集めたい時は、経済産業省や厚生労働省が公開しているベストプラクティス集がとても参考になります。以下、サイトを4つご紹介しますので、ぜひ活用してみてください。

また、これらを活用する際は、単なる「結果」だけでなく、「どのような課題があり、どう乗り越えたのか」というプロセスの部分に注目すると、自社への応用イメージがしやすくなるでしょう。

<ベストプラクティスを公開しているサイト例>

下請適正取引等推進のためのガイドライン|中小企業庁

下請事業者と親事業者との間で、適正な下請取引が行われるよう、国が策定したガイドライン。22業種における、望ましい取引事例(ベストプラクティス)と問題となり得る取引事例が具体的に記載されています。

 

中小企業の取り組み事例|働き方改革特設サイト|厚生労働省

働き方改革に取り組む中小企業の事例を、業種・地域・従業員数などから検索できるデータベースです。施策の内容だけでなく、導入後の変化や現場で働く社員の声も掲載されており、自社に当てはめたときのイメージを具体的に持ちやすい仕様になっています。

 

令和2年度 新・ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集|経済産業省

ダイバーシティ経営に取り組み成果を上げている企業を「100選プライム」「新100選」として選定し、整理したレポートです。各社の具体的な施策から成果まで一体的に紹介されているため、人事・経営企画の観点からベストプラクティスを学びたいときに役立ちます。

 

④経済安全保障上の課題への対応(民間ベストプラクティス集)|経済産業省

第1版 第2.0版

技術流出リスクやビジネスの予見性低下など、経済安全保障上の課題に対して企業が自主的に行っている工夫を、ベストプラクティスとして整理した資料です。従業員の情報管理意識の醸成や取引先管理、レピュテーションリスク対策などに役立ちます。

 

自社内の成功事例を体系化する方法

外部の優れた事例を学ぶことも大切ですが、まずは自社の中にある「成功の芽」を見つけ、ベストプラクティスとして体系化することも大切です。

みなさんの周りには、「なぜかいつも成績が良い人」や「いつも効率的に仕事を進めている人」はいませんか?もしいるのであれば、ヒアリングをしたり、数値データを収集するなどして、どんな工夫が成果につながっているのかを探ってみましょう。また、それ以降のステップは以下の内容を参考に進めてみてください。

 

<成功事例を体系化するためのステップ>

①事例を集める:成果が出ている部署・人をピックアップし、ヒアリングや数値で情報を集める

②共通点を抽出する:複数事例に共通する行動・工夫・プロセスを洗い出す

③フォーマットに整理する:背景/課題/取り組み内容/工夫ポイント/成果の形で文章化する

④再現条件を明記する:どんな環境・前提なら再現しやすいかを補足する

⑤共有・フィードバックを回す:社内で共有し、使ってみた感想や改善案を反映して更新する

 

継続的にアップデートする仕組みづくり

一度つくったベストプラクティスも、環境の変化によって「古い常識」になってしまうことがあります。そのため、テクノロジーの進歩や働き方の変化、法制度の改正などに合わせて、定期的に見直す仕組みづくりをしましょう。

具体的には、「年1回のレビュー会を設け、現場からのフィードバックを集める」「KPIの変化をモニタリングする」といった運用が効果的です。

たとえば、「この1年間で新たにうまくいった施策は何か」「逆に、通用しなくなってきたベストプラクティスはないか」などとヒアリングを行います。こうしたプロセスを継続することで、ベストプラクティスが「単なるマニュアル」ではなく、「今の時代に合った生きた知恵」として機能してくれるでしょう。

 

チームで共有・浸透させるポイント

せっかくベストプラクティスを整理しても、社内共有が不十分では現場で活用されるものにはなりません。浸透させるために、まずは「分かりやすくまとめること」と「日常の業務に組み込むこと」を意識していきましょう。

たとえば、ベストプラクティスのまとめ方としては、長文のドキュメントだけでなく、チェックリストやフローチャート、ショート動画にして共有するという方法もあります。

また、朝礼や定例会議で「今月のベストプラクティス」を紹介したり、新人研修のカリキュラムに組み込んだりすると、現場にも自然と根づきやすくなるでしょう。

なお、以下の記事では、ノウハウを共有するためのポイントや、ノウハウを一元管理する方法などを具体的に解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

■参考記事はこちら

組織内でノウハウを共有するために押さえるべき3つのポイント

ナレッジベースとは?活用するメリットや作り方、導入時の注意点など詳しく解説

 

ベストプラクティス事例集

最後に、実際の企業が取り組んだベストプラクティスの具体例を紹介します。ここでは、公開されている「働き方改革」「ダイバーシティ経営」「DX推進」の3つの分野における実際の事例をもとに、どのような課題に対し、どのような工夫が行われたのかを見ていきましょう。

働き方改革におけるベストプラクティス

石川県金沢市の「みづほ工業株式会社」は、長時間労働の削減と年次有給休暇の取得促進に積極的に取り組み、「ベストプラクティス企業」として石川労働局から選定されています。

同社は、働き方改革関連法への対応をきっかけに、グループウエアの導入や3S(整理・収納・清掃)活動を通じて業務の見える化と効率化を進めました。とくに「収納」に重点を置き、資材や図面の保管場所を明確にし、物品等を探す時間を削減したことが特徴です。

その結果、職種ごとに月あたり4〜6時間程度の時間外労働を減らし、有給休暇の取得日数も一人あたり年間6日から8日へ増加しています。従業員からは「残業が減り、仕事を考える余裕や家族との時間が増えた」という声もあがっています。

◾️参考

ベストプラクティス企業における取組事例|厚生労働省 石川労働局

 

ダイバーシティ経営のベストプラクティス

東京都中央区の「清水建設株式会社」は、従来型の建設業から新たな事業領域への展開を見据え、多様な人材を活かすダイバーシティ経営に取り組んでいる企業です。

同社は長期ビジョン「SmartVision2010」を掲げ、女性や外国人、障がい者、文系・理系を問わない多様な人材を採用・育成する方針を明確化しました。経営トップの強いコミットのもと、ダイバーシティ推進室を設置し、ノー残業デーの設定やタブレット活用による業務効率化、育児・不妊治療への支援制度など、働き方改革と両立支援を同時に進めています。

また、女性活躍推進フォーラムの開催や、女性技術者・管理職の数値目標の設定、「Smart Vision採用」による新領域ビジネスを担う人材獲得など、多面的な施策を展開してきました。

その結果、女性新卒採用比率の向上や女性管理職の登用、年休取得率の改善など、組織全体の変化が数字として現れています。

◾️参考

平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集|経済産業省

 

DX推進のベストプラクティス

山形県米沢市の「株式会社後藤組」は、「全員DX」を掲げてデジタル化による業務効率化と標準化を進めている企業です。

同社では取締役会をトップとした体制のもと、現場から経営層までがDXに参加し、専任のDXチームが技術面で支援しています。現場社員自らがkintoneやルッカースタジオなどのノーコードツールを使ってアプリを開発し、工事現場の品質チェックシートや安全書類の電子化、取引先との契約・発注・請求手続きのデジタル化を実現しました。

その結果、1人あたりの残業時間は2021年の123時間から2024年には108.7時間へと短縮され、若手社員の定着率も向上しています。さらには、DX大会や勉強会、社内資格制度を通じてDX人材の育成にも力を入れており、社内で作成されたアプリの総数は3,000件以上に。ボトムアップ型の文化が定着したことで、競争力強化と持続可能な事業運営を実現しています。

◾️参考

「DXセレクション2025」選定企業レポート|経済産業省

 

まとめ

今後、DXや働き方改革、ダイバーシティ推進など、企業を取り巻く環境はますます複雑になっていきます。そのなかで、自社に合ったベストプラクティスを見つけ、試し、アップデートし続けることは、組織の競争力と持続的な成長を支える大きなポイントとなるでしょう。

いきなり完璧な仕組みを作ろうとする必要はありません。まずは、みなさんの身の回りの小さな業務から、「もっと良いやり方はないか?」と探してみることから始めてはいかがでしょうか。その小さな改善の積み重ねが、やがて社内、そして業界のベストプラクティスになっていくかもしれません。

本記事が、皆さまの職場における業務改善やより良い組織づくりに向けた取り組みの一助となれば幸いです。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

shouin+は、本社や現場のOJT・研修に関するお悩みを丸ごと解決する人材育成クラウドサービスです。

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