新人教育の学習進捗はチェックシートを用いてわかりやすく把握!無料テンプレートも配布中
新人教育の方法として、入社してすぐに受ける基礎研修(Off-JT)と職場配属後のOJTを多くの企業が取り入れています。Off-JTの習熟度を確認し、これをOJT、職場での育成へと繋ぎ、新人が配属先で順調に成長していることを把握するために有効なのが、「チェックシート」です。
新人教育用のチェックシートは、新人育成においてとても有効なツールです。チェックシートを活用することで、新人教育のクオリティと効率を向上させ、成長速度を加速させる効果が期待できます。
今回は、新入社員教育の目的やメリット、チェックシートの作成手順やコツ、さらに成功させるためのポイントについて解説します。なお、すぐにチェックシートを使い方は以下からテンプレートをダウンロードいただけます。
新人教育の目的
新人教育とは、入社して間もない業務経験の浅い社員に対して一定期間行う、自社に関する知識やビジネスマナー等の教育を指します。
また、「中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで」によると、新人教育は単純な業務の習得を指すのではなく、会社の利益に貢献できる人材を育てることを目指して行われるとあります。
新人教育の目的には主に以下の4つが挙げられます。
- 早期戦力化を図る
- 生産性の向上
- やる気、モチベーションの向上
- 離職率の低下
企業が事業経営を成長させていくため欠かせない経営資源の1つが「人材」です。新人が主体的に仕事ができるよう導くため、新人教育をどれだけ効果的に実施できるかという点は、人材育成の取り組みの中でも非常に重要と言えます。
新人の研修内容や何をするべきかについては以下の記事でも紹介しています。
■参考記事はこちら
新入社員研修では何をするべき?内容やカリキュラムの作り方をわかりやすく解説(事例付)
新人教育の効果を高めるチェックシート
新人教育を効果的に進めるために、活用されるツールの1つが「チェックシート」ですが、チェックシートを活用すると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。
ここでは4つのメリットについて解説します。
メリット1.理解度のセルフチェックができる
新人教育にチェックシートを取り入れることによって、新入社員が自ら「できていること」と「できていないこと」を確認できます。つまりチェックシートがあることで新入社員が自らの理解レベルを把握することができるようになります。
チェックリストの項目のなかで、自分が正しく理解できていないことや実践できていないことがあれば、改善点を見つけることも可能で成長のための指南書代わりとなります。
また、チェックリストには、できるようになるべき項目が明文化されているのでチェックリストから自分がすべきことが見えてくることもあります。このように新人教育におけるチェックリストは、企業にとってもメリットがあるだけでなく、新入社員が自己評価を行うためのツールとしても役立つことが期待できます。
メリット2.適切なフォローアップに繋がる
チェックシートの活用は教育担当者や上司がサポートしたりするのにも役立ちます。
新人は人によって能力や成長のスピードが異なります。そのため同じトレーニングを受けても、個々の理解度や達成度に差が生まれるのです。
新人教育担当者は、新人一人ひとりに能力の差があることを理解したうえで、全員の教育に対して同じチェックリストを使うことで、個々の状況を正確に把握することが可能になるのです。
チェックシートによって、新人ごとに十分に教育内容が理解できていない、あるいは実践できていない点が確認できれば、ピンポイントで不明な点や疑問点を教えることができます。チェックシートを活用して、新人一人ひとりに適切なフォローアップを行いましょう。
メリット3.習得度の可視化ができる
チェックシートを導入することで、新人の習得度合いについて何がどのレベルにあるのかを把握できるようになります。具体的にどの項目につまづいているのか、あるいはできているのかが可視化されるため、上司や教育担当者は1on1ミーティングなどの適切なフィードバックやフォローを行うことができます。
適切なフィードバックと指導は新入社員の成長を促し、早期の戦力化が期待できます。
新人自身が行った自己評価は、主観に基づくもので、どのように本人が各項目の習得に対して考えているのかを把握できます。この自己評価と新人教育担当者や先輩・上司による評価を比較して、指導を行うことが重要です。
メリット4.社員の規範遵守がスムーズになる
チェックシートを活用することで企業の従業員として守るべきルールが明確になることもメリットのひとつです。
新人教育では、新人が自社の企業理念やビジネスルールに則して行動できるように理解できるように学びます。
チェックシートによって、企業理念やビジネスにおけるルール、マナーの項目を理解できたのか、新人は自己評価をし研修内容を振り返ることで、遵守すべきことやルールへの理解を深めることができます。
企業理念やビジネスにおけるルール、マナーに則った行動を従業員に浸透させていれば、組織全体が効率的にスムーズに運営できるでしょう。
企業理念やビジネスにおけるルール、マナーについても、チェックシートに記載し、明確にしておくことが重要です。
チェックシートにあると良い項目
新人教育のチェックシートにはどのような項目があると良いのでしょうか。ビジネスにおける一般的な項目も含めて小売や飲食をはじめ、接客業の従業員の新人育成に役立つ項目を6つ取り上げます。
項目1.ビジネスマナー
ビジネスマナーは、業種や職種を問わず社会人として身につけるべき基本的なマナーです。ビジネスマナーには身だしなみ、挨拶、社会人としてのマインドなどが含まれます。
営業職であれば、取引先との名刺交換や電話対応のマナーは不可欠となります。事務や経理、総務、秘書などバックオフィス系の職種においては、電話応対のほかに来客を会議室へ案内したりお茶出しのマナーなども身に着けておくとよいでしょう。
一般的なビジネスマナーとしては以下のようなものがあります。
①言葉遣い |
・一般的な謙譲語・尊敬語を理解し使い分けができる ・社内外の人が混じった場面でも、正しい言葉遣いができる |
②挨拶 |
・目線を相手に向ける、分離礼などあいさつのポイントをおさえている ・明るい声や笑顔を意識している |
③身だしなみ |
・清潔感のある服装や髪型、爪、持ち物などのポイントを押さえている ・相手や場面に応じて適切に選択できる |
④報連相 |
・報連相のタイミングを押さえて行っている ・報連相を自分から積極的に行っている |
⑤メール・チャット・SNS |
・ビジネスメールで署名や定型文が使い、正しくやりとりできる ・SNSやチャットを適切に使え、ツールの使い分けができる |
項目2.コミュニケーションスキル
社会人として自社内の他部署の人たちやお客様や取引先等とのやり取りに必要なコミュニケーションスキルについても、チェックシートに加えてあるとよいでしょう。
コミュニケーションスキルは、社会人として必要とされるスキルのひとつです。
社会人になると、関わる人の顔ぶれが大きく変わります。職場では自分とは年齢も経験も考え方も価値観も全く異なる上司・同僚との会話が必要になります。また社外の取引先や顧客とのコミュニケーションにおいても同様です。
特に接客という対面コミュニケーションのクオリティが売上に影響するひとつの要因となります。
ビジネスでは、顧客の意思決定を通じて、契約が取れたり売上が生まれるのは、顧客の意思決定に委ねられています。たとえば販売においては多種多様な人たちがお客様となりますが、お客様の求めるものを案内するために、コミュニケーションをとりながら相手の話、要望を引き出すスキルが求められます。
相手に合わせて商品情報を的確に伝える、言葉遣いや声のトーンやあいづちの打ち方などを適切にすることが売上やビジネスでの成果につながっている点で、チェックシートの項目に欠かせないといえます。
項目3.企業理念・社内ルール
チェックシートに取り込むべき項目には、企業理念や社内ルールが挙げられます。
新人教育において、自社の企業理念や経営方針など、会社の方向性や目標、またこれらに則して設定した自社独自のルールなどについてもしっかりと認識させる必要があります。
企業がどのような社員を育成したいか・社員にどのような行動を求めるのかについての理解がどれほど進んでいるのかをチェックする項目を入れていれば、新人の行動規範となり、目指す姿の理解にもつながります。
企業で働くためには、有給休暇や経費の申請といった社内手続きの方法や、就業規則や年間スケジュールといった社内情報の確認方法も把握しておくことも大切です。また、日報や議事録のフォーマットの記入方法や提出手順なども新人教育において共有するべき項目です。また社内ルールをチェックシートに記載する際は、不明点の問い合わせ先となる部署や担当者についてもチェックシートに記載しておくと便利です。
項目4.業務に関わる基礎知識
業務に必要な専門スキル・知識は企業によって、また配属先の部署によってさまざまです。
自社での業務に関連する、より実践的な知識やスキルについてもチェックシートに記載すべき項目です。入社1カ月1ケ月後、3カ月後、1年後などの期間を設定し、その時点での業務目標を達成するために必要な実際の業務内容を細分化して、必要になるスキルについて一つずつ出来ているかをチェックしていくようにしましょう。
たとえば配属先が営業の場合は、顧客へ商品やサービスについての説明や、クロージングのためのトークスクリプトなどが挙げられます。
また社内のメンバーとの連絡方法として取り入れているビジネスチャットや、SFA(営業支援システム)といったその業務に必要なツールの使い方についてもチェックシートで習得度合いを確認できるようにしておきましょう。
項目5.自社の商品・サービスの知識
自社の商品やサービスについての知識を身につけることは重要です。チェックシートには自社が提供する商品やサービスについての理解度を測る項目を入れておきましょう。
小売業や飲食業では自社の提供する商品やメニューの特徴やおすすめポイントについてもしっかりと身につけておかなければいけません。さらに接客対応の技術についても基本的な流れややり方を覚えておくことが不可欠となります。このためチェックシートを使って、新人が自ら出来ている点と出来ていない点を自覚することが大切です。
項目6.業種や業界に応じたコンプライアンスの概念
コンプライアンスについて正しい概念を持つことも社会人として必要で、新人教育に取り入れるべき項目です。たとえばパワーハラスメントについては、これまで大企業が対象でしたが、2022年4月から従業員300名以下の中小企業に対してもパワハラ防止の雇用管理上の措置を講じることが要求されるようになりました。
なお、セクシャルハラスメントについては2007年4月の時点で防止のための雇用管理上の措置の義務化が施行されています。
防止措置の1つとして、新入社員研修でのコンプライアンスの徹底、ハラスメント防止についての正しい認識を促すことは、ハラスメント防止措置として有効な手法といえます。
チェックシートの作成手順
それではチェックシートはどのように作成すればよいでしょうか。ここではチェックシートの作成手順を4つに分けて説明します。
手順1.自社が求めるスキルを細分化して整理する
チェックシート作成のひとつ目の手順は、自社や部門が求めるスキルを細分化して整理することです。
まずは社内で求める能力を言語化、明文化します。新人に対して求めるビジネス社会に必要な共通の能力・スキルや心構えはもちろん、社内業務を行う際に必要な企業固有の能力をを言語化してチェックシートに落とし込みます。このとき、専門用語は使わずにわかりやすい表現を心掛けましょう。
新人教育の目標設定に合わせ、職種や職務、作業項目などカテゴリごとに必要なスキルを洗い出しましょう。
手順2.業務の重要度・難易度を整理する
新人に対して求める能力やマインドについて項目に落とし込み、整理できたら、優先順位付けをします。
それぞれの能力の習得難易度や重要度を整理し、重点的にアプローチすべき内容や、いつまでに習得すべきかを明確化しましょう。
項目ごとに達成度合いを3段階程度のレベルに分けてレベルの定義をします。そのうえで、どの時点でどのレベルに達しているべきかを整理します。
たとえば「新人教育開始から1週間後にはレベル1の達成を目標とする」「OJT教育に入る現場配属時にはレベル2の習得を目指す」「半年後にはすべての項目をレベル2以上にする」など、指標となる達成度を設定しておくと、新人も目標に沿った行動をするようになります。
新人が、求められるタイミングで合格レベルに習得できるように、段階的に成長していける育成スケジュールを組み立てるようにしましょう。
手順3.育成スケジュールを立て、チェックシートを作成する
新人育成スケジュールを立てたら、次に能力の習得目標のレベルを期間別にチェックシートに取り込みます。期間は一週間などの短期、一ヶ月などの中期、半年や一年などの長期など、いくつかのスパンに分けて、スキル別の達成目標のレベルをチェックシートに落とし込みます。
このチェックシートは新人教育の教育課程のゴールを目指す指針となります。新人が見ても教育担当者が見ても同じ意味として理解できる必要がありますので、客観的な視点でチェックシートは言語化しましょう。
明文化、言語化しにくい場合には、図や画像を使用して説明することもひとつの方法です。たとえばビジネスマナーにおける「適切な身だしなみ」という表現では、読む人によって取り方が異なってしまいます。この場合には、イラストや画像を挿入し、視覚的に服装や髪型などのポイントを表現すると、おなじ認識で捉えることができ、分かりやすくなります。
手順4.チェックシートを定期的に見直し、更新
チェックシートは見直しや改善を定期的に行うことも大切です。
チェックシートは一度作成すればそれで完成ということではありません。とくに初めて作成したチェックシートは、使う人にとって分かりにくい部分があったり、現実的なレベル設定ができていないということもあるかもしれません。チェックシートは使いながら修正を重ねて精度を高めていく必要があります。
わかりやすいチェックシートにするコツ
チェックシートを作成し新人教育に導入しても、チェックシートが分かりにくいものであれば次第に活用されなくなってしまうでしょう。
分かりやすく使いやすいチェックシートを作成するにはコツがあります。以下に 3つのコツを挙げました。
チェックする項目数を増やしすぎない
作成したチェックシートで項目数が多すぎる場合、チェックに時間と手間がかかることから使われなくなり形骸化してしまうリスクが考えられます。
チェックシートは新人教育の進捗をはかるのにとても便利ではありますが、チェック項目を細分化しすぎると使いにくいものになってしまいます。業務工程のすべてを隅々まで記載するのではなく、とくに重要な項目に絞り込んで精査していくことで、使いやすいチェックシートを作ることができます。
定期的にアップデートする
新人教育に導入したチェックシートは、定期的な見直し、更新が欠かせません。私たちを取り巻く環境はつねに変化していきます。実際にコロナ感染症拡大によるリモートワークへの切り替えの推進など予想できない変化も生じました。また法律改正など社会的なルールの変更もあります。
社内ルールや業務内容もつねに改善を重ねて変化するものです。設備やシステム・ツールの新しい導入や改定などがあれば、業務内容も工程も変わりますので、チェックシートの内容に反映させる必要があります。
またチェックシートを使った新人教育を実施してみて、新人が分かりにくい、つまずきやすい項目があるならば、教育の方法のブラッシュアップを検討し改善していくことで新人教育の質を高めていくことが可能となります。
期間を区切って作成する
新人教育のチェックリストは、習得の期間によって分けて作成することで、項目の詰め込み過ぎを防ぐことができます。
たとえば「部署への配属まで」「入社1年後まで」「入社3年後まで」と期間を区切って作成することで、成長のあるべき姿がつかみやすくなり、使いやすくなります。
チェックシートの運用ポイント
新人教育のチェックシートはExcelなどで作成したものを印刷し、新人や教育担当者に配布して運用することも可能ですが、人材育成に特化したオンラインシステムやツールを活用することも効率的な運用を実現するための方法のひとつです。
オンラインシステムを利用すると、本社でシステムに一括登録したチェックリストを全国の支店でも使用でき、効率的です。新人全員が同じ教育を受けることで、教育担当者による教育の内容やレベルのばらつきや、店舗ごとの独自のルールで教育することを防ぐことができます。
またシステムやツールの活用によって、新人が業務に係るセルフチェックを実施したあとに教育担当者が再評価するというような運用も可能で、新人が客観的に自分の働き方を確認し、振り返ることもできます。
チェックシートの運用にオンラインシステムを活用することで、習得度のデータや評価について管理がしやすくなり、新人教育を効果的に進めることに役立ちます。新人教育に必要な機能を包括的に保有するオンラインシステムを導入することを検討してみることもおすすめです。
新入社員研修やOJTですぐに使える、新人教育チェックシート
すぐにチェックシートを用意することが難しい方には、テンプレートも活用いただけますのでぜひダウンロードしてお使いください。
まとめ
今回は新人教育におけるチェックシートの活用について解説しました。
新人教育は、入社したばかりの従業員に対して、社会人としてのマインドとスキルを習得させて、自社の即戦力として活躍してもらうことを目的に行います。
一定期間のなかで、基礎的なビジネスマナー・ビジネススキルから、自社の業務スキルに及ぶ多種多様な内容を覚えて身につけてもらうため、一般的に新人教育は詰め込み教育になる傾向があります。
「何をどのレベルで実践している状態にすればいいのか」を言語化したものがチェックリストです。
チェックシートを活用することで、新入社員自身が取り組んだ業務がどこまでできるようになっているかをセルフチェックできます。習得すべきことと習得できたことの差を確認し、ギャップを埋めることで教育効果の向上に役立ちます。さらに新人が現場配属後のOJTをスムーズに進めていくことが可能になります。
新入社員が主体的に動くような育成計画を立てて、チェックシートを活用しながら新人育成を進めましょう。チェックシートは自社でExcelなどで作成することも可能ですが、より効率的に新人育成をしたい場合にはデジタルを活用したツールを取り入れることも検討してみるのも良いでしょう。