教育訓練として活用されるOJTやOFF-JT。
人材育成に携わる人事担当者の方々は、とくにOJTやOFF-JTの研修セッティングなどで苦労されることが多いのではないでしょうか。
また、実際のところ、
「OJTとOFF-JTって具体的にどう違うの?」
「効果的な人材育成にはどう活用したらいいの?」
と分からないことが多いことと思います。
そこでこの記事では、OJTとOFF-JTの違いについて7つのポイントからくわしく解説していきます。OJTとOFF-JTの使い分け・事例までご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
違いを比較する前に、まずはOJTとOFF-JTそれぞれについて整理しておきましょう。
OJT(On The Job Training)とは、実務を通して行われる教育訓練のことをいいます。 一般的には、職場の上司・先輩が指導者となり、部下に対して業務に必要な知識やスキルを指導していきます。実務がともなうため、アウトプット型の教育方法といえるでしょう。
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OJTとは?実施時の注意点や必要な準備についてわかりやすく解説!
OFF-JT(Off The Job Training)とは、一般的に職場外で行われる、研修方式の教育訓練をいいます。たとえば集合研修や外部講師によるセミナー、e₋ラーニングなどがOFF-JTにあたり、日本では新人教育研修をはじめ、リーダーシップ研修や役員研修などで多く実施されます。アウトプット型のOJTとは反対に、OFF-JTは知識を蓄えるインプット型の教育方法といえるでしょう。
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Off-JTとは?実施するメリットや方法を事例からわかりやすく解説!
OJTとOFF-JTの違いは、大きく次の7つにまとめられます。それぞれ簡単に説明していきます。
OJTとOFF-JTは、その目的から違いがあります。上記でも軽く触れましたが、OJTは主に「アウトプット」を、OFF-JTは主に「インプット」を目的としています。
たとえば、接遇マナー研修を受講(OFF-JTによるインプット)した後に、実務のなかで接遇を実践しながら体で覚えていく(OJTによるアウトプット)ようなイメージです。
OJTとOFF-JTは、その性質から実施される場所にも違いがみられます。
OJTは実務をともなうため「職場内」で実施されることが多く、反対にOFF-JTは職場近郊の貸し会議室・研修室などといった「職場外」で実施されることが多くあります。
OJTとOFF-JTの実施期間については、OJTでは「中長期的」、OFF-JTでは「短期的」という違いがあります。
OJTでは、実務を通した1ヶ月単位の教育訓練が一般的であり、新人教育におけるOJTでは3ヶ月〜1年で設定されることが多いようです。一方でOFF-JTでは、集合研修や外部講師によるセミナーなど1〜3日程度の実施期間であることがほとんどです。
OJTとOFF-JTには、実施内容に関する違いもあります。
OJTでは「実務に直結するノウハウ」を指導し、OFF-JTでは「受講者全員に対する標準的なノウハウ」を講義します。
実施内容に続き、OJTとOFF-JTには受講者人数の差から次のような違いもあります。
受講者が基本一人または少人数と想定されるOJTでは、個人に適した形で実施することができます。受講者ひとり一人に対して細やかな指導がしやすい教育方法といえるでしょう。
一方、受講者数が多数におよぶことが想定されるOFF-JTでは、標準的な内容で実施されることがほとんどです。一度に多くの受講者を相手に教育ができる上、受講者の知識やスキルのばらつきを防ぐことができる教育方法ともいえます。
コストに関しては、「経済的コスト」と「時間的コスト」の2つの視点から違いがあります。
経済的コスト面については、OJTでは職場の上司や先輩が指導者になるため、外部委託関連の費用がかからず低コストです。一方、OFF-JTでは外部講師への報酬や研修会場にかかる費用などの面からコストが発生します。セミナーすべてを外部委託すれば、数十万〜数百万ほど必要でしょう。
時間的コスト面については、OJTでは指導者のコストが高く、OFF-JTでは受講者のコストが高いのが特徴です。OJTにおいては内部実施のため、上司や先輩といった指導者が必要となることが理由であり、OFF-JTについては職場外への移動が必要となることが理由です。
OJTとOFF-JTでは、実は社内のコミュニケーション効果といった面からも違いがあります。
OJTでは受講者が一対一で指導を受けるためコミュニケーション効果が高く、一方、OFF-JTでは指導者から受講者への一方的な講義になりやすく、社員同士のコミュニケーションはあまり期待できません。
OJTとOFF-JTには、その違いに基づいてメリットとデメリットが存在します。それぞれ見ていきましょう。
OJTのメリット・デメリットは、整理すると次のようになります。
OJTは、やはり個人に合わせた指導ができる点が最も大きなメリットです。現場において実務を交えながら指導を受けることで、効果的かつ効率的な教育訓練になります。指導を受ける側としても、分からない時にすぐに教えてくれる人がいるという安心感につながるでしょう。
また、その他にも低コストで実施できる点や指導者の成長が期待できる点、受講者と指導者(社員同士)の人間関係を築きやすい点もメリットとしてあげられます。
一方で、OJTは指導者にかかる負担が大きいというデメリットもあります。新人教育を丁寧にしたいという思いがあっても、人材不足によって実現できない会社も多いのではないでしょうか。
また、OJTは一般的に3ヶ月〜1年で設定されることが多いため、綿密な指導計画が必要になる点もデメリットといえるでしょう。
OJTのメリット・デメリットは、整理すると次のようになります。
OFF-JTは、知識やスキルのばらつきを防げる点と、OJTと違って指導者にかかる負担が少ない点が大きなメリットです。受講者一人にじっくり時間をかけない分、多くの受講者に同じ内容の研修を提供できます。また、1日単位で完結させられる点もOJTと比べて負担が少なくメリットといえます。
一方で、OFF-JTは経済的コストが高いのがデメリットです。社外研修を実施する場合には、最低でも会場費や講師報酬、受講者の交通費などの費用がかかってしまいます。研修すべてを外部委託した場合は、規模にもよりますが1回あたり数十万~数百万ほどかかってしまうことも。
また、個人に合わせた指導が厳しく、研修中に分からない部分があっても質問しにくいというのもデメリットといえます。
OJTとOFF-JTそれぞれにメリット・デメリットはあるものの、やはり大切なのはその「使い分け」です。
ところが、使い分けといっても一概に「この教育訓練はOJTでやるべきだ」といったように決めつけたいわけではありません。
みなさんは、教育効果が高いことで有名な「反転授業」という教育方法をご存知でしょうか。反転授業とは、予習として自宅で基本的な知識を学び、学校で知識の定着や応用力の育成に関する学習(授業)を行う授業方式をいいます。言い換えればこれは、OFF-JTとOJTを組み合わせた教育方法といえるのではないでしょうか。
つまり、下図のようにOFF-JTの後にOJTを実施することで、より効果の高い教育訓練が実現できるということです。
実際に、弊社独自の調査では、大手アパレルの株式会社ユナイテッドアローズがOJTとOFF-JTを組み合わせた研修を実施したことにより、従業員の接客レベルの向上を実現したことが分かっています。
このように、OJTおよびOFF-JTは、“どちらをどう使うか”よりも、“両方をうまく使って効果を高める”使い方が望ましいでしょう。
また、近年ではOFF-JTのデメリットを補う方法として人材育成に特化したeラーニングサービスも多数展開されています。なかには、動画を活用した教材やフィードバックとしての機能を果たす日報機能などもありますので、気になる方は検討してみてはいかがでしょうか。
なお、反転授業についてはこちらの記事でよりくわしく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
反転授業とは?研修に導入するメリットや失敗しない実践方法について、事例からわかりやすく解説!
それでは最後に、OJTとOFF-JTをより具体的にイメージいただくために、事例を2つご紹介いたします。
株式会社きちりホールディングスは、レストラン経営における飲食事業等を行う会社です。
この会社では、2,000名を超える飲食店従業員に対して、クラウド型eラーニングサービスを活用した「OFF-JT」を実施しています。
OFF-JT導入前には、知識が人伝いの伝言ゲームになるなど間違った認識で理解が進んでいた場面も多かったものの、OFF-JT導入後には標準的な研修が実施できるようになったそうです。
実際に現場からは、「『なみなみスパークリングの注ぎ方』の動画を使ったパートナーの研修を行いました。動画を使うことで今まで勘違いしていた部分の修正も行え上手く注ぐことが出来ました。動画を使うことで分かりやすくムラの無い研修を行うことができると感じました。」との声もあがっています。
グループの基幹事業として学童保育サービス事業を展開しているのは、シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社。
この会社では、35都道府県・102自治体において約1,000施設もの学童施設を運営していくなかで、教育訓練を全支援員に実施することが難しくなり、研修の受講機会に関する地域格差が生まれていました。
そこで、動画コンテンツを活用したクラウド型eラーニングサービス(OFF-JT)を導入したところ、最大で月間約50%ほどの時間が削減され、保育や業務の時間に充てることができるようになったそうです。
これは、OFF-JTでの難点である「移動時間がかかる」というポイントをクリアにする、動画コンテンツならではのメリットといえますね。ひと口に“OFF-JT”といっても、そのコンテンツの使い方次第で、得られる効果も変化するようです。
教育訓練として活用されるOJTやOFF-JT。この記事では、OJTとOFF-JTの違いについて7つのポイントから整理した後、OJTとOFF-JTの使い分け・事例までくわしく解説いたしました。
簡単にまとめると、OJTは指導者の負担が大きい分、個人に合わせた指導ができる点が特徴で、OFF-JTは多くの受講者に向け、体系的な研修を実施できることが特徴といえます。
教育訓練の計画や研修方法を検討する際は、OJTとOFF-JTのメリット・デメリットを理解した上で従業員のあるべき姿を想定し、使い分けていくのがよいでしょう。ぜひ、貴社の人材教育にお役立てください。