業務効率化は、多くの企業にとっての課題です。日々の業務に追われる中、どのように改善すれば良いものかと悩んでいる人も多いことでしょう。
そこで今回は、業務効率化に繋がる改善策のアイデアを集めました。具体的な進め方や抑えておくべきポイントなども解説しますので、ぜひお役立てください。
そもそも「効率化を図る」とは、どういうことなのでしょうか。まずは言葉の意味を確認しておきましょう。
「効率」という単語には、以下のような意味があります。
1.機械などの、仕事量と消費されたエネルギーとの比率。
2.使った労力に対する、得られた成果の割合。
引用元：「デジタル大辞泉」小学館
ビジネスでは、主に「消費した労力に対する、得られた成果の割合」「リソースに対するアウトプットの割合」を指します。少ない労力で、より多くの成果を上げるほど効率が良いといえます。
そして「図る」という言葉には、以下のような意味があります。
1.くふうして努力する。
2.うまく処理する。とりはからう。
引用元：「デジタル大辞泉」小学館
つまり、効率化を図るとは「少ない労力で高い成果を出せるよう、工夫して取り組むこと」ということになります。消費する労力を減らすため、業務のムダ・ムラ・ムリをなくすことを意味します。
企業の利益を増やす方法には、大きく分けて二通りあります。
ひとつは、業績を上げる方法です。良い商品・サービスを開発したり、新規顧客を開拓したりすることで業績が上がり、利益が増えます。もうひとつの方法は効率化です。人・物・時間・費用など、リソースの無駄を減らすことで利益を増やす方法です。
業績が上がっても、出ていくものが多ければ利益は増えません。たとえ新しい商品を開発して業績を上げたとしても、業務にムダ・ムラ・ムリがある限り、十分な利益を得られないのです。
つまり、業務効率化を図ることは、企業が最大限の利益を獲得するのに欠かせない「基盤づくり」であるといえます。
業務効率化は、すべての企業に必要な取り組みです。特に、近年は経済環境や人材市場の状況など、さまざまな要因により、その重要性がさらに高まってきています。
なぜそれほどまでに業務効率化を図ることが重要なのか、以下の4つの理由について見ていきましょう。
現在、日本では少子高齢化が進み、多くの企業が人手不足に悩まされています。採用したくとも、市場に人材がいない状態です。そのうえ、転職や独立に興味を抱く人も多く、企業は人材の確保に苦戦しています。
人手不足が深刻化すると、従業員1人1人の負担が増え、生産性が下がります。その問題の解決策である「採用」と「人材の定着」に頼れない状況にあるため、業務効率化を図るべきとされているのです。
長時間労働は、従業員が離職する原因のひとつ。政府からの後押しもあり、企業は労働時間の短縮を図るよう求められています。
労働時間が短くなると、1日にこなせる作業の量が限られてきます。短い時間で同じだけの成果を上げるには、業務効率を上げるほかありません。よって、無駄なく質の高い業務を実現するよう、見直しが必要とされているのです。
2020年頃から、働き方の多様化が急速に進んでいます。従業員全員が同じ時間に、同じ場所で働くという概念が崩れ、今はライフスタイルに合わせて働き方を選べる時代です。
働き方の多様化を実現するには、社内の環境整備が必須。その取り組みのひとつが業務効率化です。
例えば、テレワークを実現するためには、限られた時間・手段で意思疎通できるよう、コミュニケーションの効率化が求められます。また、担当者が現場にいない時でも仕事が回るよう、業務プロセスの効率化も必要です。
このように、従業員にとって働きやすい職場をつくるためには、業務効率化が欠かせないのです。
激動の時代と呼ばれる現代、企業に課せられるミッションは数多く存在します。デジタル技術の導入、新しい価値の創造、人的資本経営……などと、企業が向き合わなくてはならない課題が次々と迫ってきています。
それらに取り組むには、時間と労力が必要です。今ある無駄を排除し、より重要性の高いミッションへとリソースを回すため、業務効率化を図ることが求められているのです。
業務効率化は、企業にも従業員にも多くのメリットをもたらします。具体的にどのようなメリットがあるのか、以下の4点について解説していきます。
効率化を図り、業務の無駄を省くことでコストを削減できます。人件費や経費、従業員の労力、能力、思考などを不要な業務から必要性の高い業務へと回すことができるのです。
例えば、3人で行っていた作業を効率化し、1人で取り組めるようにすると、2人分の人件費が浮きます。2人に他の業務を割り振ったり、1人あたりの作業量を減らしたりとコストを有効活用できます。
業績を上げるのが難しい現代において、コスト削減の実現は、企業にとっての大きなメリットであるといえます。
業務効率化により、従業員1人あたりの作業負担が減ると、肉体的・精神的な負担を軽減できます。労働時間の短縮を実現できれば、さらに従業員にとって働きやすい環境が作られます。
つまり、業務効率化は従業員満足度の向上に繋がるのです。最終的には、離職防止および人手不足問題解決の糸口となるでしょう。
業務の無駄が減ると、注力すべき業務にかける時間・労力を増やすことができます。従業員の気持ちにも余裕が生まれることから、サービスクオリティの向上が期待できます。
また、無駄な作業自体をなくすことで、その作業で発生していたミス・トラブルが起きることもなくなります。エラーの少ない、質の高いサービスを提供することは、顧客満足度の向上へと繋がるでしょう。
コスト削減、従業員満足度の向上、サービスクオリティの向上は、すべて企業の利益向上に繋がります。少ないインソースで多くの利益を得るという、生産性の高いビジネスモデルを構築できるのです。
増やした利益は、再び業務効率化に必要なコストに回すことができます。作業の自動化に役立つツールを導入したり、従業員のスキルを高めたりなど、業務効率を向上させる取り組みをさらに強化できるでしょう。
業務の効率化を図る際の手段は多岐に渡ります。何をすれば良いのか、改善策が思い浮かばず悩むこともあるでしょう。
そこで、ここからは業務改善のアイデアをご紹介します。効率化したい業務の内容、職場の状況に合わせて適切な手段を選びましょう。
マニュアル作成は、業務効率化に有効な手段のひとつ。業務の取り組み方のバラツキをなくし、最も効率の良い方法を明確に示すことで、職場全体の業務が効率化されます。
また、マニュアルは属人化の防止・改善にも役立ちます。従業員全員が知識とノウハウを得ることで、担当者が不在でも業務が回るようになるのです。
さらに、業務の取り組み方や基準が明確になることにより、従業員が迷う時間も減らせます。作業の時間短縮に繋がるでしょう。
■参考記事はこちら
業務の属人化を解消する方法とは？属人化が起こる原因から課題、解消するメリット、企業事例まで紹介
業務をマニュアル化するメリット・デメリットとは？効率的に進める方法や成功事例も紹介
業務がスムーズに進まない原因として、作業環境が悪い可能性も考えられます。「作業場の導線が悪い」「衛生管理が行き届いておらず作業に集中できない」「物が散乱していて道具が見つからない」など、不適切な作業場の環境は効率ダウンを招きます。
よって、作業環境の見直しが必要です。問題がないように見えても、思わぬ原因が潜んでいることもあるため、改めて現場の調査および社員へのヒアリングを行いましょう。
■参考記事はこちら
「必要のない時間に人が多すぎる」「必要な時間に人がいない」といった状況を生む勤務体制は、人件費と時間の無駄を生みます。そのため、勤務体制が現在の職場の状況に適しているか、改めて見直す必要があります。
例えば、現在、従業員全員が同じ時間に出勤しているのであれば、シフト制やフレックス制を導入してみるのも良いでしょう。勤務体制に柔軟性を持たせることで、効率化できる可能性があります。また、無駄な拘束時間が減ることから、従業員のモチベーション向上および生産性の向上も期待できるでしょう。
複数人の従業員が分担して作業する場合、配置も効率化において重要です。人数が過剰な部署から足りない部署へと移動させることで、時間と労力、そして能力の無駄をなくすことができます。
時間帯によって必要な人数が変わる場合は、時間に合わせて配置を変えるのもひとつの方法です。飲食店や小売店、旅館などが例です。忙しい時間帯と閑散としている時間帯とで、人員の過剰・不足がないか見直してみましょう。
また、従業員の適性に合わせて配置を決めるのも、業務効率化に繋がります。得意を活かせる部署に配属されることで、従業員の能力が発揮され、効率が上がるからです。作業時間が短縮されるだけでなく、業務の質の向上も期待できるでしょう。
ミス・トラブルが発生すると、対処するのに労力や時間が失われます。それらは、本来エラーが起きなければ消費することのなかった「ムダ」です。
無駄をなくすためには、ミス・トラブルが発生しないよう対策する必要があります。ヒューマンエラーが起きないシステムを構築する、業務プロセスを見直すなど、問題の原因を突き止めて改善しましょう。
業務を最適化することで、今後「起きるかもしれないミス・トラブル」の発生も防止できます。現状の無駄をなくすだけでなく、未来の無駄の発生を防ぐこともできるのです。
■参考記事はこちら
業務に無駄があることもあれば、そもそも作業自体が無駄な場合もあります。明確な目的がなく、利益に繋がらない作業は時間と労力のロスです。廃止することで、その作業にかかっていたコストを有効活用できます。
また、作業を廃止すると、その作業で発生していたミス・トラブルもなくなります。対処のために奪われていた時間と労力も取り戻すことができます。
作業を廃止するかどうか見極める際は、目的と利益を基準に考えるのがポイントです。「何のための作業なのか」「何を得られるのか」「廃止すると不利益が生じるか」などをチェックし、判断します。
完全に廃止することができない場合は、作業を簡略化するだけでも効率アップが期待できるでしょう。
■参考記事はこちら
社員同士のコミュニケーションは、業務をスムーズに進めるうえで重要です。やりとりが上手くいかないと、業務が滞ったり、ミスやトラブルが起きたりします。
そのため、コミュニケーションの仕組みと手段の見直しも、業務効率化に必要だといえます。「誰が」「何を」「いつ」「どのように」伝えるのか、どのようなツールを使って連絡をとるかなどを改めて確認します。
特に、リモートワークを導入している職場や店舗型ビジネスなど、職場同士が離れている場合は、コミュニケーションに工夫が必要です。無駄なく、必要な情報を速やかに伝達できるシステムへと整えましょう。
■参考記事はこちら
ビジネスに欠かせない双方向コミュニケーションとは？実施するメリットや促進するための方法を解説
ツールの活用は、業務効率化に役立つ定番の方法です。コミュニケーション手段として取り入れるほか、ツールを使って手作業を自動化することで、従業員の作業量を減らすことができます。ヒューマンエラーの発生による時間と労力の無駄もなくせます。
例えば、オフィスワークでは入力作業やデータ分析などを自動化することで、業務を効率化できます。飲食店の場合は調理ツールを、小売店の場合は在庫管理に役立つデジタルシステムを導入するなどの方法があります。
ただし、ツールを導入することでかえって手間が増えたり、社員が活用できず無駄になったりすることもあるため、適切なツールを選ぶことが大切です。
作業を廃止・簡略化できない、しかし従業員の作業量を減らしたい、といった場合はアウトソーシングを活用するのもひとつの手です。作業の一部を外部に委託することで、自社が抱える負担が減り、業務を効率よく進めることができます。
アウトソーシングの活用方法はさまざまですが、例えば、マニュアル作成や人材研修の一部を依頼する方法があります。専門的なスキルを必要とする業務を委託するのも良いでしょう。また、業務効率化を実現するため、コンサルティングを受けるといった案も挙げられます。
ただし、アウトソーシングを利用するには費用がかかります。また、外部企業と自社の相性が良くない場合もあるため、慎重な状況判断と見極めが重要です。
業務効率が悪い原因として、従業員のスキル不足も考えられます。知識や能力が不足しているために、ミスをしたり、判断に迷って時間を無駄に消費したりしてしまうのです。
よって、業務効率化を図る際は、従業員のスキルアップも必要です。従業員が効率の良い業務の取り組み方を学んだり、論理的な思考能力を身につけたりすることで、時間と労力のムダを削減できます。
特に、管理職者のマネジメントスキルは、業務効率に大きく影響します。適切な人材配置、仕事の割り振り、問題の速やかな解決ができるよう教育すると良いでしょう。
業務効率化を図る際は、目的の明確化と分析を怠らないことが重要です。具体的にどのように進めれば良いのか、効率化を実現するための具体的な進め方について解説していきます。
業務効率化を図るには、まず目的を明確に定める必要があります。人手不足の解消、新たな組織体制への適応など、何のために効率化する必要があるのかを定めます。
目的の候補が複数ある場合は、優先順位をつけます。業務でトラブルが起きているなら、トラブルの解消を第一の目的に。「新プロジェクトの開始に向けて業務効率化を図る」など、期限が迫っている場合も優先的に取り組むべきと考えられます。
業務の効率化には、組織全体の協力が必要です。全員が同じ方を向くため、目的を明確にすることが大切なのです。
また、効率化をスムーズに進めるため、中心となって動くチームとチームリーダーをここで決めておきます。本部の社員だけで構成するのではなく、現場から少なくとも1人はチームメンバーに選ぶと良いでしょう。
業務のムダ・ムリ・ムラのほとんどは、社員に認識されていません。気づかぬうちに無駄が発生していることが多いです。そのため、業務を可視化して分析する必要があります。
主に、以下のような項目を調査し、書き出します。
チームメンバーが対象の業務について知らない場合は、現場に赴き、調査する必要があります。また、日常業務の中には社員が無意識に行っている作業も多いため、見落とさないよう細かく観察・情報収集しましょう。
次に「何を」「どこまで」効率化するのかを決めます。課題点が複数発見された場合は、何から手をつけ始めるか決めます。
そして、業務改善のゴールを定めることも大切です。明確な目標を設定することで、組織のモチベーションが高まります。また、改善の効果を正しく見極めるための指標にもなるので、可能な限り具体的な数値を使ってゴールを決めましょう。
取り組む課題と目標が定まったら、次に「どのように改善するのか」を決めます。
改善策は、実現可能であることが重要です。例えば、業務効率化に役立つツールを導入したとしても、運用のためのシステムや環境が整っていなければ失敗してしまいます。職場の状況を把握し、シミュレーションを行いながら検討することが大切です。
また、現場の社員が既に「どうすれば効率化できるのか」気づいているパターンもあります。チームメンバーだけで決めるのではなく、現場にもヒアリングを行いながら進めましょう。
改善策が決定したら、いよいよ実行です。行動計画を作成し、現場を含む組織全体に情報を共有してから取り掛かります。
取り組み期間中は、きちんと施策が実行されているかチェックする必要があります。実行されていないと、上手くいかなかった場合に原因を突き止めるのが難しくなるからです。
業務効率化を取り仕切るチームが中心となり、チェック・指示・サポートを行いましょう。
取り組み期間終了後、効果をチェックします。目標にどれほど近づけたか確認し、さらなる取り組みが必要か判断します。
目標に満たなかった場合は、原因を探る必要があります。改善策が不適切だったのか、ほかにも原因があったのかなどを探り、再度「改善案の考案」「実行」「チェック」のサイクルを回します。施策を実施するだけの”投げっぱなし”にしないことが大切です。
業務効率化を図るのは、一筋縄ではいきません。とはいえ、時間も労力も割くからには成功させたいものです。
では、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。効率化を実現するための5つのポイントについて解説していきます。
業務効率化を成功させるには、原因と改善点の見極めが重要です。これらを見誤ると、改善策が的外れなものとなり、思うような成果が現れないからです。改善策の考案から施策の実行までにかかる労力・時間が、すべて無駄になってしまいます。
よって、調査と分析は時間をかけて行うべきと考えられます。表面的なものではなく、根本の原因を探ることが、着実な効率化の実現に繋がります。
効率化を図る際の目標は、適切なレベルで設定することが大切です。目標が高すぎると達成するのが困難になり、従業員のモチベーションが下がってしまうからです。
適切な目標を設定するためにも、やはり現状の把握が重要です。最終的なビジョンと現状を比較し、そこから「いつまでに」「どのような姿になりたいのか」を描くことで、いま目指すべきゴールが見えてきます。
業務の取り組み方、成果、ルールは職場ごとに異なります。そのため、効率化を図る際は職場単位で行うことがポイントです。
例えば製造部門は、作業時間や作業工程が明確に決められています。一方、管理部門などのオフィスワークは、業務プロセスが定まっていないことが多く、成果も曖昧です。企画の考案や外部企業とのやり取りなど、マニュアル化できない仕事も多いです。
製造部門における効率化の取り組みを、管理部門に反映させることはできません。このように、組織ごとに効率化の方向性が異なるため、分けて取り組む必要があるのです。
業務効率化にはさまざまな施策が挙げられますが、いずれもシンプルにすることが大切です。改善策が複雑だと、従業員が何をすれば良いかわからず、混乱してしまうからです。面倒だと感じ、取り組みに消極的になる可能性もあります。
また、目標を達成できなかったとき、何が原因だったのか見極めるのも難しくなります。次の改善の取り組みに繋げるためにも、施策内容はできるだけシンプルにしましょう。
業務効率化を着実に実現するためには、従業員の協力が必要不可欠。そのため、取り組む前に従業員に説明する必要があります。
目的や施策内容のほか、メリットも伝えることで、モチベーションを高めることができます。また、従業員に疎外感や”やらされている感”を感じさせないよう、できれば「調査・分析」の段階で現場の従業員にも参加してもらいましょう。
従業員を巻き込んで取り組むことが、業務効率化を成功させるポイントです。
業務効率化は、一度の取り組みですぐに実現できるものではありません。また、最適化されているように見える業務でも、改めて調査すると課題点が見えてくることがあります。
そのため、継続的に分析と実行、確認を繰り返すことが重要です。現場の従業員と協力しながら、随時業務を見直す仕組みを構築しましょう。