人的なミスであるヒューマンエラーは、業務の妨げになる小さなミスだけでなく、企業の信頼にも影響する重大な事故まで引き起こす可能性があります。ヒューマンエラーを防ぐにはヒューマンエラーの原因を把握し、防止策を講じることが重要です。
この記事ではヒューマンエラーが起きる原因とともに、防止策を考える方法、具体的な防止策について解説します。ヒューマンエラーの頻発に悩んでいるときや、ヒューマンエラーの原因への対策を考えているときには、ぜひ参考にしてください。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、ヒューマンエラーを「意図しない結果を生じる人間の行為」と定義しています。意図しない結果とは、事故や損害などヒューマンエラーが引き起こした不具合のことです。
ヒューマンエラーが起きる原因は、ヒューマンエラーの種類によって異なります。ヒューマンエラーの防止策を考えるには、起きたヒューマンエラーの種類を把握した上で原因を調べ、適切な防止策を講じることが重要です。
総務省の「生産性&効率アップ必勝マニュアル」では、ヒューマンエラーを「ついつい・うっかり型」と「あえて型」に分類しています。それぞれのヒューマンエラーの内容について解説します。
ついつい型とは、当事者の意図しない行動によって引き起こされたヒューマンエラーです。具体的なついつい・うっかり型のヒューマンエラーには以下のものがあります。
あえて型とは、当事者がある程度の意図を持って行動した結果引き起こされたヒューマンエラーを指します。具体的なあえて型のヒューマンエラーの例は以下の通りです。
ヒューマンエラーの分類については、以下の記事でくわしく解説しています。
■参考記事
ヒューマンエラーの分類と分類別の防止対策の方法をわかりやすくご紹介!
人的なミスであるヒューマンエラーは、完全に防ぐことはできません。ただし、起きる原因に対して適切な処置や対応をしたり、対応策を考えたりすることである程度は防止できます。
総務省の「生産性&効率アップ必勝マニュアル」では、ヒューマンエラーは「認知する」「判断する」「行動する」「記憶する」機能が適切に働かないことで起きると定義しています。
(生産性&効率アップ必勝マニュアル を参考に弊社で作成)
タイプ別に、ヒューマンエラーの起きる原因をそれぞれ解説します。
認知エラーとは、かんたんに言えば勘違いによるヒューマンエラーです。認知エラーが起きる背景には、以下の原因があります。
専門用語が多い、操作が複雑など覚えにくい情報を取り扱うと、実際の業務と認知に差が生じることも多いです。また、一度覚えた情報でも繰り返し活用しないと記憶は薄れていきます。確認や反復を怠ることで記憶が薄れたり、変化したりするのも勘違いを引き起こします。
「○○さんはいつも午後に来社する」「××商事の〆は毎月15日」など、先入観や固定観念、思い込みがあり、その通りに対応したところミスとなった場合も、認知エラーに該当します。
判断エラーとは、正しく情報が伝わらなかったことで起きるヒューマンエラーです。判断エラーが起きる背景には、以下の原因があります。
情報自体が間違っている、または漏れていることで起きるヒューマンエラーは、判断エラーに該当します。
情報が間違っていたり、漏れていたりする原因は前述の認知エラーなどの他の要因であることもあれば、情報が受信しにくいことも上げられます。具体的には文字が小さい、声が小さい、手元が暗いなどです。正しい情報が受信できず、結果判断エラーにつながります。
伝達忘れ、申し送りが不十分など、連絡・連携不足によるヒューマンエラーも判断エラーに該当します。連絡・連携不足によるヒューマンエラーは、コミュニケーションエラーとも呼ばれています。
行動エラーは、当事者の行動そのものが原因で起きるヒューマンエラーです。行動エラーの原因には、以下のものがあります。
カレンダーや予定表などを見落とすことで、大切な会議やイベント、納期などをうっかり忘れることがあります。見落としによるヒューマンエラーは、行動エラーのひとつです。
業務上でやるべき方向性や計画、判断基準などを把握していないと、適切な行動は取れません。状況理解ができていないこと、または周りの意見に従ってしまう同調圧力によって不適切な行動を取った結果、ヒューマンエラーにつながることもあります。
スリップとは、意図した動作と実際の動作が食い違う現象を指します。アクセルとブレーキの踏み間違いなどの操作ミスや、「ご注文をお伺いします」と言うところ「こちらのお席へご案内します」と言ってしまった、などの習慣化によるスリップなどがあります。
記憶エラーとは、記憶している普段の動作や知識との間に差が生じることで起きるヒューマンエラーです。記憶エラーが起きる背景には、以下の原因があります。
知識やスキル、技量が不足していることで操作方法や手順を間違えたり、ミスに気付かず業務を進め、結果重大なミスとなってしまったりするのは記憶エラーに該当します。入社や部署異動から日が浅く、業務に対する経験が浅い場合に発生しやすいです。
人間の自然な動作や感覚と操作性に乖離があると、操作性が悪くなり結果ミスにつながります。物理的に扱いづらい、利き手と逆、感覚が不自然などで機器や配置に問題があると、記憶エラーが生じやすくなるでしょう。
上記で解説した全エラーを引き起こす背景にある、共通した原因もあります。
疲労やストレスがたまったり、多くの作業が集中したりすると注意力や集中力が低下しヒューマンエラーが起こりやすくなります。「作業中に受けた不在の電話を取り次ぐのを忘れた」「作業に集中していて打ち合わせを忘れた」などのヒューマンエラーが起きてしまうでしょう。
また、注意力や集中力が低下するだけでなく、注意を阻害する存在があるのもヒューマンエラーにつながります。「騒音が気になる」「隣の同僚がずっと話しかけてくる」などで注意力や集中力が保てず、ヒューマンエラーを起こしてしまうこともあります。
当事者の意図した行動によるヒューマンエラーを指すあえて型が起きる原因には、以下のものがあります。
業務を遂行する上では、数々の決まりごとがあります。業務上でのルールや決まりごとを無視して起きたヒューマンエラーは、あえて型に該当します。決まりごとの内容や守る必要性、意識が不足している、または決まりごとは理解していても納得していないことで、決まりごとを守らずヒューマンエラーが発生してしまいます。
長年の業務経験による慢心や自己顕示欲も、あえて型のヒューマンエラーの原因です。間違いはないと確信して確認をしない、手抜きをする、過剰な行動をするなど、ベテランによる慢心や自己顕示欲が、重大なヒューマンエラーとなることもあるのです。
中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科教授、中條武志氏著の「医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-」によれば、ヒューマンエラーは「人間として避けられない意識の変動と人間を誤りに導くまずい作業方法とが重なってエラーが発生する」「注意力や教育訓練、人による検査や確認で防げるのは誤解である」と定義しています。
(医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-を参考に弊社で作成)
独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループ主任研究員中村 隆宏氏は、産業セミナー「ヒューマン・エラーを心理学から考える」で以下のように述べています。
「見落としをするな」「エラーをするな」といった対策、例えばこれを「エラー禁止型対策」とするならば、その妥当性・有効性について考えてみたい。結論から述べれば、こうした「エラー禁止型対策」では再発防止を達成することは出来ない。なぜならば、人間の仕様(スペック)にはもともと「エラーゼロ」はなく、どれほど強く禁止されてもエラー発生を個人の努力でコントロールすることは出来ないからである。逆説的に表現すれば、エラーが発生するということは人間であることの証でもある、といえよう。
(引用元:ヒューマン・エラーを心理学から考える)
ヒューマンエラーは人の努力や行動で防止できる、という固定観念を異なる考え方に変えるのが、ヒューマンエラー防止策を考える上で有効です。ヒューマンエラー防止策に有効な以下の考え方を、具体例とともに解説します。
それぞれについて解説します。
人間の特性からヒューマンエラーを完全に防止することはできません。よって、エラーそのものを完全に防ぐのではなく、重大な事故や損失とならないエラーはある程度許容する、という考え方が有効となる場合があります。
「ヒューマン・エラーを心理学から考える」では、ヒューマンエラー防止策は以下のふたつに分けられるとしています。
ヒューマンエラーそのものを防止するために、すべての原因を排除しようとすると対策が破綻する可能性があります。原因のすべてを断ち切るのではなく、事故や災害につながる一部のエラーを断ち切るだけでも事故や損失の発生は防止できます。例えば「カーブを曲がり切れないと崖に転落する可能性がある」なら、「カーブを曲がり切れない」ことは許容し、「崖に転落する」ことを防ぐ対策をすることになります。
エラープルーフとは、エラーの原因そのものの発生を不可能にする仕組みや取り組みのことです。フールプルーフとも呼ばれています。「医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-」では、人間を作業に合わせて改善するのではなく、人間に合わせて作業を改善する、という考えに基づき、エラープルーフの有効性を述べています。
(医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-を参考に弊社で作成)
身近なエラープルーフの具体例には、以下のものがあります。
「医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-」では、医療現場における以下のエラープルーフの事例を紹介しています。
(医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-を参考に弊社で作成)
エラープルーフ化は以下3つのフェーズに沿って実行します。実行の際には、発生しやすい問題点を考慮しながら進めるのが重要です。
フェーズ |
発生する問題点や課題 |
解決策 |
1.改善の機会を見つける |
・工程が標準化されていない ・分業化により全体を把握している人がいない |
・工程の標準化を進める ・リーダーなど最小単位からの管理者の参加 |
2.対策案を生成する | ・ひとつの案に固執し、他の案が出る妨げとなる | ・複数案の採用
・提案機会の継続 |
3.対策案を評価・選定する |
・エラーの数が多いと対応しきれない ・案の絞り込みが難しい |
・対応するエラーの優先順位をつける |
工場などの製造ラインに設置し、作業ミスを物理的に防止する仕組みや装置である「ポカヨケ」は、ヒューマンエラー防止にエラープルーフを活用した事例のひとつです。
業務や環境を整理することで、業務内容や入ってくる情報が分かりやすくなります。逆に業務や環境が煩雑、分かりにくい場合、正しい業務内容や情報を判断しづらくなり、認知エラーや判断エラー、行動エラーを引き起こしてしまうでしょう。
自治医科大学医学部 メディカルシミ レ ションセンタ ュ レ ーションセンタ ー センター長 医療安全学教授 河野龍太郎氏の「ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動」では、環境を整然とするには以下5Sにのっとった対策が有効としています。
(引用元:ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動 27ページより抜粋)
5Sの範囲は、作業場などの物理的なものから、マニュアルや手順書などのデータ的なものまで含みます。
あらかじめミスが起きやすい状況を知らせておくことで、ミスの発生を防ぐ取り組みや工夫は多数あります。例えば「カーブあり」「幅員減少」「動物注意」などの交通標識は、危険が発生する可能性をドライバーに気付かせることで事故を防止する目的で設置されています。
ただし標識や看板などを設置するだけでは、当然ですが完全に事故を防ぐことはできません。人間は視界に入る情報すべてを取り入れるのではなく、自分から意識的に見ようとしているものの情報を取り入れる特性を持っているためです。
「ヒューマン・エラーを心理学から考える」では、人間は「見えるもの」ではなく「見ようとしているもの」を見る、何を見ようとするかによって気づきの程度が異なると述べています。ヒューマンエラーを防止するための施策は、人間の特性を考慮し本人が「リスクを認知する、気付く」運用をしなければ意味を成しません。
「ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動」では、目だけでなく指さしや声による確認を併用する、確認していることが第三者からも分かる取り組みをすることが、作業者のリスクの認知や気付きにつながるとしています。
(参照元:ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動 18ページより抜粋)
従業員がリスク防止への関心や危機意識を持つことで、リスクへのリテラシーを向上させ、ヒューマンエラー防止につなげる考え方です。国土交通省「第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開」では、「あえて型」のヒューマンエラーの発生要因として、以下の職場や企業全体でのリスクリテラシーの低さを挙げています。
一般社団法人中小建設業特別教育協会の職長・安全衛生責任者教育教育課程第7章「部下の労働災害防止についての関心の保持」では、作業者が仕事や安全に関することに対し問題意識を持って自主的に考えるように習慣づける、関心を持たせることが労働災害防止に重要であると述べています。
従業員のリスク防止への関心や危機意識の向上の第一歩として、関心を持つ動機付けが有効です。動機付けには以下の方法があります。
(参照元:部下の労働災害防止についての関心の保持 7-2 災害防止への関心の保持と心がまえより抜粋)
例えば視覚的なツールや話によって身近な問題として捉えさせる、証書や賞を設けることで防止へのモチベーションを上げるなどの方法があります。
ヒューマンエラーの原因や防止に有効な考え方をふまえたら、次に具体的なヒューマンエラー防止策を考えていきます。「生産性&効率アップ必勝マニュアル」、「医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-」、「ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動」を参考に、以下のヒューマンエラー防止策を考える手順を解説します。
4つの手順ごとに詳細を解説します。
ヒューマンエラー防止策をほどこしたい業務において、過去実際に起きたヒューマンエラーやヒヤリハットをリストアップします。ヒヤリハットとは、重大な事故につながる一歩前に気付き「ヒヤリとした」「ハッとした」事例を指します。
以下の項目に従ってリストアップをしていきましょう。
(ヒューマンエラー防止対策ブック より抜粋)
たとえば「お客様から注文を受ける」工程で起きたヒューマンエラーとヒヤリハットをリストアップ、分別すると以下の通りになります。
リストアップしたヒューマンエラーやヒヤリハットの中には、すでに防止策が取られているものもあります。現時点では決められたルールやマニュアルを守るなど防止策を講じればヒューマンエラーは防げるものについては、消し込みをしましょう。たとえば、「ハンディターミナルから厨房へオーダーを送信し忘れた」ヒューマンエラーに対して、「オーダー送信せずに一定時間が経過すると音が鳴るハンディターミナルへ変えた」場合は、対策がされていることになります。
消し込みされなかったヒューマンエラーやヒヤリハットが、対策の必要なものになります。
(ヒューマンエラー防止対策ブック より抜粋)
なお、ヒューマンエラーやヒヤリハットのリストアップや消し込み、防止策の検討は実際に業務に携わる従業員と一緒に行うのがおすすめです。現場を巻き込むことで、問題意識を共有できます。
対策すべきヒューマンエラーやヒヤリハットを洗い出したら、対策法を考えるために原因をつきとめます。原因を把握するのに役立つのが、ヒューマンエラーのタイプへあてはめることです。
(ヒューマンエラー防止対策ブック より抜粋)
ヒューマンエラーのタイプにあてはめると、具体的にヒューマンエラーやヒヤリハットが発生した原因を把握しやすくなります。
(ヒューマンエラー防止対策ブック より抜粋)
たとえば行動エラーの場合「作業しづらい」「間違えやすい」「扱いにくい」など人間の自然な動作と作業の間に乖離があることが原因となります。「持ちやすくする」「配置を変える」などの具体的な対策案が出ることにつながるでしょう。
(参照元:ヒューマンファクター工学に基づくヒューマンエラー低減対策と活動 13ページより抜粋)
原因を把握したら、防止策の検討に入ります。ヒューマンエラーは、複数の原因が最終的な結果まで連鎖的に起きることで発生します。ヒューマンエラーが発生するフェーズを踏まえて防止策を検討するために、「人的ミスを取り巻く構造」および「失敗モード」を活用しましょう。
人的ミスを取り巻く構造とは、全体、要因、人的ミス、不具合の4つの観点から成り立ちます。さまざまな視点からの防止策の検討につながるでしょう。
(ヒューマンエラー防止対策ブック より抜粋)
たとえば「オーダーをミスした」ヒューマンエラーを上記4つの観点に当てはめると、以下の対応策が出てきます。
「失敗モード」とは、ヒューマンエラーの原因を進捗、選択、認識、動作、その他の5つのモードに当てはめて対策を考える方法です。
失敗モードの種類 |
失敗モードの内容 |
進捗の失敗 |
抜け:どの部分を抜かしやすいか。 余分に繰り返す:どの部分を余分に繰り返しやすいか 間違った順序:どんな間違った順序で行う可能性があるか 早い/遅い実施:どんなことを早く/遅く行いやすいか |
選択の失敗 |
間違った識別/選択: 何を選び間違い/識別し間違いやすいか 間違った計数/計算: 何を数え間違い/計算し間違いやすいか |
認識の失敗 |
見逃し:どんな情報、リスク、失敗・エラーを見逃しやすいか 読み間違い/誤解:どんな読み間違い/誤解をしやすいか 決定誤り:どんな決定を間違えやすいか コミュニケーション誤り:どんなコミュニケーションの誤りを起こしやすいか |
動作の失敗 |
間違った記入/入力:どんな記入/入力の誤りを起こしやすいか 経路/向き/位置/設定誤り:どんな経路/向き/位置/設定の誤りを起こしやすいか 意図しない接触/突き刺し/飛散:意図せずに、何を触れたり、突き刺したり、飛散させたりする可能性があるか 危険な人の動き:どんな人の動きが害をもたらす可能性があるか |
その他の失敗 |
利用できない:誰を/何を利用できないことがあるか ハードウェア故障/間違った情報:どんなハードウェア故障/間違った情報の提供が起こりやすいか 予期しない事態:どんな予期しない事態が起こる可能性があるか |
(参照元:医療におけるエラープルーフ化-エラー防止のための3段階アプローチ-20~24ページ目より抜粋)
たとえば飲食店におけるオーダーにまつわるヒューマンエラーを5つの失敗モードに当てはめると、以下の通りになります。
ヒューマンエラーの防止策の考え方や流れをふまえた、ヒューマンエラーの具体的な防止策には以下のものがあります。
それぞれの防止策について解説します。
マニュアルを作成すると、以下のメリットが得られます。
マニュアルを作成することで、作業内容や業務フローを一目で把握できます。作業そのものを間違えにくくなるため、ヒューマンエラーも起きにくくなります。また、作業指示や引継ぎもマニュアルを活用することで、担当した人によって情報量や内容にばらつきが出ることもありません。ヒューマンエラー防止だけでなく、成果や品質の均一化や向上にもつながるでしょう。
マニュアル作成に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
■参考記事
マニュアルとは?活用されるマニュアルの特徴と作り方をわかりやすく解説!
エラーの認知や気付きを高めたり、被害を最小限におさえたりするために体制の見直しや新しい体制の構築も、ヒューマンエラー防止に有効です。以下のような体制の見直しや構築を検討してみましょう
適切な人員配置をすることで、業務過多によるヒューマンエラーが防げます。担当者が適切な業務量へ分配できたり、人員が不足しているときには採用ができたりなどコントロールできる体制作りも有効です。
ヒューマンエラーを防止するための、確認体制の構築や強化も重要です。相互チェックやダブルチェックを行う体制作りを行いましょう。
個人情報の漏洩や労働災害など、ヒューマンエラーは大きな事故につながることもあります。ルール作りやフールプルーフの導入などで、大きな事故を防止する体制を整えましょう。
最後に、ヒューマンエラーやヒヤリハットが発生してしまったら共有する体制を作るのが重要です。ミスを減らす、体制を改善するなど失敗から学ぶこともヒューマンエラー防止に求められます。
ツールを導入することで、従業員同士のタスクの共有化や業務効率化につながります。タスクの見落としや忘れも防げるため、ぜひ導入してみましょう。
ヒューマンエラー防止に有効なツールには以下のものがあります。
代用的なタスク管理・ToDoリストツールには以下のものがあります。
タスク管理・ToDoリストツールではありませんが、チャットツールであるChatWorkや、Googleドキュメントにもタスクを割り当てする機能があります。
タスク管理・ToDOリストツールを導入することで、やり忘れや見落としを防止できます。タスクを誰かに依頼するときも、各従業員のタスクを共有できるため、作業量や多忙かの把握にもつながるでしょう。
ワークフローツール、プロジェクト管理ツールは業務における一連の流れ(ワークフロー)のさまざまなサポートをするツールです。notionやBacklogはワークフローツールとしても活用されています。
ワークフローツールは、業務の進捗や状況の確認や管理をすることで、ヒューマンエラーを未然に防ぐことができます。また、「作成、提出、承認、実行」の流れで進む紙の書類のやりとりについても、ツールを導入することでヒューマンエラーを防げます。たとえば交通費や経費精算を紙の書類からツールに変えることで、「提出を忘れる」「記述内容を間違える」「提出された書類を紛失する」などのヒューマンエラーを防止できます。
グループウェアとは、社内の情報をクラウド上で共有することで業務効率化をはかるツールです。代表的なグループウェアにはkintoneがあります。業務効率化によってヒューマンエラーを防ぐだけでなく、起きてしまったミスやヒヤリハットを共有することもできます。
情報共有目的でeラーニングサービスを活用するのも効果的です。eラーニングサービスは、人材育成や研修の分野を効率化してくれるツールで、eラーニングサービス内にマニュアルを格納し、きちんとした研修設計を行って研修を行うことで、正しい業務オペレーションが身につくため、ヒューマンエラーが発生しづらくなります。例えば、shouin+であれば、eラーニングの機能はもちろん、日々の業務状況や研修状況を本部やトレーナーに報告する「日報」や、本部からの情報を直接一人ひとりの従業員に届けることができる「タイムライン」など、ヒューマンエラー防止を助ける機能があります。
ヒューマンエラーをなくすには、ヒューマンエラーの元となる人的作業を減らすことも有効です。ロボットやクラウド化AIを導入することで、作業の自動化による業務効率化や人的コスト削減も実現できます。
ロボットやクラウド化AIを活用する例には、以下のものがあります。
NTN株式会社(磐田製作所)では自動車用CVJ(等速ジョイント)組立ラインにロボットを取り入れたことで、組み立てラインの全自動化を実現しています。ロボットには部品チェック機能があるため組立間違いを防止し、品質の向上につなげています。60%の省人化も実現し、人的コストの削減や労働力不足も充足しました。
(参照元:経済産業省「平成22年度中小企業支援調査委託費」ロボット技術導入事例集22ページより抜粋)
リスクリテラシーを向上させるために、教育訓練を充実させる選択肢もあります。危険予知トレーニングの実施や、作業内容を取得者限定にするライセンス制度の導⼊、ヒューマンエラー防止のための研修の実施などが有効です。
実際にヒューマンエラー防止の研修やセミナーを受けた結果について紹介します。
日立Astemo株式会社山形秋田地区事務局で行った「第288回 ヒューマンエラー対策講座」では、参加者の91%が有意義だったと回答しています。
(参照元:第288回ヒューマンエラー対策講座アンケート結果より抜粋)
独立行政法人 中小企業基盤整備機構中小企業大学校 瀬戸校で開催された「ヒューマンエラー対策講座」では、以下のような意見が出ています。
ヒューマンエラー防止の教育や研修、セミナーを受けることでヒューマンエラーへの危機管理や当事者意識が芽生え、リスクへのリテラシー向上にもつながるでしょう。
ヒューマンエラーの概要とタイプ別の原因、防止策の考え方や手順、具体的な防止策について解説しました。人的ミスであるヒューマンエラーは、まったく失くすことは不可能でもある程度減らすことは可能です。
ヒューマンエラーを防ぐには、多くの防止策があります。まずヒューマンエラーの原因を把握したうえで、適切な防止策を考え、導入するのが重要です。防止策はただヒューマンエラーを防ぐだけでなく、業務の効率化や品質や成果の均一化など、業務上で多くのメリットが得られるものもあります。自社に合ったものを上手に活用しましょう。