心理的安全性を高める4つの因子と阻害要因とは?安心できる職場の作り方を解説
心理的安全性は、組織の生産性と創造性を高める重要な要素として注目を集めています。
しかし、「心理的安全性って具体的にどういうこと?」「どうすれば実現できるの?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、心理的安全性の4つの因子について具体的に解説し、実践のためのヒントをご紹介します。最後には心理的安全性に対する取り組みとしてお手本となる事例までご紹介しますので、職場環境の改善に悩む方、チームのパフォーマンスを上げたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
心理的安全性とは?
皆さんは「心理的安全性」という言葉を耳にしたことがありますか?まずは、「心理的安全性って何?」というところから、その基本的な定義と重要性について見ていきましょう。
心理的安全性の定義
心理的安全性とは、「チーム内で自分の意見や考えを自由に表現しても、非難されたり罰せられたりしない」という安心感が確保された状態を指します。つまり、メンバーが互いを信頼し、安心して意見を言い合える環境のことです。
そして、この「心理的安全性」という概念を提唱したのは、組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソン氏です。同氏が1999年に発表した論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」の中では、心理的安全性について以下のように定義しています。
team psychological safety – a shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking
訳:チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクを取っても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと
引用元:石井遼介(2020)心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える|日本能率協会マネジメントセンター
たとえば、新入社員が斬新なアイデアを提案した際に、「そんな非現実的な案は却下だ」と一蹴するのではなく、「面白い視点ですね。もう少しくわしく聞かせてください」と前向きに受け止められる雰囲気があれば、そこには心理的安全性が存在すると言えるでしょう。
心理的安全性の重要性
なぜ、心理的安全性が重要視されているのでしょうか?それは、心理的安全性が組織の成功に大きく関わるからです。具体的に、心理的安全性が高い職場では、以下のような効果が期待できます。
心理的安全性により期待できる効果
- コミュニケーションの活性化:メンバーが遠慮なく意見を言い合える
- 創造性の向上:斬新なアイデアが生まれやすくなる
- 問題の早期発見:問題点を指摘しやすく、トラブルを予防しやすい
- 生産性の向上:メンバーが互いに助け合い、業務が効率よく進みやすい
このように、心理的安全性は組織の健全な成長と発展に欠かせない要素なのです。そのため、職場の心理的安全性を高めることは、変化の激しいビジネス環境において、競争力を維持するための鍵とも言えるでしょう。
なお、心理的安全性による組織へのメリットについては、下記の記事でよりくわしくご紹介しております。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
心理的安全性とは?高い=ぬるま湯ではない!低下に繋がる4つの要素や高い職場の作り方について解説
心理的安全性を構成する4つの因子
心理的安全性は、4つの重要な因子から成り立っています。まずは、各因子について理解を深めていきましょう。
①話しやすさ因子:自由に意見を言い合える雰囲気
話しやすさ因子とは、チームメンバーが自由に意見を言い合える環境を指します。そして、この環境が整えられている組織では以下のような特徴が見られますので、自分の組織において話しやすい環境ができているかどうかを判断する際の参考にしてみるとよいでしょう。
話しやすい環境ができている組織の特徴
- 上司や同僚に気軽に質問や相談ができる
- 会議で自分の意見を遠慮なく発言できる
- 失敗やミスを隠さず報告できる
たとえば、新入社員が「この業務の進め方に疑問があります」と率直に意見を言えたり、ベテラン社員が「新しい業務のやり方がよく分からないので教えてくれませんか」と素直に質問できたりする雰囲気があるのは、話しやすい環境ができていると言えます。
そして、このように誰もが意見を出しやすい環境が整っている職場では、チームの創造性や問題解決能力も自然と高まっていくでしょう。
②助け合い因子:互いにサポートし合える関係性
助け合い因子は、チームメンバー同士が積極的に協力し、支え合える環境を表します。そして、この環境が整えられている組織では以下のような特徴が見られます。
助け合える環境ができている組織の特徴
- 困っている同僚に自発的に声をかける
- 業務量が多い部署に他部署から応援が入る
- 新人の育成に全員で関わる
たとえば、締め切りに追われている同僚のために、自分の仕事を一時中断してでもサポートをしたり、あるいは、ITにくわしくない先輩のために、若手社員が新しいソフトの使い方を丁寧に教えたりなど、こうした光景が日常的に見られる職場は、助け合える環境が整っていると言えます。
そして、このようにメンバー同士が互いにサポートし合える関係性ができている職場では、チーム全体の力が引き出しやすくなり、組織としての成果を最大化することができるでしょう。
③挑戦因子:新しいことに積極的にチャレンジできる風土
挑戦因子は、メンバーが新しいアイデアや方法を試しやすい環境を指します。そして、この環境が整えられている組織では、以下のような特徴が見られます。
挑戦しやすい環境ができている組織の特徴
- 失敗を恐れずに新しいアイデアを提案できる
- 実験的なプロジェクトや取り組みが歓迎される
- チャレンジをして失敗しても、責められない
たとえば、「前例がないから」という理由だけで新しい提案を却下するのではなく、「面白い視点だね。実現可能性を探ってみよう」と前向きに検討する、あるいは、失敗しても「次は成功できるよ」と励まし合える、そんな雰囲気がある職場は、挑戦しやすい環境が整っていると言えます。
そして、このように失敗を恐れずに新たな挑戦がしやすい職場では、イノベーションや学習が促進され、組織全体の競争力が自然と強化されていくことでしょう。
④新奇歓迎因子:個々の違いや多様性を尊重する柔軟性
新奇歓迎因子は、個々の違いや多様性を尊重し、新しいアイデアや変化を積極的に受け入れる組織の柔軟性のことを指します。そして、この環境が整えられている組織では、以下のような特徴が見られます。
個々の違いや多様性を尊重できている組織の特徴
- 異なる視点や意見が歓迎される
- 従来の方法にとらわれない柔軟な発想が評価される
- 新しい取り組みに対する前向きな姿勢をもっている
たとえば、「それは我が社のやり方とは違う」と即座に却下するのではなく、「面白い視点だね。他業界の成功事例も参考にしてみよう」と柔軟に検討する、あるいは、異なる文化背景を持つメンバーの意見を「新鮮な発想だ」と歓迎する、そんな雰囲気がある職場は、新奇性を歓迎する環境が整っていると言えます。
そして、このように多様性を尊重し、新しい発想を積極的に取り入れる柔軟な組織文化がある職場では、創造性が刺激され、市場の変化に迅速に対応できる適応力が培われていくでしょう。
心理的安全性を損ねる4つの阻害要因とは?
実際のところ、心理的安全性を高める取り組みをはじめても、さまざまな阻害要因が立ちはだかることがあります。そのため、具体的な取り組みを始める前にこれらの阻害要因を理解しておくことで、阻害要因に対して適切に対処でき、健全な組織づくりにつながるでしょう。
そこでここからは、心理的安全性を脅かす4つの主な阻害要因について見ていきます。
①無知だと思われる不安
「無知だと思われたくない」という不安は、多くの人が抱える心理的障壁です。この不安が強いと、質問や意見を出す際に「知らないと思われたくない」という気持ちから自分の知識や理解に疑問を持つことをためらい、新たな情報を共有しにくくなります。
たとえば、新入社員が「初歩的なことを聞いて馬鹿にされるのではないか」と恐れて質問を控えてしまうケースがこれに当たります。もちろん、新入社員に限らずベテラン社員であっても同様で、たとえば新しいプロジェクトで分からない点がある時に「こんなことも分からないのかと思われたくない」などという理由で質問を避けてしまうケースが挙げられるでしょう。
このように、無知だと思われる不安が強いと、分からないことがあっても質問できず、結果として学習の機会を逃してしまいます。また、結果としてプロジェクトの進行を妨げることもあるでしょう。
そしてこの不安を解消するために、「質問は学ぶ意欲の表れである」という価値観を組織全体に浸透させることが大切です。まずはリーダーが積極的に「質問は大歓迎」という姿勢を示すことで、この不安を和らげることができるでしょう。
②無能だと思われる不安
「無能だと思われたくない」という不安は、新しいことへの挑戦を躊躇させる要因となります。この不安が強いと、失敗を恐れるあまり、安全な選択をとる傾向が強くなるでしょう。
たとえば、社員が「新しいプロジェクトで失敗したら評価が下がるのでは」と考え、挑戦を避けてしまうケースがこれに当たります。ほかにも、重要な役回りを打診されたときに「上手くできなかったらがっかりされるのでは」と考え、打診を断るケースなども考えられるでしょう。
このように、無能だと思われる不安が強いと、失敗することへの恐怖から挑戦の機会を逃し、結果として組織の成長機会を失うことにつながってしまうのです。
そしてこの不安を解消するために、まずは「失敗は成長の糧である」「失敗は悪いことではない」という考え方を組織文化として定着させることが重要です。
③邪魔をする人だと思われる不安
「邪魔をする人だと思われたくない」という不安は、チーム内でのコミュニケーションを抑制する要因となります。この不安が強いと、質問や意見を控えてしまい、重要な情報共有や議論の機会を逃す可能性が高くなります。
たとえば、会議中に疑問点があっても「質問すると時間を無駄にしてしまうのでは」と考え、発言を控えてしまうケースがこれに当たります。また、上司や同僚が忙しそうにしているときに「迷惑になるのでは」と思い、協力を求められなかったり、重要な報告や相談を後回しにしてしまったりすることもあるでしょう。
このように、邪魔をする人だと思われる不安が強いと、必要なコミュニケーションが阻害され、チームの生産性や問題解決能力の低下を招いてしまうのです。
この不安を解消するためには、リーダーやメンバーが助け合いを促す環境を作ることが重要です。たとえ小さなことでも「いつでもサポートし合える」文化を醸成することで、心理的安全性を高めることができるでしょう。ほかにも、定期的な1on1ミーティングを設けるなど、コミュニケーションの機会を意図的に作るような方法も効果的です。
④ネガティブだと思われる不安
「ネガティブだと思われたくない」という不安は、問題点や懸念事項の指摘を躊躇させる要因となります。この不安が強いと、重要な課題を見過ごしたり、過度に楽観的な判断をしたりする傾向が強くなってしまうでしょう。
たとえば、プロジェクトの進行に問題を感じていても「指摘するとネガティブな人間だと思われるのでは」と考え、黙っていてしまうケースがこれに当たります。また、上司の提案に対して懸念がある場合でも「反対意見を言うと協調性がないと思われるのでは」と考え、同意してしまうこともあるでしょう。
このように、ネガティブだと思われる不安が強いと、重要な問題点が見過ごされ、組織が適切なリスク管理や意思決定を行えなくなる可能性があります。
そしてこの不安を解消するためには、「建設的な批判は組織の成長に不可欠である」という認識を共有し、問題提起を積極的に評価する文化をつくることが重要です。また、「デビルズアドボケイト」のような役割を設けることで、意図的に反対意見を出しやすい環境を作ることも効果的でしょう。
心理的安全性を測定・評価する方法
心理的安全性を測定・評価するための方法としては、心理的安全性の提唱者であるエイミー・C・エドモンドソン氏が開発した手法が広く用いられています。そしてこの手法を、最も一般的な「アンケート調査」で実施するにはどのようにしたらいいのか、簡潔にご紹介いたします。
アンケートの取り方
この手法では、7つの質問項目から職場の心理的安全性を数値化します。そのためアンケートでは、「このメンバーでミスをしたら、きまって咎められる」「このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる」などといった質問に対して、7段階で評価をしてもらいます。(具体的な質問例は下図を参照ください。)
評価のやり方
質問は下記のように「ポジティブ質問(②④⑥⑦)」と「ネガティブ質問(①③⑤)」の2パターンに分けられ、それぞれで数値化の方法が異なります。ポジティブ質問は評点をそのまま数値化し、ネガティブ質問は評点を反転させて数値化します。(くわしくは下図をご覧ください。)
そして結果としては、合計点数が高いほど「心理的安全性が高い」、合計点数が低いほど「心理的安全性が低い」と判断できます。
(「エイミー・C・エドモンドソン/訳:野津智子(2021)『恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』英字出版株式会社」を参考に弊社で作成)
なお、アンケート調査の進め方に対して不安がある方は、ぜひ下記の記事も一緒にご覧ください。アンケート調査のやり方から実施のポイントまでくわしく解説しています。
■参考記事はこちら
従業員アンケートの取り方と活用方法を解説!業務改善に役立つツールも
【因子別】職場の心理的安全性を高めるための具体策
ここからは、心理的安全性を高めるための方法について見ていきましょう。心理的安全性を構成する4つの因子ごとに、職場で実践できる具体的なアプローチ方法をご紹介します。
話しやすさを高めるアプローチ
話しやすさを高めるためのポイントは、「聴く姿勢」と「意見を尊重する姿勢」です。発言に対して否定的な反応をせず、まずは受け入れる姿勢を持つことが、話しやすい環境の形成につながります。
また、自由な発言を促すためには、メンバーが自分の考えを自由に表現しやすい空間づくりがポイントとなります。下記に示すようなアプローチ方法を参考に、チーム内のコミュニケーションが促進されるような施策を行っていくとよいでしょう。
話しやすさを高めるアプローチ例
- 定期的な1on1ミーティングを実施する
- 自由に席を選べるフリーアドレス制を導入する
- 「今週のベスト質問賞」のような表彰制度を設ける
- 社内SNSやチャットツールを活用して気軽な会話を促進する
- オフィス内にリラックスできるコミュニケーションスペースを設ける
助け合いを促進させるアプローチ
助け合いを促進させるためのポイントは、「助けを求めやすい雰囲気づくり」と「サポートを評価する姿勢」です。チーム内で困ったときに気軽に相談できる環境を作り、他者をサポートする行動を積極的に評価することが、助け合いの文化形成につながるでしょう。具体的には、下記のアプローチ方法を参考にしてください。
助け合いを促進させるアプローチ例
- 「今月のサポーター賞」のような表彰制度を設ける
- 助けを求めるスキルを育てるための研修を実施する
- 新入社員向けのメンター制度を導入し、サポート体制を強化する
- 「感謝の日」のような、メンバーが互いの感謝を伝え合う機会を作る
これらのアプローチを通して組織に助け合いの文化が根付くことで、個人の成長だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
挑戦しやすい組織をつくるアプローチ
挑戦しやすい組織をつくるためのポイントは、「失敗を学びの機会と捉える姿勢」と「挑戦に対する適切な評価」です。失敗を責めるのではなく、そこから得られた教訓を重視し、新しいアイデアや方法に挑戦する姿勢を評価することが、挑戦を促す環境づくりにつながるでしょう。
また、リーダー自身が率先して挑戦する姿を見せることも重要なポイントです。下記に示すようなアプローチ方法を参考に、チーム全体の挑戦意欲を高めるようなリーダーシップを身につけていくとよいでしょう。
挑戦しやすい組織をつくるアプローチ例
- 失敗学に関する研修を開催し、失敗から学ぶ姿勢を身につける
- 失敗事例とそこから得た教訓を共有する「学習会」を開催する
- リーダー自身が新しい取り組みにチャレンジし、その過程を共有する
- 「ベストチャレンジ賞」など、挑戦的なプロジェクトに対する特別な評価制度を設ける
- 社内ベンチャー制度を導入し、新規事業の立ち上げに挑戦する機会を提供する
新奇歓迎性を高めるアプローチ
新奇性を歓迎する組織文化を作るポイントは、「多様性の尊重」と「創造性を刺激する環境づくり」です。異なる背景や視点を持つ人材を積極的に受け入れ、かつ斬新なアイデアが生まれやすい環境を整えることが、新奇性を重視する文化の形成につながります。
また、既存の枠組みにとらわれない思考を奨励し、それを評価するシステムを構築することもポイントとなります。下記に示すようなアプローチ方法を参考に、組織全体で新しいアイデアや方法を歓迎する文化を醸成していくとよいでしょう。
新奇歓迎性を高めるアプローチ例
- 異業種交流会を開催し、新しい知見や発想を取り入れる機会を作る
- 新しい物事に挑戦している人(ゲスト)を招きトークセミナーを開催する
- 「アイデアコンテスト」のようなイベントを定期的に開催し、創造性を高める
- 「リバースメンタリング プログラム※」を導入し、世代間の相互理解を促進する
※リバースメンタリングとは、若手社員がメンターとなり、先輩社員や上司をメンティーとして指導や助言を行う教育支援制度のこと
職場の心理的安全性を強化するためのトレーニング法
心理的安全性を高めるためには、具体的な施策だけでなく、組織全体でスキルを磨くことも重要です。そこでここからは、心理的安全性を強化するための効果的なトレーニング方法をいくつかご紹介します。
チームビルディング演習
チームビルディング演習は、メンバー間の信頼関係を深め、協力体制を強化するのに効果的です。
たとえば「トラストフォール」というアクティビティでは、一人が後ろに倒れ、他のメンバーがその人を受け止めます。これにより、「メンバーを信頼して身を任せる」という体験ができます。
ほかにも、日本ではよく知られている「伝言ゲーム」や「ジェスチャーゲーム」なども、メンバーが互いに理解を深めるためのよい演習となるでしょう。
チームビルディング演習の例
- トラストフォール(後ろに倒れるメンバーを、他のメンバーが受け止める)
- 伝言ゲーム(人から人へ言葉を順に伝え、最後の人まで正確に伝わるかを確認する)
- ジェスチャーゲーム(お題を言葉を使わずにジェスチャーで表現し、メンバーに当ててもらう)
- ペーパータワー(複数チームに分かれ、紙のみで作るタワーの高さを競う)
コミュニケーションワークショップ
コミュニケーションワークショップによって対人・対話スキルを身につけることも、チームの心理的安全性の向上にとても効果的です。
たとえば「アクティブリスニング」というワークでは、ペアを組んで一方が話し手、もう一方が聞き手となることで、傾聴スキルを磨くことができます。ほかにも、「アイメッセージ」や「フィードバックの技法」なども、メンバーが互いに建設的なコミュニケーションを学ぶためのよいワークとなるでしょう。
コミュニケーションワークショップで学びたいスキルの例
- アクティブリスニング(積極的に相手の言葉に耳を傾けるスキル)
- ミラーリング(相手の仕草や表情などを鏡のように相手に返す心理テクニック)
- アイメッセージ(私を主語にすることで相手に配慮しつつ自分の主張をするスキル)
- アサーション(自分と相手の両方を尊重しながら自己表現をするスキル)
リーダーシップ開発プログラム
リーダーシップ開発プログラムは、リーダーの行動変容を促し、心理的安全性の高いチーム作りを図る取り組みです。
たとえば、「シチュエーショナル・リーダーシップ」を身につけると、状況に応じたリーダーシップスタイルの選択ができるようになります。これにより、「メンバーの成長段階に合わせた適切な関わり方」を実践できるようになり、職場の心理的安全性の向上にもつながるでしょう。
ほかにも、下記に挙げる「コーチング・スキル」や「ファシリテーション・スキル」などといったスキルも、リーダーがチームの心理的安全性を高めるために役立つスキルです。
リーダーシップ開発プログラムの例
- シチュエーショナル・リーダーシップ(状況に応じたリーダーシップスタイルを学ぶ)
- コーチング・スキル(メンバーの潜在能力を引き出す対話技術を習得する)
- ファシリテーション・スキル(チームの対話が円滑に進むよう支援する技術を学ぶ)
- エモーショナル・インテリジェンス(自己と他者の感情を理解し、適切に対応する能力を養う)
なお、リーダーシップ研修の具体的なやり方や教えるべき内容については、下記の記事でくわしく紹介しております。ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
リーダーシップを身につける研修とは?おすすめの研修内容や具体的な設計方法までわかりやすく解説!
心理的安全性の作り方の参考となる企業事例
心理的安全性の向上に成功している企業の事例を学ぶことは、自社の取り組みを考える上で非常に参考になります。ここでは、日本企業の中で心理的安全性の向上に成功した3社の事例をご紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、「メルチップ」というピアボーナス制度を導入しています。これは社員同士が感謝や賞賛の気持ちを伝え合い、同時にインセンティブとして少額の金銭を贈り合えるシステムです。
また、メルチップはSlackなどを通じてリアルタイムに送り合うことができるため社員は気軽に取り組みやすく、拠点や部署を超えたコミュニケーションを促しているようです。
そしてこの制度により、社員間の相互理解と信頼関係が深まり、自由に意見を言い合える環境が醸成されているといいます。導入後の社内アンケートでは87%の高い満足度を示すデータも公開されており、心理的安全性の向上に大きく貢献していることがうかがえます。
■参考:贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。 | mercan )
カルビー株式会社
スナック菓子メーカーのカルビー株式会社は「全員が活躍できる組織」を目指し、多様な人材の活躍を通じて新奇性を歓迎する文化を築いています。具体的には、女性管理職比率の向上、外国人の積極的採用など、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する取り組みを積極的に行っています。
ほかにも、グローバルマインドを持つ人財の育成を積極的に行うなど、社員が安心してチャレンジできる環境づくりにも注力しています。
こうした取り組みにより、カルビーでは社内での新奇歓迎の文化やチャレンジしやすい文化が築かれ、心理的安全性を高めているのです。
■参考:人財育成の考え方|カルビー
三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社は、「1on1ミーティング」を全社的に導入することで、社内における心理的安全性の向上に取り組んでいます。
同社で2019年から導入されている「1on1ミーティング」は、上司と部下の対話を促進し、相互理解を深める重要な施策です。
とくに、同社独自の「コミュニケーションカード」は、社員間の価値観を共有し合えるツールであり、60枚のカードに記された価値観をもとに、ゲーム感覚で互いの考えを共有することで、チーム内の心理的安全性を高められるといいます。
■参考:グーグルも実践、生産性向上のカギ「心理的安全性の確保」とは?|ニュースイッチ
まとめ
心理的安全性を構成する4つの因子(①話しやすさ因子②助け合い因子③挑戦因子④新奇歓迎因子)は、それぞれが重要な役割を持ち、これらの因子をバランスよく高めることで組織の心理的安全性を高めることができます。
また、今回ご紹介したメルカリ、カルビー、三井住友海上火災保険の事例からも分かるように、心理的安全性の向上は、企業の競争力強化にもつながる重要な取り組みです。
一朝一夕に実現できるものではありませんが、少しずつ継続的に取り組んでいけば、徐々に職場の雰囲気は変化していくことでしょう。まずは小さな取り組みから始めていき、徐々に組織全体に浸透させていくことで、きっと大きな変革を実現できるはずです。
ぜひ、この記事で紹介した取り組みを参考に、最初の一歩を踏み出してみてください。貴社の組織改善が成功することを心より願っております。