企業の成長とは切っても切れない関係である、顧客満足度。
顧客満足度を計測するためにはアンケートといった手段がありますが、実際には
と具体的な部分まで見えないことが多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、顧客満足度をアンケートで計測する方法について詳しく解説していきます。アンケートの実施方法から作成の流れ・ポイント、設問の作り方まで含んでいるため、この記事を読むことで具体的なアンケートの作成方法がわかるかと思います。ぜひ参考にしてください。
まず、顧客満足度について簡単に解説しておきます。顧客満足度とは、その名の通り「企業が提供する商品・サービス等に対して、お客様(顧客)がどの程度満足しているか」を表すものです。
顧客満足度は「顧客期待(利用前の期待・予想)」と「知覚価値(価格への納得感)」が密接に関わっており、この2つのバランスによって商品への満足・不満足が生まれます。
商品やサービスが多様化する現代で、同じ商品を売り続けることは容易なことではありません。顧客満足度は、常に改善を重ね、進化していく企業を支える1つの指標として活用されているのです。
アンケートの具体的な実施方法に移る前に、「顧客満足度を計測してどうなるの?」といった疑問を整理しておきましょう。顧客満足度を測る主な目的は次の3つです。
<顧客満足度を測る3つの目的>
詳しく解説していきます。
顧客満足度を測る目的の1つ目は「リピーターおよび新規顧客獲得につなげる」ことです。
みなさんも「服を買うならこのお店!ケーキといえばこのお店!」といったように、お気に入りのショップがあることでしょう。また「すごくよい商品だから、他の人にもすすめよう!」といったように、気に入った商品を人にすすめる機会もあることと思います。
このことから、顧客満足度はリピーターおよび新規顧客獲得につながる大切な指標といえます。そのため、アンケートを実施し顧客満足度を改善していくことが大切なのです。
続いて2つ目の目的は「売上アップにつなげる」ことです。
顧客満足度の改善によってリピーターおよび新規顧客が増えると、次にはそれが売上アップにつながることは明らかです。また、「A社の家具が好きだから、家具は全部そこで揃えたい!」「この前買った商品が良かったから、今回は別の商品も買ってみよう」といったように、顧客単価アップにもつながるでしょう。
実際に2006年に実施された研究では、顧客満足度と売上(利用金額)に関係があることが報告されています。「参照元(大阪大学経済学):顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績の関係に関する実証研究」
このように顧客満足度の改善は、顧客数・顧客単価の面から売上アップに貢献してくれるのです。
3つ目の目的は、「企業の認知度・イメージアップにつなげる」ことです。
具体的にどのように企業の認知度・イメージアップにつなげるかというと、例えば、ある顧客がA社(アパレルブランド)の服を購入したとします。すると顧客は「A社のブランドは品質がよい」と認識し、A社に対する印象がよくなることでしょう。
また、その顧客が「A社のブランドはクオリティが高い」とSNS上に投稿したり、友人におすすめしたりすることで、A社の認知およびイメージは広く拡散されることになります。
SNSによる拡散は良くも悪くも企業の認知度・イメージにつながるものですが、そのような現代において顧客満足度はより重要性を増していることと考えられます。顧客の信頼を獲得していく上での第一歩が「顧客満足度を計測し、現状を知ること」といえるでしょう。
顧客満足度は、「NPS(Net Promoter Score)」といわれる単語と一緒に解説される場面が多くあります。そこで一度、顧客満足度とNPSの違いについて簡単に説明をしておきましょう。
まずNPSは、「顧客が企業やブランドに対して、どれくらい愛着や信頼を持っているか」を示す指標となるものです。とくに「顧客が企業に対する愛着や信頼」については「顧客ロイヤリティ(顧客ロイヤルティ)」と呼ばれています。
一方、顧客満足度は「企業が提供する商品・サービス等に対して、お客様(顧客)がどの程度満足しているか」を示すもの。両者の違いとしては次の表を参考にしてください。
<顧客満足度とNPSの違い>
顧客満足度 | NPS | |
定義 |
商品・サービスに対する満足度 | 企業やブランドに対する愛着・信頼度 |
言葉の範囲 |
広い ・満足はあいまいな表現 ・計測方法が統一されていない |
狭い ・計測方法が決まっている |
企業への貢献度 | やや大きい | 非常に大きい |
なお、企業への貢献度という点で考えると、顧客満足度よりNPSの方が指標としてわかりやすい分、大きいのですが、まずは顧客満足度のアンケート調査を行うことをおすすめします。なぜなら、商品・サービス自体に対する満足度(顧客満足度)が高くなければ、そもそも愛着や信頼(顧客ロイヤリティ)にはつながらないからです。
ここからは、顧客満足度アンケートを取る方法について、より具体的に解説していきます。まずは「アンケートを取る方法(手段)」から。
<アンケートを取るための4つの方法>
詳しくみていきましょう。
インターネット上でアンケートを実施する方法としては、Webフォームをはじめ、LINEやSMSといった方法があります。紙で作成するよりも、印刷コストがかからない点や修正がしやすいといった点で非常に扱いやすい方法といえるでしょう。
実際にアンケートを作成する際は、WebフォームならGoogleが提供する「Googleフォーム(無料)」など、LINEなら公式アカウントのリサーチ機能を使用して作成します。SMSはあらかじめ作成したフォームのリンクを送信する形になります。
アンケート実施にインターネットを活用する際の、メリットおよびデメリットは下記のとおりです。
<インターネットでアンケートを実施するメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
・回答してもらいやすい ・配布、回収がしやすい ・印刷コストがかからない ・修正がしやすい ・集計がしやすい |
・インターネットに慣れていない人には回答してもらいにくい ・端末を所持していないと回答できない |
電話によるアンケート調査は、実際に電話で質問をし聞き取りを行う方法です。
Webフォームや紙による調査に比べて具体的な回答を得られやすく、全体として回答の質が高くなりやすい調査方法といえます。また、ターゲットによって質問を変えるなど、融通を利かせられる点も大きなメリットといえるでしょう。
<電話でアンケートを実施するメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
・具体的な回答が得られやすい ・ターゲットによって質問を変えられる ・印刷コストがかからない ・低コスト(電話料金のみ)で実施できる |
・人件費がかかる ・迷惑がられる場合がある ・集計がしにくい |
郵送によるアンケート調査は、ターゲットの自宅にアンケートを郵送し、回答を返送してもらう方法です。国勢調査を想像してもらうとわかりやすいかと思います。
郵送による調査は、ターゲットを選ばない(多くの人が回答できる)点や高齢者層までターゲットに入れられる点から、ターゲットの年齢層が広い場合や大規模に調査を行いたい場合に有効といえるでしょう。
<郵送でアンケートを実施するメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
・ターゲットを選ばない ・高齢者にアプローチできる |
・配布、回収がしにくい ・印刷、郵送コストがかかる ・修正ができない ・集計がしにくい |
対面方式のアンケート調査は、店舗へ来店しているお客様に直接声をかけたり、ターゲットの自宅を訪問したりするアンケート方式です。
対面ではお客様の意見を直接、詳しく聞けるメリットがある一方、感染症対策が必要な点や相手の都合に合わせなければならない点では、実施を慎重に検討する必要があるといえます。
<対面でアンケートを実施するメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
・具体的な回答が得られやすい ・回答してもらいやすい ・ターゲットによって質問を変えられる ・リアルタイムの意見が得られる |
・人件費がかかる ・相手のスケジュールに合わせなければならない ・感染症対策が必要 |
アンケートを実施する上で、回答率は非常に大事なポイントです。アンケートの信頼性を高めるため、コストを最大限活用するためにも、回答率をあげる工夫をしましょう。
そして、アンケートの回答率をあげるためには、最も「設問の作り方」がカギになります。下記3つのポイントを参考にしてください。
<アンケートの回答率をあげる3つのポイント>
詳しくみていきましょう。
日本マーケティングリサーチ協会による調査では、「インターネットのアンケートは1回あたり何分までなら 回答してもよいか」という質問に対し、5分以内または10分以内と回答した人の割合が全体の7~8割を占めたという結果が報告されています。
「参照元(一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会):インターネット調査品質ガイドライン(2020年5月)」
このことから「10分以内に完了するアンケート作り」が望ましいといえるでしょう。具体的には、設問1つあたりの所要時間が30秒であれば、全体で20問が目安となります。
また、日本マーケティングリサーチ協会による同様の調査では「設問数が20問を超えると離脱率が10%を超える」ことも明らかになっているため、アンケート調査の目的に応じて、設問数(所要時間)の調整が重要になると考えられます。
「参照元(一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会):インターネット調査品質ガイドライン(2020年5月)」
なお、当然ですが設問内容・設問数に応じて全体の所要時間が変わります。実際にアンケートを作成する際は、試しに自身で回答してみたり、誰かに回答してもらうことで所要時間を測定しながら調整を行いましょう。
アンケート作成では、具体的な聞き方・わかりやすい聞き方を意識しましょう。
みなさんも、「最近どう?」と聞かれたときに、何をどのように答えようか迷ったことはありませんか?例えば、「仕事忙しい?」「体調はいい?」などと具体的に聞かれる方がきっと答えやすいことでしょう。
アンケートもこれと同じです。抽象的な質問をすれば、回答率が下がったり抽象的な回答が返ってきたりする原因となってしまうのです。できる限り具体的な質問を投げかけ、回答者に優しい設問作りを心がけてください。
<抽象的な質問と具体的な質問の例>
(抽象)自社サービスについてどのように感じましたか? (具体)自社サービスにご満足いただけましたか? |
(抽象)あなたはどのように自社サービスを利用しようと思いましたか? (具体)サービスを知ったきっかけを教えてください。 |
適切な回答方式を用いることも、アンケートの回答率を上げるため、また回答者を困らせないための大切なポイントです。下記では回答方式6つのパターン、設問の具体例をご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
<主な回答方式6つのパターン>
①単一選択式(複数の選択肢の中からひとつだけ選ばせる形式)
設問例 | あなたの性別を教えてください。 |
選択肢 | 男性、女性、その他 |
②複数選択式(複数の選択肢の中から当てはまるものをすべて選ばせる形式)
設問例 | 商品・サービスを知ったきっかけを教えてください(複数選択可)。 |
選択肢 | 公式サイト、Web広告、テレビCM、知人から聞いた、SNS、新聞など |
③プルダウン(ドロップダウン)選択式(選択肢の幅の中からひとつ選ばせる形式)
設問例 | 購入した商品の価格を教えてください。 |
選択肢 | 500円未満、1,000円未満、3,000円未満、5,000円未満、10,000円未満、10,000円以上 |
④順位式(段階の中からひとつ選ばせる形式)
設問例 | 商品・サービスに対する満足度を教えてください。 |
選択肢 | 非常に満足、やや満足、普通、やや満足していない、全く満足していない |
⑤マトリクス選択式(複数項目を一度にまとめて回答してもらう形式)
設問例 | 次の項目に対しての満足度を教えてください。 |
選択肢(行) | 非常に満足、やや満足、普通、やや満足していない、全く満足していない |
選択肢(列) | サービスの品質、サービスの値段、店員の接客、店内の明るさ、店内の清潔さ |
⑥自由記述式(設問に対する回答を自由に記述できる形式)
設問例 | その他、商品・サービスに対してご要望があればお書きください。 |
では、実際にアンケートを作ることが決まったら、どのように進めていけばよいのでしょうか。
上記のように無計画に進めては、必ずどこかで行き詰ってしまいます。次の4つの手順を踏んで計画的に進めていきましょう。
<アンケート実施までの流れ>
ひとつずつ詳しく解説していきます。
まずは、アンケートの目的を明確にし、言語化することが第1ステップです。
「そもそも、なぜアンケート調査を行うのか」「結果をどのように活かしたいのか」を明らかにし、社内で共通意識を持ちましょう。
目的としては例えば、「サービス改善のため、潜在しているクレームを把握したい」「商品開発のため、顧客のさらなるニーズを把握したい」など、企業によってさまざまあると思います。目的次第でアンケートの中身は大きく変わりますので、現状で抱えている問題を意識しながらじっくり考えてみてください。
次に、実施ターゲットを決めていきます。目的に応じて、ターゲットを「顧客全体」とするのか、「女性限定」とするのか、「20~30代に限定」とするのか、「新規顧客」とするのか「リピーター」とするのか。できるだけ細かく砕いて考えてみましょう。
ターゲットを明確にすることで、この後の設問作りやアンケートの実施手段の検討がしやすくなりますよ。考えがまとまらない場合は、ステップ1の目的を見つめ直してみるといいかもしれません。
目的とターゲットが明確になったら、ここでついに設問内容を作り込んでいきます。
ポイントは、回答者に「面倒」と思わせないように、できる限り「シンプルな質問を心がける」こと、また数分以内にすべて回答しきれるように「設問の数をしぼる」ことです。詳しくはこの後の章(アンケート項目の作り方3つのポイント)で解説していきます。
設問が作成できたら、最後にアンケートを実施する手段について考えていきましょう。
手段としては、前章(アンケートを取る方法)で解説したように、主に4つの手段(インターネット、電話、郵送、対面)があります。ステップ2で明確にしたターゲット像に基づき、何を利用すべきか、どの時間帯で行うべきかを見極めましょう。
例えば、ざっくりと「若者層ならWebフォームやメール・LINE」「高齢層なら電話や対面」など、最も回答が得られやすい手段を検討してみてください。
とくに企業向けのアンケートの場合は、突然の電話や訪問は迷惑になる恐れがあるでしょう。Webフォームやメールを利用するなど、なるべく相手が柔軟に対応できる方法で検討することが大切です。
アンケートは協力なしでは行えないものですので、必ず相手ファーストで検討を行うようにしてください。
アンケートの実施方法について詳しく解説してきましたが、
「結局、顧客満足度アンケートはどんな設問を作るべき?」
といった疑問を解消していきましょう。顧客満足度アンケートを作成する際のポイントは主に次の3つです。
次から詳しくみていきます。
顧客満足度アンケートを実施する上で、顧客属性に関する設問は必須です。顧客属性とは、下記に示す顧客のプロフィール情報のようなものです。
<顧客属性の例>
顧客属性がわかれば、例えば「接客態度に不満を感じている人が多い」という結果に対し、「不満と回答したうちの8割が40~50代女性だった」といったように、より具体的な情報が得られるようになります。
顧客属性に応じて、その結果にどのような背景があるのか、どのような改善策を立てればよいかを考えやすくなるのです。
顧客満足度アンケートのなかでは、当然ですが商品やサービス自体に関する質問も非常に大切です。
そもそも顧客満足度は「顧客期待(利用前の期待・予想)」と「知覚価値(価格への納得感)」が密接に関わっているもの。そのため、まずは知覚価値を知ることが顧客満足度改善への第一歩なのです。なお具体的な設問例は下記を参考にしてください。
設問例)
接客業およびサービス業では、接客・接遇の質が顧客満足度に大きく影響します。
実際に日本労働組合総連合会が行った調査によると、サービスや商品に対する苦情・クレームを「言ったことがある」と回答した人のうちの約20%が、その原因として「従業員のマナー、態度が悪い」を挙げてたと報告されているほどです。
「参照元(日本労働組合総連合会):消費者行動に関する実態調査」
そもそものお客さまのサービスに対する根本的な期待値が高いことも理由にありますが、顧客満足度を高く維持するにはやはり接客・接遇の質を高めることが重要となります。
顧客満足度アンケートは、当然ですが顧客の協力なしでは成り立たないものです。また、アンケートに回答する上で「面倒くさい」などと不満を持たれては、元も子もありません。
まずは、アンケートに答えていただく(相手の時間をいただく)という感謝の気持ちと、アンケートに快く回答いただける設問作りを心がけることが大切です。回答者の立場になり、悩むことなくスムーズに回答できるか、設問数が多く途中で諦めたくならないかに注意して作成してください。
企業の成長とは切っても切れない関係である、顧客満足度。今回は、顧客満足度を計測するためのアンケート作成について解説しました。
顧客満足度アンケートを作成する上では、協力していただく顧客を思いやる設問作りが非常に大切です。回答者を悩ませない問い方・答え方、また途中で諦めさせないよう設問数にも配慮して作成しましょう。回答時間は「10分以内」が目安です。
また、やみくもに「とりあえず作ってみよう」ではなく、きちんと計画的に作成していくことも大切です。時間・コストともにかかる調査だからこそ丁寧に作り上げ、企業の未来に繋げていきましょう!