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人事評価制度を構築する方法とは?不満の原因、納得感の高い制度の特徴についてわかりやすく解説!

ノウハウ ナレッジ
2022.12.20
『shouin+ブログ』マーケティング担当

終身雇用の崩壊、働き方改革の推進、テレワークの普及など、私たちの働く環境は大きな変革のときを向かえています。この変化に伴い、人事評価の方法の見直しを検討している経営者や人事担当者、管理職の方もいらっしゃることでしょう。

そこで当記事では、不満が出にくい人事評価制度を構築する方法を、一般的に使われている効果的な方法もまじえながら解説しました。

なお、人事評価については以下の小冊子でも詳しく紹介していますのでぜひ参考にしてください。

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人事評価とは?

多くの企業で掲げられている企業としての目標や目指すべき姿である「経営理念」や「ビジョン」。これらと現実とのギャップを埋め、理想の姿に近づくための方法論が「経営戦略」です。そして、この経営戦略と密接に結び付いているのが人事機能ですね。

そして人事担当者は、戦略の実行に必要な人材をどのように採用・育成し、どのような組織能力を形成していくか考え、それらの実現に必要な人事制度とは何か、常日頃から考えていることでしょう。

その中で一つの柱になるのが「人事評価制度」です。人事評価とは、従業員一人ひとりのパフォーマンス(従業員の能力や会社への貢献度)に対する評価のことで、給与や異動、仕事のアサインなどの処遇に大きく影響します。

これは見方を変えると、従業員に行動や態度、考え方の変容を促すための「仕掛け」として使えるのが、人事評価制度とも言えるでしょう。そういう意味で人事評価は人材マネジメント手法のひとつであり、人事評価をうまく活用することで、人材の育成を促し、企業の業績向上につながります。

人事評価の対象には、「成果」「行動」「技術・技能」「知識」「考え方・価値観」などがあります。

人事評価制度の基本に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

人事評価制度とは?目標設定するための項目や基準の作り方を事例を交えてわかりやすく解説!

 

人事考課との違い

人事評価と似た言葉に人事考課があります。両者は同じような意味で用いられることが多いですが、厳密には人事考課は評価の中でも従業員の成果(業績)を中心に見て、給与や賞与、昇格の決定を目的としています。

また人事評価制度は、内容や基準をオープンにするのが一般的ですが、人事考課は役員や役職クラスでクローズドな形で運用されているケースも多いです。

 

人事評価制度を設定する目的

「人事評価とは?」の項目でも触れましたが、人事評価制度を設定する目的について、もう少し詳しく見ていきましょう。解説するにあたり、書籍「図解でわかる!戦略的人事制度のつくりかた」と「図解 人材マネジメント 入門(坪谷邦生・著)」を参考にしました。

 

目的1.行動指針、目標を定める

企業としての目標や目指すべき姿である「経営理念」や「ビジョン」。これらを実現するために社員が目指すべき方向性・目標がどこなのかを明示する必要があり、その役割を担っているのが人事評価制度です。

ビジョンを実現するための目標を、どの部門・機能に任せるのか、どこまで達成すれば評価に値するのかを経営陣を中心に定めます。そして経営陣は、自身の価値判断を管理者に伝えることが重要です。

人事評価におけるフィードバックを管理者と従業員が積み重ねることで、企業文化が作られていきます。中長期的な目線で見ると、組織にとって最も大切な人事評価制度の目的は、この「行動指針、目標を定め、企業文化の醸成」という部分にあるでしょう。

 

目的2.等級や役職を定める

企業は、働き方や役割、職責などを決めるために、等級や役職を定めています。例えば、契約形態、資格、職位、職種などと呼ばれるものがこれに該当します。この等級や役職を決める根拠になるのが人事評価制度です。

以前は年功序列が当たり前だったので、勤続年数や年齢などが処遇に大きく影響していました。しかし、近年は成果主義を導入する企業が増え、適切な評価が欠かせなくなっています。

「仕事をやってもやらなくても給与や昇進といった処遇が同じ」だと従業員の士気が上がりにくいですね。また全員平等な処遇というのも不可能。そこで必要なのが処遇の根拠となる人事評価というわけです。

公平感のある人事評価とするためには、評価項目や評価基準、評価者、評価結果などの評価の内容が公開されていること、評価プロセスに透明性があることが大事になります。

 

目的3.報酬(給与)を定める

人事評価制度は、等級や役職と同様、報酬(給与)を定めるのにも欠かせません。

従業員は、自分自身の報酬に対して満足・不満足ということも感じますが、他者に対しても「あの人は、あんな仕事しかしていないのに、あんなにもらっている」など不満を感じるケースが多々あります。それだけ関心が高いのが報酬であり、処遇の根拠となる人事評価の果たす役割は大きいでしょう。

 

目的4.従業員の人材育成

具体的な評価基準を設けることで、従業員が優先的に身に付けるべき能力は何なのか、どうすれば活躍できるのか、進むべき方向性はどこなのかが明確になります。その結果、従業員は自主的に行動できるようになり、モチベーションの向上にもつながります。

また成果が昇給や昇進などに適切に結びつけば、従業員は人事評価制度への納得感が増し、より目標達成に向けて努力するでしょう。

もちろん上司や先輩などから行われる丁寧なフィードバックも人材育成のためには欠かせません。

 

人事評価でよくある不満

人事評価は企業にとって欠かせないものですが、それと同時に不満がつきものです。実際、2016年12月にリクルートマネジメントソリューションズが実施した「人事評価制度に対する意識調査」によると、約半数が人事評価に不満を持っているという結果が出ています。

不満足な理由として、「何を頑張ったら評価されるのかがあいまいだから(54.4%)」「評価基準があいまいだから(47.6%)」を選択する率が高く、「努力しても報われないから(31.5%)」なども選択されており、評価において、「自分は何に向けて頑張ったらいいのか」があいまいになってきたとき、不満を感じる傾向がみてとれます。

人事評価の不満

(参照元:人事評価制度に対する意識調査

 

不満足の理由

(参照元:人事評価制度に対する意識調査

同様の調査は他社でも行われており、日経BPコンサルティングが実施した「人事評価制度」に関する意識調査でも、同様の傾向が見られます。

ここでは、人事評価でよくある不満について、より詳しく見ていきましょう。

 

1.評価基準があいまい

リクルートマネジメントソリューションズの調査では約5割、日経BPコンサルティングの調査では約6割が、人事評価制度に不満を感じる理由として評価基準の曖昧さをあげています。

評価基準があいまいだと、従業員は何に注力すべきか分からないだけでなく、出された評価にモヤモヤしてしまいますね。

識学」でも同様の調査を行っており、評価制度が不明確になってしまう理由として「客観的な判断ができず、主観的な感情や意見によって評価を下してしまう」ことや、「評価者自身に実務に対する知見が少ないため、何をもって評価すべきなのかがわからず、感覚的に評価をしてしまう」ことを挙げています。

 

2.評価の手続きに公正さを感じない

人事評価は、人が行うものなので、評価される側が評価する側に不満を抱くケースが往々にあります。特定の部署だけ優遇されていたり、評価者によっては適切なフィードバックが行われていなかったり、部下の様子を見れていない人が評価をしていたり……。

一部の項目に引っ張られ他の項目も高く評価してしまう「ハロー効果」や、嫌われたくないあまり、全ての社員に高評価をつけてしまう「寛大化傾向」などもよく知られています。

つまりより良い人事評価制度とするためには、評価する側の教育・サポートも欠かせないと言えるでしょう。

 

3.努力しても報われない

人事評価制度と等級制度・報酬制度が適切に連携できていないと、「努力をしても報われない」といった不満につながりがちです。例えば、いくらパフォーマンスを出しても、年功序列で報酬が決まっていて、報酬が上がらないといったケースがあります。

こうした状況になると、優秀で成果を出している従業員ほど流出してしまいがちです。

また人事評価制度で高く評価される能力や行動が明確でない場合も、従業員は処遇に納得感が得られず、努力が報われないと感じてしまいます。

従業員がやる気をなくしてしまう人事評価の特徴や、人事評価の低い社員が離職につながってしまうポイントに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

やる気をなくす人事評価の特徴とは?辞める原因、モチベーションを高める方法など、わかりやすく解説!

人事評価が低い社員がやめる本当の理由とは?モチベーション低下を防ぐ対処法も解説!

 

 

人事評価に納得感を持たせるためのポイント

人事評価は、人材マネジメントの中心にあるものであり、その結果が報酬や等級などの処遇に強い影響を与えることから、従業員に納得される形で運用しなければ、従業員の士気を下げる結果になりかねません。

人事評価の対象は「能力」「業績」「情意」の3つ。これらに対して従業員が納得感を持つ人事評価制度とするためのポイントを解説します。

人事評価ポイント

 

前提:評価軸を可視化することが大切

前提として、人事評価は従業員自身が何を評価され、何が足りないのかを明確かつ具体的に把握できなければいけません。このため可視化できる評価軸とすることが大切です。それも他の社員との比較(相対評価)ではなく、絶対評価とすることで納得度や説得性が上がるでしょう。

具体的には、「評価期間の事実だけを評価」「表面化された事実だけを評価」「評価の対象となる事実だけを評価」することが大切です(参考:書籍「図解でわかる!戦略的人事制度のつくりかた」より)。過去や将来の期待、やる気などの具体的な成果となっていないこと、評価項目にない事項を含めてはいけないのです。

また人事評価に公平感をもたらすために重要なのが、評価の内容とプロセスが透明である「手続きの公平感」です(参考:書籍「図解 人材マネジメント 入門」より)。資金やポジションは有限であるため誰もが満足する分配の公平感は実現困難なことがありますが、「手続きの公平感」は実現可能であり、人事評価制度を運用するにあたって非常に重要です。

 

1.スキルの可視化(能力評価)

能力評価とは、どこまで能力を発揮したか、どこまで能力が獲得できたかを評価します。成果主義を導入している企業では、持っている知識そのものよりも、持っている知識を活用してどこまで能力を発揮したかを評価する傾向にあります。ここでは成果には着目されません。職種によっては、資格の有無が影響することもあります。

 

2.実績の可視化(業績評価)

仕事の結果を評価するのが「業績評価」です。売上や利益といった営業数値そのものや、目標に対しての達成度などを評価します。目標は、期首やプロジェクト開始時など区切りのタイミングで、従業員の等級に応じて設定するケースが多いです。

営業職の場合は、こうした数値目標を追うイメージがつきやすいと思いますが、近年は成果主義を導入する企業が増え、営業職以外でも業績評価が適用されるようになってきました。

例えば、経理や人事、法務など目標の数値化が難しいとされてきた間接部門では、業務改善やミス削減、通常業務の出来栄えなどが評価項目となります。管理職の場合は、人事育成での成果なども評価項目になるでしょう。

 

3.仕事に対する姿勢の可視化(情意評価)

仕事に対する姿勢や意欲を評価するのに用いられるのが「情意評価」です。ただ、意欲などは目に見えないため測りにくいもの。そこで注目されるのが「行動」です。仕事への積極性や協調性、勤務態度、マナー・モラルなど観察できる行動をもとに「情意評価」を行います。

行動を評価する方法としてよく知られているのが「コンピテンシー」です。コンピテンシー評価については、後述します。

 

人事評価でよく使われる手法

人事評価でよく使われる手法として「目標管理制度(MBO)」「コンピテンシー評価」「360度評価」があります。人事評価制度を構築する際に知っておきたいものばかりですので、参考にされてください。

目標管理制度(MBO)

MBO(Management By Objectives and self-control)は、経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した考え方で、多くの日本企業で導入されています。MBOでは、通常、個人またはグループごとに設定した定量的な目標の達成度で従業員を評価します(参考:書籍「人材マネジメント用語図鑑(伊達洋駆・安藤健・著)」 より)。

従業員が自主的に目標を設定し、事前に達成基準まで決めます。このため評価自体は容易ですが、従業員同士の目標難易度の調整が必要になるなど、評価する側の負担は重くなります。MBOに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

MBOとは?言葉の意味、目標設定の方法、効果的な運用管理のポイントなどわかりやすく解説!

 

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、高業績者の行動特性(コンピテンシー)をまとめ、それをもとに行う評価手法のことです。業務遂行上のプロセスが明確になり、従業員の能力や適性を客観的に評価しやすくなります。このため目標に向けて足りない能力は何なのか、何をすべきかが明確になることから、人材育成の面でも有用です。

 

360度評価

多くの企業で、報酬には直接反映されない育成目的で使用されることが多いのが360度評価(多面評価・周囲評価)です。直属の上司に加えて、同僚や部下、ときには顧客など、自分の周囲にいる関係者が評価します。

上司以外の人も評価することで、評価に納得感を覚えやすく公平なものにするのが狙いです。一方で、ハロー効果が働きやすくなると言われており、必ずしも評価結果が正しいとは限りません。また評価者が増えるため、運用が複雑で、評価の取りまとめの負担が大きくなるというデメリットもあります。

 

人事評価制度構築のステップ

人事評価制度を構築する際の流れを書籍「改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方【テンプレート・ダウンロードサービス付】(山元浩二・著)」を参考に紹介します。

ステップ1:人事評価制度の目的と役割を全社員と共有する

会社の考え方や方向性を全社員と共有したうえで、人事評価制度の目的と役割を伝え、従業員へ理解を促します。社長や経営陣の想いも伝えましょう。従業員からの共感と協力がなければ、よい人事制度とはなりません。こういった話は、全員が参加する場で行うのがいいでしょう。

 

ステップ2:等級と仕事レベルを明確にする

評価基準の内容を具体的に作成していく前に、評価基準のフレームに必要な「等級」と「仕事レベル」を明確にします。

等級は、社員数50人以下であれば7段階で十分に対応可能。50人超の場合は7から9段階の間で検討するといいでしょう。仕事レベルは成長ステップを考えながら作成します。

 

ステップ3:評価項目を作成する

等級に応じた評価項目(業績目標・能力目標・情意目標など)を作成します。評価基準は、「いかに行動に結び付けられるか」がポイントです。

 

ステップ4:等級(グレード)ごとに評価ウェイトを考える

評価基準ができたら、評価項目ごとに点数配分を決めます。一般的に、業績評価のウェイトは、下位グレードが小さく、数値責任を求められる上位グレードになるほど大きくします。逆に、能力評価や情意評価のウェイトは上位グレードが小さく、下位グレードになるほど大きくなります。

評価ウェイトは、等級だけでなく部署や職種によっても差をつけます。

 

ステップ5:評価をどのように処遇に反映させるか決める

人事評価制度を作ったら、評価をどのように給与や賞与などの処遇に反映させるか検討を行います。同時に、反映させるタイミングについても検討しましょう。

書籍では「評価の納得度が十分得られている」「評価者が評価制度の運用を確実に実行できている」「リーダーがアクションプランのPDCAをまわしている」の3つの条件が満たされたときが、評価を処遇に反映させるタイミングとしています。人事評価の作成手順に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

人事評価の基本的な手順とは?評価制度設計から評価シートの例文までわかりやすく解説!

 

スキルの可視化を効率的に行っている事例

テレワーク(リモートワーク)が広がり、働く場所や時間の多様化が進む現在。以前にも増して人事評価に悩む企業が増えています。評価が難しい理由としては、実際に勤務態度を見ることができない点や成果につながる行動を細かく把握できない点などがあげられます。

これらを解決する手段として有効なのがITツールの活用です。ここでは一人ひとりの状態を可視化できるオンライン研修サービス「shouin+」を活用し、スキルの可視化を効率的に行っている事例をご紹介します。

 

事例1:チェックリストでスキルを可視化

shouin+では、全従業員に対して同じチェックリストを配信できます。このチェックリストを使用すると、全従業員を同じ基準で評価できるようになり、適性な人事評価につながります。

 

事例2:検定試験によるスキルの可視化

学んだ業務知識や学習内容を振り返る検定機能を使ったスキルの可視化もできます。制限時間や合格基準点数の設定など、遠隔にいながら厳密な環境での試験が可能です。

 

事例3:人事評価制度に欠かせないフィードバックも可能

人事評価とセットで行われるフィードバックもサービス内で可能。上司が全て対応するのではなく、本社の教育担当者と分担するなど、上司の負担を減らした運用も可能です。

 

まとめ

資金やポジションは有限であるため誰もが満足する分配の公平感は実現困難なため、不満ゼロの人事評価制度の構築は難しいですが、不満が出にくい制度とすることは可能です。

納得感のある人事評価制度にするポイントは、評価軸を可視化できるものに設定すること。それも相対評価ではなく、絶対評価とすることで納得度や説得性が上がるでしょう。そして従業員自身が何を評価され、何が足りないのかを明確かつ具体的に把握できるようになります。

また人事評価に公平感をもたらすためには、評価の内容とプロセスが透明である「手続きの公平感」も大事です。

会社の考え方や方向性を全従業員と共有したうえで、人事評価制度の目的と役割を伝え、従業員へ理解を促し、制度を構築していきましょう。

 

人事評価に関するお役立ち資料

人事評価の手順や書き方を小冊子で詳しく解説しています。業種別の人事評価シート例もございますので、ぜひ参考にしてください。

人事評価パーフェクトBOOK

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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