競合他社に負けないよう市場で生き残るためには、優秀な社員の存在が欠かせません。そして優秀な人材を確保するためには、採用ももちろん大切ですが、入社後の定期的な教育も必要不可欠なステップです。
しかし、教育といっても入社時の研修しか行っていないという方や、新入社員教育を終えた後は指導は各部署に任せきりで、どのような教育が必要かわからない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、社員教育プログラムの作り方をわかりやすく8ステップで解説します。
新入社員への教育はもちろんのこと、中堅社員やマネージャークラスの人財まで、どのような教育プログラムを実施すればよいかがわかります。失敗しない教育プログラム作成のために必要なポイントもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にご覧ください。
社員教育プログラムとは、社員の育成やスキルアップ、能力の向上などを目的に行う社内教育のことです。
また、教育プログラムのメリットとしては、全社的なサービス品質の向上や組織全体の生産性向上が見込める点があります。そのため、企業にとって教育プログラムは、組織全体の成長と競争力を強化するための重要な投資とも考えられるでしょう。
さらに、似たような言葉として社員研修がありますが、社員研修と教育プログラムとでは、その教育期間に少し違いがあります。社員研修は短期的な教育を指すことが多いのに対し、教育プログラムでは中長期的な教育を施す場合もあります。たとえば、新入社員にOJTとして1年間教育を行うなどです。
社員教育プログラムに用いられる育成手法は、大きく「OJT」と「Off-JT」の2通りあります。
それぞれについて、くわしく見ていきましょう。
OJTとはOn the Job Trainingの略で、実際の業務を通して行われる職場研修のことをいいます。一般的には新入社員などの若手社員に対して、職場の上司や先輩などが教育担当者となり、直接的に社員を指導・育成します。
OJTは多くの場合、一人の受講者に対し一人の教育担当者がつく、1対1の形を取ることが多いため、個人のレベルに合わせた教育を行えることがメリットです。
また、教育担当者を社内でまかなうことができるため、社外から講師を呼ぶような研修と違いコストを下げられるのもメリットの一つでしょう。
なお、OJTについては、下記の記事でもくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
OJT形式の研修とは?他の形式との違いやメリットをわかりやすく解説
Off-JTとはOff the Job Trainingの略で、職場外で実施される集合研修や外部セミナーのことを指します。
Off-JTは外部講師を雇ったり、研修会場を借りたりする必要があるため、OJTと比べて高コストになりやすい点がデメリットです。しかしその一方で、多くの社員に対し同時に同じ内容を学ばせることができるため、スキルの平準化を図りやすいというメリットもあります。
また、近年ではOff-JTはインターネットを活用したeラーニングという形式で行われることも増えてきています。
eラーニングであれば外部の会議室を借りる必要もなく、その上一人ひとりの社員が自分のタイミングに合わせて教育を受けることができるため、教育に対するハードルが下がるのがメリットの一つです。
なお、Off-JTについては、下記の記事でもくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
Off-JTとは?実施するメリットや方法を事例からわかりやすく解説!
それでは社員教育プログラムを用いるメリットやOJTとOff-JTの違いがわかったところで、実際に教育プログラムを導入してみましょう。ここからは社員教育プログラムの作り方を8ステップで解説いたします。
それぞれについて、くわしくご紹介します。
教育プログラムを作る際、まずは教育を行う目的を設定します。目的設定が曖昧なままでは、効果的な教育を行うことは難しいからです。目的設定のためには、現状の課題を洗い出すことから始めます。
課題は企業によってさまざまですが、教育の目的として一部の例を挙げます。
目的によって教育の対象となる社員も異なれば、教育にかかる期間も変わるでしょう。たとえば新入社員の戦力化であれば入社後1年をOJT期間としている企業も少なくありません。一方でコンプライアンス教育であれば、全社員を対象に、年に一度など定期的に1日の講習を行う場合も多くあります。
教育プログラムを実施する目的が決まれば、教育の対象となる社員も決まります。そこで次に行うべきことは、教育を受講する社員のスキルを整理することです
すでに身についているスキルとこれから身につける必要のあるスキルを洗い出すことで、どのような教育が必要かが明確になるでしょう。
また、全体の傾向としてどのようなスキルが身についているのか、どのようなスキルが不足しているのかを把握することで、重複した内容の教育を行ってしまうことを避け、解決すべき企業課題に合った内容の教育プログラムを組むことが可能になります。
社員教育プログラムを実施する目的の設定と受講者のスキルの整理が完了したら、次は整理したスキルを元に、具体的な目標設定を行っていきましょう。
ここで「目的の設定と目標設定はどう違うのか」と疑問に思われるかもしれません。教育目的は企業が抱える課題に対する解決策を示すのに対し、目標設定は教育プログラムを通して受講者に身につけてほしいスキルや知識、技能などを指します。以下、目的に対する目標設定の例を挙げますので、ぜひ参考にしてください。
<例1> 目的:コンプライアンス違反のリスクをなくしたい 目標:著作権法・下請け法・インボイス制度など自社に関連する法律について身につけさせる |
<例2> 目的:離職率を下げたい 目標:管理職にマネジメント教育を施し、ハラスメントのない職場作り、やりがいのある職場作りのために必要なスキルを身につけさせる |
<例3> 目的:お客様のリピート率を高める 目標:お客様に品質の高いサービスを提供するため、現場社員に接遇教育を施す |
目標設定をするにあたって注意すべきポイントは、難しすぎず、けれど簡単すぎない目標を定めることです。受講者のやる気が失われないよう、目標はほどよいハードル感で設定するとよいでしょう。
なお、人事評価の目標設定については、下記の記事でもくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
人事評価の目標設定例とは?目標設定のポイントや職種別の具体例についてわかりやすく解説!
続いて、どのような形式で教育プログラムを実施するか、手段を検討します。
このように、教育プログラムを実施するにあたってはさまざまな手段が考えられます。目的や目標、コストなどを勘案して適切な手段を選択しましょう。
目的・スキル・目標・手段が定まったら、いよいよ教育計画を作成します。下記の項目などを整理し、現実的な教育計画に落とし込んでいきましょう。
下記、新入社員教育を例にとって簡単な教育計画事例を挙げてみます。
実際の教育プログラムでは企業ごとにより細かく計画を定めていくことになりますが、基本的な考え方は上記を参考にしていただければと思います。
具体的な教育計画が完成したら、計画に従い教育プログラムを実践していきます。
このとき、とくに中長期的な教育プログラムの場合は、実践の中で教育計画より進捗が遅れたり、反対に予定よりも早く教育が進むこともあるでしょう。
そういった場合には、スケジュール感を見直し調整できる柔軟性があると、より効率的に教育を行っていくことが可能です。
教育プログラムを実践したら、成果の確認・評価(フィードバック)を行います。
短期的な教育の場合は教育プログラムが終了した時に、中長期的な教育の場合は、一定期間ごとに振り返る機会を作るとより効果的に教育を進めていくことができるでしょう。
また、成果の確認・評価のポイントとしては、以下の点を参考にしてください。
なお、教育を受けた社員の学習定着度を確認することはもちろん必要ですが、たとえば新入社員教育のように定期的に繰り返し実施される教育プログラムの場合はとくに、その教育効果を高めていくためにもプログラム自体の改善を図っていくことも重要です。
漫然と同じ内容の教育を繰り返すのではなく、より良い教育プログラムにブラッシュアップしていくことで、学習効果が上がり社員の成長に大きく寄与することができます。
教育プログラムが終了しても、それで終わりではありません。一度の教育で目標としていたスキルや知識が全て身につくとは限らないため、社員各々のフォローアップも必要です。教育プログラムで身につけられなかった点や、新たに見つかった課題に対して、成長を促していきましょう。
教育プログラム終了後のフォローアップでは、ただ課題を指摘するだけではなく、どのような工夫や対策をすれば解決できるのか一緒に考えたり、少しでも成長が見られたら褒めたりするなど、モチベーションを保つ工夫も大切です。これにはティーチングやコーチングの技術も参考になるでしょう。
なお、成長を促すフィードバックについては、下記の記事でもくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
■参考記事はこちら
教育を効率化するフィードバックの方法とは?心理学的な観点からも解説!
ここまで、教育プログラムの作成手順を紹介してきました。ところが、この手順を踏んだからと言って必ずしも教育プログラムが成功するとは限りません。そこでここからは、教育プログラムを成功に導くための3つのポイントをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
教育プログラムを実施するにあたってまず注意したいポイントが、社員への負担に配慮をすることです。プログラム受講では多大な時間的拘束をともなうため、社員への負担が大きくなりすぎないよう配慮する必要があります。
また、受講者側だけでなく、先輩社員や上司が教育担当をする場合は、こちらの負担も考慮する必要があるでしょう。
教育プログラムが長期間に渡る場合や受講する人数が多い場合、社員への負担はより大きくなります。
教育プログラムを効果的なものにするためにも、関係する社員の業務量に配慮をしながら、教育プログラムを進めていきましょう。
教育プログラムを進めるうえでは教育担当者と受講者間がコミュニケーションを取りながら関係値を高めていくことはもちろん大切ですが、注意がそこばかりになってしまってもいけません。
教育プログラムをスムーズに進めるためにも、教育担当者・受講者の周囲の社員からも、理解や協力を得られるように配慮することが大切です。
しかし、教育期間中、どうしてもプログラムの受講に時間を割かなければならず、同僚のサポートが必要になる場面もあることでしょう。そういった際には、社員の間で不平等感が生まれないように、一人の社員に負担がかからないよう配慮をしたり教育プログラムが会社にとって重要なことを伝えるなど、周囲の理解を得られるように努めると良いでしょう。
周囲からの理解や協力といったサポートがあることで、受講者の負担が軽減するだけでなく、組織のチームワーク向上にも寄与します。
教育期間中も、必要に応じて丁寧なフォローアップを行うことで、受講者のモチベーションを維持・向上させることができます。
たとえば、人材育成クラウドサービスの『shouin+』を導入したミュゼプラチナム様では、本社トレーナーが店舗研修中の新人スタッフの様子をリアルタイムに把握できるようになったことで、受講者からも「フォローしてもらえている」ことがモチベーションにつながったとのお声を頂戴しております。
『shouin+』の導入以前は、リアルタイムにスタッフの様子を可視化できないことからフォローが遅れてしまうという課題を抱えていらしたミュゼプラチナム様。『shouin+』の日報機能を活用したことで、この課題をクリアにすることができました。
このように、社員の様子をリアルタイムに把握することは教育スピードを上げることにつながるうえ、教育の効果も高めることができます。
なお、ミュゼプラチナム様の導入事例は下記の記事でくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
■『shouin+』ミュゼプラチナム様の導入事例
研修期間中の新人スタッフの様子を日報で把握!モチベーションアップやメンタルフォローを実現。
それでは最後に、教育プログラムの探し方をご紹介します。下記3サイトを簡単にご紹介しますので、ぜひご活用ください。『
『教育訓練プログラム開発事業』は、厚生労働省が運営するサイトです。
この事業では、人生100年時代における、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行っていくためのリスキリングに役立つ教育訓練プログラムを紹介しています。
キャリアアップやキャリアチェンジを目指す労働者を対象とした、技術革新を反映した最新の教育訓練プログラムを業界団体、大学等に委託して開発したとのことです。
この教育訓練プログラムは全て無料で学ぶことができますが、利用前に利用規約をご確認ください。
教育プログラムは下記のページから条件に合わせて探すことが可能です。ぜひご活用ください。
■参考:教育訓練プログラム開発事業
『JMAM 日本能率協会マネジメントセンター』は、人財育成支援事業・出版事業・手帳事業を行っている企業です。
JMAMではマネジメントなどの基本テーマから、SX・DX など旬のテーマまで網羅し、それぞれのニーズに合わせてさまざまな学習スタイルを提供しています。私たちは成長を願うすべての人に寄り添い、勇気づけ、手を差し伸べることで、一人ひとりの成長に伴走しています。
JMAM 日本能率協会マネジメントセンターでは、講師を派遣しての研修、eラーニング、通信教育などさまざまな教育プログラムが用意されています。
階層別・スキル、テーマ別・職種、業種別といった分類でわかりやすく目的の教育プログラムを見つけることができますので、こちらもぜひご活用ください。
■参考:研修・サービスを探す| JMAM 日本能率協会マネジメントセンター
『JMAソリューション』は一般社団法人日本能率協会が運営する教育サービスです。講師派遣型・カスタマイズ型研修を中心に、企業が直面する人材開発・組織開発の課題解決を目指す教育プログラムを提供しています。
JMAMと同様に、研修の内容はテーマ別、階層別で検索できるだけでなく、おすすめの研修を探すことも可能です。
新入社員教育から役員・管理職まで幅広く教育プログラムを提供していますので、こちらもぜひご覧ください。
■参考ページ:JMAソリューション
企業を成長させるため、また競合他社に負けないために欠かせない社員教育。今回は社員教育に関して、教育プログラムの作り方から教育プログラムを作る際に注意すべきポイント、教育プログラムを提供している企業までくわしくご紹介いたしました。
また教育プログラムの実施手段としては、コロナ禍を経て集合研修が実施しにくくなった分、オンラインを活用した遠隔教育やeラーニングの需要が高まっています。
オンライン教育では会議室を借りる必要がなく、また外部講師を招く必要もなく、集合研修よりも費用が安く済むケースも少なくないことから、コストパフォーマンスの高い教育サービスとして、これからもさらに需要が高まっていくことでしょう。
なお、人材育成クラウドサービス『shouin+』においても、実践重視の研修をオンラインで出来るクラウド型eラーニングプラットフォームを提供し、さまざまな企業様に活用していただいております。効果的な人材育成にお悩みの方は、参考にしてください。